【転写】長木誠司『第三帝国と音楽家たち』【シマスタ】
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0002名無しの笛の踊り
03/10/04 11:30ID:???時はナチスがポーランドに侵攻してからしばらく経った頃。
機関銃を振り回しながらナチ親衛隊が、とあるポーランド
の町のユダヤ人ゲットーを急襲する。いたるところで銃声が
響き渡り、男も女も子供も地に伏せる。二人の親衛隊員が階
段を掛けのぼると、銃声と叫びが飛び交うなか、どこかから
ピアノの音が聞こえてくる。二人は、がらんとした部屋に行
き着く。そこにはアップライト・ピアノがある。ある若い親
衛隊兵士がこのピアノに向かい、恍惚とした面持ちで美しい
音楽を奏でているのだ。唖然とした二人は、開いた部屋のド
アから覗き込む。一人が「バッハか? バッハだろ?」と声
をあげる。もう一人が「いや、モーツァルトだ! モーツァ
ルトだ!」と答える。実はこれはバッハだ。一七二〇年頃に
作曲された<<イギリス組曲>>イ短調のプレリュードだ。
【長木誠司<著> <序章> 第2段落 P7第9行】
これを想起させるようなシーンを、我々はつい最近映画『シンドラーのリスト』のなかに見いだす
ことになる。ナチによるポーランド侵攻。親衛隊の兵士たちが、とある街のゲットーを襲う。小銃で
撃たれ、崩れ落ちる男や女、そして子供たち。銃声と悲鳴の背景に、ピアノの音楽が聞こえてくる。
どこからだろう? 彼らはアップライトピアノの置かれた、がらんとした一室に到着する。そこでは
親衛隊のひとりが陶酔した眼で可憐な作品を奏でていた。やってきたひとりが尋ねる、ドイツ語で。
「それは何だ、バッハか? それはバッハか?」「いやモーツァルトだ、モーツァルト」、ほかのひと
りが答える。演奏されていたのはほかならぬバッハの<<イギリス組曲>>イ短調の<プレリュード>だ
った。スピルバーグの皮肉が走る。
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