バナッハ・タルスキーの定理の証明で最初に驚いたのは、補題で
「1個の球を有限個に分割して、組み合わせなおすと、分割する前の球と同じ
半径の球を2個つくることができる。」
を示しているところでしょうか。ここで体積が変化しています。
 そして、そのキモは意外と簡単で、次のような群がキモだと私は思っています。
まず、a、a'、b、b'の4つの文字の有限文字列全体の集合に空な文字列を加えて、
さらにaa'、a'a、bb'、b'bなる並びはすべて取り去るというルールを決めます。
するとこのルールの下での有限文字列たちは群をなします。そのときの演算は、
2組の文字列に対して、それを単に1列に並べるという操作です。
その演算の計算例は、演算記号を*として書くと
  aba'*ab'a=aba'ab'a=abb'a=aa
です。この群をWとして、この群を次のように分割します。
  W=W(a)+W(a')+W(b)+W(b')+e
ここでW(x)は、文字xで始まる文字列(つまり左端が文字xとなる文字列)全体
の集合で、eは空な文字列のみからなる集合です。また記号+は単に
集合の和集合の意味です。記号∪を使わなかったのは、お互いに共通部分の
ない集合同士の和集合であることを強調したかったからです。
 さてW(a')の要素に左からaを作用させたもの全体の集合をaW(a')とかくと
  aW(a')=W(a')+W(b)+W(b')+e
となるので、なんと
  W=W(a)+aW(a')
同様に
  W=W(b)+bW(b')
となるのです。つまり1つのWから2つのWが作られてしまうのです。
 あとは、この群Wを球に作用させ、その軌道(orbit)を考えることで
「1つのWから2つのWを作る」話を「1つの球かb2つの球を作る」話に
翻訳します。選択公理は、このあたりで使用します。

なんとなく、自然数を奇数と偶数に分割するイメージのような気も...
ちなみに上記のWに同型な群はSO(1)、SO(2)からは取り出せないそうです。
n≧3のSO(n)からは取り出せるそうです。