ピー―――ン―――ポー―――ン
間延びしたインターフォンが、葉子の苦笑を誘う。どうやら来訪者は連打に飽きてテクニカルな技を使い始めたらしい。
こんな子供じみた真似をするのは、おそらくセールスマンなどではないだろう。魚眼レンズ越しに外を確認すると
やはり見知った女の子が諦め悪くボタンに手を伸ばそうとしているのが見えた。
「こんにちは、由依さん。お久しぶりです」
ドアを開けてそう挨拶した葉子に、ドアの前の少女…名倉由依は一瞬驚いたように大きく口を開けた後
「うわぁっ、葉子さんもいらしてたんですねぇっ。おひさしぶりですっ」
と、屈託のない笑顔を見せた。その笑顔に自然と笑顔を返す葉子の目に、ふと止まる物体がある。
「由依さん…今日はそちらの件で?」
そういって葉子が指し示したのは由依が持っている物――そう、見間違いや偶然の一致でなければ先ほど自分が目にした物と同じ種類の封筒――だった。
「あ、はいっ。実はですねぇっ。晴香さんが懸賞に当たったとかで私にくださったんですけど、ひどいんですよぉっ!
 『あ、私は良祐といくから。一枚あまってる分をあげるわ。ほしけりゃくれてあげるけど、3000円くらいで』ってどう思いますかぁっ!?」
そう言ってプリプリと怒ってみせる。どうやら、一人で行ってもつまらなそうなので、とりあえず欲しがりそうな郁未の元へ持ってきたらしい。失礼さ加減では、由依も晴香もいい勝負ではないかと言うところだろう。
「とりあえず、中へどうぞ。私が言うのもおかしいですけれど」
そういって葉子は由依を招きいれた。チケットが三枚なので、どうしようか…というのが葉子が今日郁未に招かれた理由だったが、どうやらその話し合いは必要なくなりそうだ。
友人との旅行…。その自分には馴染みの薄い響きに少しだけ葉子の胸が躍った。
「楽しいものになるといいですね」
葉子は軽やかに前を歩く由依の背中にふんわりとした微笑を浮かべながら、奥で待つ郁未の元に逸る足をほんの少しだけ緩めた。
【郁未・由依・葉子】参加決定(後発)