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あれぞクラナド

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0001ひふみさん01/11/13 10:06ID:+GCHMdva
昨日のスーパーテレビ見たか?
0089名無しさんだよもん01/12/10 20:31ID:VYgkWOyT
その後も杏と少し話をして、俺たちはゆうなぎを出た。
ちなみにワリカンだ。
杏はおごってくれるつもりらしかったが、なんとなく、な。

店を出ると辺りはすっかり朱に染まっていた。
その陰影を強調された雲が、ゆっくりと流れていく。
温みのある風が肌で感じられた。

「綺麗だね」
「夕焼けなんて、毎日見てるだろ?」
空を仰ぎながら説得力のない言葉を紡ぐ。

「でもこの辺りの夕焼け、綺麗だと思うよ。空気が澄んでるからかな?」
「ま、たいして都会でもないからな」
「そうだね」
「空気が澄んでると夕焼けが綺麗になるのか?」
「そうなんじゃないかな? よく知らないけど」
「…適当かよ」
そんな会話を交わしながら歩く。
と、急に杏の足が止まった。
どうした? と俺が訊く前に、声がかけられる。

「…お姉ちゃん?」
「…椋?」
オレンジ色の斜光の中。
やや離れた場所に、杏の双子の妹――藤林椋が立っていた。
0090名無しさんだよもん01/12/10 21:04ID:VYgkWOyT
「お姉ちゃん、なんでこんなところにいるの?」
「椋こそどうしたの? 今日は帰り、遅いんだね」
「もう…やっぱり」
「?」
「今日、クラス委員の集まりがあったの。忘れてたでしょう?」
「…あ」
杏が大げさに驚いてみせた。

「ごめんっ、きっぱり忘れてた」
「謝るんだったら、副委員の稲城さんに謝っておいて」
連絡事項もちゃんと訊いておいてね、と椋が続ける。
妹に叱られる姉というのもなかなか新鮮な眺めだった。
…と言っても、双子だけど。

「それで…お姉ちゃんは何をしてたの?」
「えーと、話せば長いんだけど…」
そこでようやく、椋が俺に気付いた。

「えっ…? 岡崎、さん…?」
いきなり丁寧語になる。さっきまでのくだけた口調は、姉妹だからこそなのだろう。
その瞳にわずかに警戒の色が浮かぶ。
…まあ、俺は不良らしいからな。普通はこういう反応か。

「今さらよそいきのしゃべり方しなくてもいいじゃない、椋」
かすかな緊張感をけとばすように、姉が妹の肩を抱く。
不意をつかれ、妹は戸惑う。
杏がこちょこちょとその脇腹をくすぐる。
ひゃっ、と悲鳴を上げて体を離し、椋が抗議をする。
そんなことをしているうちに、いつのまにか場は和やかになっていた。
0091名無しさんだよもん01/12/10 21:36ID:VYgkWOyT
「えっと…こんばんわ、岡崎さん」
「こんばんわだぞ、藤林スモールシスター」
「…それはもういいから」
「…?」
理解できない様子の藤林(妹)。

「それで…お姉ちゃんに何か用事だったんですか?」
「…まあな。と言っても、俺から誘ったわけじゃないが」
「え…?」
驚いたように杏を見る椋。
俺と姉の間に接点を見出せないでいるのだろう。
無理もない、俺だって最初は訳がわからなかったんだから。

「お姉ちゃん…」
「…もう、椋ったら野暮なんだから」
「…え?」
「年頃の男女が一緒にいるっていったら、決まってるでしょ?
 デートだよ、デー」
そこで言葉が途切れる…俺が杏の頭をはたいたからだ。
ぺしん、と気の抜けた音がした。

「…嘘をつくな、嘘を」
「いったぁ…軽い冗談じゃない…」
「冗談に聞こえないんだよ、藤林(姉)が言うと」
「…今ので脳細胞が三十六個は死んだよ…」
数えたのか、お前は。
まったく…こいつは話を茶化す天才だな。
椋はと言えば、そんな俺たちのやりとりをぽかんと見ていた。
0092名無しさんだよもん01/12/10 22:33ID:VYgkWOyT
日の沈む方向に二人は去っていく。
その背中が見えなくなる前に、杏がこちらを向き、何度か手を振った。
椋も振り返り、俺にぺこりと頭を下げる。
赤々とした逆光の中、姉妹の影は並んで伸びる。
…なんだかんだ言って、仲いいんだな。
なぜか胸がずきりと痛んだ。

結局、話がうやむやのままに俺たちは別れた。
椋に詳しい事情を説明しなかったのは杏の気遣いだったのだろう。
他人にべらべら喋ることではないという判断だ。たとえ、相手が妹であっても。
もちろん、杏が椋を信用していないという訳ではない。
必要だと思えば打ち明けるだろう。



重い扉を開ける。
暗い部屋。
冷めた部屋。
それでも…俺の家は、ここでしかありえない。

シャツを脱ごうとして、違和感に気付く。
右手に包帯。
…ああ、まだ巻いてたんだっけか。
杏には指摘されなかったし、椋にも何も言われなかったから、忘れていた。
しゅるしゅると長い布をほどく。
傷口はとっくに塞がり、かさぶたが出来ていた。
役目を果たした包帯をくずかごに捨てるとき、一瞬、これを巻いたきゃしゃな手を思い出した。

「明日も…パン祭りかな」
…そういう連想でいいのか、俺。
0093名無しさんだよもん01/12/13 22:15ID:XyOpxndN
期待age。
0094名無しさんだよもん01/12/14 00:05ID:Wet11EFz
どれ?
0095名無しさんだよもん01/12/14 23:50ID:dpsoISK+
期待sage
0096名無しさんだよもん01/12/15 02:25ID:VX9cbJmB
では俺も期待するとするか。
がんばって俺たちを楽しませてください。
0097名無しさんだよもん01/12/15 02:35ID:vWWzcxbN
このSSいいよぉまじで
0098名無しさんだよもん01/12/15 15:31ID:1WBcSIuP
期待sage

スゲェ......( ゚Д゚)
0099名無しさんだよもん01/12/16 06:50ID:4suJRTQ8
有象無象の区別無い嵐のような2chにおいて、ここまで正当な評価を受ける作品は珍しい。

文章を知っている人の書いたものだ…。
にじみ出るセンスも秀逸だが、なにより『正しい文法』に関しての琢磨の跡が見受けられる。

まぁ…なんだ。
細かいこと抜きに素晴らしいってことだ。
0100名無しさんだよもん01/12/16 07:59ID:k7CzVdk3
sageろッ!
0101名無しさんだよもん01/12/17 00:17ID:eQ0z4b/3
sage
0102名無しさんだよもん01/12/17 19:08ID:deeNuuga
すっかり週一ペースになってしまってますね…申し訳ない。
でもなんというか、やはり反応があると嬉しいですね。
さてさて、久しぶりに続行です。
0103名無しさんだよもん01/12/17 19:10ID:deeNuuga
夢を見た。
見覚えのない、でもどこか懐かしい景色。
そのくすんだ色調の中、古河が泣いていた。
…お前、夢の中でまで泣き虫なのか。
俺はため息をつきながら、現実よりも幼い古河の頭を撫でた。
髪のさらさらとした感触が、やけにリアルだったことを覚えている。
…正直、少しお前がうらやましいよ。
…俺は泣けないから。
ごう、と強い風が吹いた。

「…終わりか」
俺は目を覚ましていた。
珍しいことに、夢の内容をかなり鮮明に覚えている。
けれど、それも今だけだ。
きっとすぐに忘れてしまうのだろう。

「…で、今は何時なんだ?」
自然派の俺はあえて時計を見ず、窓から射し込む光に目をやった。(現実逃避)
…朝にしては日が高すぎる。
俺は観念して時計を見る。
…短針が素敵な数字を指し示していた。

「…誰だよ、体質が改善されたとか言ってたのは」
…俺だな。
空しい自問自答をしながら、俺は学校への道を歩く。
今さら走る気にもなれなかった。どうせ三時限目には間に合わない。
流れていく街の眺めに、俺だけがひとり不釣り合いだった。
0104名無しさんだよもん01/12/17 19:41ID:deeNuuga
最後の関門、校門前の坂を越えて、俺は校舎に入った。
ただでさえ気力をそがれる坂なのに、遅刻してくるとさらに長く感じる。
俺にもまだ良心の呵責というものがあったのか…
…いや、単に面倒くさかっただけだな。
ともかく、Uターンしてさぼりたい衝動をこらえた俺は偉い。偉いぞ!!

「偉いやつはそもそも遅刻なんかしねーよ」
陽平が血も涙もないツッコミを入れてくる。
どうやら考えていることを口に出していたらしい。

「陽平、お前なんで廊下にいるんだ? さてはさぼりか?」
「あほ、今は休み時間だ。つーかお前は休み時間に合わせて登校したんじゃないのか」
…そう。遅刻してきた場合、授業中に教室に入るよりも、
休み時間のうちに紛れ込んでしまった方が気楽でいいのだ。
遅刻の常習犯である俺は、このタイミングを体で覚えている。
…やはり俺は不良なのかもしれない。

「いやぁ、しかしなんだな。平和ってのはいいもんだなぁ、朋也」
「…頭でも打ったのか?」
「太陽が東から昇り、西に沈む。お前が学校に遅刻する。なべて世は事も無し、だ」
「俺の遅刻は自然現象レベルかっ」
そんなに俺を留年させたいのか、こいつは。

…留年?
そういえば、古河は一年以上も休学してたんだよな。
ということは…留年してるんじゃないのか?
ということは…
0105名無しさんだよもん01/12/17 20:08ID:deeNuuga
「…嘘だあぁっ!!」
「おわっ!? ど、どうした朋也!?」
「あいつが、あいつが俺よりも年上なわけが――」
「はぁ?」
「あの童顔だぞ!? 18でも疑わしいってのに――」

すぱーんっ!!
俺の頭に衝撃が走った。文字通り、物理的な意味で。

「岡崎君、うるさい」
振り返った先には、なぜか不機嫌そうな杏がいた。
小脇にバインダー式のファイルを抱えている。どうやらあれで俺を叩いたらしい。

「痛いぞ。撲殺する気か」
「これくらいで死ぬんだったら苦労しないよ」
「同感だ」
「…陽平。お前はどっちの味方なんだ?」
「とりあえず廊下でいきなり叫び出すやつの味方ではないな」
…ごもっとも。
我ながら馬鹿なことをしたと思う。でも、ほら、なあ?

「…で、何を叫んでたの?」
ぐ…鋭い質問しやがって…
…と言うか、それくらいしか訊くことないよな。

「確か年上とか、童顔とか…あ」
「…なんだよ」
「ふふーん。そう、そういうことなんだ」
杏がとても悪い笑顔を作った。
0106名無しさんだよもん01/12/17 20:47ID:deeNuuga
「一年の差くらい気にすることないよ」
…どうやら、古河のことだとばれてしまったらしい。

「ほら、一つ上の女房は金のわらじを履いてでも探せって言うじゃない」
「誰が女房だ、誰が」
「…岡崎君。未来はどうなるかわからないよ?」
どこまで本気で言ってるんだ、こいつは。
俺は助けを求めようと、となりの陽平に視線を送った。…いない?
辺りを見回すと、陽平はさっさと教室に入ろうとしていた。

「陽平、どこに行くんだ」
「バカンスに行くように見えるか?」
「あるいは」
「…教室に戻るんだよ」
「なんで急に」
「人の恋路は邪魔したくないんでな」
…お前はどうしていつも話をややこしくするんだよ…

「春原君って、気配りの人なんだね」
違う、違うぞ杏。お前は陽平が気を使って席を外したと思ってるんだろうが、それは大間違いだ。
あいつは俺とお前の関係を勝手に想像して、面白がってるだけなんだぞ。
と言おうとしたときには、もう陽平の姿は見えなくなっていた。
逃げ足の速いやつ…

…に、しても。
俺はあらためて杏を見た。
やはりどこか不機嫌そうにしている。
放っておいてもいいのかも知れないが、俺は理由を訊いてみることにした。
0107名無しさんだよもん01/12/17 21:14ID:deeNuuga
「…なに怒ってるんだ?」
「…遅刻」
「へ?」
「遅刻したでしょ」
「…いつものことだろ」
「わ…開き直った」
…そりゃ、俺もどうかと思うけどな。

「岡崎君。遅刻なんかしてる場合じゃないよ」
真剣な表情で杏が言った。
…遅刻していい場合ってのもあんまり無さそうだけどな。

「古河さんと一緒に登校しないと駄目だよ」
「…なんでそうなる」
「それが自然でしょ?」
「あのなあ…」
確かに古河の力にはなってやりたい。だけど、それは過保護にするという意味ではない。
それに俺みたいな奴がべったりくっついていたら、他の友達なんか出来るはずがない。
…と言うのは建前で。

「毎日並んで登校なんかしたら、まるで…」
「まるで?」
「…付き合ってるみたいじゃないか。古河に迷惑だろ」
「んー。でも彼女もまんざらでもないと思うけど」
「勝手なこと言うなよ」
「だって今朝の登校中、岡崎君のこと探してたよ」
「…え?」
「言ってなかったっけ? 今朝ね、古河さんと一緒に学校来たんだよ」
杏がしてやったりという笑顔を見せた。
0108名無しさんだよもん01/12/17 21:59ID:deeNuuga
「…いきなり一緒に登校したのか?」
「うん」
「よく古河が遠慮しなかったな…」
「最初はちょっと戸惑ってたみたいだけど、熱意で押し切ったよ」
…古河があたふたする様子が目に浮かんだ。

「お節介と思うならそれでもいいよ。でも、古河さんと話してみたかったんだ」
「…ん」
まあ、お節介な奴が必要だって言ったのは俺だしな…
杏は軽そうに見えるけど、肝心なところはちゃんとしている。
…なんだ。俺は結局こいつのことを信用してるんじゃないか。
でも…

「…なぁ、藤林」
「なに?」
「どうしてそんなに古河によくしてくれるんだ?」
「前にも言ったでしょ? これでも一応クラス委員だから…」
「それだけか?」
「……」
あごの辺りに手を当てて、考えるそぶりを見せる杏。
…自分でも意識してないのか?

「藤林、お前もしかして…」
「…もしかして?」
「…レズ?」

すぱこーん!!

フルスイングのファイル角アタックが、俺の脳天を打ち抜いた。
0109名無しさんだよもん01/12/17 22:51ID:deeNuuga
「…頭が痛い」
英語教師の高い声がやけに耳障りだった。
したたかに打たれた頭は、四時限目が始まった今でも疼いていた。
…杏が凶器を持っているときは、冗談は控えよう…

「どうした朋也。痴話ゲンカか?」
「…うるさい」
「おお、怖」
全くこたえていない様子で陽平が言う。
教師に気付かれないように話すことなど、俺たち二人にとっては朝飯前なのだった。

「陽平…もしかして、偶然にも頭痛薬持ってたりしないか?」
「…お前、俺のことを歩く薬局だとでも思ってるのか?」
「…少し」
打撲に頭痛薬は効かないだろうけど、気休めにな…

「だが良かったな、朋也。やさしさで出来ている頭痛薬なら、偶然にも」
「持ってるのか!?」
「持ってるわけないだろ」
「……」
…解っていた。こいつはこういう奴なんだ。
むしろ、だまされた自分に腹が立つ。

教室の壁にかかった時計を見る。
…あと三十分、か。
昼休みになったら、中庭に行って、古河と会わなければならない。
あの後、杏と交わした(と言うか、交わさせられた)約束だ。
…まあ、言われなくても行くつもりだったけどな。
そして今日もパンの山を…
…頭が痛い。
0110名無しさんだよもん01/12/18 13:32ID:K2biFJNa
杏が良いナリヨー
0111名無しさんだよもん01/12/18 17:48ID:luZIxVpD
奴はクラナド
あれぞクラナド

クラ クラ
ナド ナド
クラ クラ
ナド ナドーーーーッ!!
0112名無しさんだよもん01/12/19 14:28ID:GPeFduuR
藤林シスターが...杏たんが...ハァハァ...(;´Д`)
攻略可能なのはどっちなんだろ...ハァハァ...
0113名無しさんだよもん01/12/19 17:38ID:lsnPPbWK
やっぱり最初は渚シナリオなんだろうか?
あえて杏シナリオキボンとか言ってみる(w
0114名無しさんだよもん01/12/20 07:17ID:1KrmpkZI
隠れた名店にめぐりあった時ってのはこんな気持ちなのかも…
いや〜、ビックリしたねホント。
各キャラの性格付けが丁寧で凄く自然に馴染んでしまった。
本物とのギャップが今から怖いッす。
0115名無しさんだよもん01/12/20 23:45ID:HNnQYrYr
>>114
なんだかこっちの雰囲気に洗脳されそうだよ……。
いざクラナドが発売されたら「イメージが違う!」とかKeyにクレームがあったりして(藁
0116名無しさんだよもん01/12/21 09:34ID:7EhXOCRw
メンテナンスを、させて頂きます。
0117名無しさんだよもん01/12/21 09:40ID:AxXpJQGb
>115
クラナドが発売されたら、keyにクレームはしないけど、
「こっちが本当のクラナドだ!」と主張するかも(w
0118名無しさんだよもん01/12/22 20:15ID:GQwsJwos
一日半ほど無人のようなのでメンテナンスを致します。
0119なにがしだよもん ◆ie2wgyeo 01/12/22 21:56ID:UOnEi1Jl
「この物語を読んでいると、ワクワクする。連載ということもあるけど、世界の広がりを感じるから」

「どのような結末であれ、最後まで読んでみたい。応援しています。頑張って下さい」
0120名無しさんだよもん01/12/23 23:52ID:Ccf529h1
前スレに比べて人がかなり増えたなあ。

とりあえず週2ペースで連載して欲しい。
0121名無しさんだよもん01/12/24 02:19ID:odfoyY05
世間では冬休みらしいから、メンテの間隔が短くなりそうだ。
………21歳以上には、余り関係ないんじゃないの? という意見は却下(笑)。
あえて解らないふりをするのも、21歳以上の対応。
0122名無しさんだよもん01/12/24 02:31ID:se+4FzVB
おっと、sage。
0123名無しさんだよもん01/12/24 07:38ID:2DS43Dm9
>>111
今さらなんだがペインキラー??
0124名無しさんだよもん01/12/24 19:06ID:Z12ISJSG
一週間のごぶさたでした。…って、書き込みがえらく増えてるよ〜
杏、大人気だなぁ…
この勢いに乗って、連載もペースアップしたいです。したいんですが…あう。
とにもかくにも、久しぶりに続行です。
0125名無しさんだよもん01/12/24 19:07ID:Z12ISJSG
中庭の片隅、日当たりが悪く人気のない場所。
そこに座る古河。
すっかり見慣れた感のある眺めに、俺は一歩ずつ近付いていく。

「…?」
ふと違和感を覚え、俺は歩を止める。
何か、昨日までと違う。…なんだ?
古河はまだ俺に気付いていないらしく、パンの袋と格闘していた。
…パン?
そうだ。パンの山がないんだ。
どうやら古河の抗議は聞き入れられたらしい。
…それはいいんだが、いつまで開封に苦戦してるんだ?

「…ほれ、貸してみろ」
「あっ…?」
ひょい、とパンを取り上げる。
古河が驚いた表情で見上げてきた。
どうやらやっと俺に気付いたようだ。…本当にカンが鈍いな、こいつは…

ぱん、と音を立てて(…シャレじゃないぞ?)パンの袋が破ける。
感心したようにため息をもらす古河。
…当たり前のことだと思うんだがなあ…

「この袋、丈夫で…なかなか開けられなかったんです」
「…そうなのか?」
一応、手の中のそれを観察してみる。
言われてみれば、ほんの少し厚いような気もするが…大差はないだろ。
と、袋に書かれた文字が目に止まった。
0126名無しさんだよもん01/12/24 19:07ID:9fvp+8Bw
楽しみ
0127名無しさんだよもん01/12/24 19:36ID:Z12ISJSG
『製造 古河ベーカリー』

「…古河?」
「はい?」
ひとりごちた俺に、古河が返事をした。

袋に印刷されている文字…古河。
今となりに座っている奴…古河。
この二つを総合して考えると…

「…そうか、同姓同名か…」
「どうしてそうなるんですか」
ぬお、古河にツッコまれた。…なんか悔しいぞ。

「じゃあ、他人のそら似…」
「わたしの家、パン屋さんなんです」
…今度は流しやがった。こいつ、実は結構いい性格してるのか?

冗談はともかく、古河がパン屋の娘だとは知らなかった。
なるほど、だからあんなに大量のパンを持ってきていたのか。
住宅地がないはずの大通りで別れたのは、店の中に家があるからなのだろう。
しかし…売り物に手をつけるのはどうかと思うぞ、古河の親父。

「だから、あんなにたくさんパンを…」
予想通りの発言をする古河。

「でも、お母さんの説得のおかげで、今日からは適量ですっ」
手の中にある一つきりのパンを嬉しそうにかかげる。
と、古河の表情がこわばった。
…どうやら、俺が手ぶらであることに気付いてしまったようだ。
0128名無しさんだよもん01/12/24 20:04ID:Z12ISJSG
「あ、あの…。岡崎さん、お昼は?」
「…食ってきた」
「…嘘です」
…そうです。

「も、もしかして…パンを食べるの、手伝ってくれるつもりで…」
「…全くそんなことないぞ」
「…ほんとう、ですか?」
…嘘です。

「…さっき起きたばっかりだから、あんまり腹が減ってないんだ」
これは一応、真実。
俺の言葉が足りなかったせいか、古河が首をかしげている。

「あー…俺、今日は遅刻したんだ」
「遅刻、ですか?」
「常習犯だからな」
…堂々と言うようなことでもないが。

「じゃあ、バケツを持って廊下に立たされたりしたんですか?」
「……」
古河がまた時代錯誤なことを言い出した。

「そんなわけあるかっ。お前、そんな奴を見たことがあるのか」
「…ないです」
「だろ?」
「…だから、みんな真面目なんだと思ってました」
「……」
頭痛が…
0129名無しさんだよもん01/12/24 20:41ID:Z12ISJSG
本日の古河ランチは、細長いコッペパン。
縦に切れ目が入っている。おそらくは中にジャムか何かが詰まっているのだろう。
…そんな心底どうでもいい観察眼を磨いてみる。
古河がぱか、とパンを二つに割った。
ふむ、中身の充実している中央から食べる派か?
…と思っていたら、その片割れが俺に差し出された。

「…なんだよ」
「半分こ、です」
「食欲がないって言ったろ?」
「駄目です。ちゃんと三度のご飯を食べないと、体に悪いです」
…パンだけどな。

「いいって。それ一個が古河の適量なんだろ?」
「駄目です」
…なんというか、古河には妙に意固地なところがあると思う。
こんなことでケンカしたくはないので、諦めて受け取ることにする。
…最近、根負けしてばかりいるような気がするな。

しかし、昼飯を抜くことにしたとたん、パンの山が消えるとは…
間が悪いというか、なんというか…
俺たち二人はすれ違ってばかりだ。
…せめて、もう少し様になることですれ違いたい。
とりとめない思考をめぐらせながら、ハーフサイズになってしまったパンをかじる。
それでもやっぱり美味いパンだった。

「うれしいことが…ありました」
あらかたパンを食べ終わった頃、古河がそんなことを言い出した。
0130名無しさんだよもん01/12/24 21:48ID:Z12ISJSG
「…今朝、同じクラスの藤林さんが、一緒に登校しようって言ってくれたんです」
「そうか」
我ながら白々しいな…とっくに知っているくせに。
そこでふと思った。古河は、杏と俺の関係に気付いているのだろうか?
…いや、だったらわざわざ報告なんてしないだろう。
今のところ、杏は別行動をとるつもりらしい。ってそんな大したことじゃないけどな…
ここはとりあえず杏に合わせておくか。

「良かったじゃないか。あいつ、いい奴だと思うぜ」
…でたらめを言っているわけではないが、なぜか歯が浮きそうになる。

「藤林さんとお知り合いなんですか?」
「まあ、去年同じクラスだったからな」
俺は最後のひとかけらを口に放り込みながら言う。

「えっと…岡崎さんは、藤林さんとお付き合いしてるんですか?」
「むぐっ」
最後の一口が気管に入りそうになり、俺は激しくむせた。
慌てて背中をさすってくる古河。

「ごほっ…お、俺と藤林が、なんだって?」
「あの、だから…お付き合い…」
今、口に何か入っていたら、間違いなくもう一度むせていただろう。
それほど意外な言葉を、古河は平然と口にする。

「…去年クラスメイトだったってだけだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「でも、今日、廊下で…」
「……」
あれを目撃されてたのか…
…いい加減に人目を考えて行動しろ、俺。
0131名無しさんだよもん01/12/24 22:07ID:locJx7z3
わ! こんなスレあるんだ!
……凄ぇ!(褒め言葉葉です)
0132名無しさんだよもん01/12/24 22:32ID:Z12ISJSG
杏の奴も肝心なところで抜けていると思う。
…まあ、原因は俺…いや、そもそも古河が童顔なのがいけないんだ。きっとそうだ。
とにかく、元クラスメイトってだけじゃ古河は納得しないだろう。
だからって恋人ってのは絶対に却下だ。となると…

「…友達だよ」
「…え?」
「俺と藤林杏は、友達だ」
「そうなんですか?」
「変か?」
「いえ。友達の友達は友達、ですねっ」
何が嬉しいのか、古河はにっこりと笑った。

…しかし、杏も古河も、すぐに色恋沙汰に結びつけようとするよな。
やっぱり女の子はそういう話題が好きなのだろうか?
…でも陽平という例もあるしな…

なにげなく古河を見る。
少し垂れ目がちではあるが、まあ整った顔立ちと言えないこともないという意見にやぶさかではない。
…こうして二人で並んでいると、恋人同士のように見えるのだろうか。
(彼女もまんざらでもないと思うけど)
そんな杏の言葉が思い出される。

「あの…」
じっと見つめていたせいだろうか、古河が居心地悪そうに顔を赤らめた。
0133名無しさんだよもん01/12/24 22:57ID:Z12ISJSG
「わたしの顔に、何かついてますか?」
「ああ。目とか鼻とか口とか」
「あたりまえですっ」
「…それと、飯粒がくっついてる」
「えっ」
わたわたと口の周りを手探りする古河。
…馬鹿。
お前、パン食だったろ。

簡単にだまされた古河を見ていると、さっきまでの自分の考えがアホらしくなった。
友達だの恋人だの、そんな線引きに大した意味はない。
俺と古河が一緒にいる。それだけだ。

「ど、どこについてるんですか〜」
ほとんど涙目になって古河が訊いてくる。
「冗談だ」と告げると、リスのように頬をふくらませて一言。

「うー」
「うー…って、まねしないでくださいっ」
「毎回同じパターンなのが悪い」
「うー…」
「お、今のは読めなかった」
「…うー」

野生に返った古河を飽きずにからかう。
そうこうしているうちに、昼休みは終わろうとしていた。
0134名無しさんだよもん01/12/24 23:25ID:Z12ISJSG
「…明日の昼もあそこだろ?」
「はいっ」
「多分また寄るから」
「あ…パンの数、元に戻しましょうか?」
「…頼む、やめてくれ」
「はい。…ふふっ」
「どうした?」
「…待ち合わせできるって、いいですね」
「安上がりな奴…」

階段を上りきって、左右に別れる。
古河、丁重すぎるほどのおじぎ。俺もふざけ半分で礼を返す。
はたから見れば滑稽かもしれない。けれど少し楽しいと思った。
そして、小さな背中が去っていく。

「さて…俺もさっさと教室に戻るか」
そう言って振り向いたとき、一人の女子生徒と行き違った。
思わずその姿を目で追う。
俺と同じ三年生らしいが…どこに行くんだ?
もうすぐ午後の授業が始まるというのに…移動教室だろうか?
でも、手ぶらみたいだしなぁ…
女子生徒は渡り廊下に向かう。あの先に、教室なんてあっただろうか?

「おい、もうすぐ授業始まるぜ」
人に説教できるような立場ではないが、一応忠告しておく。
声に振り返った女子生徒は、無言でこちらを見ていた。
…なんか、心ここにあらずって感じだな。
女子生徒はしばらくそのままでいたが、やがてくるりと背中を見せると、渡り廊下を歩き出した。
さらに呼び止めようとしたところで、チャイム。
俺はあきらめて教室に戻ることにした。
0135名無しさんだよもん01/12/25 02:13ID:b8FBjKDM
「一ノ瀬ことみ」らしき女性が登場した時点で、次週に続くっ! んですよね?(笑)
来週この続きを楽しむ為にも、メンテに協力させて頂きますわ〜。

ことみはスタイル良さそうなので、まぁ色々と(笑)楽しみにしております。
というか、このスレマターリとしていて良いですね〜。
0136名無しさんだよもん01/12/26 10:12ID:0q+Eikvb
めんて
0137名無しさんだよもん01/12/27 00:16ID:xVJjhrWL
…オフィシャルで新キャラ追加されましたね…。
…がんばれ〜。
0138発泡美人01/12/27 03:25ID:7Q6qxMc9
兄弟スレとしていっそうのご活躍とご発展を願っております。
これからも頑張ってください
0139名無しさんだよもん01/12/28 02:58ID:z2hLETam
大晦日に、ここを訪れたいのでメンテage(笑)
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