オーケストラは良くなったが、あとは指揮者です。

みんな上手なんですよ。いいご家庭に生まれて、いい教育もしつけも受けて、学歴も
充分で、技術面でも内外の優秀な指揮者につける。だから棒を振ったりすることや楽譜
を読むことは、うまい。そういうところは私など、若いころに手探りでやってきて、素人と
玄人の境目が判然としない。阪急で百貨店やってたやつがいきなりこの世界へ入って
きたんですから。その境目の時代というのは無我夢中でした。

いまの人はそんなことはなく、そこのところは大変結構なんだけど、やっぱり問題は
パーソナリティ、キャラクターでしょう。

みんな優等生でキャラクターがない。子供のときから優等生で、家庭でも優等生で
まじめで勉強よくして。だからと言って、大阪の言葉で言う「ゼニのとれる芸」につながる
でしょうか。この仕事、お客さんがワッと来てくれないと駄目なんです。大阪のフェス
ティバルホールで三千人の客が来てくれないと、儲からないんだから。三味線がうまい
から、いい義太夫、というわけにいかないのと同じです。

出典:朝比奈隆「指揮者の仕事」(実業之日本社)pp.30-31