>弟子にはテンポを絶対に揺らすな!と指導していた箇所で、自分では
>大きくテンポを動かして演奏していた、という弟子の書いたものを
>読んだことがある。

ここがポイントね。揺らしてないつもりで弾いてるのが、
物理的な音符の長さで言うと、ずれてるということ。
ここにベートーヴェンの本質がある。

ペダルの指示記号以上に伸ばして、休符を飛び越えることもある。
休符は、その物理的な瞬間の時間で振幅がゼロになることを意味していない。
その時々、楽曲上の文脈の中で違う。
この個々のフレージングは、スコアには書ききれない。
速くしろ、と書いてなくても速くしないといけないところも多い。
これらが非常に複雑に妥協なく書かれており、
各フレーズ、和音の関係から、はては楽章間まで関係し、
かつ必要最小限の指示記号しか書かれないので、
演奏者の仕事は膨大になる。

ケンプの演奏がこうした解釈に基づいてベートーヴェンを表現しているとは
とても想像すらできない。