ヴェデルニコフの月光ソナタは、いわば、
果てしない闇の奥底に眠る、遥か昔の名もなき英雄の追憶である。
あらゆる明かりが消え、人々も獣たちも眠りに落ちた夜に、
ただ微風に揺れるこずえの響きに耳を傾けると、
いずこからか、挽歌とも子守唄ともつかぬ調べが聞こえてくる。
そうだ、ヴェデルニコフの月光だ。
夢なのか、回想なのか、よくわからぬが、
いくつかの幻影が星月夜におぼろに浮かんでは消えていく。
我々は、ヴェデルニコフに導かれて、
普段は思いもしない夜の眩暈に魅惑されるのである・・・