ベートーヴェンは即興演奏が得意なことで知られていた。
演奏現場で頭に浮かんだ楽想を、推敲したりせず(勿論譜面なしで)
直接披露しても、レベルの高いものを豊富に作ることができた。
彼のピアノ演奏が、若い頃からウィーンの貴族社会で高く評価されたのは、
単に演奏技術に優れていただけでなく、即興演奏にも秀でていたからだと
言われている。

モーツァルトがいつもスムーズに苦もなく作曲していたという俗説は、
後世に創作された伝説であると現在は考えられている。

モーツァルトの楽曲、とくに初期・中期のものは、当時ありふれていた
様式通りに作曲されており、それらの楽曲は、当時の職業作曲家であれば
誰でも短期間で仕上げられるのが通例だった。また、ミサ曲K.427のように
筆が進まず未完に終わった大規模作品もある。

推敲という点では、ハイドンセットの自筆譜で何度も書き直しをしている
ことが確認されているし、晩年のプロイセンセットでは、
作曲に難渋している状況を知人に素直に告白している。
本人自身は後世の伝説のような人間像には無関心だったのかもしれない。