60年代のマタチッチというと、スラブ歌劇団のボリスだけが話題になっている
が、その後N響の客演指揮者として聞かせてくれた数々の演奏にも、忘れ難い
ものが幾つかある。ベートーヴェンやブルックナーの交響曲、スメタナの我が
祖国、そして何よりワーグナーの管弦楽曲の印象は圧倒的だった。60年代の彼
の演奏には、後年では減退した活力と推進力があったように思う。ワーグナー
で思い出したが、当時のNHK−TVのN響アワー(スタジオ収録)で、たしか
指輪の音楽の詳細なアナリーゼを、マタチッチがピアノを弾きながら解説した
ことがあった。リハーサルでそれをやったら、N響の楽員たちがこれは絶対に
TVで放映すべきだということになって、約10分ほどの楽曲解説が演奏の合間
に放送された。それを見て、マタチッチのワーグナーへの共感に驚いた記憶が
ある。この録画ビデオが今も残っていないだろうか。