トップページanimovie
983コメント575KB

ラビン・ユー

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001見ろ!名無しがゴミのようだ!2009/07/30(木) 00:10:53ID:Zns8QEcC
お引越し!

まどか「元祖さん、たどり着けたら再開するよ。」
0356見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 02:15:23ID:zaZ2ZCja
「めっちゃ、美味しかった〜!片付け手伝うよ。」
「ううん、いいよ、すぐだし。」
「悪いね〜。…ねえ、まどかの部屋、2階?」
「うん。」
「見せてもらってもいい?」
洗う手を休めずにこっちを向いて
「散らかってますけど。」
ちょっとベロを出す。

トントントントン。
無性に部屋が見たくなってあかねは2階に駆け上がった。
恐る恐る半開きのドアから顔だけ覗き込む。
部屋はすごく大人の女性の雰囲気になっている。素敵な匂いもする。
床に投げ出されたバッグの口からテキストがこぼれていたくらい。
「全然散らかってないし!」
笑いながら入ると、興味深く周りを見回す。
(ん…?あれは…)
あかねは、机の上にある写真立てに気付いた。
子供を見て微笑んでいるように見える…『彼』の写真。
そこだけいい具合に照明が当たっている。
(まあ、ちょっとだけ…)
あかねは目を閉じると、写真を通してまどかの想いを読む。
(やっぱりそうなんだ…。)
そして、脇にあったひかるとまどかの写真を手に取った瞬間、
…目頭が熱くなって来た。

(まどか…そんなにひかるちゃんのこと…)

台所で鼻歌交じりに洗いごとをしていた手が止まる。
(ハッ…!!)
まどかは慌てて二階に上がってきた。
0357見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 02:25:03ID:zaZ2ZCja
階段を気取られないように上がるまどか。
気配を察知して、写真を元あった場所に戻すとその場を離れるあかね。
慌てて涙を拭って
「ど、どうしたの?」
「え?い、今片付け終わったから…」
「ごめんね、手伝わなくって。でも、まどかの部屋って、大人の部屋みたい。
  持ち主がもう女子高生って感じじゃないもんね。」
「なに言ってんのよ。これでも悩める女子高生よ。」
「『悩める』?」
あかねはその何気ない言葉に少し引っ掛かった。
「そうよ。あたしだって悩むんだから。」
深刻に受け止めているあかねを不思議そうに眺めるまどか。
「何考えてんのよ。」
「あ、あははは…メンゴ。まどか、恭介と一緒の塾に通ってるんだってね。」
「うん、ハワイ行く前から約束してたから。」
「そういや、ちょっと前だったのにねえ、ハワイ。いろんなことがあったなあ。」
「写真見てみようか。ちょこちょこ撮ってたやつ。」
サーフィンレッスンのサプライズや、ワイキキやまどかのコンドで一緒に撮った
思い出の写真を出した。
床に広げると二人で肩をくっつけるように眺めた。
どれもみんな楽しそうに映っている。
二人は暗黙の了解のように『ひかる』の話題をスルーした。
0358見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 02:35:31ID:zaZ2ZCja
そして…
ふっと会話が途切れ、二人は同じ写真を眺めていた。それは…
ひかるを真ん中にして3人で撮った写真。
朝食後ラナイに出て、遠くの海と空をバックに撮ったけれど
背景が逆光のように眩しすぎて、ラナイがちょっと暗く写ってしまった。
ワイワイ賑やかな瞬間だった。
「何でだろう…懐かしいね、まだ一ヶ月も経ってないのに。」
感慨深げに言うあかねに、まどかはつい気持ちを吐露してしまう。
「うん。…でも、またきっと、いつか『一緒に』行けるよ。」
しみじみと言う彼女に堪りかねて…

「まどか…恭介のこと好きなんでしょ?」
「え?」
まどかは一瞬あかねを見ると下を向いた。
「…うん。」
あっさりと認めた。そして、横を向いたまま
「あかね知ってるんだ……春日クンから聞いたの?」
ちらっと彼の写真を眺めた。
「それもあるけど、やっぱ分るよ、まどかと恭介見てたら。」
「そうなんだ…。」
0359見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 02:47:35ID:zaZ2ZCja
「たぶん、み〜んな気付いてるよ、言わないだけでね。それでさ…」
「なに?」
「ひかるちゃんのこと。
恭介はもう会わないように距離を取るって言ってたけど…
まどかはどうすんの?」
「あたしは…今は『あれ』だけど、でも時間が経てばって思ってる。
  あたしの想いは今までと…今からも変えるつもりはないよ。でも…」
「でも?」
「あの子の傷が癒えるまで、そっとしておいてあげなくっちゃ…勝手かな?」
人前では無理してるけれど、彼女の切ない心は理解している。
(まどかだっていろいろあったんだよね。)
あかねはちょっと励ますように
「ううん、それでいいんじゃない?…でも安心した。
あたしさあ、まどかが落ち込んでたらどうしようって。
   でも、今はふっきテル
てるみたいだから安心した。」
「そうね、そう思わないと…」
無理して笑顔を作るまどかにニッコリ頷くあかね。
「ひかるちゃんには、あたしからもアプローチしてみる。」
「うん。アリガト。」
あかねは腕時計を見やると
「あ、いけね!遅くなっちゃった。じゃあ帰るね。」
「うん。」

玄関の外まで見送るまどか。
「ごちそうさま〜!!じゃ〜ね〜!!」
元気よく手を振ると、あかねは街の明かりの方へと帰って行った。
0360見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 02:58:56ID:zaZ2ZCja
まどかは玄関を閉めると2階に上がり
部屋に戻るとため息をついて灯りを落とした。
(まだスッキリしてる訳じゃないよ。)
ベッドに身を投げ出し天井を眺める。
(春日クン、今頃何してるのかなあ?)

翌朝
身支度を済ませ、リビングで紅茶にトースト。
先日義兄の実家で貰った、おばあちゃま手作りのマーマレードを塗る。
(あぁ…トーストもう一枚焼こうかなあ…止まらないよ、これ。)
恨めしげにマーマレードを眺める。
ぐっと我慢して、片付けると家を出る。

一方恭介のマンションでは
「お兄ちゃん!起きてよ!今日から学校でしょ?!」
「う〜ん…今何時?…いけね!!遅刻だ!」
慌てて着替え、テーブルの上のトーストにバターを塗るや、
それを咥えて玄関を飛び出して行く。
(絶対鮎川に追いついて見せるぞお!)

マンションでは…
テーブルの上の恭介の財布を眺め溜息をつく姉妹。
「相変わらずだ…。」
すると財布がスッと消えた。
「あ〜!!人には絶対使うなって言ってるくせに〜!」
0361見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 03:08:26ID:zaZ2ZCja
(この際、手段を選ばず)
恭介は財布を握ると駅へと向かった。

予備校へ抜ける公園で八田に声をかけられた。
「よお!遅刻魔。」
「お前が言うな、八田!小松は?」
「ほれ、あっち。」
一生懸命女の子に声掛けている。
「あいつ、朝から凄いなあ。今日から最後の講習だってのに。」
「だから必死なんだよ。俺も行ってこよ〜っと。」
(こ、こいつら…)

1時限目はクラス別の講習。
恭介たちのAクラスは大講義室。まどかたちSSクラスは少数精鋭。
(へ〜、みんなT大とか受けるんだよな…すげえや、鮎川…)
ぶつぶつ言ってる後ろから膝カックンをやられて腰砕けになる恭介。
「うわっ!」
振り返ると、悪戯なまどかが澄ましていた。
「朝から何ぶつぶつ言ってんのよ?」
「え?あ、あはははは…」
あらためて彼女は恭介の耳元に思いっきり顔を近づけ
「お、は、よ、う、恭介クン。」
「え?あ、おはよう、鮎川…」
「3限目は合同授業でしょ?席取っといてくれる?」
要件を伝えると恭介を残しさっさと自分の講義室へと入って行くまどか。
「あ…」
別に用事は無いのだが…それにしても取りつく島が無い。
(やれやれ…しっかり頑張れってことだよな、多分。)
恭介も自分の講義室へと向かった。
0362見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 03:18:21ID:zaZ2ZCja
講義が終わると、まるで息継ぎするように一斉にみんな休憩する。
恭介も廊下に出てみるのだが、彼女は出てこない。
それとなく講義室を覗いてみると、イヤホンを耳にウォークマンを聴いている。
話しかけたそうにする男子たちを完全シャットアウトしている。
恭介が居る場所から、鮎川を遠巻きに見ている男子たちが見て取れる。
今にも話しかけそうな雰囲気が伝わってくる。
(う〜ん…行くべきか行かざるべきか…)
変にちょっかいを出されるのも癪に障る。
自分の存在を知らしめたい。
思い切ってスタスタとまどかの元に歩み寄る。
「ね、ねえ。コーヒー飲まない?」
まどかはイヤホンを外さず、ちらっと見上げて
「飲まない。」
また下を向いて次の講義の予習をし出した。
(え?ええ?)
何とも愛想がないまどかに戸惑った。
「そ、そう…。ごめん。」
すごすごと退散する恭介。
(おかしいなあ…?機嫌悪いのかなあ?)
周りの男子たちは、ざま〜みろとばかりにニヤニヤしている。
(くっそ〜、恥かいたじゃないか…。)

そして合同講義の3時限目。
「春日クン、そこ座っていい?」
まどかがやって来た。
「う、うん。」
0363見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 03:29:51ID:zaZ2ZCja
さっきとまるで違うまどかに戸惑う恭介。
授業前の黒板を見つめたまま考え込んでしまった。
まどかはバッグからテキストを取り出し、次の準備をしながら
チラチラと恭介の方を見ているのだが、彼は全くノーリアクション。
「ねえ。」
「……う?」
ふと我に帰る恭介をまどかは睨むように
「やい!恭介!何考えてんのよ?」
「へ?」
「さっきから何で黙ってんのよ?」
「いや…さっきさあ、勉強中に話しかけて…迷惑だったかなあって…」
「へ〜、さっきのこと気にしてんだ。
…あのさあ、あたしのことは心配しなくていいから
今は自分のことだけ考えてて欲しいな。」
「でも、やっぱり気になるよ。」
「ふ〜ん…気になるか?」
「だって…他の連中みんな鮎川のことが気になってるみたいだし…」
聞いてちょっと呆れるまどか。
「な〜んだ。あたしのことじゃなくて、まわりのことが気になるの?」
「そういう訳じゃ…」

(こいつ、あたしのこと信じてないな。…よしっ。)

まどかはゴソゴソとカバンの中から何か取り出した。
「じゃあ、これ見てくれる?」
何と、それは所々血糊がついた紅色の紐。真中にガラスのかけらが…。
それは透明のネックレスケースに収められていた。
「それ…!?」
「春日クン、失くしたでしょ?あたしはちゃんと持ってるよ。
  春日クンが『迷った時』に見せようと思ってたんだあ。」
0364見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 03:39:38ID:zaZ2ZCja
まどかは『心配無用!』と伝えたかった。

実は、恭介の机の引出しにも同じく血糊が付いた濃紺の紐とガラスのかけらが
ビニール袋に入って大切に仕舞われている。
記憶を手がかりに、ビーチで偶然見つけた欠片も一緒。
それはまどかにビーチで頬を張られ際、手からこぼれた欠片だった。

「持ってたんだね。俺も家に…大切に仕舞ってるよ。」
「へ〜、そうなの。」
嬉しそうに微笑む。

「じゃあ…あたしのこと信じててくれる?」
小首を傾げにっこり笑顔のまどかに
「うん。」
恭介は頬を赤くして頭をかいた。

3限目の講義が始まると二人は真剣に講義に耳を傾ける。
お互いが慣れ合いにならないよう線引きは出来ている。
しかし、それを許すまじと後ろから丸めた紙クズが飛んできて恭介に命中した。
(何だよ?)
丸めた紙を開くと
『うらやましいぞ!コノヤロー!!』
と書かれていた。
数列後ろには小松たちが居る。
恭介は後ろを振り向かずに講義に集中するけど、まどかはひょいと紙を取り上げ
中を見てクスリと笑い、そして小松たちの方を振り向いた。
彼女の思わぬ反応に彼らは首をすくめた。
0365見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 03:50:36ID:zaZ2ZCja
「うへ〜」
二人はヒソヒソ話し出した。
「おい、鮎川笑ってたぜ。俺たちに笑顔見せるの初めてじゃね?」
「ああ。これで(二人の仲は)オープンってことか。」
「あいつも愛想良けりゃ、うち(高陵)でナンバーワンだもんな、間違いなく。」
「それが何で春日なんだよ?」
「知るか!」

「こら〜〜!!そこの二人!おしゃべりなら外に出てろ!!」

マイク越しに怒鳴られた。
(うへ〜〜!!)
またもや首をすくめた。

3限目の講義が終わり休み時間。
「コーヒー飲まない?」
まどかから提案されて二つ返事でOKする。
窓際に移動して
「これ…」
コーヒーを置いてポケットから取り出した。
「何?…あ!これ、ひかるの…」
「うん。この間アバカブで偶然会って…一緒に観に来て欲しいって…」
「どうするの?」
「俺…やっぱり行けないよ。」
「そう…。そうだよね…」
まどかはコーヒーに口を付け遠くを見やった。
(ひかるなりにこれが『精一杯』だったんだろうなあ…)
0366見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 04:00:35ID:zaZ2ZCja
4限目の講義が始まった。
まどかは一生懸命講義に集中している。所々要点もノートに写している。
恭介はそんな彼女を見て、いつもと違う何かを感じていた。
講義が終了すると二人に遠慮して小松たちは先に講義室を出て行く。
「ねえ、一緒にランチしよ?」
まどかは近くの喫茶店に彼を誘った。
「テラス席にしない?講義室ちょっとクーラー利き過ぎて寒かったんだぁ。」
「うん、いいよ。俺もちょっと寒かったし。」
テラス席は人が少ない。
お盆は過ぎたとは言え、まだまだ外は夏の日差し。
二人はパスタセットで軽くランチを済ませ、アフターコーヒーを頼む。
まどかはぼんやりと通りを眺めている。
そして口を開いた。
「ねえ、さっきのチケット、くれない?
  あたし、行ってみようかなあって思うんだけど。」
「え?行くの?…でも、俺は…」
「いいよ、春日クン来なくって。あたしが行ってみたいだけなんだから。」
恭介はカバンの中に仕舞っておいたチケットを取り出す。
「いいの?」
まどかは手を伸ばして一枚引き抜くと
「いいって。」
0367見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 04:10:44ID:zaZ2ZCja
数日後、
「さあ、今日は千秋楽だぞ!気合を入れて行け!」
みんなは演出を手がける舞台監督の掛け声に送り出される。

「アタイなんか…アタイなんか死んじまったほうがいいんだよ…」

主人公に想いを寄せながら、身代りになるサブヒロインを演じる。
劇の終盤、かばった後ろから背中を撃たれた。
想いを知らない主人公に彼女は抱きかかえられながら
「触んないでよ…アタイさあ…あんたのこと…ずっと…嫌いだった…」
精一杯の決めセリフを残し、みんなに看取られ息絶える。

劇は主人公の二人がひかる演じるサブヒロインの願いを叶えることなく
別れていくところでファインとなった。

ひかるは舞台をみごとに演じ切った。
舞台は大成功のもとにフィナーレを迎える。
始終、嫌われ、観客の反感を買っていたひかるの役は、とうとう最後には
観客の気持ちを一手に集め、皆の涙を誘う大役へと変わっていった。
完全にヒロインを食ってしまった。
0368見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 04:20:21ID:zaZ2ZCja
アンコールの喝采に応えるためにひかるは舞台のそでから再び姿を現した。
見事に大役を演じることが出来た幸せを体一杯に浴びるかのように大きく胸を張り、
ダンサーらしくしなやかに深々とお辞儀を繰り返した。
そして、最後に舞台の奥に戻ろうと跳ねるように体を翻した時
人の出入りで暗幕が引っ張られ、ほんの一瞬であったが
一気にまぶしい光が 差し込んだホール奥の入場口、
緑の非常口のライトの下に視線がよぎった。
「まどかさん…!」
暗幕は元に戻されすぐに暗くなったが、満席のために壁側の通路で観ていた
観客の中に、まぎれもないその姿があるのを確認できた。
長い髪の美しい女性が腕組みをして壁に寄りかかるように立っていた。
(先輩は?)
舞台の袖からそっと覗いてみるけれど、もうそこには彼女の姿はなかった。

会場を出ると、外は土砂降り。
まどかは予め持ってきておいた傘を差して会場を後にした。
(ひかる、カッコ良かったよ。)
足元が雨で濡れるのを感じながら、ちょっとすぐれない気分で歩いた。

楽屋はみんなの歓声で包まれてる。
「良かったぞ!聞いたか?あの歓声!お前ら、やったぞ!」
監督、プロデューサーの言葉で皆は感極まり泣き出す。
そんな中、ひかるはぼんやりと考えていた。
(まどかさん…一人で観に来てくれたのかなあ…?)
0369見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 04:30:35ID:zaZ2ZCja
予備校での夏季講習も後期日程となり、否が応でも受験生としての気構えと
自覚が促される、そんな雰囲気の中、熱心にノートをとる恭介の姿があった。
しかし、隣にはいつもの彼女の姿はない。

(やっぱり行けないよなあ…今頃…)

講義が終わり玄関先に立つ恭介。
外は土砂降のため、ロビーは生徒で大渋滞している。
(傘持ってきてないからなあ…)
小松たちは雨の気配を感じると講義をサボって帰ってしまった。
(ゲーセンかなあ?俺もヒトの事言えないけど、大丈夫かよ、あいつら。)
恭介は雨にくすむ街をぼんやりと眺めていた。
いろんなことが思い出される。
気持ちを見破られた花火大会の日も雨だった。
そして、ひかるに別れを告げた辛い夜も土砂降りだった。
夏休みの初めの頃までとは、全く違う状況になってしまった。
(でも…避けられなかったし…今更…)
恭介は雨に煙る街の中へとかけ出した。

一方まどかは予備校に寄らず、そのまま家に帰ってしまった。
シャワーを浴びて着替えを済ますと部屋に上がる。
(今日はなんにもする気しないなあ…)
椅子に座って劇のパンフを広げて眺めている。
0370見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 04:41:33ID:zaZ2ZCja
どうしても健気なサブヒロインに感情移入してしまう。
(あれじゃ、ひかる報われないままじゃん。)
現実とオーバーラップ気味の内容が少し腹立たしい。
(春日クンに電話しようか…)
時計を見るとちょうど18時。
(夕ご飯食べてるよね…。)
まどかは電話を遠慮して自分も夕飯をとることにした。
さすがに気分がすぐれず、簡単に済ます。
紅茶を入れて買い置きのクロワッサンに、例のマーマレードを
たっぷり塗って頬張る。
口に入れ噛んでみるのだが、そのうち口の動きが緩慢になる。
片手にパンを持ったままぼんやりとしてしまう。
(ひかる、あの内容をあたしに見せたかったのかしら…?)
ちょっと穿って考えてみるものの
(そんな子じゃないよね。)
クロワッサン1個で夕飯を済ますと、部屋に戻りテキストを開き
勉強しようと構えるが…すぐにぼんやりとしてしまう。
ひかるの演技がじわじわと効いてきた。

マンションでは、
恭介はシャワーから上がり、時計を見上げると10時を過ぎていた。
(電話してみようか…)
そう思って、受話器に手を伸ばしたところ

ルルルル…!

慌てて受話器を取った。
「はい、春日…」
「あ、春日クン?あたし。ごめんね、夜分に」
「鮎川?どうしたの?」
「ちょっと会えないかな?今、下に来てるんだけど…。」
0371見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 04:51:23ID:zaZ2ZCja
「すぐ行く!待ってて。」

ドタバタと恭介は玄関を出て行った。
エレベーターを降りるとマンションのロビーから飛び出す。
すると、すぐ前で彼女が待っていた。
「春日クン。」
「鮎川。」
「ごめん。電話で済ますつもりだったんだけど…やっぱり電話じゃ…」
まどかは濡れた路面に視線を落として歩き出した。
恭介も黙ってついて行く。
何か言いたそうな彼女を気にしながら歩いている。
それとなく『きっかけ』を作ってみた。
「ちょっと冷えるね。雨降ったからかなあ?」
ちらりとまどかを見る。
「うん。お盆過ぎてから夜は少し寒くなったかしら?」
彼女は空を見上げながら応えた。
恭介もあらためて空を見上げてみると、厚い雲が切れて、そこから
目映いばかりの星空が見えている。
雨上がりで空気が澄んでいるせいか、星たちがキラキラ輝いている。
歩きながらまどかは口を開いた。

「あたしさあ、学校辞めてアメリカに行こうかなあって思ってるんだ。」

「ええ??!!!!!」
いきなりまどかの方を振り向いて声を出した。
「…じゅ、受験どうするの?一緒の…」
「ごめん。気が変わったの。やっぱり、音楽勉強しに行こうかなって。」
(そ、そんなぁ…)
0372見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 05:00:29ID:zaZ2ZCja
先に進むまどかの後ろから訊いてみる。
「やっぱり、ひかるちゃんのこと?」
まどかはちょっと横を向くが、恭介の顔は見ずに
「うん、それも無い訳じゃないけど…
ほら、あたしず〜っと告ってこなかったじゃない、素直じゃないから。」
「……」
「でさ、いざ自分の気持ちに素直になったら、どんどん感情に流されて…
  もちろん、ずっと願ってたことだし、それはそれで心地良かったんだけど…
彼女は歩みを止めて振り向くと
…そんな生活の中でね、ひかるのハツラツとした演技を観てたら
『自分は今のままでいいのかな?』って思えてさ…」
「よ、よく分かんないよ、俺には…。なんでアメリカなの?」
「みんなから距離を置いて…春日クンとも。
で、やりたいことが解ったら戻ってくるつもり。」
「俺は流されるようにしか生きていけないし、大学も何となくだし…」
まどかは彼に背を向けまた歩き出すと、恭介も合わせて歩き出す。
「それでいいじゃん。あたし、ひかるの劇観てすごいなあって思ったの。
  あたしはこのまま『恋に溺れる女』でいいのかな?ってね。」
まどかはクスッと笑った。
でも、恭介は笑える気分にない。
0373見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 05:12:30ID:zaZ2ZCja
すごく重たい気分になって、まどかから少し離れてついて行く。
顔を上げると勇気を出してもう一度訊いてみた。
「ね、ねえ、本気なの?」
「…うん。2学期が始まる前に学校に退学願を出すよ。」
「……」
(何でだよ…)
恭介は、ただ鮎川の背中を見つめるしか出来なかった。

行くなと言いたいのに、言うとカッコ悪いようで…
(言っても…どうせ…)
なぜか意地を張ってしまう。

やがて二人は公園に着いた。
恭介は落胆し、ブランコに座る。
まどかはそんな背中を見つめながら
「いつかまたここに戻ってくるよ。」
「俺、それまで待つしかないのかな?」
うつむいたまま呟く。今にも涙がこぼれそう。
すると

「待っててくれる?」

まどかはいきなり恭介の後ろから抱きついて
ギュッと頬を寄せた。
でも…恭介の手はブランコの鎖を握り絞めたまま動かない。
0374見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 10:40:29ID:/JKWlAFp
うわっ!一体何があった?
埋め合わせのつもりか?

結局自分勝手な恭介が振られるのか・・w
0375見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/14(月) 15:05:46ID:qUhAZ+hj
作者相当煮詰まってまどかの周辺との関係で引っ張ってると思ってた。
またアカネやクッキングの話しかよ!って。
それが今頃何で別れ話しなん?
或る意味意表を突かれたが、こういう落ちはいかんやろ?
0376見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/16(水) 16:50:10ID:hBI6IvdZ
元祖へ
お前さんは今回の大量アップと話の流れをどう思うかね?
俺は原作に準じたいかにも「まどからしい」決断と思うが。
0377元祖2010/06/16(水) 23:08:45ID:PsaaViva
身勝手過ぎる!
ただそれだけです。
0378見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/21(月) 14:57:12ID:8nJQHicy
考えた末じゃないのかなあ?
0379元祖2010/06/21(月) 20:21:16ID:2efSzIcy
まだ悩んでるの?
また悩んでるの?

確かに原作のまどかちゃんっぽいけど…
0380見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/21(月) 22:23:12ID:s01JlWFM
あの日のまどかより上手!
何たって、恭介を手に入れた途端ポイ捨てだから♪
0381元祖2010/06/21(月) 23:10:32ID:2efSzIcy
ひっど〜い。
そんな言い方しないで下さいな。
0382見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/24(木) 10:48:49ID:boWNx/db
後は公園で再会してチュッでENDだな。
いや〜長かった。
0383見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/24(木) 22:39:26ID:8tOH+N/q
勝手に終わらせんなって。作者楽しみにしてまっせ。
0384見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/25(金) 13:02:22ID:ccC+YjGZ
いい加減飽きたよ!
0385見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/25(金) 21:49:58ID:Oohlg4oM
うーん、でも一部のだれかの意見で強制終了させて欲しくはないな。
0386見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/28(月) 11:06:26ID:lcmeGmkm
出だしから考えたらよく出来たオチだと思うが。
ここらで終わるが賢明かと。
2年間よく頑張った!楽しませてくれて有難う!
んじゃ!
0387見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/28(月) 21:27:22ID:Qe6riknt
なんか未消化な感じが・・・・・
0388見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/28(月) 22:36:24ID:F0W7HRGO
鮎川まどか=山田優
あかね=エビちゃん
で、どや?
ひかるは…よっしー
0389見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/29(火) 01:18:29ID:AxiKgTbR
>>388
ふざくんな
まどかが山田なんてありえねー
0390見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/06/29(火) 15:35:27ID:E8NGRxER
ふざくんな・・方言でっか?

山田優ねえ・・まあ、ボーダフォンのCMに出てたあたりなら
この作者の描くまどか像にあわないこともないが・・。
エビは無理だな。
よっしーって元モー娘のか?
こっちの方があかねじゃないか?
0391見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/06(火) 10:16:11ID:28FQz17n
明日は七夕。
「今のままで最高なんだもん。」
0392名無しさん@そうだ選挙に行こう2010/07/10(土) 11:22:06ID:PTu2FWq/
それってアニメのやつ?
0393見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/14(水) 09:26:22ID:NUGjk/yb
元祖ショックで寝込んでる?
0394元祖2010/07/14(水) 22:42:44ID:6zRYxKGt
寝込んでなんかいません!
静観してるんです・・
0395見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/14(水) 23:20:09ID:RNbA5gKj
おとなしく寝とってくれ。
0396見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 16:37:07ID:KfoAucyC
今日も無か・・
どうせまたアク禁なんだろうな
0397見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 20:28:39ID:RtGN/wC2
test
0398見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 20:31:51ID:RtGN/wC2
まどかの体に触れようとしない。
それが、今の彼に出来る精一杯の感情表現だった。

まどかは頸に絡めた腕をほどき恭介から体を離すと
「じゃあ、明日予備校でね。」
「え?出るの?」(もう必要ないじゃん…)
「多分。…じゃ、おやすみ。」
ニコッと笑って彼女は去って行った。

恭介はブランコに腰かけたまま動けないでいた。
空を見上げると、いつの間にか満天の星空になっている。
(一体、いつまで待てばいいんだよ?鮎川は離れてても大丈夫なの?
  それとも…ひょっとしてこれって、『発展的解消』ってやつ?)
思わぬ展開に困惑している。

まどかは帰るとシャワーを浴びた。
ぶつぶつと独り言
(馬鹿だよね、あたし。怒るに決まってるよ…。
でも…今のあたしじゃ絶対ひかるに負けてるし…
そうよ、もう少し自分を磨いて…それからでも…)

どんなに言い訳をしてみても、さすがに虚しい。
ひかるの迫真の演技を観て以来、完全に腰が引けてしまっている。
心が逃避へ向かってしまった。

シャワーから上がると、バスタオルを体と頭に巻いてキッチンへ行く。
冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、持って2階に上がった。
シュパッ!
ベッドに腰を降ろして一口喉に流し込む。
0399見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 20:35:00ID:RtGN/wC2
缶を握りしめたまま、まどかの動きが止まった。
ぼんやりと窓に映る自分の姿を見つめている。
缶の表面で冷やされた水滴が膝へと流れた。
(冷たい…)
膝に流れる滴を手で払うともう一口飲んだ。

ついさっきまで…そんなつもりはなかったのに…。
恭介のために、そして何より自分のためにと結論を出したはずなのに…。
例えひかるにそんなつもりが無かったにせよ、
あんな演技をみせられたばっかりに…。

『あんなこと』があった後でも、ひかるは稽古に打ち込んで
立派に役を演じてみせた。
多分、チケットをくれたことに他意はないのだろう。
そんなひかるが随分健気に…そして『大人』に思える。
その点、自分は…

(ひかるが引くんなら、あたしも引くべきなんじゃない?)

でも、今更『ひかるのため』はさすがに格好がつかない。
それは『封印』して来たはずなんだから…。

(アメリカに行こうかなあ…『自分のため』に)

体のいい逃げ。
それもどこかでは分かっている。

(ひかるに負けないように…あたしも頑張ろうっと。)

無理やり自分を焚きつけた。
0400見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 20:38:26ID:RtGN/wC2
思うと行動が早い。
カレンダーを見ながら考える。
頭の中で予定が立つや否や片付けを始めた。

ホントは一刻も早く逃げ出したかった。

今この機会を逃がさないように、

…自分の気持ちが揺らぐ前に。

(そうよ。こうするべきだったんだわ。)
そして…とうとう恭介に言ってしまった。

クローゼットから引っ張り出したスーツケースを眺めながら、
この数時間の出来事を思い出している。
そして、迷路に落ち込みそうになる心を引っ張り上げる。
(ネックレスは…持って行こう。写真は…要らないや、里心着くし。)
考えるや、壁や机、引出しの中の写真を全て集めると、
オルゴールの付いた宝石箱に重ねて入れ、
それをさらに段ボール箱に入れると厳重に目張りをした。
そしてそれをクローゼットの奥に仕舞いこんでしまった。

ホントは今にも心が折れそうなのに、頭の中ではとことん強がっている。

(百年に一人の逸材らしいから、せいぜい音楽に身を投じてみるか。)
0401見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 20:44:07ID:RtGN/wC2
翌朝
まどかはベッドの中で考え事をしていた。
(誰とも会いたくないなあ…考えるよりも動こうか。)
「よしっ!」
意を決すると航空会社に直接電話してチケットを予約する。
そして、予備校をサボって家の中を片付けることに没頭し始めた。
お昼過ぎには、取り敢えず一旦家を留守にできる程度に片づけが終わる。
雨戸も閉めたので、家の中は蛍光灯の灯りだけになってしまった。
まどかはスーツケースを玄関に出すと部屋で着替えを始めた。
雑念を振り払うよう粛々と事を進めるてきたが…
つい鏡に映る自分の顔をぼんやりと見つめてしまう。
吹っ切れた顔には見えない。

(帰りは解らないけど…取り敢えずアメリカに行こう。
  そして、いろんなことに挑戦して、すごく大人になって…
   そしたら、今度こそ春日クンと…春日ク…かす…)

急にまどかを激しい目眩が襲った。
視界がホワイトアウトして倒れそうになる。
傍にあった勉強机に手をつくと、ゆっくりと床に倒れこんだ。
今まで経験したことがないくらい頭がズキズキし出す。
吐き気もして来た。
(ダメだ…!)
瞬間、目の前が真っ暗になる。
ジーーーー…
耳に不快な音が聞こえている。
あらためて目を見開くと、眼の前に辛そうに顔をしかめる自分の姿が!
(…?)
いつのまにか自分の不快な症状は消えてしまっている。
代わりに眼の前の彼女は酷く辛そう。
「何?あたしどうなってるの?」
0402元祖2010/07/22(木) 20:45:48ID:420HCfBK
やったー!
やっぱり、あたしのの大好きなまどかちゃん
でいてくれた!
心配してました〜!
0403見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 20:47:04ID:RtGN/wC2
自分は不思議と冷静に、もう一人の自分を眺めている。
見かねて彼女の元へ近づき、そっと声をかけた。
「ね、ねえ、大丈夫?」
「痛い…」
彼女は頭をかかえこんだ。
「お医者さん呼ぼうか?」
「あなたのせいでしょ…」
「え?」
すると、それまで痛がっていた彼女が急に起き上った。
「だから、あなたのせいでしょ!」
「な、何言ってるの?あなたは誰?」

まどかは部屋を見渡すが部屋に変化はない。
眼の前にもう一人の『自分』がいること以外…。
(一体どうなってるの?)
まどかは怖くなって後ずさりしながら彼女から距離を取ると、
もう一人の『自分』が、まどかをじっと見つめながら呟きだした。

(逃げるの?一緒にいるって決めたんじゃなかったの?)
0404元祖2010/07/22(木) 20:55:28ID:420HCfBK
ありがとうございます!
覗いたらリアルアップされてるし〜!
あぁ、運命を感じます〜!
0405見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:00:13ID:RtGN/wC2
ルルルルル!

「え?」
電話の音でふと我に帰る。
気づくと恭介の写真が貼ってあった辺りを手でなぞっていた。
(今の…何だったの?)

ルルルルル!
(あ、はいはい…)
部屋にある子機のディスプレイを見ると『ひかる』から。
(ひかるには言っておこうかな…)
受話器を取る。
「はい、鮎川…」
「まどかちゃん?ひかるそっち行ってない?」
「あ、お母さん。…いいえ、来てませんけど。どうしたんですか?」
「昨日から帰ってこないの。春日さんのお宅にも電話したんだけど
  知らないって。今まで泊まる時はちゃんと電話してたし…。
最近…部活が終ってからちょっと変だったの。だから、心配で…。」
時計を見るとすでに15時をまわっていた。
「…取り敢えず、あたしも知り合いを当たってみます。」
「あの子、また昔の悪い人と…あ、ごめんなさい。」
「いえ…」
0406見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:01:52ID:76s1JLpq
待ってるのはあなただけじゃないですよ。
0407見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:02:58ID:RtGN/wC2
まどかは受話器を置くとすぐに恭介に電話をした。
「はい春日です。」
「あ、まなみちゃん?お兄さん…まだ学校よね。…ひかる知らない?」
「さっきお母さんから電話があったんですけど…何かあったんですか?」
「ううん、何でもない。
…あたしから電話があったこと春日クンには内緒にしておいてくれる?」
「え?…はい。」
まなみは少し不安な面持ちで答えた。
電話を切ると、まどかは家を飛び出した。
あんなストーリを観た後だけに、妙な胸騒ぎがしてくる。

その頃
(やっぱり来なかったか…)
まどかの性格をよく知っているだけに、来ないだろうと予想はしていた。
しかし、2日続けてまどかが休んでいることに、周囲が少し噂をしている。
そんな雰囲気の中、いきなり
「よお!お前振られたのか?」
「かもな。」
気のない返事に、小松と八田は驚いて顔を見合わせる。
「ど、どうしたんだよ?」
「俺にも解らない。とにかく放っといてくれよ。」
(マジかよ〜?)
二人は顔を引きつらせながらも元気づける。
「じゃ、後で昼飯食いに行こうぜ。」
「ああ。」
0408見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:08:30ID:RtGN/wC2
まどかはアバカブに行った。
「いらっしゃ…よう、まどかクン。そろそろ手伝ってくれるのかい?」
「ごめん、マスター。ひかる来てないかなあ?」
まどかの表情に何かを感じて
「どうしたの?ひかるちゃん…来てないけど。」
「また後で寄る。ひかるが来たら捕まえといてくれる?」

まどかはアバカブを飛び出すと街へと向かった。
そして、ひかるが行きそうな場所を探して回った。
(まさか、自棄起こしてなきゃいいけど…)
昔自分たちが出入りしていた不良のたまり場にもズカズカと入っていく。
最近ではめっきりご無沙汰のまどかだったが、今の表情や態度は
昔のそれに戻っている。
「ねえ、あんた達、ひかる知らない?」
「!!…鮎川先輩!い、いや、知りませんよ。」
「そう。見かけたらアバカブに知らせてくれる?」
「はい。」
まどかは険しい表情のまま立ち去った。
そして、ひかるが一晩過ごせそうな所を片っ端から当たって行く。
恭介のマンションの周りも遠くから眺めて見て回ったけど、
それらしき姿は見かけない。
(どうしよう…あたしのせいだ。あたしの…)
まどかの想像は悪い方へとはまっていく。
0409見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:18:06ID:RtGN/wC2
午後の授業もぼんやりと終わり…

恭介は帰りにアバカブに寄ってみた。
まどかが来ているんじゃないか…マスターには何か話しているんじゃないか
そんな気持ちに駆り立てられるように訪ねてみた。
カランコロン!
「よう、いらっしゃ…い…。」
恭介の沈痛な表情を見て、マスターは彼らに何かが起こっていると感じた。
「マスター、鮎川…」
彼女の名前を出した途端涙がこぼれそうになる。
マスターはカウンターの仕切りを開いてキッチンの奥に招き入れた。
「一体何があったの?」
「俺も解らないんだけど、急にアメリカに行くって言い出して。」
「ええ?まどかクンが?相変わらずだなあ〜…」
マスターは腰に手をあてたまま首をひねっている。
「マスター、何か聞いてない?」
「いや、全く。それよりまどかクンならさっき来たよ。ひかるちゃんを捜しに。」
マスターはその時の彼女の様子までは語らなかった。
(ひかるちゃん、春日クンに振られたって言ってたけど…
まどかクン、まさかひかるちゃんのこと気に掛けて身を引くつもりなのかな?)
「で、いつ行くって?」
「2学期前に退学願出すって…鮎川のことだから、もう止められないよ。」
恭介は投げやりに呟いた。
「さっきの感じだと、またうちに寄るみたいだから待ってみたら?」
「うん。」
恭介はカウンターの奥から出て、あらためてコーヒーを注文した。
0410見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:19:23ID:vcvfjqT2
ったく、どいつもこいつも、余計なコメすんなよ♪
0411見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:26:02ID:RtGN/wC2
夕刻6時をまわって

カランコロン!

「いらっしゃ…おや、まなみちゃん、くるみちゃん。久し…」
二人はカウンターに居る兄の姿をみつけると
「お兄ちゃんのせいだよ!」
くるみは泣きながら恭介の肩を揺さぶる。
まなみはくるみをなだめながら、バツが悪そうにマスターに頭を下げると
恭介とくるみを店の外に連れ出した。
3人の後ろ姿を客たちがひそひそ話しながら眺めている。

「どうしたの?何があったの?」
「ひかるちゃん、昨日から帰ってないって。今日も連絡つかないって。」
まなみは電話先のまどかの雰囲気からただならぬ状況を察して、
ひかるの家に電話をかけ、あらためて事態を知った。
「まどかさんも捜してるみたい。」
「まなみ…お、お前、使わないのか?」
「だって、使っちゃいけないって。」
「こういう時こそ使えよ!」
「!!、そうだよ、まなみちゃん。一緒に捜そう?」
3人は人気の少ない路地裏に行くと姉妹が手を取り合って目をつむった。
ブツブツと何かを念じていたかと思うと急に声を荒げた。
「お兄ちゃん!ひかるちゃん危ない!!」
0412見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:42:51ID:RtGN/wC2
くるみは気を失ってその場に倒れこむ。
慌ててまなみと恭介が抱え込んだ。
恭介は声を荒げ
「どこ?どこに居るの?!」
「学校の屋上にある給水塔のとこ!」

バシュッ!!

その瞬間、恭介の体が消えた。

その頃ひかるは
高校の校舎屋上の、さらに上にある給水塔に座って夕焼けを眺めていた。
(さすがに今日は帰らないとね〜。お母さん怒ってるだろうなあ。)
舞台の千秋楽がはねて、またぽっかりと心に穴が開いてしまった。
部活がある間はそれに没頭することで誤魔化せていたけれど、
それも終わると、どうしようもなく寂しくなって来る。
自分の演じた役どころがあまりにも我が身とオーバーラップして、
何とか忘れようとあがきながら街を彷徨い歩いた結果、
いつも隠れて煙草を吸っていた中学校の体育倉庫へたどり着いた。
そして、そこで泣きつくして眠ってしまった。

ひかるは倉庫のマットの上で一晩明かした後、翌日も学校の敷地から
出ないで過ごした。
まだまだ恭介との思い出に捉われていたけれど、思う存分浸ってから
スッキリさせようと決心した。
0413見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:43:47ID:RtGN/wC2
一日かけて恭介や3人で過ごした場所を訪れては
「よしっ!」と一つずつ決別を告げていく。
やがて、そんな儀式が全て終了すると夕刻になっていた。
ひかるは少しセンチになって、校舎の一番高い所から夕焼けを眺めて
みたくなった。
そして…まなみとくるみは『そのシーン』だけを勘違いして恭介に告げた。

ひかるは立ち上がると
「アタイさあ…あんたのこと…ずっと…嫌いだったよ…」
小声でセリフを決めてはみたけれど
夕陽を見ていると、なんだか泣けてくる。
(やっぱ無理があるよね…3年だもん…。)
ぼんやりとたたずむひかるの目の前に、いきなり恭介の姿が現れた!
(間に合った!)
「うわっ!!」
ひかるはびっくりして後ずさってしまった。
(ええ〜!?)

ちょうどその頃、まどかは給水塔の真下付近に来ていた。
(もっと早くにアメリカ行くんだった…
ひかるにもしもの事があったら…あたし…あたし…)

「キャ〜!!!!!」

(え?)
声がする方を見上げると、ひかるが今にも落ちそうになっている。
(ええ?ひかる?!)
考えるよりも先に受け止めようと駆け出すまどか。
その頭上から今まさにひかるが降ってくる。
「ひかるー!!」
「ひかるちゃん!!」
バシュッ!!
恭介は先回りしたけれど万事休す!!
(え?!)
0414見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:44:36ID:RtGN/wC2
何と!腕を伸ばして受け止めようとするまどかの姿が!
(無理だ!!!!)
恭介は固まった。
そして、ひかるの体がまどかの胸に激突しようとした、まさにその瞬間

バチバチバチ!!

夕ぐれに染まった空気を切り裂くような稲光が走る!

すざましい放電が二人の体から放たれた!
瞬間、ひかるの体は宙に浮き、そしてそっとまどかの腕の中に納まった。
(え?)
(ええ??)
まどかとひかるの目が合って、二人は輝きの中で倒れこんだ。
そしてそのまま二人とも気絶してしまった。
一部始終を目撃した恭介は
(俺じゃない!)
辺りを見回すと、
(・・・!!!)
そこにはゆらゆらと青白い炎を全身から発しているあかねの姿が!!
凄い形相をして二人を睨んでいる。
「あかね!お前…よくここが。」
炎がス〜ッと消えていくと、力尽きて彼女も気を失いそうになる。
恭介は慌ててあかねを抱え込むと、そっと地面に横にした。
ちょうど向こうからくるみとまなみが駆けてくる。
「お兄ちゃん!ひかるちゃんは?」
「あそこ。足滑らせて…でもあかねのお陰で。」
向こうにまどかとひかるが、こっちではあかねが気を失っている。
0415見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:47:32ID:RtGN/wC2
3人は辺りに人が居ないことを確認した。
「う〜ん…あれ?」
「あかね!」
「あ!!ひかるちゃんとまどかちゃんは?!」
フラフラしながら立ち上がる。
「あかね!お前のお陰で助かったよ!!」
「それがさぁ、まどかちゃんが血相変えて走って行くのを見かけてね、
  慌てて追いかけたら、ちょうど…なんでこんなことに?」
「お兄ちゃんのせいよ!」
睨むくるみを制するようにあかねが
「誰にも見られてないよね?今の内に2人を運ぼう!」
恭介がまどかを背負い、ひかるはあかねに背負われてマンションに向かう。
部屋に上げられると、リビングにマットが敷かれ、二人は横にされる。
まなみとくるみはタオルを温めて二人の体をやさしく拭いてやった。
隆が仕事から帰って来て驚いた。
「ただいま〜…?おいおい!どうしたんだ?」
「叔父様…二人に見られちゃった。今は気を失ってるけれど…」
「何があったんだ?二人は大丈夫なのか?病院へ行かなくていいのかい?」
「うん。ちょっと気を失ってるだけみたい。」
隆は穏やかに眠っている二人の傍に行き、大丈夫そうなのを確認した。
そして、事の顛末を聞くと
「そうか…とうとう知られてしまったか…
と、とにかくお前たち二人を看病してあげなさい。」
そう言うと書斎に入り、そっと妻の写真に語りかけた。
(彼女たちは理解してくれるだろうか…)
0416見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/22(木) 21:48:45ID:RtGN/wC2
「私、ひかるちゃん家に電話する。」
「俺はマスターに電話しなくっちゃ。心配してるだろうから。」

まなみは事情は伏せて、取り敢えずひかるを無事発見したことを告げた。
今は気を失ってるので部屋で寝かせていることも。
電話では、ひかるの母がすぐ車で迎えに来るとのことだった。
スヤスヤと眠る二人を見つめてあかねが口を開く。
「どうしよう。二人が目覚めたら何て言うかな?」
「マズイことになったら、お前、(記憶)消してくれる?」
「恭介、お前それでいいの?何ならひかるちゃんの方だけ…」
「あかねちゃん!酷いよ、それって。」
姉妹が口をそろえた。
あかねは恭介やまどかのことをよく知った上で提案したのだが…。
そうこうしている内にひかるが目を覚ました。
「う、う〜ん…あ、あれ?ここは……せ、先輩!一体どうして…?」
「ひかるちゃん。」
ひかるは横に眠るまどかにも気付いて驚く。
「え?まどかさん!何でここにいるんですか?」
4人は顔を見合わせた。
まなみが恐る恐る訊く。
「ひかるちゃん、覚えてない?」
ひかるは、え?という顔つきになってしばらく考え込んだ。
「あたし、先輩との思い出の場所をめぐってる内に体育倉庫で…
  そして…後が思い出せない…何でここに居るのかしら…?」
らためて恭介の顔を見ると赤くなった。
「すみません…もう会わないって約束したのに…何で、こんな…」
「ひかるちゃん、『塀』から落っこちたんだよ。それをまどかちゃんが
  受け止めようとして『ちょっと』頭を打ったみたい。」
0417見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/23(金) 04:34:10ID:+45WeMfV
あかねは咄嗟に嘘をついた。
ひかるも『落ちた』覚えはあるだけに、それに符合させるしかなかった。
(でも、何で塀の上に?)

ピンポ〜ン、ピンポ〜ン!

ひかるの母親が迎えに来た。
まなみが玄関に出ると、カンカンに怒った母親がいた。
まなみの後ろからひかるが顔を出し、母親が口を開く前にしおらしく
謝罪した。
「ひかる、あなた、こんなにみなさんに心配かけて…。どうして?」
「ごめんなさい。訳は帰ってから話すから。
他所のおうちじゃみっともないでしょ?」
後ろで気にするみんなにはちょっと笑顔をして見せて大丈夫、大丈夫と
靴を履きだした。そこにくるみが温かいタオルを持ってきて手渡す。
「ありがとう、くるみちゃん…」
ひかるは声を詰まらせて、みんなに背を向けてドアから出て行った。
見送るみんなにひかるの母は何度も深々とお辞儀をした。
0418見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/23(金) 04:35:12ID:+45WeMfV
玄関が閉まるとあかねがボソッと呟いた。
「ひかるちゃん、気付いてないみたい。」
一同ほっと胸をなでおろす。
みんなはリビングに戻りまどかを囲む。
「ねえ、まどかちゃんはまだ目が覚めないの?」
「打ちどころが悪かったのかしら?お医者さん呼ぼうよ。」
心配そうにまなみが顔を近づける。
「俺が見た瞬間は…ぶつけたって感じじゃなかったけど…。」
他人によって事の次第が明らかにされるのは躊躇われる。
第三者の介入を避けたい気持ちから、いい方に解釈しようとする恭介に
「そんなこと言って、まどかさんにもしものことがあったらどうするのよ!」
まなみが口を尖らせる。
彼女は何よりまどかの容態が心配で、余計なことは考えられない。
「咄嗟だったけど、ぶつからないようにできた自信はあるのよね〜」
あかねが右の掌をみながら呟くのだがが、まなみとくるみは少し心配顔。
そんな二人をなだめるように、あかねが提案する。
「ここは起こしたりしないで、一晩様子を見てようよ。」

全員が交代でシャワーや自分たちの用事を済ませながらまどかを看ている。
しかし時間が経ってもまどかはスヤスヤ眠っているだけ。
11時を過ぎて、さすがに姉妹はあくびをし出した。
隆がやって来て子供たちに休むように促す。
「俺は…」
その場に残ろうとする恭介に呆れ顔で
「お前はダメに決まってるじゃん。あたしが看てるからいいよ。」
あかねにダメ出しされてスゴスゴと部屋に入った。

(ひかるちゃんは…相変わらずひかるちゃんらしくって助かった。
  でも…鮎川は…何考えてんだろう…?目が覚めたら何て言うかな?
   やっぱりアメリカに行くのかな?それとも…)

机の上の二人の写真を見てため息をつく。

(発展的解消か…)
0419見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/23(金) 04:35:53ID:+45WeMfV
リビングでは隅っこにあるお洒落なスタンドだけ灯されている。
あかねはじっとまどかの顔を眺めていた。

(まどか…もし全部覚えていたとしても…
それでもあたし達と一緒にいてくれる?)

「う…う〜ん…」
(!!…気付いた?)
まどかの目が少しだけ開いている。
そして呟くように
「ここは…ひかるは?ひかる…」
「大丈夫よ。ピンピンして家に帰ったよ。」
「良かった…。」
ホッとして瞼が閉じそうになるけれど、ふと考えて呟いた。
「あかね…ここは?」
あかねは少し笑みを浮かべて囁く。
「恭介の家。」
「そう…なら安心だ…」
そう言うと、まどかはまた深い眠りに落ちて行った。
(…?寝ちゃったか。)
あかねも横になることにした。
翌朝
あかねがまどかの顔を覗き込む。
「おはよう。」
(!!な、何よ?ここは?)
まどかはガバッと身を起こしあかねを睨んだ。
「あ、あなた誰?」
「え?」
「あれ?ここ、どこよ?」
茫然と見ていると、みんなも集まって来た。
「まどかさん、良かった〜。」
傍に来ようとするまなみにびっくりして押しとどめる。
「ちょ、ちょっと…あなたたち誰なの?ここはどこよ?」
0420見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/23(金) 04:36:42ID:+45WeMfV
恭介はそんなまどかの姿を眺ながら愕然としている。
「ウソだろ…?」
隆が落ち着いてソファに掛けるように言うのだが
まどかは後ずさりするばかりで、気味悪がって座らない。
一所懸命に何かに考えを巡らせている。
「あなた…自分が誰か」
「あたしは『鮎川まどか』だよ。で、あたし何でこんなとこに居るの?」
「全然覚えてないの?」
すると、まどかは急に怯えたような目つきになり騒ぎだした。
「そう言えば…あんたたち普通じゃない!
あんたは体から青い火を出してた!あんたはあっちこっちに姿を現す…
そして、両腕をさすりながら嫌悪の表情で吐き捨てるように
…き、気持ち悪い!!」
「気持ち悪いって…」
口を開く恭介。
するとまどかはみんなを睨むようにしながら
「失礼!」
そう言うや、彼女は玄関から逃げ出してしまった。
みんなは茫然と見送るしかなかった。
「昨日目が覚めた時は落ち着いてたのに…夜が明けたら…なんで?」
あかねの呟きを聞いて、まなみはショックでしゃがみ込むと泣きだした。
くるみは部屋に入ってしまった。
「ちょっと辛いな。俺達の記憶がこんな形で鮎川の心に残ってしまうなんて…」
「ごめん、恭介。こんなことになるなんて…」
あかねは唇を噛んだ。
「いいよ、二人の命の恩人なんだもん。生きてるだけで…」
そう言うと恭介は部屋に戻ってしまった。
0421見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/23(金) 04:38:22ID:+45WeMfV
「叔父様…ごめんなさい。」
「何で謝るの。あかねちゃんはちっとも悪くないよ。恭介の言う通りだ。
  彼女に知られ、受け入れられなかったのは残念だけど…仕方ないよ。
しかしもうこの町には住めないな。引越しの準備に…」
「どこに行くの?」
まなみが訊くのに
「『居場所』を変えるんだよ。そこでまた一からやり直しだ。」
「もう2度とひかるちゃんやまどかとは会えないの?
  もう一度なんとかならないの?あたし、お爺ちゃんに訊いてみる。
   そうよ、あたしだったら出来るかも。あたしだったら…」
隆とまなみは黙って聞いていた。
掟は絶対守らなければならないことは、一族の者は誰でも承知している。
「ねえ、叔父様。どんなことにも例外は有るわよね?ほら、あたしだって
  スポーツ推薦でK大受けられるし!そうよ。そう…よ。」
あかねは上ずる声に手を当てると…黙ってしまった。

恭介は部屋で今まで撮りだめしていた写真を眺めていた。
いろんなことがあった。
どれもこれも、思い出すと昨日のことのように懐かしい。
(受け入れられなかったら…一家で消滅かあ…)
さっきのまどかの言った言葉を冷静に受け止めていた。
気のせいか、写真の中のまどかがぼやけている。
部屋から出てくると隆に尋ねる。
「俺たち、後どれくらい猶予期間があるんだっけ?」
「7日だよ。それまでに身の回りを整理しておきなさい。」
「そんなあ…明日から学校始まるって言うのに…」
0422見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/23(金) 04:39:43ID:+45WeMfV
妹達の部屋からドタンバタン音がしている。
二人は珍しく喧嘩をしていた。
「お前ら、近所迷惑だろ!」
見ると二人は顔を泣き腫らしている。
「何よ!元はと言えばお兄ちゃんが原因じゃない!」
ギクッとする。
「…ごめん。」
居た堪れなくなったあかねが
「あたし、もう一度まどかちゃんに会ってくる。」
そう言うと恭介の制止を振り切って出て行った。
(あかね…これ以上やってもお前が傷つくだけだぞ…)

まどかはなんとか家に帰り着いた。
玄関にはスーツケースが置いてある。
家に上がると中は雨戸が閉められ、電気が付いている。
(何よ?何にも覚えてない…)
閉め切った窓を次々に開けて回るとスーツケースを開けてみた。
中からは簡単な旅行セットと衣類が出てきた。
電話機のところに置いてあるバッグからは、アメリカ行きの片道航空券が。
日付を壁にかかったカレンダーで確認すると、明後日の出発だった。
(あたしアメリカに行くんだったっけ?あたしが?なんでよ…?)
0423見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/23(金) 04:40:33ID:+45WeMfV
しばらく考えても思い出せない。
ふと思い出したように
「そうそう。え〜っと…」
まどかは何やら探しだした。
(タバコ、タバコと。何所にやったのかしら?)
スーツケースの中の衣類の間を確かめてみた。
「なにこれ?ネックレス?血が付いてんじゃん!汚いなあ…」
まどかは何も考えずポイとごみ箱に放り込んだ。
さらにどこを探しても出てこない。部屋はきれいに片付けられ、
自分の机の上はもちろん、引き出しの中まできれいなものであった。
(嘘みたい…これがあたしの部屋?)
まどかはママの鏡台の化粧ケースの裏ぶたにメンソールが隠してあるのを
知っていた。
(ちょろいわね。)
封を切ると台所にある長いガスライターで火をつける。
おもむろに吸うや、
ゲホッ!ゲホッ!!
噎せだした。
(うえ〜!不味いや…なんで?)
我慢して吸ってみるけど、口の中が嫌な味だらけになる。
まどかは台所の水道でたばこの火を消すと、そのままゴミ箱に捨てた。
(とにかくアメリカなんか行きたくないし…ママたちに電話しとこう)

「ま〜!!呆れた!おととい頼んだくせして気が変わっただって?」
「うん、ごめん。とにかくなんでアメリカなのかもかも覚えてないし、
第一、行きたくもないから。じゃ、切るね。」
「じゃあ、すぐにキャンセル手続きしときなさい!
もうお金ほとんど戻ってこないけど!」
電話は一方的にプツッと切られた。
「まどか?…まどか?」
プープープー…
「んもう!まどかったら…」
「どうしたんだい?」
「それが来るって言ってたかと思うと今度は来ないって。」
「いつものことだろ?」
「それがね、何か変なの。昔のまどかとしゃべってるみたいで…」
その頃まどかは
「ママたちんとこ行ったらうるさく言われるに決まってるじやん!」
自分の部屋に戻ると部屋を見渡した。
0424見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/23(金) 04:43:16ID:+45WeMfV
「おかしいなあ…自分の部屋じゃないみたい。あたし今まで何やってたんだろう?」
8月のカレンダーを眺めると、予備校の夏期講習の日程、、お盆の日程、そして…
いたるところに『K』の文字が…。
「『K』ってなによ?ああ〜もう!」
床にあぐらをかいて思い出そうとする。
(何であたしあんなとこに居たんだろう…
  あの気持ち悪い連中と関係あるのかしら…とにかく、ごめんだわ。」
本棚を見ると、予備校の夏期講習のテキストが並べられている。
ぺらぺらとめくると勉強の後が…
「うわ〜、あたしらしくないよ、こんなの。
夏休みも残り今日だけじゃん!ひかる誘うか。」

ひかる宅にて。
ルルルル!
「はい、桧山…あ、まどかさん!大丈夫ですか?今どこ…」
「大丈夫って、ぜんぜん大丈夫じゃないよ!
だいたい、何のことか覚えてないんだけどさ、
聞きたいこともあるし…今からうちに来ない?」
「え?今からですか?…ちょっと無理かなあ…親が怒ってて。」
「抜ければいいじゃん、らしくないね。」
(…?『らしくない』って、まどかさんこそ…)
「それは…ちょっと。すみません。」
「じゃあ、いいよ。学校始まったら会おうか。」
「…はい。あのー…まどかさん。」
「何?」
「…いや、何でも無いです。」
いつもと様子が違うことが気になっている。
「じゃあね。」
「じゃあ…。」
0425スゲエ2010/07/23(金) 07:27:53ID:X/iLYDdZ
一夜明けたら大量アップしてやんの!
0426元祖2010/07/23(金) 23:13:49ID:7JbEBk+U
作者様・・
ついて行けない・・・
0427見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/24(土) 12:28:12ID:3YEfLWVJ
元祖さん
何がついていけないのでしょうか?
話にですか?
それとも、お気に入りの鮎川まどかの人格が変わったからですか?
確かに、着いていけない展開ではありますね。
0428元祖2010/07/24(土) 22:43:01ID:L0k1oQf0
作者様、あたしのまどかちゃんを弄び過ぎです。
0429見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/24(土) 23:19:54ID:2Chf9lKZ
どーして「あたしの」なのかがわかんねえ。
0430見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/28(水) 14:39:52ID:wK38hgv5
またアク禁だね。
解除と同時に大量アップするのはおサルの仕業。
0431見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/07/31(土) 12:20:52ID:yxeuhBB8
一体まどかに何が起こったの?
気になってしゃ〜ないやん!
0432見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/03(火) 16:49:00ID:goOMjNTY
作者が馬鹿なんでしょう。
0433見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/05(木) 08:35:20ID:ZgitCKJQ
つ〜か、ネタ切れ悪あがきってとこか?
0434元祖2010/08/14(土) 15:58:59ID:czmI9naL
作者様、ひょっとしてアク禁でしょうか?
それとも・・
あたしは信じて待ってます!
0435見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/15(日) 05:57:30ID:6cVaHSMN
最初から読んでたら
それなりに暇が潰れるって。
それと、不用意に上げないように!
0436元祖2010/08/15(日) 17:43:05ID:BvPvO+do
す、すみません!
435さんは、ひょっとして作者様ですか・・
ドキドキ
0437見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/15(日) 20:14:20ID:6cVaHSMN
お前さんと同じ駄スレファンだよ。
0438見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/16(月) 13:02:44ID:CvarvaWR
お盆の間暇だったから読み直したけど、正直何でこんな展開になるんだよって。
そもそも超能力なんか持たせたのが間違い!そんなんで話を引っ張るなよなあ。
0439見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/16(月) 23:13:12ID:CVn8uCq6
じゃ、読まなきゃいいじゃん?

と、釣られてみる。
0440元祖2010/08/16(月) 23:46:20ID:jNenJvnH
確かにパワーの封印解いてから急展開してるけど
でもパワーの話は名作ハワイ編で出てますよね〜。
だから今の流れは織り込み済みだったのかなあ?
0441元祖2010/08/20(金) 11:08:17ID:dngSV97N
お昼に覗くのは久しぶりだなあ。
やっぱりまだか・・
0442見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/20(金) 20:01:01ID:I/ZScbqq
スミマセン!!もうしばらくお待ちを!
0443元祖2010/08/20(金) 22:13:12ID:dngSV97N
さ、作者様ですか?
嬉しいです〜!
ええ、待ちますとも!
0444見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/20(金) 23:09:17ID:BhUOALcJ
442が作者とは限らんだろー?
0445見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/23(月) 09:26:04ID:VRvSoS/j
1ヶ月毎の掲載ペースだし、昨日あたり期待したんだが・・

一気に20話も上げないで、中2日くらいで細かくUPして欲しい。
0446見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/28(土) 12:18:12ID:gk9cV3Y4
その1ヶ月を過ぎてるけど。
0447見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/28(土) 20:42:30ID:ND3BJoRl
ひかるは受話器を置くと考え込んだ。
(まどかさん…何か変。)
夏休みの間にいろんな事が有った。
恭介のことで一時はまどかと袂を分かったりもした。
自分の気持ちを抑えるため、随分遠回りした。
この数週間で今までの人生の半分くらいの涙を流したように思う。
最近は『二人』に会わないよう気を使っていたつもり。
なのに…電話の向こうのまどかは全く気にしていない。
(どういうつもりかなぁ…?)
ふと考えてみると、そういう自分だって昨日は恭介の家に運ばれていた。
流れを反芻しても、『塀の上』のくだりが腑に落ちない。
しかし、その一点を除けば、恭介への想いを断とうとしていながら
彼の家に居たことに、恥ずかしさと同時に腹立たしさを感じる。
「あたし、何やってんのよ!」
溜息混じりに呟いた。

一方、まどかは電話を切ると部屋を見て回る。
「う〜ん……」
どの部屋もきれいに片付いている。
何より、自分の部屋に記憶が残っていない。
(おかしいなあ?中学の頃のことは、ついこの間のように覚えてるのに…)
この数年の記憶があやふやでハッキリしない。
自分が高校3年生であることは分かっている。
勉強も頑張っていたような…でも…
「なんで?」
0448見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/28(土) 21:16:01ID:ND3BJoRl
まどかはキッチンに降りて紅茶を入れた。
思いついたように冷蔵庫を覗いて見ても、何となく覚えがあるような…
「ふ〜…美味しい。…あれ?」
(…あたし、紅茶なんか飲んでたっけ?)
ちょっとぼんやりしてみる。
(明後日始業式だよねえ。サボっちゃおうか?…あ、ひかると会わなきゃ。)
また紅茶をすする。そして、ギョッとした。
(そうだ!そういや、あいつら何?気持ち悪〜い!
  何であたしあそこに居たのよ?
   あいつら人間じゃないよねえ…誰かに知らせなきゃ…
…って、どうでもいいや…。)
気を取り直して紅茶を飲みほすと姉に電話する。

ルルルルル!
「はいは〜い!ちょっと大人しくしててね〜。」
子供たちに微笑むと受話器を取る。
「姉貴…。」
(姉貴?)
「あら、まどか。珍しいわね、あんたが電話してくるなんて。」
「そう?…ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…。」
「何?」
「え?…う〜ん…やっぱりいい。じゃあね。」
ガチャ!プープープー…
掛って来たかと思えば一方的に切られ、ちょっとムッとする。
(一体何なの?それに『姉貴』だなんて、久しぶり聞くわ…)
ついムッとなって声が出た。
「この『情緒不安定女』!」
(…?)
受話器に向かって吐き捨てる母親を子供たちが見ていた。
「あら〜!君たち…聞こえた?」
0449見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/28(土) 22:02:03ID:ND3BJoRl
その頃…
あかねはまどかの家の周りをうろうろしていた。
(どうしよう…訪ねてみようか?
  …でも、また『気持ち悪い』って言われたらショックだし…
   あたしの力じゃ…もう無理なのかしら?)
すると玄関からまどかが姿を現した。
あかねは慌てて家の蔭に隠れた。
(え〜!!何?どうしちゃったのよ〜!)
恰好は普段よりも突っ張り気味…髪はポニーテールにまとめている。
眉はきつく描かれ、目には薄くブルーのシャドーを引いている。
リップもくっきり目立つくらい、全体にきつ目の化粧をしていた。
(あんなことして〜!せっかくの美人が台無しじゃん!)
飛び出していきたい衝動を覚えるが…
(今何かしたら…もっと面倒なことになるかもしれないし…)
必死に自重しながら後を追うけれど、
まどかの醸し出す雰囲気があまりに変わってしまったことにショックを覚え
まどかと過ごした日々を思い出しながら段々と悲しくなってきてた。
(助けたつもりが…あたしたち『気持ち悪い』かあ…)
「辛いなあ…」
ふと口にすると、あかねは涙でぼやけるまどかを見送った。
(バイバイ…『あたしのまどか』…)

そんなことは露にも知らず、腕時計で時間を確認する。
(まだ早いなあ…メビウス開くまでどっかで時間潰そうか。)
まどかは騒々しい街の繁華街へと消えて行った。
0450見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/28(土) 22:41:28ID:Tjfm2VWd
カランコロ〜ン!
「よう!いらっしゃい。」
マスターは先日の事があるだけに、務めて明るく振舞うのだが
恭介の顔は何ともさえない。
「今日はまだ誰も来てないなあ〜」
それとなく情報提供する。
「しかし、ひかるちゃん見つかって良かったねえ。
  まどかクンにも会えたんだろ?」
ちょっと誘い水をかけるが乗ってこない。
「コーヒーでいいかい?」
「あ、スミマセン。ホット貰おうかなあ…」
マスターは棚の奥からとっておきのブルーマウンテンの豆を取り出して
ミルで挽き出す。ドリップにセットすると上からゆっくりケトルのお湯を
回すように注いでいく。すると、辺りには何とも芳しい香りが漂う。
「はい、どうぞ。」
「有難う。」
恭介は砂糖を入れずに飲んでみた。
彼にはこれが美味しいのかどうかまだ解らないけれど…
(鮎川はこの味が判るくらい大人だったんだよな。)
マスターは何も訊かずに黙ってグラスを磨いている。
夕方近くなり、店も混みだした。
「おはようございま〜す。」
女子大のバイトの子たちがやって来た。
「まどかクンはもう手伝えないよなあ。」
受験にしてもアメリカに行くにしても、いずれにしてもお手伝いは頼めない。
(でも、どうせなら春日クンと受験に頑張って欲しかったんだけど…
  ところで春日クン、彼女と何か話し出来たかな?)
恭介の顔をみると、完全に魂が抜けていた。
0451見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/28(土) 23:17:35ID:Tjfm2VWd
まどかやひかると出会ってから、大切な青春を共に過ごしてきた
いろんなシーンをゆっくり1ページずつ頭の中でめくっていた。
(全部無くなっちゃうのか…いや、俺の中では生き続けるんだよな。)
気の抜けた恭介を心配して声をかける
「春日クン…大丈夫かい?」
「え?…うん。あと何回来れるか分かんないけど…今までいろいろ有難う。」
「おいおい!何を言い出すんだよ。どうしちゃったの?」
「あ、…ごめんなさい。俺、最近ちょっと…」
恭介は立ち上がるとレジに行く。
マスターがバイトの子に手を振って、要らないと合図をする。
「いや、そんなことされたら来にくくなるから。」
女の子が困っているけれど、
恭介は支払いを済ませると黙って出て行った。

(ここも来にくくなるな。鮎川にも会いずらいし…それに
  また『気持ち悪い』って言われたら…嫌だしな…)
あかねと同じことを考えていた。

とぼとぼと歩く恭介とは道路をはさんだ反対側をまどかが歩いていた。
お互い気付かないまま、恭介は公園へと、まどかは繁華街へと向かう。
恭介が公園についた頃には陽も傾きかけている。
さすがに8月も終わりになると日が暮れるのが少し早くなった。
恭介は階段を上がっていくとブランコに腰かけた。
0452見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/28(土) 23:52:02ID:Tjfm2VWd
(こんなことなら…アメリカに行ってくれてた方が…)
なんともやるせない気分になってくる。
『気持ち悪い』
まどかが発した言葉が何度も頭の中を駆け巡る。

その頃メビウスでは
「よう!まどか。久し振りじゃん!!お前足洗ったっんじゃねえ?」
中学当時、まどかと悶着を起こしていた連中から囲まれた。
「…」
まどかは無視してカクテルをあおる。
「けっ!相変わらずだな。ここはお前の来るとこじゃねえよ!」
まどかは
(あっち行ってろ!)
とばかりにコースターを投げつけると、見事に顔面を直撃した。
「てめえ、何するんだよ!!」
掴みかかろうとするやつをひと睨みで制すると
「表に出な!」
夕暮れ迫る路地裏、まどかを囲む5人の男女。
ここら辺りでは名が通っている不良たち。

何とそこに、偶然早川みつるが通りかかった。
ちょうど夜の街へ繰り出すところであった。
「お?あれ…あいつ何やってんだ?」
じっと見てるといかにも雰囲気悪そう。
0453見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/29(日) 00:11:24ID:5Nfxyie4
「やっちまえ!!」
一斉に5人が飛びかかる。

「ね、ねえ、みっちゃん、止めなくていいの?」
マネージャーが言うのに早川は
「まあ見てようよ。」

白人の大男2人に比べればこんなの訳が無い。
あっという間に連中を叩き伏せてしまった。
(おいおい…これがあいつのもう一つの顔かよ。)
早川はマネージャーと引き気味に見ていた。

連中は退散してしまったのだろう。
数分後、まどかは一人で戻ってきた。
カウンターの中のマスターが
「随分久しぶりだけど、相変わらず強いね。」
(ふんっ)
まどかは素気ない。
「ジンライム頂戴。」
「あ、俺も。」
0454見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/29(日) 00:43:05ID:8fyqua1x
(…?)
振り向こうとするまどかの隣に座る早川。
厚かましいのは慣れたもの。
「何か用?」
「これはこれは鮎川様、今日はえらく荒れてますねえ。」
「誰よ、あんた。」
(…?)
早川は彼女らしい、またいつもの挑発的な態度と受け取った。
「未成年がこんな店に来ていいのかい?」
(…うっさいなあ。)
まどかは睨むと
「ねえ、あんたタバコ持ってる?」
「いや、俺吸わないから。それより、お前タバコなんか…」
「あ、俺のでよかったら…」
口をはさんで、マネージャーがライターを添えて箱ごと差し出す。
まどかは手慣れた手つきでタバコを取り出すとくわえて火をつけた。
一気に吸うや
「ゲホッ!ゲホッ!ウエ〜!」
「お前、吸えないんだったら止めとけよ。」
(…おかしいなあ?)
また吸おうとする。
「ゲホッ!ゲホッ!!」
(何で?体が受け付けなくなってる…)
指先に挟んだタバコを不思議そうに眺めていると、早川に取り上げられた。
口紅がついたそれが、ギュッギュッと灰皿で潰される。
「お前、大事な声を粗末にすんなよ。神様からの…」
瞬間、早川の顔面にジンライムが浴びせられた。
(何てことを!)
立ち上がるマネージャーを手で制す冷静な早川。
マスターがすぐにおしぼりを差し出すと、彼は顔や胸元を拭きながら
「お前さぁ…春日と何かあったのかあ?」
0455見ろ!名無しがゴミのようだ!2010/08/29(日) 01:00:37ID:8fyqua1x
彼はまどかの様子がいつもと違うことに気付いた。
こんなに荒れているということは、恭介と上手くいってないはず。
「誰よ?春日って。」
(ん…?一体どうしたんだ?別れたのか!?)
「お、お前、『鮎川まどか』だよな?…俺のこと…」
「マスター、お勘定この人が払うって。」
言うや彼女はバッグを持って、席を立つと店を出て行った。

「手ごわくなってる…」
マネージャーが呟くのに頷く早川。
「ありゃ、バージョン変更してるぞ。」
(何か攻略法探さないと…)
二人は茫然と見送った。

まどかは馴染みの店に寄る。
カウンターに座ると適当にカクテルを注文する。
そして、ぼんやり考え出した。
(何よ、今のヤツ…何であたしのこと知ってるの?)
カクテルグラスからストローを外すと、グラスからいきなり飲む。
ここはよく来る店だが、普段から店の者と会話をすることはない。
しかし、店の者は常連のまどかのことを知っている。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています