葉鍵聖戦 3rd Period
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0001名無しさんだよもん
NGNG葉鍵キャラがオリジナル設定で大暴れしまくりな日記形式のリレー小説だゴルァ(゚д゚)
書き手も読み手もルール守ってマターリ逝こうぜゴルァ(゚д゚)
1 基本的にsageでお願い致します。
(ただし、dat逝きを防ぐためにageても構いません。目安はスレッド順位が300位以下になった時です)
2 どんな人間がどのキャラを書くのも構いませんが、それまでの伏線は重視する方向でお願い致します。
3 あまりに立て続けのカキコは自粛しましょう。
4 これはあくまでの2chのスレッドです。
当然書き手に否定的な意見等もあるかもしれませんが、いちいち反応せずに作品で結果を見せましょう。
5 他の書き手が納得出来ない展開はご遠慮下さい。
6 新規参入者は、過去ログを熟読して下さい。
7 1つの書き込みをした後には必ず2回ほど回して下さいますようお願い致します。
なお、連続で書き込む場合は、書き込みが終了した後に数回回して下さい。
では、貴方も葉鍵な聖戦の世界へ……
なお、過去ログ等は>>2にございます。
0201名無しさんだよもん
NGNG0202名無しさんだよもん
NGNG0203水瀬名雪@雪の少女(1/6)
NGNG雪の街はその装いを決して変えることはなかった。
わたしは今、泣いている。
お母さんへの愛が揺らいでいるから。
もう、誰も信じられない。
祐一以外は……。
目を閉じてみよう。
そこにはきっと暗闇が広がっている。
死んでしまってもいいと思う。
祐一と一緒なら。
わたしの側に祐一がいてくれるのなら。
永遠に、祐一が私のものになるのだったら――そう、すべてを許せる。
わたしにはもう、祐一しかいなかったから。
それなのに、祐一はわたしに何も語ってくれない。
氷の棺の中で、凍ったままだった。
目も虚ろでしかなかった。
「そんなにあゆちゃんの方がいいの……?」
「わたしを愛してくれたなら、その氷は溶けるようになっているんだよ……?」
答えは返らなかった。
祐一は氷の棺の中にいてわたしは外で泣くことしかできない。
「でも、でもね、ようやく気づいたよ」
あの子が現れてから、祐一は可笑しくなったんだよ。
だから、殺してあげる。
わたしたちの邪魔をするものすべてを凍りつかせるよ。
「ねえ、祐一、聞いてる? もう、いいよね?」
あゆちゃん、殺してたっていいよね?
――いいよね?
0204月宮あゆ@雪の少女(2/6)
NGNGみさきさんは澪ちゃんの友人で高野の法術士だという。
「昔の話だよ」
どうしてか憂いを帯びた表情でみさきさんは言った。
ボクのことを警戒しているのか、少しだけ態度が固かったみたい。
「それで、あゆちゃん……だっけ? あゆちゃんはこの戦いを止めたいんだ?」
「うんっ。もうこれ以上、無駄な血は流させたくないよ」
「……そっか、わたしもその意見には激しく同意だよ」
『同意なの!』
「はは、澪ちゃんもなんだ。嬉しいよ」
口元に手を当ててみさきさんが本当に嬉しそうに笑った。
しかし、その表情はなお――頑なままだった。
「でも、そんなことできるのかな?」
「それは……」
ボクは口をつぐんでしまった。確かにそんな都合のいい方法があるとは思えない。
それに、ボクは詳しい事情だって何一つ分かっていなかった。
……どうしたら、いいんだろう。
『大丈夫なの』
ボクの心配事なんてどこ吹く風で澪ちゃんが笑った。
『繭ちゃんに相談したら何とかしてくれるの』
「……繭ちゃん?」
「椎名繭……最年少で博士号を獲得した天才少女、わたしたちのブレインをしてくれてる女の子だよ」
みさきさんが暗唱ごとのようにすらすらと答えてくれた。
どこか、やっぱり陰りがあったけど……。
「そうだね、繭ちゃんなら、なんとかしてくれるかも……」
『きっとなの』
「わたしも、繭ちゃんに相談したいことがあるし、探してみようか?」
そう言って、みさきさんは目を閉じる。
『遠くを見る目』を使っているらしいことは、その凄まじい霊力で分かった。
「ここから、近いところ……ものみの丘の頂上部に向かっているけど、近道したらすぐ追いつくよ」
うん、と大きくボクらは頷いて、その先へと歩いていった。
0205七瀬留美@雪の少女(3/6)
NGNG「どうしたの?」
ここはまだ頂上部に向かう林の中だった。
丘にいた妖弧たちはすべて街に向かったのか出会うこともなかったけど、不安は消えない。
この丘には、あの九尾≠ナある妖弧の長・沢渡真琴がいるのだ。
あたしはそんな焦りもあって、繭の肩をぎゅっと掴んでいた。
「なるほど、やはりですか……」
「だからさ、どうしたのよ? 深刻な顔して」
「まあ、川名さんのことだから、大丈夫だとは思っていましたけど、徒労もいいところですよ」
「うん? みさきさんのこと?」
「ええ、こちらに向かっているみたいです。澪も一緒みたいですね……」
繭は肩を竦めてみせた。みさきさんを心配して探していたのも相まって複雑な感情も入り混じってるのだろう。
みさきさんにとっては、要らぬ心配だったのかもしれない。
そう考えると、さすがに鬱だった。力を無くしてしまったことを悔いてしまう。
「そうでもないですよ」
「えっ?」
「七瀬さんは七瀬さんということです」
「なに、それ?」
「一緒にいて退屈しないってことですよ」
うん? なんだか酷いいわれような気がするけど、まあ、いいか。
繭は楽しそうに、そっと目を伏して続きを言った。
「力のあるなしなんて関係ありません」
「…………」
ちょっと照れてしまうが、そんなことないと思う。
まあ、みんなにはよく弄られてるなー、って感じはするけど……。
「少し休みましょうか?」
にこっと微笑んで言う少女に、あたしはただ頷いていた。
伏龍の繭……彼女には助けられてばかりだった。
しかし、意味深な顔は止めて……お願い。
0206椎名繭@雪の少女(4/6)
NGNG皆さんが揃ったところで私は言っていた。残念そうにみんなが俯く。
『どうしてもなの』
諦めきれないのか澪が悲しそうに私を見ていたが、あくまでも非常に徹する。
方法がないわけではない。ただやり方が複雑すぎて、私のプランに損傷をきたしてしまう。
成功の確率も、かなり低い……言いたくはないが、天文学的数字だった。
だったら、今の計画の実行を優先すべきだった。
最善の方法があるのなら、伏龍≠フ名において私はそちらを選ぶのだろう。
「どうしても、です。……いえ、千年に及んだ戦いを私たちが止めるのはエゴというものですよ」
嘘をつくのだけは上手くなったと、私は胸中で苦笑した。
「いいですか? 彼女らの力というのは計りきれません。水瀬秋子が動く前に私たちが消耗してどうします?
私たちには為すべきことがあります。永遠をこの地に迎え入れる準備をすることが先決でしょう。
そうしなければ永遠が溢れてしまって、この間のように取り返しのつかない事態になりますよ。
彼だって……そうしないと、戻っては来てくれません――分かりますね?」
「…………」
私がぴしっとそう言うと静まり返ってしまった。
「うぐぅ、そんなのってないよ……」
悲しそうに呟いたのは、月宮あゆだった。
「あるいは……」
貴女なら何とか出来るかもしれませんね、との言葉を私は飲み込んでいた。
彼女は、澪とここまで一緒に来てくれたらしい。
それには、純粋に感謝するが、邪魔をされるかもしれないという可能性も否定できない。
しかし、逆に言えば、彼女は切り札にもなり得るのだ。
保険として扱うのがベストだと、私は打算して、答えを導き出した。
(……ええ、そうね。何をやってるのかしら、私は……)
ぎゅっと唇を噛んで、私は言った。
「いえ、何でもありません。この件については以上です」
そう言って、私はなぜか立ち上がっていた。……いたたまれなくなったのかも知れない。
「出発は一時間後にしましょう。それまで各自休息していてください」
何を言ってるんだか、と思いつつも、心を凍らせて、私は踵を返していた。
「繭ちゃん、ちょっといいかな?」
「はい?」
川名さんが私に相談したいことがあると申し出ていた。
0207川名みさき@雪の少女(5/6)
NGNG繭ちゃんは、何かを考えるように顎に手をやって、その片手を肘に当てていた。
「それは、確かなんですか?」
「……信じられないのも無理ないよ。わたしだってそうなんだ。何かの間違いだって思うんだけど……」
今まで見たことを、私はすべて繭ちゃんに話していた。
その中には、わたしの命が後僅かなことも含まれていたけど、繭ちゃんは黙って聞いてくれていた。
雪ちゃんのこと、名雪って人のこと、あと由紀子さんのことも、全部のことを話した。
「ユキですか、この街らしいですね……」
止んでいたと思ったら、また濁った空から螺旋を描いて雪が落ちてきていた。
繭ちゃんは、手を伸ばして、その手のひらに雪を受け止める。しかし、すぐにそれは、溶けて消えていってしまった。
「冷え込むかもしれませんね……」
「そうだね……」
繭ちゃんはその光景をみて、優しく微笑んでいた。
わたしは、彼女がそんな風に笑うところを、見たことがなかった。
「繭ちゃん……」
雪色に染まる街はなにを思っているのだろう。
木々の先に霜のような雪が纏わりつく。
「……七瀬さんには黙っていましたが、里村さんが離反しました」
「え? じゃあ、裏切りって、もしかして――」
わたしが言葉を続けようとした時、彼女はあの笑顔のまま小さく首を横に振って、窘めてくれていた。
「それに、長森さんとも連絡がつきませんし、七瀬さんだって元とは言え妖弧です」
「…………?」
繭ちゃんがなにを言おうとしているのか、わたしには分からなかった。
「澪はゴッドハンドの影響下にあるかもしれませんし、もちろん私だって永遠と交わりました」
「繭ちゃん……それって」
彼女はステップを踏んでくるりと回った。雪と戯れるように……。
「私は誰がなにをしようと、それを受け止めるつもりです。……後悔なんてないですよ、私はみんなのことが好きですから」
「それで……いいの?」
「はい。こう見えても、私は今、幸せなんですよ?」
わたしたちと居ることができて彼女は嬉しいと言ってくれた。
だったら、わたしも……。
「繭ちゃんと一緒にいれて幸せだよ」
そう素直に思った。
0208七瀬留美@雪の少女(6/6)
NGNG冷たい雪に溶け込んだように、彼女はどこからか唐突に、あたし達の前に現れた。
そして早く、迅速に、彼女は……まず澪を凍らせていた。
あたしの身体が動かなかったのには、理由があった。強く地面に叩きつけられていたからだった。
澪に弾かれて……あの子は襲いくる結晶から、あたしを庇ってくれた。
その代償に、澪の呼吸は容易に止まってしまった。
目にした光景は、壮絶だった。
白い式服に、風に流される青い髪、雪の少女……彼女の名前を水瀬名雪と言った。
「やっと会えたね、あゆちゃん」
「……名雪さん?」
あゆちゃんはひどく目を丸くさせて、身体を震わせていた。
恐れじゃない……戸惑い、あゆちゃんは信じられないように、名雪に言う。
「そんな……どうして名雪さんが?」
「何も知らないんだね、あゆちゃんは……。わたしはずっと前からあゆちゃんのこと嫌いだったんだよ。
この――どろぼう猫! 貴女なんかに祐一は渡さない! 絶対に――渡さないんだから!」
「どうしちゃったの、名雪さん?」
「知らない! 知らない! 知らないよう! 貴女なんかだいっ嫌い!」
雪の結晶が名雪を中心に、円を描く。そして――
「危ない!」
「死んじゃえ!」
あたしの言葉は届かなかったのか、あゆちゃんはまともにそれを喰らって、地面に崩れていった。
雪の飛礫(つぶて)、圧縮された雪の結晶の弾丸だった。
「……祐一君」
赤い。赤い雪。血が広がっていく。白から赤へと変わっていく。
流れでたのは、言うまでもなくあゆちゃんの血液だった。
「きゃあーっ!」
あたしは絶叫した。
「死んじゃえ! あゆちゃんなんて死んじゃってよ! わたしからすべて取らないでよ!」
「…………」
「お母さんも、祐一も、みんなみんな――わたしのものだよ!」
名雪――雪の少女は、止めを刺すべく、手に氷柱のような剣を握っていた。
血塗れになった少女の側まで歩み寄る。
「あゆちゃん、逝ってよし!」
あたしには……こんなあたしでは、その凶行を止めることは出来なかった。
「……止めて……よ」
見ていることしか出来ないその力のなさに、あたしは嘆いていた。
0209名無しさんだよもん
NGNG0210名無しさんだよもん
NGNG0211名無しさんだよもん
NGNG0212名無しさんだよもん
NGNG0213名無しさんだよもん
NGNG0214名無しさんだよもん
NGNG0215名無しさんだよもん
NGNG0216名無しさんだよもん
NGNG0217名無しさんだよもん
NGNG0218名無しさんだよもん
NGNG0219名無しさんだよもん
NGNG0220名無しさんだよもん
NGNG0221白穂@空への願い(1/10)
NGNG何を感じていたかと問われたなら言葉には出来ない。
ただ、喪失していく理性は彼女を狂わせた。
視界が広がる。
雪の街。白い雪。冷たい雪。吹雪。風は荒れ狂う。
彼女の意識と同じように……。
あかい。紅い。赤いものが視界に映っていた。
誰かの流した血。
右手から熱いものが零れていく。
魔法……。
彼女が求めていたもの。
そして……。
そして…………。
今、彼女の心は滅亡と狂気に捉われてしまった。
それは死≠意味するのかもしれない。
思い出が巡る。
記憶の中で彩っている。
暑さ……。
そう、灼けるアスファルトに、セミの声と、診療室に響く空調の音。
彼女は誰かを待っていた。
白いワンピースに、右手には、黄色いバンダナ……いつもと同じ夏の風景。
でも、もう思い出すことはなくなって……。
叶う? 叶えるもの……。
魔法? 使えるように……。
羽根? 空から……。
今、舞い降りて、願いを叶えるために……。
彼女は、口を開いた。
「――貴女に、決定的な死≠与えます」
移り、芽生えた意識……彼女の名前を白穂と言った。
0222白穂@空への願い(2/10)
NGNG彼女から漏れでる神力は妖弧である塚本千紗を遥かに凌駕していた。
「わたくしの子供、八雲はあなたたち妖弧によってその生を閉ざされました……」
霊気に満ちた霧島佳乃の姿である白穂は滑らかな口調で言う。
「恨み言ではない、と申せば嘘になりましょう。しかし、わたくしは……この子のために力を宿します」
幼い妖弧は、目を大きくさせて、肩をがくがくと震わせていた。
力の差は歴然だった。翼人の力の欠片を彼女らは使おうというのだから。
「生まれるのは、ただ純粋な願いから……」
「そ、そんな……」
幼い妖弧は瞳に涙を浮かべていた。
「さっきまでは、千紗の方が勝っていたんですよ……」
「始まるのは、ただ偶然から……」
白穂は天に向かって、手を掲げ上げていた。
白い光が降り注ぐ……。
「こんなところで千紗は死ねないんですよ……」
泣き言。怯え。恐怖。死。虚無――その先には何もない。
待つのは、混沌のみ……。
「虚ろなれども、ただ想うは愛の子よ……」
「死ねないんですよ……」
終わり。生の終わり。生きることはない。転生すらない。
もう、何もできない……。
「ねんねころりよ、おころりよ……」
「千紗は……」
幼い妖弧は怯えていた。そこにある死を実感していた。
すぐ側で死神が手招きをしている……。
あるのは、そこにあったのは、単なる――単なる、終焉……。
「千紗は、こんなところで死なないって言ってるんですよ!」
そして、決着というのは呆気ないものだった。
0223霧島佳乃@空への願い(3/10)
NGNG風が吹く。
羽根が震える。
最後の夢。
夢でない夢。
記憶ではない記憶。
金色の海。
奥底に眠る。
それは……。
たましいのありか。
あたしは夢を見ていた。
呼び覚ます記憶。
母でない人。
母であった人。
姉……。
もう二度と会えない。
力を……魔法を使ったら……。
――でも、止められない。
仇を討ちたい。
みんなの仇をあたしが討ってあげたい。
そうしたら、いい。
そうできたなら、と思う。
でも……。
でも…………。
もう一度だけでいい。
会いたい。
お姉ちゃんと会いたい。
白穂……。
あたしは……。
0224霧島佳乃@空への願い(4/10)
NGNGこれは夢……。
それも夢……。
あたしの夢……。
そのはずなのに、違う人がいた……。
こんにちは、と彼は呼びかけてきた。
……子供だった。あたしよりもずっと幼い男の子だった。
どうしたの、ってあたしは問い掛ける。
どうして、こんな寂びしい場所にいるのか聞いてみる。
何もなかったのだここは。
原っぱでもない。
荒れ果てた土地でもない。
ただ、そこは本当に何でもない場所だった。
悲しいだけの世界……。
遠くを見る。
ネオンのライトが眩しい。
時間を見ている、とそんな感じがした。
どうして、こんな所にいるの、と再度あたしは訊ねていた。
男の子は、あそこから来たって分かってるんだね、とだけ答えてくれた。
訳が分からなかった。それなのに、彼は続けた。
旅立ったんだよ、遠い昔に、と言って寂しそうに笑っていた。
いや、もしかしたら……。
泣いていたのかも知れない、とあたしは思った。
だからって、どうしようもなかった。
0225霧島佳乃@空への願い(5/10)
NGNGまた、旅立ったのかもしれない。
少し異なっていたのは、あたしが空を飛んでいることだった。
空だけの世界。でも、それだけで何もなかった。
とても悲しい世界だった。
あたしは、あたしの望んでいたことは、たったひとつの意味さえもたなかった。
そのことに、あたしは気づいていた。
誰も居なかったからだ。
探し求めていたものはここにはなかった。
しかし、その世界は優しさで溢れているのだから、居心地は悪くない。
あたしは悟っていた。
ここでなら、誰も傷つかないで生きられるのではないか、と。
しかし、出会いも何もない。
風さえ存在しない。感傷にも浸れない。誰も愛せない。
こんな世界では、愛することは出来ない。
悲しみの生まれない世界はただそれだけで悲しい。
あたしは、ひとりだ。
あるのは優しかった思い出だけで、他には何もない。
空虚だった。
だからこそ傷つかないで済むのだと、あたしは知った。
この世界は、誰にも望まれていないことを、望んでいるような気がする。
この世界は、もう終わってしまった世界……。
また、意識がくるくると、回った。
0226霧島佳乃@空への願い(6/10)
NGNG男の子のはずなのに、あたしは彼を年下とは思えなくなっていた。
始まらない。終わらない。生まれない。滅びない。
――分かるかな?
あたしは首を横に振っていた。
男の子は、それでいい、とでも言うように頷いてくれていた。
君は、永遠には来れないよ、と嬉しそうに笑う。
――君はちょっとの間だけ迷い込んでしまっただけなんだ。
何のことだかは理解できなかったけど、少年が言うと「そうなんだ」と納得していた。
知らなかった心がある。知りたかった想いがある。
風が吹いている。
何もなかった世界が色付き始めている。
――希望が生まれたんだよ。
吹き始めたそよ風に彼も身を委ねていた。
髪の毛がふわりと揺れる。あたしも彼と同じ風を感じている。
また、違う風が吹いていた。
それは、夏の予感を胸に抱かさせる暖かい風だった。
そう、こんな小さな風だって、勇気をもってる。
――そうだね。
彼は泣きそうな顔をしているのに笑っていた。
だから、あたしも笑った。
……それでいいと思った。
0227霧島佳乃@空への願い(7/10)
NGNGこの世界は、あまりにも思うとおりにいき過ぎて人の居るべき場所ではないと思った。
しかし、彼は悲しそうに首を横に振るだけだった。
出来ない。怖い。戻れない。帰れない。還れもしない。憎まれてる。
――まだ、永遠はぼくを離してくれない。
まだ知らない悲しみがあると言って、彼は泣き続けた。
そんな悲しみ、どこにも無いのに……。
――永遠は、優しかった。
それでも彼はこの世界が永遠ではないと教えてくれた。
現実でも、永遠でもない、仮初の世界……。
――それは、ぼくのココロだよ。
あたしには彼の言ってることがよく分からなかった。
でも、すぐそこに、優しいなにか≠ェ広がっていて、それが本当の永遠であるとあたしは何となく気づいた。
だったら、なおさら彼を引き摺ってでも、この世界から連れ出したかった。
それなのに、世界はあたしを突き放し始めていた。
――本当のぼくと、新しいぼく……どちらもぼくではない。
どうして、とあたしは言っていた。
なにが彼をそうまでさせるのか知りたかった。
――希望が無いから、かな……でも、もし、それを見せてくれたなら……。
もう、それまでだった。
あたしはこの世界から引き離されようとしている。
希望。彼には絶望。そこにある可能性。どちらでもない自分。
――君は、もう一度、がんばれるよ。
そして、世界は元の姿へと変わっていった。
0228霧島佳乃@空への願い(8/10)
NGNGでも、あたしは帰ってこれたから、彼もいつか帰ってこれるものだと信じた。
だから、今、出来るあたしの可能性も信じてみたい。
永遠というのは、つまり……そういうことなんだろうとあたしは思った。
みんなが求めている永遠は、千差万別でありながら、唯一無二で、表裏一体……そういうものなんだ。
あたしは、永遠に逝ってしまったのは、つまり……。
ううん、それは今でなく、後で考えもいいことだったので、感謝する。
おりはらこうへい。
ただ、彼に……。
「お母さん、あたしはまだそこに行けないみたい」
その永遠の世界では、きっとお母さんが待っていてくれていたはずなのだ。
しかし、何の因果か彼と出会って、あたしはここで留まった。
「お姉ちゃんが、きっと心配してるから」
そう、今……あたしはそのためだけでもいい、生きてみたい。
『辛いのなら、私と来てもいいのよ』
声が聞こえた。
幼い少女の声だった。でも、それは――すぐに変わった。
『あなたはいつまでも、甘えんぼうだから』
お母さんの声に……。
『私といつまでも一緒に居てもいいのよ』
そして、差し出された手のひらが目の前にあった。
あたしが望んでいたもの。ずっと探し求めていたものがそこに……。
0229霧島佳乃@空への願い(9/10)
NGNG私を生んだせいでお母さんは長生き出来なかったけど、
あまりお母さんのこと、覚えてないけど、ありがとうって言いたかった。
「あたしを生んでくれて、ありがとう、お母さん」
それだけ言いたかった。
お母さんは、何も言ってくれなかったけど、微笑んでくれていたから、それで良かった。
あたしには羽根が無いけど、大地を歩ける足がある。
お姉ちゃんもいるし、ポテトもいる。
あたしはここで幸せになりたい。
白穂にも伝えてあげたい。
――八雲君は、充分に幸せだったよ、って……。
だから、還るのだ、あたしは。
ずっと居たかった、これからも居続けたい場所に。
――はい。
その声は、待ち遠しい春の訪れを語る風のように、響いた。
すべてが還る。この空に。
ここは、雪の街。でも、季節は巡る……。
春は、もうすぐそこに……。
0230霧島佳乃@空への願い(10/10)
NGNG強かった光は、その輝きを失って、始まりの少女の元に還っていく。
すべてがここで終わって、また始まったのだろう。
しかし、それを理解できないで、幼い妖弧は思いの限り牙を向けた。
「単なるこけおどしなんて……千紗を馬鹿にするのも大概にしとかないと痛い目にあいますよ!」
佳乃はそんな言葉に耳も貸さないで、右手を見続けていた。
「……随分、時間掛かっちゃったな……」
佳乃の視線は、地面に落ちた黄色いバンダナに注がれて、その自分を無視した行為に幼い妖弧は憤りを感じていた。
「千紗のこと舐めて舐めて、舐めまくってますね」
「……これ、外すのに……」
幼い妖弧の怒りが頂点にまで達した。ツインテールが金色へと輝き出す。
潜在能力だけはあった妖弧の力の解放。
佳乃は、それを見て、どうしようともしなかった。
秘策があったわけでもないし、余裕ですらなかったし、本当は恐怖で一杯だった。
だから……ただ、信じる。
もっとも信頼しているパートナーのことを……。
そして、その想いは、天に届いていた。
「なっ!?}
幼い妖弧に向かって弾丸の雨が降り注ぐ。驚いて振り向いた先には、幼い妖弧が煮え湯を飲まされた相手がいた。
青い髪の眼鏡を掛けた女の子と、大人しい雰囲気をかもし出す少女がふたり、そこにいる。
「あの、私もいるんだけど……」
そして、青いツインテールの少女が佳乃の側でまた、佇んでいた。
またひとつ、宿命の戦いが始まろうとしている。
0231名無しさんだよもん
NGNG0232名無しさんだよもん
NGNG0233名無しさんだよもん
NGNG0234名無しさんだよもん
NGNG0235名無しさんだよもん
NGNG0236名無しさんだよもん
NGNG0237名無しさんだよもん
NGNG0238名無しさんだよもん
NGNG0239雛山理緒@蓮華(1/6)
NGNG傍目から見ると、とてつもない惨劇に見えるかもしれないが、そこには何かしら理由があるのだ。
そう。彼女らには彼女らにしか理解できない理由が、確かに存在していた。
恋愛感情というものは、時には人を悪魔にも天使にもさせる。
私には、まだ分からないけど、時には人を傷つけるほど、それは惨酷なのだろう。
つまり……狂えるほど、愛しい、ということだった。
長岡さんは悲鳴を上げることもなかった。
セリオさんを連れて医務室のドアを開けたところで、私は自分の仕出かした過ちを気づいていた。
しかし、それはあまりにも遅かった。
セリオさんの左手から放たれたガトリングガンの薬莢は数百単位で地面に散らばっている。
まだプスプスと煙を上げる、その手は呆然と彼に向かって上げられたままだった。
私も悲鳴すら上げられなかった。
……分かっている。何が起きたのか分かってはいるっ!
でも、でも……その場に居る私たちは、信じたくなくて沈黙を守り続けていた。
危うい均衡が周囲を支配していた。
もし、この静寂が破られたなら私は泣いてしまうだろう。
きっと、大声を出して泣いてしまうだろう。
だって……藤田君は、藤田君は死んでしまったんだから。
たくさん服に穴があいて、どくどくと血を流しているんだから。
長岡さんも呆然とそれを見ていた。
焦点の定まっていない虚ろな眼でそれを観察していた。
もう、あの日には還れない……。
平穏だった日には還れないことを改めて、私たちは思い知らされていた。
0240長岡志保@蓮華(2/6)
NGNG目の前でヒロが散っていってしまったのに、どうして悲鳴のひとつも涙すらも流せないのだろう?
それは、本当に……突然の出来事だった。
扉が開いた瞬間、いきなりいくつもの銃声が鳴り響いた。
いや、パーンなんて音じゃなくて、タタタターとか随分、間の抜けた音だった。
その弾道の先にいたのはHMX−13型セリオだった。
しかし、私の目にはセリオではなくて、そいつが綾香に見えた。
今にも陽気に「はーい」とか言ってきそうだが、それはもはや叶わないだろう。
浩之を殺したのは、その綾香だったから。
どうしてヒロが私を庇ったのかなんて、彼女は思いもしないことだろう。
綾香を愛するが故に、綾香と思い込んでいる私、長岡志保を助けてヒロは死んでいったのだ。
なんていう皮肉なんだろう。
愛するものが、愛するものを殺して、愛するものを助けるために、愛するものが死んでいったのだ。
「くくくっ……」
思わず笑ってしまった。愉快でしょうがない。ザマアミローって感じだった。
こんなにも私はヒロのことが好きなのに、彼は所詮、綾香しか見ていなかったのだ。
なんてことだ。道化もいいところだった。
私がつまんない意地なんて張らなかったら、ヒロは死んでいなかったのだ。
綾香の代用品。それでもよかった。ヒロがいてくれるのなら。それで……良かったのに。
「アハハ、ハハッハハハッ……アハハッハハハッハハハッハハッーーーーー!」
気がどうにかなりそうだった。いや、もう充分に可笑しくなっていた。
可笑しくて可笑しくて堪らなかった。
そうだ。死ぬべきだったのは私のほうだったのだ。
虚構でしか愛されない私ではなくて、そこにいる綾香の方が適していたのだ。
ヒロが生きてさえいたら、私は別に死んでも構わなかった。
――構わなかった!
「ヒロユキー!」
絶叫が部屋の中を越えて建物中に響き渡った。
0241雛山理緒@蓮華(3/6)
NGNGHMX−13型セリオは何のためにここまでやって来たのだろう。
私は長岡さんが泣いているのを見て、そう思わずには居られなかった。
今はセリオさんもその機能を停止している。機械である彼女にとってもよほどショックだったに違いない。
それはセリオさんにも感情があったことを意味していた。
でも、それが、どれほどのこと?
彼女が彼を殺したことは永遠≠ノ私の記憶に刻み込まれて消えはしない。
許せない。しかし怒りさえ湧いてこない。
そうだ。もう何をしても、どんなに叫んでも怒っても、泣いても……彼は還ってこない。
私はそれを知っていたのだろう。
理性で、私は何もかも丸め込んでいた。そして、感情は蛻の殻だった。
セリオさんに向かって、よたよたと歩いていく長岡さんを見ても、何もする気にはなれなかった。
手には、花瓶を持っている。
さっき生けたばかりの花はまだ瑞々しく透き通っている。
長岡さんは、それを振り上げて、セリオさんの頭を叩いていた。
ガラスが割れるような音が響くが、そんなものでは彼女は崩れたりはしない。
だけど、花瓶の水に濡れたのか、その機体は水浸しになって、しとしとと零れ落ちている。
その光景は、まるでセリオさんが涙を流しているみたいに見えた。
長岡さんは憤怒の表情で、彼女の頬をはたいていた。
でも硬い機械でできた彼女の頬は冷たくて、ただ無機質だった。
「返してよー!」
泣きながら長岡さんが叫んでいた。
「ヒロを返してよー!」
赤子のように泣きじゃくって嗚咽に苦しんでいた。
0242雛山理緒@蓮華(4/6)
NGNGもう二度と動かないだろうと思っていたセリオさんがほんの少しだけ動きを見せた。
長岡さんのお腹にぽっかりと穴が開いている。
「私のヒロを返してよ……」
でも長岡さんは、痛みも感じていないのか、ただそれを言い続けてセリオさんの襟首を掴んでいた。
それから、そんな動作を二分ほど繰り返して……事切れた。
地面にずるずると落ちていく長岡さんを見て、彼女は勝ち誇ったかのように見下していた。
『浩之はわたしのものよ』
そう告げているように見えて、私は驚愕した。
(……狂ってる!)
彼女は機械以上に冷たい人の心を持ってしまったのだ。
復讐の為ならいくらでも残虐になれる人の心。大切なものを喪失した後の空虚感。
何をとっても、彼女は人間のようであった。
「なにかあったんですか!?」
病室のドアが開かれて、冬弥さんが入ってきた。
その他にも、たくさんの人が次々と、この部屋に入ってきて、みんな一様に言葉を失った。
何をしても動かないセリオさんと、地面に横たわった二つの死体……。
そして、血塗れの私……。
誰も一言も喋れない、動けない中、ひとりの少女が凄然な光景の中を歩いていた。
それは、王者のように悠然としている。
「何があった?」
少女は私に向かって呼び掛ける。
「……ア…アッ……」
上手く言葉を発せない私に少女はピシッと頬をはたいた。
それで、ようやく正気に戻ったのか、私の瞳はやっとその少女を捉えることができた。
「……あ、あ、す……スフィーさん!」
少女の姿に安心したのか、ただ泣きつく。
スフィーさんの胸の中で慟哭する。
「ああああぁぁぁぁああああーーーーーーーーーーー!」
スフィーさんは、今度は何も言わないで、私を抱きとめてくれていた。
0243スフィー@蓮華(4/6)
NGNG智子のやつの出奔を耳にして、どうするべきか考え込んでいたら、いつの間にかこうなっていやがった。
一体なんなんだ……?
落ち着かせた理緒から聞いた話は荒唐無稽とも言える痴情のもつれだった。
だとして、どうして今なんだ? どうして今になって訪れる?
HMX−13型セリオ……俺の霊視には、その機体には綾香の影が映っている。
いや正確に言えばその残滓だった。
こいつは、もう生きる目的を失って事切れている。
霊ってやつは、この世に未練があって、想いだけで生きてるものだから当然だと言えた。
悪霊にならなかったのが、救い……不幸中の幸いってことか?
(はっ、話にもなんねー)
俺も可笑しくなって来ているのかもしれない。
だったら……いや、だからこそ、俺はこれ以上の無意味は許せない。
俺が智子のサポートをすれば、秋子を封じることは、容易……とは言わないが可能だろう。
しかし、その間はこの建物から結界が消えて、妖弧どもの暴れたい放題になる。
どちらが最適なのか答えは出なかったが、今はもう……。
「…………」
誰もいなくなった病室を俺は見ていた。
二人の屍を手厚く葬るように言ってはいたが、別にそんなこと言う必要はなかった。
あいつらなら言われなくても、そうするだろうから。
「さようなら、哀れな操り人形=iマリオネット)……」
セリオの方を見やって、俺はしばしの黙祷を捧げてから部屋のドアを閉じた。
静寂の訪れ……。
眠れる機械にせめていい夢を――
0244河島はるか@蓮華(6/6)
NGNGさっきまで普通に話していたのに、もう二度と会うことはない。
私はこれからどうしたらいいのか分からなかったけど、彼の想いに報いたいと思っていた。
長岡さんと二人でいた藤田さんは虚ろだったけど、とても幸せそうに見えた。
もしかしたら、彼は長岡さんのことを……。いや、それは私の憶測で考えていいことじゃなかった。
「…………」
でも、私の手はこんなにも温かい。
彼はすべてを見越して、私に力を託してくれたんじゃないかと思っていた。
こんな私がどこまで出来るかは分からないけど、やってみたい。
自分にしか出来ないことなら、尚更だった。
「スフィーさん」
私は呼びかけていた。
「すまねえ。今、忙しいんだ」
彼女の多忙はよく分かっているつもりだった。
でも、続ける。
「スフィーさんに頼みたいことがあるんです」
彼女がこれから為そうとしていることが何なのか私は知らない。
彼女の覚悟が何なのか分からない。
「うん?」
スフィーさんは仕方ないという風に私の方を見てきた。
私も手間を取らせるつもりはなかったので、意を決して口を動かした。
「保科さんの所まで、私をテレポートさせてください」
「…………あ?」
口をポカンと空けている彼女に私は微笑んで見せた。
これが最後の挨拶になると思うから、一生懸命に笑って見せた。
私の為すべきことが、そこ≠ノある。
0245名無しさんだよもん
NGNG0246名無しさんだよもん
NGNG0247名無しさんだよもん
NGNG0248名無しさんだよもん
NGNG0249名無しさんだよもん
NGNG0250名無しさんだよもん
NGNG0251名無しさんだよもん
NGNG0252名無しさんだよもん
NGNG0253勇み足の英雄(その1)
NGNG馬鹿馬鹿しい程にがたがたと揺れる。二、三度はたいてやったが、止まらない。
穏やかに微笑む、その女性。
眼差しは神々しく、しかし尊大さは無い。同じ視点で、奴は私を見ている。
あらゆる母親のイメージが、そこに帰結していた。
「なあ、秋子さんってのはアンタやな?」
言葉が耳朶を打った瞬間、自分が口を開いたのを知った。
気がついたら喋っていた。意識を超えた恐怖が、感覚を支配してしまっている。
「ええ、そうですよ」
恐怖する材料など無かったはずだ。
自分は、至高の力を手に入れたのだ。お師さまや、スフィー、あらゆる存在を下に見る存在となったはずなのだ。
傲慢では無い。自分でも想像すらできないほどの力が、幾層にも渡って眠っているのを感じる。
ナユタだのアソウギだのの単位が実感できないように、巨大すぎて把握できないのだ。
「私と、勝負してんか」
なのに、膝が笑った。
慈愛に満ちた聖母。全てが還る大地の母。混沌を統べる万物の母。
「構いませんよ……」
奴が、穏やかに微笑んだ。
「ただし、今は色々と取り込んでいますから……一瞬で終わってしまうかもしれません」
その瞬間。
私は、蒼い光を視た。巨大な力が、半月の形で以て私を切り刻もうとしている。
その軌道から大きく身をずらし、慌てて奴の方へ向き直る。
秋子が笑った。
0254勇み足の英雄(その2)
NGNG怖い。
長い間、向かい合っていたくない。早く終わらせてしまいたい。
炎が、秋子を中心に大きく弾けた。それは球状の巨大な膜へと変わり、再び中心へと殺到する。
秋子の服が、一瞬にして燃え尽きた。赤の狂気が激しく踊り、万物を始原のゼロへと帰す。
そうだ。燃え尽きてしまえ。終わってくれ。
『これは……』
炎が、突然宙へ向かって逆巻いた。
私は何もしていない。奴がやったのだ。
『貴女は……何者ですか?』
その声を引き金に。
炎が、止んだ。
秋子は笑っている。
0255勇み足の英雄(その3)
NGNG瞬きひとつ程度の間に、辺りの景色が塗り変わってしまった。
「ここは……雨月山と言ってね。私が昔、ただの一度だけ遅れをとった場所です」
秋子は、懐かしそうに周囲を見回した。
「これは私がこしらえた、まがい物ですけど。なかなか、良く出来てるでしょう?
良く出来ているどころではない。完全に、一つの景色として完成している。
「色んな人と、戦いました……安宅さん、川澄さん、柳也さん、鬼の一族達……」
灰色の雲が、急速に空に満ち始めた。影が闇に呑まれる。
「でもね、負けたままでは縁起が悪いでしょう? ですから、貴女で……」
秋子が、そっと宙に浮いた。
まばゆい光が走った。雷鳴が轟き、大地を震撼させる。
「この私の汚点を、拭いさらせて頂きます」
「じょ……」
雷が、秋子の遙か彼方に落ちた。その瞬間、私の中で覚悟が弾けた。
「上等や、コラぁッ!」
炎を纏い、私は勢い良く地を蹴った。
0256勇み足の英雄(その4)
NGNG全ての力を注ぎ込み、私は拳の連打を放った。とにかく、奴の攻撃を抑えなければ。
秋子は、そのか細い腕でその全てを受け止める。時折顔が歪むところを見ると、決してノーダメージでは無い。
「ドララララララララララララッ!」
私は、どんどん連打の速度を上げた。奴の身体には一度もヒットしないが、確実にダメージにはなっている。
「くっ」
秋子が呻いた。時折空間を切り裂いての攻撃を放とうとしては来るが、全て私が封じていた。
「うおおおおおおおおおッ!」
私は、特大の力を込めた一撃を、奴に叩き込んだ。
「あうっ!?」
ガードが弾け、秋子は勢い良く吹っ飛んだ。その身体が、爆音と共に地に穴を穿つ。
「そのまま、くたばりさらせッ!」
私は、両手で超高温の火の玉を生み出した。叩きつけるように、それを秋子に投げつける。
「はっ!」
秋子が、火の玉に向かって手をかざした。火の玉は一瞬震えた後、勢い良く跳ね返ってきた。
「うおおっ!?」
何とか身をかわしたが、秋子がすぐ眼前に迫っていた。
「覚悟なさい」
先刻までの余裕の眼差しではない。
次々と、手刀が繰り出される。私は払ったりかわしたりして受け流すのが精一杯だった。
余裕を無くした所に、不可視の刃での攻撃が加わる。私は耐えきれず、ダメージ覚悟で爆球を生んだ。
両者の間で凄まじい爆発が起き、それぞれ逆方向へと吹き飛ぶ。奴はそれほど応えていないようだが、私はすぐに立ち上がれなかった。
「驚きました……まさか、これほどとは。すでに、翼人や九尾などとは別次元です」
秋子が、少しだけ嬉しそうに笑う。
「そりゃ、光栄やな……」
脇腹を押さえながら、私は何とか立ち上がった。
0257名無しさんだもんよ
NGNG0258名無しさんだもんよ
NGNG0259名無しさんだもんよ
NGNG0260名無しさんだもんよ
NGNG0261名無しさんだもんよ
NGNG0262名無しさんだもんよ
NGNG0263名無しさんだもんよ
NGNG0264名無しさんだもんよ
NGNG0265名無しさんだもんよ
NGNG0266名無しさんだもんよ
NGNG0268月宮あゆ@夢の少女(1/10)
NGNG「あゆちゃんっていうんだ?」
「うん」
夢を見ている……。
「わたしのことはなゆちゃんでいいよ」
「……なゆちゃん?」
「ええい。ややこしいから止めてくれ!」
それは夢……。
「ボクは名雪さんって呼ばせて貰うことにするよ」
楽しかった思い出で……。
「でも、なんだか他人行儀みたいで残念だよ」
「まだ会ったばかりじゃないか」
そして、過去の出来事……。
「そうなんだけど、どうしてか懐かしい感じがするんだよ……」
「……え?」
反芻される……。
0269月宮あゆ@夢の少女(2/10)
NGNG「相沢祐一、知っているでしょう?」
これは別の夢……。
「ええ。何かと有名ですし」
「率直に言うわ。彼のこと秋子に預かって欲しいのよ」
違う人の記憶……。
「……なんのためにかしら? 彼のこと――私は知っているって言ったのよ」
「悲しい夢を終わらせる為によ。天野美汐は私のところにいる。この意味の分からない貴女ではないでしょう?」
ひとりは秋子さん……。
「今ある負の元凶ですか。九尾復活も近いということですね」
「いいえ。今度は復活どころか覚醒するのよ。千年の因縁が解放されるわ」
「……それでも、私は興味がないわよ、由紀子」
もうひとりは高野の法術士……。
「そこに永遠が降り立つとしてもかしら?」
「……知っていたの? いえ、ようやく気づいたのね貴方達も……」
ふたりとも真剣に言葉を交わしている……。
「相沢祐一のもとに九尾は必ず現れる。秋子にはただそれを受け入れて欲しいだけ」
「……出会いは避けられないけれど、悲劇は避けられるかもしれない、そういうこと?」
女の人は小さく頷いていた。
0270月宮あゆ@夢の少女(3/10)
NGNG大海に放り出されたように見えるものは青ばかりだった。
ボクは何かを探していた。
とても大切で無くしてはならないものだったはずなのに、ボクはそれが何なのか思い出せない。
プレゼント? 誰からから貰った贈り物なの? それは天使の……。
また、夢がカタチを変える。
0271月宮あゆ@夢の少女(4/10)
NGNGぐしゅぐしゅと涙を浮かべている。
霞んだ視界は出来の悪い映像を見てるかのようにいびつに歪んでいた。
「お母さん……」
その子は何度もうわ言のように『お母さん』と繰り返していた。
白いリボン。幼い顔には涙の跡が痛々しく残っている。鼻の頭も少し赤くなっていた。
「えーとだな……」
そこに女の子と同じ年くらいの男の子がいた。
男の子は困ったように言葉を捜している。
「とりあえず、きみの名前は?」
「……えぐっ……えぐっ……」
男の子の問いを返せずに女の子はまだ泣いていた。
深い悲しみに女の子は包まれている。
「えぐっえぐっ? へんな名前だな……」
「うぐぅ、違うもん……」
ゴシゴシと涙目を擦って女の子は口を動かそうとした。
そして……。
「ボクの名前は――」
0272月宮あゆ@夢の少女(5/10)
NGNG秋子さんは小さな声でボクの名前を繰り返していた。
祐一君も隣で不思議そうにしている。
「あの……ボクの顔に何かついてるかな?」
「たいやきの餡子がついてるぞ」
「え? 本当!?」
「もちろん嘘だ」
「うぐぅ、祐一君の意地悪……」
気まずくなった雰囲気を緩和するようにボクらは他愛ない会話をしていた。
それでも、秋子さんの様子は変わらなかった。
「あゆちゃん……」
「はい」
呼ぶと言うよりは口から漏れでたように秋子さんが言う。
暫くの間、秋子さんとボクは見詰め合うことになってしまった。
なんだか気恥ずかしい……。
「いいえ、ごめんなさい。やっぱり私の気のせいですね」
どこか遠くを見るように秋子さんは言った。
夢は巡りくる――
0273月宮あゆ@夢の少女(6/10)
NGNG意識が遠のいていく。
ボクはどうして今ごろになってこんな夢を見ているんだろう。
「あゆちゃんとは、家族になれると思っているから」
「秋子さん、ボクは……」
もうずっと前の意識の欠片。
あの日から閉ざされていた思い出たち。
「行くところが無いのなら、あゆちゃんが良かったらだけど……一緒に住まない?」
「え? でも……」
もっともっと遠くにあった昔の記憶が開かれていく。
秋子さんに抱き締められると、とても懐かしい。
「もう、どこにも行かないで、あゆ……」
「……秋子さん、泣いてるの?」
「……あゆ、ごめんね……ごめんなさいね……」
探していたものはなんだったのだろう。
追いかけていたものはなんだったのだろう。
答えは未だ出ない……。
0274月宮あゆ@夢の少女(7/10)
NGNGまた小さな女の子が出てくる夢だった。
「ずっとずっと昔から探しているんだよ」
「あゆ……」
しかし、それはボク自身だった。
今のボクにはない記憶を女の子は持っている。
「本当のお母さんはもう居ないから、ボクのお母さんはあの人だけなんだ」
「……もう居ないって、どういうことだ?」
どういうことなのか、ボクにも分からなかった。
知りたい……。
「女の子は夢を見るんだよ」
「え?」
「……祐一君は、翼人って知ってる?」
女の子は知っていた。
ボクはそれを思い出してしまった。
「ボクは滅んでいった星の記憶を受け継いでいるんだよ」
そこには何も生まれなかった。
0275月宮あゆ@夢の少女(8/10)
NGNG「そうね……認めるわ」
辿ることは夢の終わりを意味している。
そこに生まれるものを温かく包み込むために存在したい。
「つまりは私たちだけでも負に飲み込まれないようにしないといけないのよ」
「力が必要なわけね? 残念だけど私の力の大半は名雪の生命維持に使ってるから期待はしないでよ」
「分かっているわ。その為に秘術と秘薬を用いるの」
「……続けてくれる?」
「ひとつは『相互供給型連動式秘術<比翼>』を使わせてもらう」
「互いの霊力の置き換えですか? 確かにそれなら力≠相乗の効果で得られるわね」
ボクは形なんて無い夢の中を漂っている。
悲しい夢も、辛い夢も、楽しい夢も、嬉しい夢でも、そこではひと括りの存在だった。
「それと『輪廻転生回転丹<枝伝>』を貴女に差し上げるわ」
「……これは?」
「反魂の術なんていう夢追い人の作り出した生命維持の方法よ。
もちろん完全ではないけど、あの子にはそれなりに効くんじゃない?」
そして、ボクの夢は……。
「いい? <比翼>は互いの霊力を高めあう術よ。どちらかが欠ければその効力は失われる」
「私なら大丈夫よ。それより問題は貴女の方じゃない?」
七年前のように……。
「それも考慮のうえよ。私の霊力の源は<月の霊法>よ。もし私が存在が終わったとしても受け継ぐものが、
<月の霊法>の本当の意味を知ってくれれば、同じ効果が得られるわ」
「用意周到なことね。邪術士の私に何を期待してるのかしら?」
今、消える……。
「秋子には悪いと思っているわ。でも事は急を要するのよ。あの子たちのために私が終わらない夢≠終わらせたい」
0276月宮あゆ@夢の少女(9/10)
NGNG夢を見ている……。
毎日見る夢。
終わりの無い夢。
赤い雪。
流れる夕焼け。
赤く染まった世界。
誰かの泣き声。
子供の泣き声。
夕焼け空を覆うように、小さな子供が泣いていた。
どうすることもできずに、ただ夕焼けに染まるその子の顔を見ていることしかできなかった。
だから、せめて……流れる涙を拭いたかった。
だけど、手は動かなくて……頬を伝う涙は雪に吸い込まれて……見ていることしかできなくて……。
悔しくて……悲しくて……。
大丈夫だから……。
だから、泣かないで……。
言葉にならない声。
届かない声。
「約束だから……」
それは、誰の言葉だっただろう。
夢が、別の色に染まっていく。
「うん、約束だよ」
ただ、ボクは約束を果たしたかっただけだから。
0277月宮あゆ@夢の少女(10/10)
NGNG雪が降り積もっている。
ボクの体は白い雪に埋もれようとしている。
でも、周囲は赤かくなっている。
頭から血が流れているみたいだから。
指先にすら力が入らない。
視界は闇に包まれていた。
何も見えていないのと一緒だった。
誰かがにじり寄ってくる。
冷たい空気。
頭痛のような痛みと痺れたような感覚。
また、意識が遠くなる。
そうか、またこれも……。
夢の続きなんだ。
「あゆちゃん、死んで」
悪夢は終わらない。
0278名無しさんだよもん
NGNG0279名無しさんだよもん
NGNG0280名無しさんだよもん
NGNG0281名無しさんだよもん
NGNG0282名無しさんだよもん
NGNG0283名無しさんだよもん
NGNG0284名無しさんだよもん
NGNG0285名無しさんだよもん
NGNG0286名無しさんだよもん
NGNG0287名無しさんだよもん
NGNG0288名無しさんだよもん
NGNGその割に一人で書いてるようにも見える…
0289長岡志保・夢
NGNG闇の中に、ぽっかりと浮かんでいる。
上もない。下もない。ただ、そこにある。寒いのか、暑いのか、それすらもわからない。
ただ、自分が死んだ、ということだけは、はっきりとわかっている。
死。
死ぬということ。それは、こんなにも虚ろな事だったのか。
ただ、あたしの手の中にあるものだけが、「あたし」を維持しつづける。
藤田浩之。
プラス因子を持つ、創世の力の片割れ。その心と力が、長岡志保をこの世界に繋ぎ止める。
そうでなければ、何の力も持たないあたしが、幽体とはいえ、以前の形を維持できるわけない。
なんで?何でよ、ヒロ?
あたしは綾香じゃない。あんたの求めてる女じゃない。あたしを繋ぎ止めている意味なんて、あんたにはない。
……無い筈なのに。
何で、あんたはそんなに優しいの?
どうして、そんなに暖かくあたしを守ってくれるの?
(彼は知っているからです)
声が聞こえる。
(藤田浩之の力は、もう覚醒するでしょう)
知らない、誰かの声が。
(あなたが、最後の鍵です。世界を守るための)
あたしが?…何の力もない、ヒロ一人守れない、このあたしが鍵?
(あなたは繋ぎ止めました。消えそうになった、「藤田浩之という器」の、心を。あなたは守りました。壊れ、失われそうになった、彼の拠り所を)
闇の中に浮かぶ人影が、あたしと、ヒロの欠片を照らす。穏やかな顔。優しげな、包容力を持った女性。
しかし、あたしはその人を知らなかった。
最強と言われる、邪術士の名を。
その悲しみが生み出した、もう一人の彼女の事を。
0290長岡志保・夢2
NGNG(さあ、目覚めなさい、藤田浩之。秋子の影でしかない私では
あなたをよみがえらせることはできません。あなたが自分の力で目覚めるのです)
ヒロが……目を覚ます。
それに引きずられるようにして、あたしも夢から覚めていく。
(長岡志保さん……本当に彼を愛しているのなら……忘れないで)
彼女の声が、遠ざかっていく。
(愛というものは、人を自分の思い通りにすることではない。
……相手を思いやってこその、愛だということを)
彼女の頬を、涙が伝う。
(私はもう間違ってしまったけれど……貴女なら…きっとできるから)
0291藤田浩之・覚醒
NGNG今だかつてないほど、頭が冴え渡っている。土くれの中から、俺は身を起こした。
志保の体を腕に抱く。その目がうっすらと開き、ヒロ…とつぶやく。
もう大丈夫だ、志保。もう、俺はどこにも行かない。
「救世主は、三度土からよみがえる、っていうけどな」
からかうような声が聞こえてきた。振り向いたその先には、見覚えのある顔。
「スフィー……だな?」
「まさか、とは思った。だが、あんたは確かに以前一度、復活している」
声の調子は相変わらずだが、その瞳は少しも笑っていない。
「どうやら、力を完全に支配しているみたいだな。これから、どうするつもりだ」
「……別に。あかり、綾香、セリオ、みんな…もうこれ以上、俺が原因で、失いたくはないだけだ」
そういって、腕の中の志保に、優しげな視線を送る。
「だから、俺はこいつと、俺達でできることをやる。みんなには、黙っていてくれ。
あんた達の手は借りない」
「……まぁ、俺はかまわねぇがな」
スフィーはそういって、じろじろと俺に視線を送る。
「素っ裸で再生したみたいだが、服もいらねぇみたいだな」
「すいません、ください、スフィーさん」
……俺は、思わず土下座してしまった。
0292名無しさんだよもん
NGNG0293名無しさんだよもん
NGNG0294名無しさんだよもん
NGNG0295名無しさんだよもん
NGNG0296保科智子@炎の誓い(1/4)
NGNG水瀬秋子……これが人類の有史以来から最強を謳われる邪術士の力だった。
私程度の能力者が戦いを挑むのは、無謀だったということか。
いや、答えは初めからそこ≠ノあったのかも知れない。
「運が悪かったですね」
「…………」
秋子は頬に手を当てて残念そうに言った。
嘲笑だろうか。それとも溜息なのだろうか。意図は分からない。
しかし、確かなことは、命を懸けないで勝ち負けできる相手ではなかった。
「ええで。受けてたったる!」
覚悟を決めるのは、ひと呼吸のうちで充分だった。
その刹那の間で、幾人もの友と呼んだ人たちの顔が脳裏を横切っていった。
(師匠、禁術を使わせてもらいます)
故・長瀬源之助の姿を思い浮かべて今誓いを果たす。
本当に護りたいものがあるのなら、力というものはそのために存在する。
<魂の揺らめき>フレイム=ソウル。
己の魂をその対価に、唯一無二の炎を得られる禁断の秘術。
「私の最後の炎や……これでアンタの防御壁を破れたら私の勝ちで、そうやなかったらアンタの勝ちや、どうやシンプルでええやろ?」
「そう? 両親に教わらなかったかしら? 火遊びはいけませんよ、って」
絶対の自信。揺るぐことのない眼差し。水瀬秋子……。
相手にとって不足はない。
「何とでも言うがええ。そやけど最後には――私が勝つ!」
「……あなたも同じなんですね」
今まで静かだった邪術士の気≠ェ高まっていく。
「……いいでしょう。受けてたちます」
邪術士が気を解放させて、こちらを見つめた。
0297保科智子@炎の誓い(2/4)
NGNG私の持てるものすべてを利き腕に集めていく。体はコロナのように燃え滾っていた。
炎が爆ぜる。元始の炎。源炎。この世の終わりにすべての邪悪を焼き尽くすというメキド・フレイム。
今の私なら使いこなせる。すべてを無くしたとしても、この刹那のために――
「長瀬流炎殺拳最終奥義<メギド・ブレイク>!」
右腕が真っ赤に燃えていた。大気を漂う霊気。大地に宿る龍気。空間に彷徨う魔気。
そして、己の魂の力……すべてが炎に変換された極限の力を、邪術士・水瀬秋子に向かって放つ。
だが――私は目を見張った。水瀬秋子が二人いる?
「幻影ですよ。後十秒ほどで消えますけど、戦いに置いては充分すぎる時間でしょう?」
単純な答えだった。単なる時間稼ぎなのだろう。しかし私には迷っている暇なんてなかった。
こうしている間にも、ものすごい勢いで私の生命は尽きているのだ。
見分ける方法はなかった。しかし、水瀬秋子は致命的な過ちを犯している。
この勝負――貰った!
「喰らえやあああぁぁぁぁああああああーーーーーーー!」
炎が咆哮した。莫大なエネルギーが荒れ狂う。
そう。これならふたりまとめて処理するに充分な威力だった。
私の力を甘く見た――敗因はまさにそれ。
「……終わったんか?」
薄れていく爆炎の中で私は目を凝らしていた。
手応えはあった。アレを喰らって無傷ならもう……手段は何もない。
そして、私の目の前に映ったものは……。
0298保科智子@炎の誓い(3/4)
NGNG素頓狂な声を上げたのは結果があまりにも自分本位なものだったからだ。
煙が消えた後には、煤こけた死体がひとつあっただけだった。
自分の勝利を確信できなくて、それの近くに私は歩み寄っていく。
「……勝ったのか?」
霧が晴れるように雨月山だった風景は物の怪の丘へと変わっていた。
そこにある、亡骸だけを残して……。
「……やった。私は勝ったんやあの水瀬秋子に!」
私は信じられない面持ちで、勝利の味に陶酔していた。
「誰もが挑んで、誰もが敗北していった水瀬秋子に、私は勝てたんや!」
格闘の世界に闘志を滾らせる者なら、誰もが一度は夢見た最強の称号を私は手に入れたことになる。
欺瞞だろうか? いや何でもよかった。
「そう何でもええ。これでみんな報われるんや! やったで! 私はみんなの仇をとったんや!」
歓喜に震えた。そこにあったはずの亡骸が消えていることにも気づかないほど有頂天だった。
それほどまでに私は浮かれていたのだ。
「保科さん危ない!」
「な――!?」
その声は河島はるかの声だった。
どうしてここにいるのかというよりも早く体は反応していた。
無理に体を跳ねさせる。首筋を突く徒手に逆らうように仰け反って。
「あら? 外れちゃいましたね」
そこには何食わぬ顔で佇む水瀬秋子の姿があった。
0299保科智子@炎の誓い(4/4)
NGNG静かに微笑んで秋子は言った。
「誰も幻影はひとつだとは言っていません。それだけのことです」
「なんやて? それやったら、あの手応えは何やったんや?」
苦笑だろう間違いなく。水瀬秋子は笑っていた。
「強いですね保科さん。力だけなら本当、九尾や翼人とさほど変わらないかも知れませんね。
あれをまともに喰らっていたら、私も危ないところでした。でもですね、戦いの年季が違うんですよ」
「あの手応えはなんやってんって訊いとんのや!?」
「……サービスですよ」
「……はあ?」
「せっかく勝利の余韻を楽しんでもらっているうちにとどめを刺そうとしていたのに、とんだ邪魔者が現れたものです」
「お前は――どこまで人の心を弄ぶんや!」
「あらあら。サービスのつもりだったんですけど、お気に召しませんでしたか?」
震えた。さっきとは別の意味で体が震えた。純粋な怒り。それとも自分の傲慢さだったろうか?
力はともかく戦いの駆け引きに置いて、私は遠く及ばなかったのだ。
千年の歳月。私の人生は十七年。それでも劣っていたと思ったことは一度たりともなかったのに……。
「もう立っているのも辛いんでしょう保科さん? 分かっているわ。そちらの方と一緒に消えてもらいますね」
私と、そしてはるかを見つめて、秋子は前に足を進めてきた。
「はるか、逃げて――」
「私は足手まとい?」
素早く私の言葉を遮って、はるかは言い切っていた。
途端に、どうしてはるかがここに来ているのか疑問をもつが、それより――
「はるか、あんた……それ」
「私は一人じゃ何も出来ない――だから、保科さんの力を貸して欲しい。ふたり一緒に――」
水瀬秋子を討とう、とはるかは言ってくれた。
「そうやったな」
私は一人じゃなかった。たくさんの仲間がいてくれる。
そやから今まで私は戦ってこれて、今を生きていることが出来たんやったな。
「どうして忘れてたんやろう……」
支えあうこと。それはきっと邪術士にはない私たちの聖なる力。
もう一度、立ち上がる勇気だった。
0300名無しさんだよもん
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