他の楽器ではアーリー vs. レイトの対立はないという趣旨の書き込みがありますが、
これにはヴァイオリンという楽器の特性が大きく影響していると思います。

例えばピアノの場合、ある程度まで手が大きくならないとショパンやシューマンといった
ピアノの王道の本格的な曲は弾けないので、ピアノ自体はもちろん子供の頃から習うと
しても、音高に入る頃には通して弾くだけなら大体どんな曲でも弾ける(これは
ヴァイオリンならばごく普通のことですが)、といったことはまず望めません。

ヴァイオリンには分数楽器というものがあるので、小学生でも分数楽器で超絶技巧の
難曲を弾きこなす、といったことが充分可能です。また、ヴァイオリンは基本的には
メロディ楽器なので、複雑なアナリーゼなどをしなくても、子供でもメロディーラインを
感覚的に捉えて演奏すれば、才能のある子供ならばそれで立派な演奏になります。
ヴァイオリンの世界に昔から「神童」「天才少年」「天才少女」の逸話が尽きないのも、
このためです。

ヴァイオリンの場合、左手の指が機敏に動くことと、右手が非常に柔軟に動くことが
何より大切ですが、これは子供なら苦労しなくても自然にできるようになるのに対し、
体が固くなる一方の大人の場合、意識して努力を重ねなければできるようにはならず、
できるまでの時間も非常に長くかかるようになります。

さらに、ミスタッチさえしなければ少なくとも音程は正しく取れるピアノなどとは違って、
ヴァイオリンの場合、極めて微細な音程のコントロールが必要ですが、これも音感などが
「固まって」しまっている大人では、音程が微妙にはずれていること自体なかなか認識
できない人も多く、そういう人の場合は大変残念ながら本人がいくら努力しても正しい
音程を取れるようになる見込みはまずないと言えるでしょう。

こうしたことから、同じヴァイオリンの演奏でも、たとえて言えば中国人が生まれながらに
して中国語を話しているのと、大人になってから会話学校で勉強した日本人が中国語を
話すのとぐらいの違いが生じ、そのことから、「母語話者」と「外国語話者」との間の
「対立」もまた自然に生じてくるのではないかと考えられます。