バックハウスは自動演奏とは対極にある演奏です。
技術的に特に目立つものはありません。
むしろ下手な方ともいってよいぐらい。

バックハウスはスコアをなぞるような演奏はしません。
感情の解釈がはじめに来ます。
相当時間をかけないと、この演奏にはなりません。
素人や音大生が一ヶ月で仕上げるのとは訳が違う。
月光に限らず、楽曲全体はもちろん、
一つ一つのフレーズを注意深く追求しています。

ケンプはそういったタイプではありませんが、
やはり自分の解釈がある。技巧的に優れてないのは共通するところです。
ある意味逆の音楽だが、命をかけて追いかけているケンプとバックハウスが評価されているのは
ベートーヴェンだからにほかなりません。
日本人でも、女性でも、気持ちさえあれば、彼らに迫る演奏が可能なのです。