葉鍵聖戦 3rd Period
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0001名無しさんだよもん
NGNG葉鍵キャラがオリジナル設定で大暴れしまくりな日記形式のリレー小説だゴルァ(゚д゚)
書き手も読み手もルール守ってマターリ逝こうぜゴルァ(゚д゚)
1 基本的にsageでお願い致します。
(ただし、dat逝きを防ぐためにageても構いません。目安はスレッド順位が300位以下になった時です)
2 どんな人間がどのキャラを書くのも構いませんが、それまでの伏線は重視する方向でお願い致します。
3 あまりに立て続けのカキコは自粛しましょう。
4 これはあくまでの2chのスレッドです。
当然書き手に否定的な意見等もあるかもしれませんが、いちいち反応せずに作品で結果を見せましょう。
5 他の書き手が納得出来ない展開はご遠慮下さい。
6 新規参入者は、過去ログを熟読して下さい。
7 1つの書き込みをした後には必ず2回ほど回して下さいますようお願い致します。
なお、連続で書き込む場合は、書き込みが終了した後に数回回して下さい。
では、貴方も葉鍵な聖戦の世界へ……
なお、過去ログ等は>>2にございます。
0301名無しさんだよもん
NGNG0302名無しさんだよもん
NGNG0303名無しさんだよもん
NGNG0304名無しさんだよもん
NGNG0307名無しさんだよもん
NGNG0308杜若きよみ −検証(1/6)−
NGNG桃色の髪の少女は目の前の焼け跡を目にしてぼそりとつぶやいた。
その顔つきからして、どうやら何かしらの確信を得たようだといった感じだった。
6月1日――高野山金剛峰寺にて――
襲撃事件から5ヶ月近くが経過したこともあり、主な寺院の施設等は大方再建されて
いた。ただ、完全に復興したというわけではなく、一部は襲撃がなされたままの状態の
所もあり、当時の傷痕がなまなましく残っていた。
そして――何より、大僧正の深山雪見を筆頭として主な法術僧らが不在のままである
というのが、この寺院が普段の状態ではないというなによりの証だった。
今、私と桃色の髪の少女――なつきは、高野の中でも特に被害のひどかった部分に立
っていた。そこは、かつては台所にあたる部分だったとの事だったが、それを示す跡す
ら残っていなかった。辛うじて、地下へ通じる階段があったのが、残っていたぐらいだ。
なつきは崩れかかった、その階段を慎重に下りていく。
私もそれに付いていくと、目の前には大きな金属製の扉につきあたった。
それは銀行の金庫などに使われている扉と似ていた。見かけと同様に頑丈にできてい
たらしく、強烈な爆発にもかかわらず、歪みすら見られない。
その扉の横には数種類の装置がついていたが、それが何なのかは今一つ見当がつかない。
「……7231221243448532……」
なつきは最初、腕時計をちらりと見た後に、適当な数字をつぶやきながら、装置にあ
る数字の記された釦を押したりしていた。すると、がちゃりという音がした。
0309杜若きよみ −検証(2/6)−
NGNGなつきはノブに手を掛けると、ゆっくりと扉を引っ張り出した。
ギギギ……と重苦しい金属音を立てながら、その扉はゆっくりと開く。
扉の先には、さらに地中深くへと突き進む階段が伸びているのが見えた。
ただ、照明が無いので、奥深くまではまったく見えない。階段は石造りで、どの段に
もうっすらと埃が積もっていた。長い間、誰も立ち入ってないことがうかがえる。
――いったい、何なの? この施設は?
私がそう思っていると、なつきはすぐに扉を閉めてしまった。
え……? 奥へ進むのじゃないの?
戸惑う私を尻目になつきはその場を立ち去ろうとした。彼女は一体何を考えているの?
「中には入らないの?」
「入る必要はないよ。ただ『誰かが中に入った痕跡があった』か否かを確かめられたら
それで十分だから」
なつきはそう言いながら、崩れた階段を這い上がって地上に出た。私も今ひとつわけ
のわからぬまま、その後に続く。
目の前には青空が広がっていた。その下には、立て直されて間もない寺院があり、
そこを訪れる参拝者でごったがえしている。表向きは復興したように見せかけているのだ。
「しかし……」
「しかし?」
「……やっぱ太平洋戦争の時点のまま頭が立ち腐っとるみたいやのう……」
なつきはさながら独り言を言うかのように、呟きだした。
0310杜若きよみ −検証(3/6)−
NGNG高野山から橋本へ向かう普通列車の中でなつきから聞いたことをまとめておく。
どうもあの地下室、元は旧陸軍が戦時中に大本営として築いたとの事だった。
それをなつきがあんな核シェルター並みの格納庫に改造してしまったのである。
入口に有った数字錠も10分が経過する毎に、開錠番号が変化するといった代物だという。
(なんでも、番号の進数を変化させてしまうとの事で、ちなみになつきが先程開けた時は
丁度10進数だったという。だから開錠にかかる前に時刻を確認していたのだ)
しかし、そんな頑丈な格納庫に収納していた物についてはなつきは語ろうとしなかった。
彼女曰く、「少なくとも重要な書物や秘蔵の武器はあそこには収納していなかった」と
の事。ただ、開錠番号と、『格納庫を作った当時は高野は食糧難に陥っていたが、造った
おかげで解消された』という事情から、中に収納されていたのは何かというのは、私にも
すぐに分かる事が出来るという。
あと、なつきは一冊の古ぼけた手記を見せてくれた。それは旧陸軍の兵器開発部門に所
属していた将校のもので、パラパラと頁を繰ると、当時の状況が克明に記されていた。
なんでも、この部門は秘密裏に様々な兵器を研究していた。
そう……特殊部隊の『誰彼』に所属する強化兵の開発にこの部門も関わっていたのだ。
その文字を見るなり、私はなんとなく妙な気分に陥った。
とにかく頁をめくった。
すると、途中で気になる記述を見つけた。
0311杜若きよみ −検証(4/6)−
NGNG漸ク、………ヲ入手シタリ。
此ヲ使ヘバ、戦局ハ逆転スルモノト思ハレ。大日本帝國ノ勝利ハ確実ナリ。
只、上官ノ命令ニ依リ、北海道ハ怪ノ丘ノ大本営ニ移動セリ。
和歌山港ヨリ伊都ノ大本営ニ一旦運ビシ後、ソコカラ軍用車伍拾台、人員凡ソ八百名
ニテ奈良マデ移動サセタ後、軍用列車ニテ輸送セリ』
何を運んだのかは、字が霞んでいて分からなかった。だが、何かとてつもない兵器を
運んでいたという事はこの文面から読み取る事が出来る。
そして……それが何であるのかという事も。
列車はいつのまにか終点の橋本駅に到着していた。ここで、難波方面行きの急行列車
に乗るものだと思いきや、なつきは奈良方面行きの普通列車に乗り込んでいた。
「一体、どこに行くつもりなの?」
「今からちょっと吉野までね」
「吉野ですって? 一体、何の関係があってそんなところまで……」
私は彼女の意図がさっぱりわからなかった。
例の格納庫ではちょっと見ただけですぐに立ち去ってしまったし、今度も一体何の目的
で行くのか、不可解もいいところだった。
とにかく、疑問に思いつつも彼女に付いていくことにした。
0312杜若きよみ −検証(5/6)−
NGNGかつては南北に朝廷が分かれた時に、南の朝廷が置かれたこともあるこの地は、
今この時も観光地としてにぎわっている。
「ほら、さっき電話で話してくれたじゃない。その事に関してちょい資料を漁りにね」
なつきはこの場で漸く疑問に答えたけど、その当てがこの地にあるとでもいうの?
私が横にいるかつて高野の高位僧だった女に話した事実――
――犬飼が高野を襲撃しようと画策していたこと。
――そして、犬飼が御堂にそのことを実行させたこと。
でも、それは先程高野で検証を――それもロクにやらなかった筈。
むしろ、吉野くんだりにその手がかりなんかあるわけないじゃない……。
やっぱり、彼女の行動はまったく不可解だった。
だが、それが何を示していたのか、その答えが示されるときはすぐにやってきた。
なつきはふとこちらに顔を向けた。
そこにあるのは幼げな少女特有の無邪気そうな微笑。
――しかし、その目は笑っていなかった。
「そうそう、言っておくけど、高野には仙命樹みたいな気の利いたものはないよ」
やっぱり、彼女にはお見通しだったのだ。
裏社会で名の通った法術士であり、昔の知人である彼女が日本に来るという情報を聞
きつけて、わざわざ拘置所から脱走してまで彼女に会おうとした真の理由――。
0313杜若きよみ −検証(6/6)−
NGNG「う〜ん……実を言うとね、きよみさんが電話を掛けてきたときかな。
だって、拘留中のはずのきよみさんがわざわざなつきに電話を掛けてくるなんておかしいって思ってたもん。拘留された理由から考えて、これだと思ってたんだけどね」
「それを知ってて……貴女は一体何を考えてるの?」
「いろいろ聞きたい事があったもの。
それより、ちょっとそこでちょっと休まない?」
目の前にはお土産屋や茶店が軒を連ねていた。なつきはその中の一軒の茶店を指差す。
私自身も少々歩き疲れていたという事もあって、それに同意した。
「……とにかく、犬飼が例の話を持ち出してきたんだね」
なつきは注文したお汁粉がやってくるや否や、手を付け出した。
「ええ」
私はそれに頷いた。
本当のことだった。
そして、私は犬飼の持ち出してきた話に乗ったのだ。
ただ、犬飼や御堂らに全面協力をしたわけではなかった。
仙命樹を手に入れたかったのは完全体になりたかったからではなかった。
――使われる前にこの世から仙命樹を消し去りたかったからなのだ――
――強化兵らを狂わせる元になった元凶になった――
そして、蝉丸さんまでも彼の地に駆り出させた原因になったあの物体を――
犬飼の企みが露見された時、警察は即座に動き出した。
一緒にいた私もともに逮捕された。
ただ、気がかりだったのだ――警察から逃れつづけている御堂の存在が。
どうにかして、あの人物をとめる必要があった。
だから私は拘置所を脱走してまで、あの人物より先に仙命樹を手に入れようと思った。
その第一歩として、かつて裏社会の場で知り合ったなつきにこの話を持ちかけて協力
してもらうつもりだったのだが――。
0314名無しさんだよもん
NGNG0315名無しさんだよもん
NGNG0316名無しさんだよもん
NGNG0317名無しさんだよもん
NGNG0318名無しさんだよもん
NGNG0319名無しさんだよもん
NGNG0322スフィー・兆し
NGNG微かではあるが、それは確かに、俺たちにとっての『希望』だった。
復活した藤田は、いまだ目を覚まさない志保を連れて、ここを出ていった。
志保については、浩之が復活する際の「母体」として機能したために、一時的に衰弱している、ということだった。
奴はああいっていたが、藤田浩之の存在は、確実に、こちらの切り札になってくれるだろう。
何より、義理堅いあいつが、今までかくまっていた俺たちに、恩義を感じていないはずはないのだから。
だがとにかく今は、智子とはるかの方を、何とかしなければならない。
冷静に見えるくせに、直情なところもある智子では、奴の狡猾さに太刀打ちできないだろう。
俺が行ければ、少しは何とかなるのだろうが、それは狐に背を見せることに他ならない。
今のところ、はるかが藤田から受け取ったという、『ちから』だけが頼りだった。
俺は今、懸命に大地に魔法陣を描いている。ただの魔方陣ではない。
俺の血と、命と、藤田から服の礼の代わりにせしめた『ちから』でもって行われる、俺の生涯最大になろうかという、大魔術の準備である。
「うまくいってくれよな………」
祈るべき神もいない。すがるべき拠り所もない。
それでも俺は、何かに祈らずにはいられなかった。
0323長岡志保
NGNGそうでなければ、説明がつかない。
「ったく、相変わらず寝起き悪い奴だな、お前は」
これは、いつもの夢だ。ヒロが綾香の代わりでないあたしに、微笑みかけてくれる。
目が覚めたとたん、言い知れない絶望と虚無を味わうことになる、いつもの夢だ。
「何だよ、鳩が豆鉄砲食らったような顔して。そりゃ、お前の顔は確かに人並み
より少しは上だが、少ししか上じゃねーんだから、間抜け面は、この上もなく
間抜け面でしかないぞ」
夢……夢のはずなのに……
「ヒ……ヒロ?」
言ってから、しまったと思った。ヒロは、あたしを綾香だと思っている。綾香は、
ヒロだなんていわない。綾香は………
「ヒロユ…」
「やっと目が覚めたか、志保。寝すぎで脳みそ腐ったのかと思ったぞ」
え?
今……なんて言った……?
0324長岡志保
NGNGだいたい志保、お前はぐーすか気楽に寝てりゃあいいけど、俺は……」
そこまでだった。あたしの前で、ヒロの顔がぐにゃりと歪む。
違う。歪んでるのはヒロの顔じゃなくて、あたしの目の方だ。
涙腺が壊れたみたいに、次から次へと雫が零れ落ちる。
ヒロだった。ヒロが戻ってきたんだ。あたしの知ってる、あのヒロが。
「な…なんだよお前、泣いてんのかよ……」
「泣いてなんか…ないわよぉ」
「じゃあ…これは何だ?」
ヒロが、あたしの顔を上に向ける。その指で、そっとあたしの目をぬぐった。
「いろいろ辛い思いさせて悪かったな、志保。けど、もう大丈夫だ。
俺は、もうどこにも行かない。これからずっと、お前と一緒にいるよ」
もう…限界だった。
あたしは、声をあげて泣いた。ヒロに胸にすがり、幾度となくその名を呼びながら
泣きつづけた。今まで我慢しつづけた涙が、ここぞとばかりに溢れていく。
ヒロ、ヒロ、ヒロ、ヒロ………
子供みたいだった。それでもヒロは、じっと優しく、あたしを抱きとめてくれた。
叶わない夢のはずだった。ヒロの隣にいたのは、いつもあかりだったり、綾香
だったりした。あたしはただ、ヒロの周りで、うるさく騒ぐだけの存在だった。
ヒロの視線がこっちを向くなんてこと、ありえるはずがなかった。
そしてそれは、心が壊れたヒロを看病していて、嫌と言うほどわかった筈だった。
でも………いま、ヒロはあたしだけの存在だった。あたしだけを見てくれていた。
嬉しかった。悲しかった。何より、今まで死んでいった皆の想いを知るだけに、
余計に涙が止まらなかった。
ごめん、あかり。ごめん、綾香。ごめん……ヒロを好きだった皆。
でも、今だけ。今この瞬間だけ、ヒロを占領させて……
伝わるヒロのぬくもり。それを感じながら、あたしは再び、眠りに落ちていった。
0325名無しさんだよもん
NGNG0326名無しさんだよもん
NGNG0327名無しさんだよもん
NGNG0328名無しさんだよもん
NGNG0329名無しさんだよもん
NGNG0330霧島聖@誰彼部隊・前編(1/3)
NGNG彼らの過ちは、そんな幻想を信じたことから始まった。
「残念ね、今は手加減できないわ」
誰もが瞬きも出来ない刹那のうちに彼女、石原麗子は鋭利な刃物を懐から取り出して四方八方に投げつけた。
途端に轟音が鼓膜をつんざく。連鎖する破壊は二十体ほどの量産型マルチを鉄くずに変えた。
「なんだと!?」
さすがにこれは想像の域を出ていたのか御堂が絶叫を上げる。
岩切も声こそ上げなかったが、驚きを隠せないで顔は微妙に歪んでいた。
「さすがとしか言いようがないな」
石原麗子を敵に回すことは、私でもしたくはないのに、まったく愚かな連中だ。
「この程度でお手上げなんて言わないでよ。せっかくこの私直々に足を運んであげたんだから」
「……私と以前に会った時から、その意地の悪い性格は変わっていないようだな?」
「あら、言ってくれるわね。これでも聖と南がいなくなって苦労したのよ」
「訂正する。以前よりも悪くなったみたいだな。明らかに嘘と分かる嘘は嫌味にしかならんぞ」
「そうかもね」とウインクされる。
「――お喋りはそこまでだ、来るぞ!」
私たちの会話を遮って蝉丸君が剣を握りしめていた。
「分かっているわ。高子、結界くらい一人で張れるわね?」
「はい、もちろんです」
「任せるわ。それと聖は佐藤君の面倒を見てあげてて」
「ほう。たった二人であの大群と勝負するのかね?」
いくらなんでも無謀だと思って私は声を掛けた。
しかし、彼女は肩を竦めて言う。
「ええ、そうよ。ハンデには丁度いいんじゃない?」
言葉はもう要らなかった。
0331霧島聖@誰彼部隊・前編(2/3)
NGNG愛用の南部十四式カスタムが蝉丸君の眉間にレーザー照準される。
(……一体どういう武器だ――それは! どうして南部十四式からレーザーなのだ!)
改造したであろう犬飼の趣味に私は付いていけなかった。
「俺の銃の腕は知ってるだろ!」
レーザー照準使ってながらそんなこと言うのか?
「ああ、怖いくらいにな……」
神妙に言う蝉丸君。まあ眉間にポイントされていたのでは分からないでもない。
「けっけっけっ。俺の愛銃もパワーアップしてよ、精度抜群だぜ」
いや……パワーアップっていう単語を口に出すところが、そこはかとなく昭和の前時代を彷彿させる。
「なっ! そうなのか!?」
本気で驚いてるように見える。
乗りで言うと『これが地球破壊爆弾だ!』『なんだと!?』くらい純粋に反応がいい。
「その通りさ。光栄に思えよ、これを使うのはお前が最初だって決めてたからな」
北川君はこんな奴らにやられたのか……さぞかし無念だろう。
「ところで今気づいたんだが、その銃から出ている赤い線はなんだ?」
今まで気づいてなかったんのか!?
「けっ。気になるかい? これはな俺が予測するに電子レンジ砲だ!」
……どこから突っ込んだらいいのか良く分からんが、とりあえず自分で武器を予測するな!
電子レンジ砲って言うのも寒いぞ! 本気なところがさらにだ!
「なんだと!?」
お前もいちいち驚くな!
「こいつを喰らって逝けや蝉丸!」
勝手にやってろ。真面目に聞いてると私の身が持たん。
0332霧島聖@誰彼部隊・前編(3/3)
NGNG私は瞬きをしながら今見た現実を受け止めようとした。
赤い光線が目の前を高速で通り過ぎていったかと思ったら、とんでもない爆発音が辺りに轟いた。
(まさか本物だったのか? 蝉丸君が危ない!))
私は精神崩壊を起こしそうになった光景を今一度この眼で見やった。
「あつうううぅぅぅぅぅうううういじゃねーか!」
「…………は?」
どうしてだろう? 私はまたしても目を丸くせざるを得なかった。
御堂の銃が真っ赤に燃えている。多分あまりの熱量に銃が耐え切れなかったのだろう。
いやいや暴発しなかっただけ見事というべきか?
「ふっ。御堂、勝負あったぞ!」
……おい、蝉丸君。武器の無くなった相手にその態度の豹変はなんなのだ。
御堂も御堂で火傷した手を口でふーふー吹いてる……。
こいつら、本当にあの軍部でも恐れられていた『誰彼』部隊なのだろうか?
……私には言い切る自信はないぞ。
「御堂何をやっている!」
堪らずに岩切が御堂に詰め寄っていった。
敵ながら気持ちは分かる。
「最終兵器を先に出すとは何事だ!」
問題はそっちなのか!?
「すまねえ……」
しかも謝ってる?
「仲間割れは醜いぞ!」
蝉丸君! 君が言うな!
私はあまりの戦いの凄まじさに頭を抱えてしまった。
「高子君、君は平気そうだな?」
「わたし……慣れてますから……」
もじもじと恥ずかしそうに手の先をいじりながら高子君は言った。
「苦労してたんだな……」
「はい……」
顔を真っ赤にして高子君は俯いてしまった。
0333名無しさんだよもん
NGNG0334名無しさんだよもん
NGNG0335名無しさんだよもん
NGNG0337名無しさんだよもん
NGNG0338名無しさんだよもん
NGNG0339名無しさんだよもん
NGNG0340名無しさんだよもん
NGNG0341名無しさんだよもん
NGNG0342名無しさんだよもん
NGNG0343川名みさき@雪に還る少女(1/10)
NGNG「うん?」
口を噤んいたで繭ちゃんが言い難そうに唇を動かそうとした時、耳をつんざく悲鳴が聞こえてきた。
聞き間違えるはずもない。それは留美ちゃんの声だった。
誤算だった。ほんの少し離れたうちに彼女達に災いが降り立つなんて……。
「繭ちゃん今の!」
「ええ。すぐに戻りましょう」
言うや否や繭ちゃんは走り出していた。わたしもそれに続く。
留美ちゃん達とそれほど離れた場所にいたわけではなかったので、すぐ現場にたどり着く。
――冷たい。
それがわたしの最初に感じた印象だった。寒いではなくてそれは冷たかった。
この感覚をわたしは知っていた。いや前以上の凍気≠もって彼女はわたし達の前にいた。
水瀬名雪。雪の少女は薄笑いを浮かべながら、あゆちゃんの胸に氷柱を刺しこんでいた。
「な――!?」
狂気の笑みだった。見る者を震えさすほどそれは冷たい。
わたしの背中にも同じく冷たいものが疾っていた。
「みお……」
「うそ、澪ちゃんも……うそだよ」
繭ちゃんの呟きにわたしもそちらを見やる――と絶望がそこにあった。
氷の棺だろうか、そんなものに澪ちゃんは閉じ込められていた。
顔色……そう顔色何ていうのも可笑しいけど、真っ青になって体温の欠片もない。
虚ろだった。まさしくそれは、死に行くものの……。
「ごめんなさい……わたしのせいで澪は……」
力なく呟く留美ちゃん。その瞳には涙が溢れていた。
「あはは、脆いね……ほら、こんなにも簡単に人は死ぬんだよ」
「名雪さん! あなたは――」
氷の微笑を浮かべて雪の少女はすべてのものを嘲笑う。
許せない――わたしが仕掛けようとした時、ゆらりと赴く影があった。
「……繭ちゃん?」
それは本当に繭ちゃんだったのだろうか? すごく怖かった。
「水瀬名雪さん……私を怒らせましたね?」
ただ冷静に言い放つ彼女は、雪の少女以上に冷たい笑みを浮かべていた。
0344水瀬名雪@雪に還る少女(2/10)
NGNGわたしは純粋な好奇心から椎名繭とかいう女の子に言っていた。
見たところ何の力も持たない普通の女の子。それなのにわたしに敵対している。
これは力≠るものへの冒涜に等しい行為だった。
「あなたが何かしてくれるのかな? 繭ちゃん」
「う、うぐぅ……!」
足元にいるあゆちゃんを踏みつけてるのは威圧行為でも何でもなかった。
ただ、そうしたかったからそうしただけ……意味なんてない。
「ああ、あゆちゃんそこにいたんだ? 痛かった? ごめんね、もっと優しくするよ」
ぐりぐり、あゆちゃんの胸に刺さったままの氷柱をいじる。
そうすると、あゆちゃんはとても言い声で鳴いてくれた。
――強者が弱者をいたぶるのは、感じてしまうほど気持ちがいい。
「はあ、いい加減弱いものいじめは止めてください。それとも、わたしと闘うのは怖いんですか?」
水をさすように繭ちゃんが言ってくるが、別に怒りなんて湧かなかった。
「……言うね、安い挑発だけど乗ってあげるよ。繭ちゃんはもっといい声出してくれるよね?」
「泣くのはあなたの方ですよ、水瀬さん。親の七光りの力なんて見っとも無いんですよ」
もうわたしは言い返さなかった。軽口を叩くあの子がどんな鳴き声を上げるか考えただけでいきそうになる。
(川名さん、私が時間を稼いでいる間に澪と月宮さんのことをお願いします)
(――あ、うん、分かったよ。でも繭ちゃん本当に大丈夫なの?)
それで内緒話してるつもり? 全部筒抜けだよ。
(ええ。私で充分ですよ。川名さんが立つまでもありません)
だけど、その言葉は感心しないよ。まるで目暗の彼女でも勝てるみたいな言い方だね。
わたしはすっごく強いのに、全然そのことを理解してないんだ。許せないよ。
「繭ちゃん、そろそろわたしの方から行かせてもらうね」
「……いつでも結構です」
そう、わたしは強い。とても強いんだから誰にも負けない。
氷の結晶がわたしを取り囲むように渦を巻く。
「飛べ!」
わたしの呼び声に応えて、雪の飛礫は椎名繭目掛けて飛んでいく。
もちろん小手調べの技だったけど、彼女はわたしの思いも寄らない行動に移ってくれた。
「――え?」
わたしに背を向けて繭ちゃんは一目散に逃げ出していた。
0345椎名繭@雪に還る少女(3/10)
NGNG彼女が追いかけてくるのを確認しながら、私は森の中を駆けていった。
まあ、逃げたら追いかけたくなるのは人情なので、大方の予測はついていたけど、彼女だって馬鹿ではない。
「分かっているよ。みんなを巻き込まないために場所を変えてるんだよね?」
したり顔で言うのを訊いて、私はうんざりしていた。
訂正する。彼女はどうやら馬鹿のようだ。誘いに乗ってくれたのは嬉しいけどそれだけではない。
「でも、追いかけっこってあまり好きじゃないんだ。足を狙わせてもらうよ」
冷気が周囲を支配する。丘の温度が急激に冷えていく。
「飛べ!」
雪の飛礫が先ほどと同じように飛んでくる。
私は溜息もつけないことに溜息をつきたかったが、とりあえず眉間にしわを寄せるだけに我慢して、
体操の選手がそうするように、胸で円を描くように飛び上がっていた。
「あれ? どうして外れるの?」
なんとも呑気な声で水瀬さんが言う。足を狙うとか言ってて躱せない方がどうかしてる。
それか私の意外な(自分で言うのもなんだけど)運動神経に驚いているのかも知れないけどね。
「――とっ」
私は手短にあった木の枝に飛びつく。回転はサービス。余裕があるよって合図だった。
そのまま木と木の間を飛んで渡っていく。もちろん走った方が効率がいいんだど細工しておくにはこれでいい。
「待ちなさいよー!」
「……嫌です」
誰かさんの口癖を真似てみて彼女はさらに頭に血を上らせたようだ。
冷静に見える人ほど、自分の思うように行かないと脆い。
彼女がそうだってことに確信はなかったけど、これで確認は取れた。
もう少し様子を見て、それが芝居でないことが分かったら、この闘いは私の勝ちだろう。
彼女が本当に冷静な人なら、別の案を考慮していたけど、まあ、これで充分なようだった。
「澪にしてくれた借りは倍返しでさせてもらいます」
私は薄く笑っていた。
0346水瀬名雪@雪に還る少女(4/10)
NGNGそれはとても簡単なことで偽りの無い力の差だった。
負けるわけが無い。彼女にはわたしを傷つける術など何ひとつ持ち合わせていない。
逃げ回ってるだけでは勝てない。だからわたしは負けない。
単純かつ簡単なことだった。わたしは強いのだから。
もう彼女の遊びなんかに付き合ってはいられなかった。
大気の気流に乗る。そう。わたしは今では空を翔けることすら容易い。
ぐんぐんとスピードを増して彼女に追いつく。
「もう逃がさないよ!」
わたしは大気の温度を下げて空気中から水分を取り出してそれを凍りつかせる。
先のよく尖った氷柱が何十という数で出来上がっていく。
「刺さっちゃえ!」
わたしの呼び声に応えて一斉に氷柱は繭ちゃん目掛けて飛んでいった。
彼女はわたしの予想通り∫]してくれたが、その氷柱は壁のように大きく立ちはだかる。
もう逃げ場所は無い。鬼ごっこは終わったということだ。
「さて、繭ちゃんどうするの? どうやってこの窮地から脱出してくれるのか見ものだよ」
「…………」
彼女はなにも言わなかった。
当然だ。打つ手なんてどこにもないんだから。
「どうしたの? 何もしないんだったら、わたしが凍らせちゃうよ」
それでも何も言ってこなかったので、わたしは異様に腹立たしく思ってしまった。
何も言わない。何もしない。わたしは彼女の泣き言を聞きたいのだ。
なぜ? それなのにどうして、彼女の目は奥の深い眼差しでわたしを射抜いているんだろう。
「……それ、むかつく」
わたしは彼女に向かって雪玉を投げつけた。もちろん石を入れたものなんかより威力は格段だった。
避けることもなく……いや、避けようがなくて、彼女の額にそれはぶつかった。
その額から血がスーッと流れ落ちた……。
0347椎名繭@雪に還る少女(5/10)
NGNG手のひらで拭ってみると、生暖かい感触のそれはべっとりとしている。
血。赤い血。私から流れ出た赤い液体……。
「澪や月宮さんは、この何倍も痛かったんでしょうね……」
私も痛くないわけではなかったが、不思議なことに痛みはすぐに引いていった。
わざと受け入れたそれにも、私の心にはまったく響かなかった。
「ほら、繭ちゃんは追い詰められたんだよ。何とか言ってみなよっ!」
「……随分な言われようですね。そんなに私のことが怖いですか?」
私の言葉に彼女の顔は見る見るうちに真っ赤になった。
「図星ですか?」
「……繭ちゃんは弱いんだよ。わたしにそんな口を聞いてもいいの……?」
表面上あくまで冷静を装う彼女は、もはや哀れというより他はない。
「確かに私は弱いです。だけど、貴女のように愚かではありません」
「言葉は……もう言葉なんて要らないよ! そんなの何にもならないじゃない! もっと他のもので示してよ!」
「……貴女は不幸です。自分が災いの中にいることを気づかないなんて」
「だ、黙ってよっ!」
雪の結晶がこの空間に乱れ飛んでいる。私を狙っているのだろうが当たりはしない。
もはや私に当たる気も無かった。
「終わらせましょう。貴女の心の楔を私が断ち切って上げます」
懐の中に忍ばしていた44マグナムを彼女に向ける。
彼女にとっては余計なお世話だろうけど、本当の名雪さんは終焉を求めているのだから。
「……あはは、ははっはははははははっ……あははっはははっはははっははっーーーーー!」
彼女は狂ったように笑い出していた。そのこと自体に疑問は無かった。
「そんなもので、わたしを殺そうとしてたの? 馬鹿げてるよ、可笑しすぎるよーっ!」
「……そうですか? この引き金を引いたら分かりますよ」
この大きなグリップは馴染まなくて、私はあまりこの銃が好きではなかった。
しかし今は感謝しよう。本当は反動の大きさを考えて片手打ちは止めておいた方がいいのだけど、
私は躊躇わないでマグナムのトリガーを引いた。
「――――?」
彼女の体は大量の炎に包まれた。
0348水瀬名雪@雪に還る少女(6/10)
NGNG繭ちゃんを倒すことはとても簡単なことだと思っていた。
「……うそ?」
それなのに溶けていくのはわたしの方だった。
本当に訳が分からなかった。銃弾は躱せたのにその後の炎がわたしを焼いていた。
「……どうして? どうして、こんな……」
「簡単なことですよ」
嫌味だろうかそれは……。事も無げに彼女は言ってくる。
「ただ私は逃げていただけではありません。木々に結界を張って逃げていたんですよ」
「……そんなの気づいてたよ。でも、どうして……なの? こんな強力な術の効果の結界なんて……」
「そうですね。こんな大規模の火炎術を貴女なら見落とすわけが無い――ですか貴女は勘違いをしています」
彼女に表情らしい表情はなかった。ただ告げる。
「私に方術は使えません。初歩的なものでもそうでしょう。しかし少しばかりの知識はあります。
いえ、知識というのもおこがましいでしょう。酸素は火を燃やす為の栄養剤ですよ。そんなの小学生でも知ってます。
気づきませんでしたか? この大気中の酸素濃度は通常より980パーセント増しなんです。
ほんのちょっとした……そうですね、ハンマーが落ちるくらいの衝撃で引火するのには充分なんですよ」
「だったら……だったら、なんで……繭ちゃんは燃えないの?」
こんな大規模火災だというのに、木々は一本足りとも燃えていなかった。
そこにある物質はまるで、わたしだけというように……。
「貴女は中途半端に強かったんですよ。酸素中毒症になるくらいの弱さは欲しかったですね」
「あ……」
どうして? どうしてこうなっちゃたんだろう? 祐一は?
そうだ。祐一が側に居てくれたらそれでよかったのに、わたしは何をやっていたんだろう。
……どこで道を間違えたんだろう?
「もうすぐ火は尽きますね。その前に終わらせましょうか?」
彼女は銃口を私の額に狙い定めていた。
終わる? そう終わってしまうのだ。もうここで尽きてしまう。
「貴女の敗因はただひとつですよ。伏龍≠ニいう私の二つ名を知らなかった……それだけのことです」
もう何も聞こえない。銃声すら耳に入らない。痛みすらない。
目を閉じてみた。待っていたのは暗闇。いや本当はそこに何も待っていなかった。
――静寂が訪れる。
0349七瀬留美@雪に還る少女(7/10)
NGNGあたしは繭の姿を見つけると抱き締めずにはいられなかった。
「……痛いですよ、七瀬さん」
「馬鹿! 馬鹿! ひとりで勝手なことしてさ!」
「……七瀬さんに馬鹿って言われると、本当に馬鹿になった気がします」
「もう、本当に馬鹿よ……こういう時くらい素直になりなさい」
「……はい。そうさせて貰います、七瀬さん……」
よっぽど疲れていたんだろう繭は、あたしに体を預けてくれる。
強張っていた顔が、こんなにも優しくなっている。
笑顔のこの子は、本当に可愛いんだから。
「……終わったんだね、繭ちゃん」
「ええ。それより、澪と月宮さんの具合はどうですか?」
「澪ちゃんの方は大丈夫なんだけど、あゆちゃんのほうが……」
みさきさんが難しい顔で言う。それだけで悟ったのか繭はそれ以上何も言わなかった。
澪の方はみさきさんの方術で回復に向かっていたけど、あゆの方は傷を何とか塞いだだけだった。
いつ死んでも可笑しくない怪我らしい。後はあゆの生命力に懸けるしかないようだ。
「……七瀬さん、川名さん、お願いがあります」
「うん?」
あたしとみさきさんは同時に首をかしげる。こんな繭を見るのは初めてだったから。
頼み事なんてしない性格なのに……。
「ふたりの看病をお願いします」
「え? それは構わないけど繭はどうするつもり?」
「私は……私は九尾と翼人との戦いを見届けに行きます!」
それは予想外の答えで、あたしは言うべき言葉をすぐに見つけられなかった。
「そんなの……」
「そんなの認めるわけには行かないよ、繭ちゃん」
情けないあたしの代わりに、みさきさんが強い口調でそれを否定した。
0350七瀬留美@雪に還る少女(8/10)
NGNG「そうかもしれないけど、そこがどんな危険な場所か分かっている? ひとりでなんて行かせられないよ」
「しかし――」
「――絶対に駄目だからね」
ふたりとも取り付く島も無いまま睨み合っていた。
「どうしてです? 元々危険は承知の上でこの丘まで来たんですよ?」
「……状況の問題だよ。わたしには繭ちゃんが焦っているように見えるんだ」
「そんなことありません。すべて計算付くです」
「わたしの眼を騙すことはできないよ、繭ちゃん」
「心を読んだんですか?」
「そんな無粋な真似はしないよ。大人の目から見たら子供の考えはすぐに分かるんだよ」
「私は子供じゃありません。川名さんは大喰らいなだけです」
ぷいっと横を向く繭。みさきさんちょっと顔が引きつってる。
「繭ちゃん、自分で子供じゃないっていう人は、子供っていう証拠なんだよ?」
「自分で大人という人は少なくても大人じゃありませんよね?」
「面白いこと言うね、繭ちゃん」
「そんなこと……川名さんほどじゃないですよ」
……あ、火花が散ってるような気がするのはあたしの気のせい?
ちょっとこわひ……。
「七瀬さん!」
「留美ちゃん!」
「は、はい――!」
二人に呼びかけられて思わず後ずさりしてしまう。
「七瀬さん(留美ちゃん)はどっちの味方なんですか?」
ああ、そう来るのかやっぱし!
繭の言い分も分かるけど、みさきさんの気持ちだって分かる……というよりも、みさきさんにあたしは賛成だ。
「あの、繭ちゃん?」
「――なんですか?」
ひぃ。怖い。とてつもなく怖い……。
「留美ちゃんは、わたしの意見に賛成だって言ってるんだよ」
おわーっ! 笑顔でさらっと怖いことを!
「……そうなんですか?」
繭にジト目で見られた! 素敵なほど似合ってるよそれ!
「どっちなんですか!?」
……結論、ふたりとも怖い。
0351七瀬留美@雪に還る少女(9/10)
NGNG「――え?」
意外な声が響いたので、あたしはちょっと驚いてしまった。
「あはは、なんか名雪っちの声がしたような気がするけど、このあたしも耄碌したもんよね」
「いえ。七瀬さんの後ろにいますよ、名雪さん」
「またまた、そんな嘘を」
あたしは手をパタパタさせながら、ちらっと後ろをのぞき見ると、そこには――
「お、お、お、お、お化けえええええーーーーーー!」
「……失礼だね。足は付いてるよ」
腰が抜けそうなほど驚いてるあたしを見ても彼女はのんびりと言い放つ。
「幽霊じゃないの? でも、あの邪術士の娘なのよ! さっきまであたし達を殺そうとしていたのよ」
「まあまあ、留美ちゃん。落ち付いてよ」
「な、なんでみさきさんは平気なのよ。繭はともかくとして、可笑しいじゃない!?」
「だって、わたし戦いを見てたし……繭ちゃんが危なくなったら、すぐに駆けつけるつもりで」
みさきさんが言うのを、分かってます、という風に繭は頷いていた。
「だったら、いったいどういうことなのよ?」
「別に深い意味はありません。永遠の力を利用して人を殺めることはしたくなかっただけです」
「……と、言いながら繭ちゃんは照れてます。優しいんだから、ほんと」
みさきさんが言うと、繭はふーんと首を横に向けてしまった。
「ああ、なるほど……でも看病させてって言うのは?」
ふたりが警戒もしていないのに、あたしだけ焦っても仕方ないので水瀬さんに軽く訊いた。
……しかし、疎外感あるなー。
「あゆちゃんを看病したいから、じゃあ理由にならない?」
「ならないって、あんたねー、自分で傷つけておいて」
「――分かりました。お願いします」
「って、そうお願いするわ……ってなんでじゃあ!?」
「留美ちゃん、楽しすぎ」
卓袱台があったら絶対ひっくり返してた、うん……。
0352椎名繭@雪に還る少女(10/10)
NGNG「うん、出発出発がんばろう!」
ガッツポーズというのか勝利のポーズというのか手を上げてる彼女らをとても羨ましいと思った。
川名さんに七瀬さん、見てるだけで私は本当に元気づく。
「いいよね、彼女」
「はい、そうですね……」
私と同じ印象を持ったのか名雪さんも同じように笑う。つられて私も笑ってしまう。
「でも、どうして? わたしなんかを信用してもいいの?」
「……七瀬さんが信用したのなら、私が言葉を挟む余地なんてないですよ」
「彼女が一番信用してくれてなさそうだったけど?」
「嘘つき。七瀬さんが誰よりも先に貴女と打ち解けたことは一目瞭然です」
「……ありがとう」
名雪さんが笑っている。
私には有難うと言われる筋合いはなかったけど今だけは笑って応えよう。
「貴女の中にあった負はパンドラの箱ですべて吸い取りました。理由がいるならそれですよ」
「じゃあ理由なんて要らないよ。がんばってきてね」
「……はい、言われなくてもそうします」
最後の言葉は薮蛇だったことに気づいて私は顔を赤くさせた。
今の彼女は間違いなく強かった。私よりもずっと。
「行くわよ、繭!」
「はい。分かってますよ」
七瀬さんが私を呼んでくれている。
でも、その前に澪の頭を撫でてから行くことにする。
「任せましたよ、名雪さん」
「うん。繭ちゃんも、ふぁいと、だよ」
名雪さんの声援。七瀬さんの呼び声。私は今幸せの中にいた。
「行ってきます!」
そして、雪の街の物語は最終局面を迎えようとしていた。
0353椎名繭@雪に還る少女(10/10)
NGNG0354名無しさんだよもん
NGNG0355名無しさんだよもん
NGNG0356名無しさんだよもん
NGNG0357名無しさんだよもん
NGNG0358名無しさんだよもん
NGNG0359名無しさんだよもん
NGNG0360名無しさんだよもん
NGNG0361名無しさんだよもん
NGNG0362沢渡真琴・千の季節
NGNG永い、あまりにも永い時をすごした。
千の夏。千の冬。いくつもの季節を、ただじっと耐えつづけた。
そう、ただこの時、この瞬間を待ちわびて。
翼人……神奈。因縁と呼ぶには、あまりにも深い絆を、断ち切るために。
今なら、断言できる。
私は、この瞬間のために存在していたのだと。
0363沢渡真琴・千の季節
NGNG千の季節を経た因縁が、今ようやく、ここに交差する。
邂逅の刻は来た。
翼人と、妖狐。
私は、ゆっくりと最後の翼人を降ろした女に身体を向けた。
「……永かった」
私の口から、自然と言葉がつむがれる。
この身体に満ちる震えは、まるで遠い親友にでも偶然出くわしたかのような、途方もない歓喜の現れだった。
「……永遠とも思える数の、冬を耐えた」
目の前の少女…天野美汐もまた、その内に秘める力を高めていく。
いい目だ。何者にも勝る、強い意思。神奈をその身に宿しながら、負に囚われていない。
そうでなくては、殺しがいがない。
「母上様……」
「裏葉。お前の話は、後で聞く」
そういって、私は裏葉に、下がっているように命じた。
裏葉の顔が、一瞬、表現しがたい表情になる。普段から顔色を変えないこいつにしては、珍しい。
私と天野は、いくらかの距離を置き、対峙する。力が均衡する者同士にありがちな、硬直状態だ。
互いの隙を狙い、じっと相手を伺う。
私は、両手をだらりと下げた、自然体で。天野は、私を真正面に見据え、心持ち半身で。
「見せてくれ、お前の……天野美汐と、その身に受けし、神奈の力を」
「…後悔しますよ。わたしはあなたを倒します。そう、わたしの総てを賭けて」
それが、戦いの開始の合図だった。
0364名無しさんだよもん
NGNG0365名無しさんだよもん
NGNG0366天野美汐・丘の上で
NGNG「…………いきますよ……妖狐・沢渡真琴……!」
瞬時に気を練り、その手から光球を放つ。真琴は後ろに飛び跳ねると、身を捻ってそれをかわす。
わたしはさらにそれを追い駆け、呪を口ずさむ。私の目の前に、刃の形をしたエネルギーが、三つ。
「高野錬禁呪法27式…『幻無陣』」
その刃が、回転しながら真琴に迫り来る。奴はは即座に己の気を開放し、はじき返すべくその刃にぶつけた。
「無駄です!」
気が、刃をすり抜ける。とっさに身を翻したにもかかわらず、一本の刃が、真琴のわき腹を掠めた。
「……ちぃ!」
真琴は舌打ちすると、再び回転しながら戻ってくる刃に、手の中に生み出した狐火をぶつける。だが、またもやその炎は、むなしく刃をすり抜けた。
「幻無陣の刃は、位相のずれにより、「ちから」で相殺する事は出来ません。そう、あなたを切り刻むまで、永遠に追い続けるのです」
そう言いながら、わたしはさらに印を組み、呪を唱える。
幻無陣により相手の動きを半減させ、さらに大技でダメージを与える。
「……お前らしい、実直で確実な戦法だな」
「高野錬禁呪法48式…『蹄花焔爆』!」
真琴のぎれごとを無視し、わたしはさらに力をこめて、呪法を放った。
0367沢渡真琴・丘の上で
NGNGあまりの熱量に草原の草が見る間に炭化し、巻き起こる風に吹き飛ばされた。
正面から迫る、天野の繰り出した巨大な炎。そして、背後、右手、頭上と完璧に死角を捉えた形で、三つの刃が迫る。
そして、わざとらしいほどに開いた、左側。塚本千紗程度の妖狐なら、苦もなく引っかかったであろう。
恐らくかわした先に、必殺の罠があるのだろう。タイミングは完璧だ。
だから、私はその場を動かなかった。私の身体に、次々に刃が突き刺さる。
「避けない!?」
天野が、驚愕の声をあげる。
「力がすり抜けるなら、私の身体を使って粉砕するだけだ」
次の瞬間、三つの刃は、こなごなに砕け散った。私の身体には、毛ほどの傷もついていない。
そして、正面の巨大な炎。
「……ふっ!」
短く息を吐き、少しだけ尾を振るう。恐らくは、高野山の奥義の一つであろう膨大な炎が、影も残さず掻き消えた。
噂に聞く、長瀬流炎殺拳の、奥義に次ぐ威力を持っていたと思う。しかしそれも、私の身体を傷付けることはできない。
「…………っ!!」
天野が、初めて感情をあらわにする。
「どうした?まさか本当に、翼人の力なしで、この私を倒そうなどと、思っているのか?」
からかうような私の挑発にも、天野は眉一つ動かさず、いつもの無表情を取り戻す。
「まだまだ、勝負はこれからです」
そう言いながらも、天野の声には、はっきりと動揺が現れていた。
0368沢渡真琴・丘の上で
NGNG恐らくは水瀬秋子に匹敵するのではないか、と思わせるような、すさまじい呪力が轟く。
「かの地より禁じられし聖地へ、紡ぐもの、織り成すもの、とわに呪われてあれ!」
天野が手を振ると、壮絶な冷気と、氷塊、さらに、氷をレンズに見立て、死角から光条が私を襲う。
氷をかわせてもレーザーが、レーザーを避ければ冷気が、相手を粉砕する、という寸法だ。禁呪、と言うだけあって、随分とえげつない呪法だ。
「高野錬禁呪法7式『凍溜旋』!!」
「だが……やはり無駄だ」
次の瞬間、荒れ狂うブリザードも、氷解の間を走る光線も、全てが消え去った。
「……な……!?」
まさか、ここまであっさりかき消されるとは思っても見なかったのだろう。
天野の顔が、再び驚愕に彩られる。
私には、天野の魂胆は見えていた。神奈の力を解放出来るのは、ほんの一時。
もし長時間神奈を解放すれば、そのまま負に飲み込まれる可能性もあったし、暴走の危険も飛躍的に増大する。
ならば……刹那の間、相手がひるんだ隙を狙い、全力で神奈の力を、私にぶつける。
「……そうすれば、神奈も善神に戻れる上、お前も助かり、万万歳だな?」
天野が、血がにじむほど、強く唇を噛み締めた。
「だが、生半可な呪法で傷付くほど、私は甘くないぞ?」
愉しい。歓喜が、強者と戦える悦びが、私を埋め尽くしていく。
そうだ、もっと憎め。もっと怖がれ。
もっと、もっと私を愉しませてくれ、天野美汐!!
0369天野美汐・丘の上で
NGNG凍溜旋も、蹄花焔爆も、高野山の伝える呪法の中では、最上級の破壊力を持つ、とまで言われているのだ。
それゆえに禁呪と称され、封印されてきた呪法だ。
単純な殺傷力なら、間接的でない分、禁忌法術ブラフマーストラよりも上のはずだ。
もし食らえば、例えあの水瀬秋子と言えど、無傷ではいられないだろう自信がある。
避けるならともかく、瞬時に無効化するのは、一体どんな手段によるものなのか。
「どうした?今ので終わりか?なら随分と、つまらない余興だな」
沢渡は、腕を組んだまま、轟然とこちらを見下ろしてくる。
ただそれだけで、すさまじいプレッシャーが体を苛む。
頬に、汗が一筋浮かぶ。今すぐにでも、神奈の力に頼りたい衝動に駆られる。
だが、それでは奴の思う壺だ。もし今神奈を出しても、確実に奴を倒せる保証はない。
最悪、奴が全力で逃げ出せば、神奈には追う事は出来ない。
奴を捕まえ、止めを刺す前にタイムリミットが来る。
それに……それに、万が一、神奈の力すら、奴に効かなかったら?
力の総量……キャパシティで言えば、真琴、秋子…それに、今秋子と戦っているらしい誰かは、ほぼ同じ水準だろう。
私本来の力は、それより若干劣り、翼人の力は、彼女らよりワンランク上、と言った所か。
だが……私は薄々気が付いていた。
力の総量が、そのまま相手の戦闘能力に、直結するわけではない事を。
0370天野美汐・丘の上で
NGNG退屈そうに、けれど、どこかまだ期待した風に、真琴がつぶやく。
「な……なめないでください!!」
わたしはがむしゃらに幾度も力を練り、叩きつける。だがその度に、瞬く間に掻き消されてしまう。
「そろそろ、こちらから行くぞ?」
真琴が、笑いをこらえるように、そんなことを言った。
「結界の準備をしておけ、天野。裏葉、お前も、もう少し下がれ」
親切ごかして、奴はそんな事をいった。かっと、頭に血が上る。完全に、遊ばれている。
「見るがいい、これが九尾の真の使い方。いつぞやの魔物狩りの娘の時のように、手加減はせんぞ」
次の瞬間、わたしは本能的に全力で結界を張り巡らし……すさまじい苦痛が、全身を襲った。
「ぐううううっっ!?」
ただの、水飛沫。それが、結界で阻みきれず、僅かに体にかかった、ただそれだけで、すさまじい痛みが私を苛む。
水がかかった剥き出しの腕が、紫色に変色する。術の気配はなかった。ただいきなり、降り注いできたのだ。
「ただの水飛沫で、何をそんなに騒いでいる?……まあ、液体窒素を浴びれば、痛いのは当然か」
「え……液体窒素!?」
呪文も、動作も何もない、ただ唐突に、液体窒素を作り出したというのか?
足元まで液体が流れてきたので、わたしは慌てて跳び下がった。
「そろそろ、種明かしをしてやろうか」
0371天野美汐・丘の上で
NGNG足もとの液体窒素が、突然盛り上がり、円錐を形作る……まさか!?
「そう、これは私の九本の尾のうち、一つが変化したものだ」
やがてそれは、半透明の、だか完全に巨大な狐の尾へと変化した。
「九尾が一、四精の尾。地水火風、あらゆる物質へと変化させられる」
言うが早いか、その尾が、すさまじい炎の塊へと変わる。
「灼熱の尾よ、焼き尽くせ!」
幾重にも張り巡らせった結界すら揺さぶる、すさまじい炎が私を包み込んだ。
これに比べたら、私の放った蹄火焔爆など、線香花火にも等しい。
太陽のコロナにも匹敵するのではないか、と思わせるような、熱量。
結界が……もたないっ!
…だが、真琴はこれで止めを刺すつもりもなかった。周りを包んでいた炎が一転、鋼鉄の塊へと変わる。
しなるように動き、結界ごと、私を叩き伏せる。回避は不可能だった。
すさまじい衝撃が、私の意識を揺さぶる。内臓が破裂したのか、喉の奥から、熱いものがこみ上げてきた。
それでも私は、必死にめり込んだ身体を地面から引き剥がし、次の攻撃に備えて身構える。その私の前に、無数の銃器が突き付けられた。
「!?」
考えるより先に、最大限に結界の物理防御力を上げる。
その上から、雨あられと鉛弾が降り注いだ。時々混じる鋭い衝撃は、劣化ウラン弾だろうか。
ぞっとするような恐怖が、足元から這い上がってくる。
人間の扱う銃火器ぐらいで、突破できるようなやわな結界ではない。だが、これはあまりに常軌を逸していた。
「……ふむ、やはりこの程度では、おまえの結界は敗れないか」
銃撃がやみ、硝煙の向こうから、飄々とした顔の真琴が現れた。
………強い。いや、強すぎる。
足元に転がる無数の銃弾と、あらゆる銃の形を模した尾が、攻撃のすさまじさを物語っていた。
液体窒素や、炎や鋼だけではない。あの尾は、銃ですら生み出せるのだ。
0372天野美汐・丘の上で
NGNGあるいは、戦闘力では水瀬秋子をも上回っているかもしれない。
「何も、力の総キャパシティ量が、絶対の戦闘力じゃない。…そういう事だ。
力だけあっても、それを使いこなせなければ、何ら意味はない。そう、お前や保科智子のように」
ゆらりと揺れる尾が、今度は半透明状に変わり、見えなくなる。仕舞ったらしい。
……今だ!!
「……星より繋がれし見えざる鎖もて、万物に等しく滅びを!!禁忌法術・ブラフマーストラっ!!」
奴の気が緩んだ一瞬の隙を付いて、私はもう一つの切り札を使った。
術者の周囲に、超重力場を作りだし、あらゆる物質を分解する禁呪法。
いくら奴とはいえ、隙を突いた不意打ちで、これを無効化する事なんて……
「そして、これが私の2番目の尾。次元の尾」
ぐにゃりと歪む視界の中で、そこだけが切り取られたように、真琴の姿が浮かび上がった。
「空間に干渉し、時に切り取り、時に歪め、時に別次元への扉を開く」
……重力とはすなわち、空間の歪みだ。地球に重力があるのも、地球があまりに重く
それゆえ空間が歪み、周りの物質を引き付けている、と聞いたことがある。
もし自在に空間を支配できるのなら、この擬似重力場を中和する事も、可能なのだろう。
少しも真琴に傷を負わせることなく、虚しくブラフマーストラの重力場が、消滅する。
「……さっきから術を無効化していたのも、それの力なのね……」
「そうだ。炎の部分、氷の部分の空間を切り取り、他の何もないところの空間を持ってきた。…こんな風に」
ぐねり、と尾が空間を薙ぐと、大量の水が、飛び散った。その飛沫が、私の頬を濡らす
「今のは、海の中に空間を繋げてみたのだ。なんなら、宇宙空間にでも繋げて、宇宙遊泳をさせてやってもいいぞ」
冗談を言っているように見えて、それが実行可能だ、というのは、聞かなくてもわかった。
「川澄舞のような、限定的な空間への干渉ではない。これが本当の空間干渉能力だ」
………あるいは、神奈ですら、今の真琴には勝てないかもしれない。
そんな漠然とした不安が這い上がってくるのを、わたしは正直、抑えきれなかった。
0373名無しさんだよもん
NGNG0374名無しさんだよもん
NGNG0375名無しさんだよもん
NGNG0376名無しさんだよもん
NGNG0377名無しさんだよもん
NGNGすいません
0378名無しさんだよもん
NGNG0379名無しさんだよもん
NGNG0380名無しさんだよもん
NGNG0381名無しさんだよもん
NGNG0382里村茜@想い届けて(1/6)
NGNGこの街を包んでいた瘴気がすべて物の怪の丘に集まっていく。
訪れたのだろう。宿命の決着をつける時が。
「私には見ているだけしかできません。でも美汐ならやれると信じています」
破邪槍『物の怪の槍』は未だに動きを見せなかった。
まだ待てということなのだろう。いやそれとも槍の役目はもうないのかも知れない。
「九尾は強いです。でも美汐はひとりで闘っているわけではないんですよ」
私には分かる。美汐を見守る優しい力の波動が私には見える。
負の対極にある聖なる力。真の魂。星の記憶。
「美汐、私に見せてください。翼人はもう貴女と別存在ではないんです」
私は空を見上げた。流れるような星の海。明るく照らす月。昼も夜もそこには関係ない。
太陽はいつでも輝いているのだから。
「九尾の力は比類ない。でも力だけがすべてではありません」
そのことを美汐はもう気づいていた。
「だったら、きっと真琴の想いに美汐なら応えて上げられるはずです」
翼人と九尾。美汐と真琴。人間と妖弧。
すべては出来すぎたシナリオのようにパズルの欠片が今そろう。
それは、終焉を意味して……。
「私は……私のやれることをするつもりです」
0383国埼往人@想い届けて(2/6)
NGNG「なにがだよ!」
柳也がひとりだけ分かったように頷いてるのを見て俺は舌打ちした。
「九尾と翼人との戦いが始まったようだ」
「……美汐が闘っているのか?」
「ああ。名前までは知らないが、そういうことだろうな」
奴のどこまでも冷静な口調に俺は苛立っていた。
「一度死んだ奴は余裕でいいね」
「そう言うな。俺だってこうなるとは思っていなかったんだ」
「どういう意味だそれは?」
「妖弧に伝わる転生術は人間には上手く作用しなかった。当然といえば当然だがな」
「裏葉……その女の術か?」
「まあ、そういうことだ。神奈を残しては逝けないということで俺も了承したんだが……」
「時間的にズレが生じてしまって、裏葉とお前が出会うことは無理だったってことか?」
「飲み込みが早いな。しかし、人の身を借りることになるなんて、裏葉は説明もしなかったよ」
走りながら俺たちは丘を登っていく。
この先に待つものを求めてただひたすらに駆け上がっていく。
しかし、そこにあったものは……。
「――なんで?」
「……怪我をしているようだな」
そんなことを呑気に言い放つ奴に怒鳴ることも出来ないで俺は首を垂れていた。
「遠野――!」
血の残った地面に倒れていたのは間違いなく遠野美凪だった。
『永遠はあるよ……』
『ここにあるよ……』
声が聞こえてきた。とても近くから。それなのに遠くから。
幼い少女は美凪を連れて逝こうとしていた。
0384長瀬祐介@想い届けて(3/6)
NGNG「長かった……そう、ようやく私たちの世界が訪れるのね……」
ふたりの妖弧が酔いしれたように言葉を紡でいた。
何を言ってるんだ奴らは……妖弧の世界……そいうことなのか?
「そんなこと僕が絶対にさせないっ!」
「ほう、まだ狂っていなかったのか、電波の少年よ」
「無理よ兄さん。こいつは元々狂っているの。私でもどうしようもないほどにね」
「ははっ、そいつはいい。聞いたか電波の少年? 貴様はすでに狂っているのだとさ!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れダマれ黙レだマレだマレダマレダマレだマレよーー!」
心臓の鼓動が増す。血液が逆流する。脳内に何かが分泌される。
「ほう、まだ立ち向かうのか? 哀れだ……狂えるほど哀れでならないぞ!」
「僕は負けない。お前らは瑠璃子さんの仇じゃないか。シネよ! シンデしまえよ!」
「……だ、駄目よ……長瀬君……」
誰かの声が聞こえる。いや聞こえない。もう耳には何も聞こえない。
「あら……まだ死んでいなかったの、編集長さん?」
「ふん。妖弧にシルバーブレット如きが効くとでも思ったか?」
――オワルノカ? ココデオワルカ? カタキダロ? コワセヨ! コワシテシマエヨ!
内なる声が僕を導く。そう心地よい。もういっそうすべてを壊してしまおう。
ミナゴロシ――
「駄目……狂気を生み出さないで……」
「クルウ……コワス……スベテ……ルリコ……ボク……ソウ……デンパ……クルエ……シネ!」
僕の心は壊れた。そう思った時にそれは起こった。
(あ……何だろう、これ……聞いたことある)
歌声だった。懐かしい流行歌……いや、違う。もっと心に残っている。
「兄さん! これって!」
「――まさか? そんなことが有り得ん!」
この曲の名を確か……『POWDER SNOW』と僕は記憶していた。
0385神尾観鈴@想い届けて(4/6)
NGNG「……え?」
お母さんが何を言っているのか分からなくてわたしは首をかしげていた。
「……どうしたの、お母さん?」
「だって、観鈴……泣いてるやん」
「うそ……」
わたしは自分の頬を伝うものが涙だとは思わなかった。
泣いているなんて思いもしなかった。
「もしかして、いつもの発作か?」
「……違うと思う」
「だったら、なんでや? そんな顔されたら……うち、寂しいやん」
「にはは、大丈夫だよ。それより、まだ目的地まで遠いんでしょう?」
「ああ、東京駅に着いても、まだ乗り換えなあかんからな……」
「うん。わたしもう少し寝てるね……」
「そうやな。そうしとき。いい夢見れるといいな」
「にはは、いいねー」
……本当にわたしは泣いていたんだろうか。
なにかとても懐かしいものに触れたような気がして知らないうちに泣いていたんだろうか。
寝ているときとかかな……。
ちょっと、観鈴ちんには分からない。
でも、この曲はすごく胸に響いてくるような気がする。
なんて曲名だったかな? 雪に託された恋人への想いを綴ったこの詩を……。
……パウダースノー。
「そうだ。お母さんも、この歌って好きだったよね?」
「……なに言うとんのや観鈴。カラオケ付きのバスやあるまいし新幹線にBGMなんかつかんわ」
「あれ? だって今も……」
懐かしいあの歌声が聞こえてるのに……。
0386藤井冬弥@想い届けて(5/6)
NGNG「ああ、また振り出してきたのか……」
スフィーさんは窓の外に降り積もる雪を一瞥すると溜息をついた。
この人には珍しく……いや、何度も見てきたような気もしないではないような……。
(なんか、こういうところが優柔不断なのかな?)
ちょっとだけ僕も溜息をついてしまう。
スフィーさんの方をちらっと見ると「忙しい忙しい」となにかバタバタとしていた。
「こんなものなのかな?」
温度差でできた窓の水蒸気を見つめる。
ここにはストーブと温かいコーヒーもある。
あまりにも静かだった。
外は今も戦いが続いているというのに……。
僕はなんとなくコーヒーにそれ以上口をつけなくなっていた。
「本当に静かだ……」
この部屋には僕一人だったので、余計に孤独を感じていた。
「……あれ?」
でもそこにいつの間にか由綺の歌が流れていた。
心地よいBGMだった。CDで出ていたのより何倍も心に響く。
「由綺に会いたいよ……」
それを子守唄代わりに僕は眠り込んでいた。
0387長瀬祐介@想い届けて(6/6)
NGNG正気? まだ頭の中がずきずきと痛んでいたが自我は戻ったみたいだ。
さっきまであった強迫観念のような衝動は嘘のように消えている。
「兄さん! どうして? どうして由綺の声なんか!?」
「……分からない。いや、これは、この波動は……間違いなく彼女の……」
妖弧は何やら混乱している。不意を付きたいところだったけど真紀子さんの方が気になる。
彼女は僕の狂気に飲み込まれて脳に支障をきたしてしまったんだから。
「真紀子さん! 大丈夫ですか?」
僕は慌てて彼女のもとに向かおうとするが別の気配がそこにあった。
「はい。動かないでくださいね」
「外傷は多々見られるけど傷は浅いですよ」
理由は分からないが、ふたりの少女が真紀子さんの治療をしてくれていた。
そのことに戸惑いはなかった。だって彼女たちの姿も一緒に見とることができたから。
「今の歌声は私たちにも聞こえました。だから……ここに来ることができたんです」
「悲しい歌声だったよ。だからこそ、あたしはあんたらのことが許せない」
鬼一族の長女・柏木千鶴。次女・柏木梓。
「長瀬さん……もう大丈夫ですよ」
にこりと彼女は僕に微笑んでくれた。
それは瑠璃子さんのようにとても素敵な笑顔だった。
「ありがとう、みんな……」
感謝の言葉がある。
僕はもう独りなんかじゃなかった。
0388名無しさんだよもん
NGNG0389名無しさんだよもん
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NGNG0397名無しさんだよもん
NGNG0399状況報告
NGNG月島瑠璃子 石化・その後長瀬祐介を助けるため、死亡
太田加奈子 瑞恵と共に、白狐と戦った。気絶したサラと合流。
相原瑞恵 加奈子と共に、白狐と戦っていた。初代リーフめがねっこ。
長瀬祐介 復活した緒方兄妹と戦い、狂気に呑まれそうになったところを、『歌』に救われる。
月島拓也 緒方英二と戦い、相打ち。死亡
柏木千鶴 鬼の血を引く柏木家長女。歌に導かれ、長瀬祐介に加勢。緒方兄妹と戦う。
柏木梓 鬼の血を引く柏木家次女。千鶴と共に、参戦する。
柏木楓 柏木家三女。沢渡真琴と交戦、妖狐の力を奪われる。死んだと思われていたが、誰彼部隊に助けられる。
柏木初音 柏木家四女。水瀬秋子と交戦、ヨークの力を使うも、敵わず。死亡?ほかの姉妹は、死亡を知らない。
柳川裕也 耕一と戦うため、真琴側につく。耕一と戦った後、真琴に殺されそうになるも、貴之と裏葉の横槍で、死ななかった。
ダリエリらしい。
柏木耕一 柳川と交戦、真琴の横槍が入り、敗北。誰彼部隊に救助される。
安部貴之 真琴に攻撃、柳川を救出する。その後の消息不明。
0400状況報告2
NGNG長岡志保 藤田浩之を殺され、逆上する。セリオに殺されるが、後、浩之の力により、再生。
来栖川綾香 神岸あかりに殺される。残留思念が、セリオに乗り移っていた。
来栖川芹香 ガディムを制御できず、あかりと戦う。辛くも勝つが、浩之の死体とともに焼き尽くされる。
保科智子 源之助の弟子。炎を操る格闘戦を得意とする。秋子、真琴に匹敵する力を得る。水瀬秋子と交戦中。
宮内レミィ 神岸あかりに殺される。
雛山理緒 病院でバイト。志保と浩之の殺されるさまを見て、鬱状態。
姫川琴音 超能力者。浩之を殺そうとするも、葵に倒される。死亡。
松原葵 浩之とともに殺される。真琴の配下によるもの。
HMX13マルチ 改造され、HMX14ミライに移植される。
HMX12セリオ 綾香の残留思念を受ける。浩之殺害後、機能停止。
HMX14ミライ(マルチ) 誰彼軍部によって、改造されている。現在迷子。
佐藤雅史 親友、北川を殺され、逆上。霧島聖の横にいるはずだが、存在感の薄さゆえ、忘れ去られている。哀れ。
藤田浩之 次元修正能力を持つ、プラス因子の片割れ。真琴の配下に一度殺され、後再生。その後、志保を庇って、セリオに射殺され、さらにその後、復活。現在は再生させた志保と共に、行動中。
森川由紀 七瀬彰により殺害された。しかし、復活の兆し?
緒方里奈 高位妖狐ツインテールの一人。歌で心を支配する。一度死に、復活。兄の英二と共に、祐介と交戦。
澤倉美咲 藤井冬也におもいをはせ、自殺。
河島はるか 負の次元修正能力の持ち主。電波使い。藤田浩之より『力』を譲り受ける。智子の加勢にやってきた。
観月マナ 高位妖狐、ツインテールの一人。加奈子と戦い、死亡。
篠塚弥生 半妖狐。森川由紀を愛していた。高倉みどりに思いをたくし、死亡。
藤井冬弥 森川由紀の恋人。由紀を殺した彰と和解、由紀を復活してくれるよう、スフィーに頼んだ。
七瀬彰 美咲に思いをはせ、自殺の原因となった冬弥を殺そうとした。現在、和解している。
緒方英二 通称、銀狐。緒方理奈の兄。一度死亡後、再生した。真琴配下だが、別の目的をたくらんでいる。祐介と交戦中。
0401状況報告3
NGNGスフィー・リム・アトワリア・クリエール
骨董美術品密輸商人。魔法使いにして、徹底合理主義者。生涯最大の術の準備を行っている。現在は病院内部に、結界を張っている。
リアン・エル・アトワリア・クリエール
スフィーの妹。めがねっこ。死にかけていた岡田を救出。ポテトの不思議な踊りにMPを吸われる。彩、佳乃と共に、塚本千紗と戦闘開始。
高倉みどり 弥生の思いを伝えた後、真琴と交戦、死亡する。
牧部なつみ 緒方理奈の精神支配により、自殺。
宮田健太郎 妖刀、村雨を追ってきた。現在、柳也に憑依されている。往人と合流、丘に向かう。
長瀬源之助 過労死。スフィーとリアン、智子の師匠。
三井寺月代 軍部特殊部隊『誰彼』の一人。柏木姉妹の治療をしていた。
砧夕霧 軍部特殊部隊『誰彼』の一人。柏木姉妹の治療をしていた。めがねっこ。
桑島高子 軍部特殊部隊『誰彼』の一人。霧島聖と医療機関で知り合った。御堂・岩切と交戦中。
石原麗子 軍部特殊部隊『誰彼』の一人。女医。霧島聖とは旧友にして先輩。御堂・岩切と交戦中。
坂神蝉丸 不死身の軍人にして、強化兵。誰彼部隊きっての実力者。天然。
御堂 南部十二式、南部十四式カスタムを扱う。蝉丸の宿敵。ギャグ要員か、天然ボケか、どこか抜けている。
岩切花枝 強化兵士。生命樹が狙い。北川を殺害。御堂と二人そろって、独自のアホ空間を作り、霧島聖を苦しめている。
水瀬名雪 水瀬秋子の娘。椎名繭に敗北。パンドラの箱に負を浄化され、正気に返る。現在あゆを看病している。
水瀬秋子 史上最凶の邪術士。あらゆる術を使いこなし、狡猾にして残忍。しかし、真意は不明。保科智子と交戦中。
影の秋子 死亡した志保の前に現れた、秋子の影。秋子が切り捨てた、慈愛と母性を感じさせる。
沢渡真琴 妖狐の長にして、最強の戦闘力をもつ古の獣。天野と翼人、千年の決着を付けるべく、交戦中。
天野美汐 妖狐・沢渡真琴と、交戦中。翼人、神奈をその身に宿す。
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