上記より引用>>317

これだけは精いっぱいやったと、今でも思えるのが、職場で散見
されていた暴力の根絶だ。懲戒委員会で通府局長が判断を下す際
の実務が秘書課長の重要な役割の一つで、私も暴力絡みの案件の
処理には特に精力を注いだ。

例えば管轄の電報局のある副課長が、職員が電報のキーを打つ際
の誤びゅう率をグラフに付けていた時のことだ。五人の職員が「
労働強化だ」と部屋に乱入してグラフを破り捨て、危険を感じて
逃げた副課長の脇腹を殴る事件が起きた。

処分は不可避と主張する私に対し、八年先輩の電報局長をはじめ
幹部はみな「わび状を書かせるから、処分はせずに済まそう」と
反対した。

しかし、過去をさかのぼって調べてみると、かつて穏便に済ませ
てしまったが故に、一部の職員に、職場を牛耳られている事実も
わかった。電報局長は、「処分すれば、それを理由に騒ぎが拡大
するだけ」と警告したが、「その時は、また処分すればいい」と
反論した。結局、懲戒権を持つ通信局長の決定で昇給延伸の懲戒
処分を下した。

案の定、五人はその後も職場を放棄して騒ぎを繰り返したため、
最終的に二人を停職処分とした。けっして、後味のいいものでは
なかったが、これでようやく職場の秩序が回復した。殴られた副
課長の奥さんからは、後日、礼状が届いた。私の判断は間違って
いなかったと確信している。