フランソワの全集もの(ただし代表作のみ)持っているので、新しいCDを聴いたら
かならず聞き比べるんだけど、フランソワの譜読みの深さにはいつも感嘆させられ
る。チェスで言えば、鬼手だね。ただし、毎日聴きたいような気がしない。「濃すぎ
る」という感じ。

>現在の感覚では根本的にメカニックが弱いのが欠点だと思います。

彼の弾くピアノは、ものすごくタッチに対して敏感で、彼は微妙なタッチをコントロール
しながら音色やタッチを揃えているから、メカニックはむしろ強いと思うよ。ポリーニ
やアシュケナージは、音の強弱があるだけで、鳴っているのは「スタインウェイ」製造番号
△△△の音でしかない。たとえば、ショパンのエチュード作品10−1では、フランソワは
(何を思ったか)一音一音をノンレガートっぽく分離して弾いている。ピアノを自分で弾く
人なら、これがいかに困難な芸当がわかるよね。ポリーニは、ただ飛ばしまくるだけ。
テクニックならこちらの方がずっと簡単。

ショパンのエチュードの演奏で、同じような驚嘆を感じたのは、ホロヴィッツ。あの65年
カーネギーホールで弾いたエチュード作品10−8で、右手の早いパッセージが一音一音、
「歌って」聴こえる。それを誇るかのように、わざとテンポをずらしてみたりして....。
グールドもそうだけど、超一流のピアニストは、敢えて弾きづらくても表現力に富んだ
ピアノを演奏するので、ミスタッチがどうしても増えるし、ちょっと聴くと下手糞のように
感じたりすると思う。