たしかにさ、バッハは過大評価というよりも、
いわば集中評価されているという気はする。
そもそもバッハが音楽の世界の中に取り上げ
られるようになったのは、メンデルスゾーンが
19世紀に再発見し、世の中に紹介したのがはじめで、
それ以前には何百年もの間、バッハはもとより、
その他のバロック音楽も忘れ去られていた。
そもそも、メンデルスゾーンがバッハをリバイバル
公演し、ムーヴメントを作るまでは、「クラシック音楽を聴く」
という風習すら存在していなかったのである。

たしかに、バッハが古典-近代西洋音楽の発展に与えた
影響は大きい。平均律十二音の研究・完成や、
クラビーバ(ピアノ)開発への後押し、世界中の音楽の形式の分析と
その抽出研究結果としての数々のバロック音楽、宗教音楽作品の
芸術性と完成度の高さは疑いようのないものだろう。
しかし、ここので注意したいのは、おそらくメンデルスゾーンがバッハの
作稿を見出した祭に、メンデルスゾーンの性質上、作品性だけではなく
バッハがキリスト教音楽を作っていた点や、平均律など近代音楽の基礎への貢献と
なる仕事を行っていたという古典音楽の言わば源流と言いうる事柄を理念先行的に
良しとしてバッハを推したという経緯があるのではないかと推察されることである。
このように同じバロック音楽というジャンルの中に限定したとしてもバッハ以外に
個性的で優れた音楽は存在しているし、あまりにもバッハがバロック音楽の代名詞の
ように有名になっている、すなわち集中評価され過ぎているということは現状であろう。

※メンデルスゾーンについて
祖父モーゼス・メンデルスゾーンはカントにも影響を残した有名なユダヤ人の哲学者であった。
フェリックスの家族はキリスト教に改宗し1812年にベルリンに転居した。
姉のファニー・メンデルスゾーン(後の名ファニー・ヘンゼル w:Fanny Hensel)は
よく知られたピアニストでアマチュアの作曲家であった