ロマン主義の輪郭をとらえるのは難しい。特質としては、中世趣味、物語趣味、異国趣味などがあげられる。

ロマン派は現実逃避である、とする論がある。「過去への逃避(歴史趣味)、「空間的逃避(異国趣味)」、「想像世界への逃避(文学趣味)」という具合である。

しかし、ナポレオンのエジプト遠征は、ヨーロッパ人を東方世界に近づけ、オリエンタリズムを生んだ。逃避ではなく、新たな現実の発見である。

中世趣味についても、新古典主義派は遠い、自分たちとは直接関係のないギリシャ・ローマ世界を見ていたのに対し、ロマン派は自分たちの足元のゴシック時代を見た。すなわち、自己のアイデンティティにつながるものを探し求めたのである。

この意味において、ロマン主義はまことに現実主義的であり、現代へとつながるものなのである。

ロマン主義は想像力を重視している。我々が日々の生活の中で、想像力を使わない瞬間が一時でもありえようか。たとえば、ドアのベルが鳴る。誰が来たのか想像する。お腹が空く。何を食べようか想像する。

想像力は我々の日常なのである。ロマン主義は我々が気づかずに使っていた想像力を発見したのである。