ラビン・ユー
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0001見ろ!名無しがゴミのようだ!
2009/07/30(木) 00:10:53ID:Zns8QEcCまどか「元祖さん、たどり着けたら再開するよ。」
0288見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/10(土) 20:40:30ID:8kDAQg0i(はあ〜・・・・)
ひかるは心で深いため息をついた。
そして、急に立ち上がると彼の傍に行く。
「な、なに…?」
「先輩、あたしは全然忘れられないです。
…でも、忘れなきゃいけないこともあるんだなって…
…分かっているつもりです。
これ、あたしが先輩に見て欲しかった劇のチケットなんです。
無理強いじゃないです。
もし良かったら…まどかさんと一緒に…。」
2枚のチケットが差し出された。
「…う、うん、有難う。考えておく。じゃ、ひかるちゃん。」
チケットを受け取ると、
「ごちそうさま。」
恭介はレジを済ませ、そそくさとアバカブを出た。
0289見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/10(土) 20:48:14ID:8kDAQg0i(とうとう…言っちゃった…。)
ひかるはうつむいて自分の席に戻る。
取り返しのつかない『終止符』を、自らの手で打った気がする。
ひかるは目を見開いたままじっと考えた。
(これで終わり?もう・・・もう、ホントに終わりなの?)
マスターが
「温かい方がいいかな?」
そう言って、そっとホットコーヒーを差し出した。
「ひかるちゃん、随分大人になったね。」
マスターの言葉に
「え?」
見上げた彼女の頬を一滴の涙が伝う。
ひかるは慌てて拭って
「嫌だなあ〜マスター。ひかるはまだまだ子供ですよ〜。」
無理して笑顔を作るけど、マスターの優しい笑顔を見ているうちに
本音を語り出した。
「…こんな…こんな思いするんなら…大人になんか……」
下を向いたまま肩がふるえている。
バイトの子が気を利かせて、ひかるの周りに客が座らないよう
椅子を離してスペースを設けてやった。
マスターが紙のコースターに書いて、ひかるのコーヒーカップに添える。
『今夜はずっとここに居ていいよ。』
夕刻の喧噪の中、ブラインド越しに西陽が差しこむ。
店内にはやさしい曲が流れていた。
0290見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/12(月) 09:57:04ID:UiDORYo9あ〜、それと、なんだ、元祖は発言を慎むように!
0291見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/18(日) 11:03:52ID:jtU3NdkY0292見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/18(日) 21:08:30ID:E1lZvzDp0293元祖
2010/04/18(日) 23:16:46ID:ybfyoVRr作者様ー、あたしは信じて待ってます!
0294見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/26(月) 11:33:59ID:vcEGouA00295見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/28(水) 11:28:49ID:/MyVQ+S80296見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/29(木) 11:38:58ID:SwCMS7b3ここすぐにアク禁くらいますもんね〜!
元祖さんの言うとおりプロローグに回帰してきてますけど、
まだ、最後の〆のこってますよね作者様〜!
その先は新きまオレって考えてしまうの私だけ?松本氏のプロットに
作者様風のビートの効いたそれでいてせつなさの漂うarrangmentを聴いて
みたいです。
ちなみに、私の携帯着メロはKYOUSUKE#1です。敬意の欠片もないおバカでしょ?
0297拝啓レスペー様!
2010/04/29(木) 15:07:00ID:m3q5a5A+町は祭りの準備で活気に溢れている。
町中を清流が流れ、橋の欄干から子供たちが次々に川に飛び込む。
青空と蝉しぐれの中、次々に威勢のいい水しぶきが上がった。
甥っ子が川を指さす。
「まどかねーちゃん!」
「入りたいよね〜?お姉ちゃん、行っていい?」
姉は「いいよ」と頷く。
義兄は車からまどかと長男を降ろして
「じゃあ、まどかちゃん、頼んだね。」
「やった〜!行こ!」
「気を付けてね。」
姪っ子もじたばたと降りたがるが、姉は離さない。
「あなたはダメよ。疲れてるから、じぃじぃん家で寝んね。」
まどかはタオルを片手に甥っ子を連れて川に降りた。
甥っ子が歓声を上げる。
「冷た〜い!」
「うん。冷たいね〜。ほら、あそこ!お魚がいるよ。」
まどかはサンダルを脱いで膝まで入る。
水の冷たさも忘れ、二人ははしゃいだ。
0298見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/29(木) 15:14:27ID:m3q5a5A+毎年この時期は兄弟姉妹が帰省し、屋敷はにぎやかになる。
今回はまどかもお邪魔している。
20畳はあろうか、大広間に親戚一同が集まり、夕刻前から宴が
催される。
義兄は実家だから、思いっきりくつろげる。
姉はあちこちに呼ばれて挨拶をしている。
その時一緒にまどかも紹介され、
その場におばちゃん達が集まってくる。
姉妹はあれが似合う、こっちの方がいいなどと、浴衣を合わせられている。
夕刻7時を過ぎると、町中から笛を合わせる音色や、観光客の賑わいが
聞こえてきた。
子供たちは長旅の疲れで、広間の隅でスヤスヤと眠っている。
「あなたたち、行っておいで。あたしが見ててあげるから。」
義母は孫たちが可愛くて仕方がない。
彼女の勧めに姉はニッコリ頷き
「まどか、行こうか?」
「うん。」
二人はそれぞれ浴衣に着替えた。
髪を結い上げ、お互いにチェックし合う。
「いいね〜!まどか、すっごく似合ってるよ。」
「アリガト。お姉ちゃんも!」
屋敷に残る者と踊りに出る者に分かれ、姉妹は会場に出かけた。
祭囃子のやぐらのまわりは人垣がすごい。
土地の代表曲が流れ始める。
何とも夏風情たっぷりの曲と踊り。
姉妹は周りを見ながら踊りを覚え、あっという間にモノにしていく。
0299見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/29(木) 15:44:14ID:m3q5a5A+曲に合わせてゆっくりと踊っている。
伸ばす腕は指先までしなやかに反り、足の運びも流れるように滑らか。
義兄達も、子供の頃からの免許皆伝。踊る姿に力みが無い。
曲はアップテンポの曲へと替わった。
まどかは上手く合わせて、無心に踊っている。
下駄を上手に鳴らし、合いの手の掛け声もしっかり出ている。
義兄が驚いて
「まどかちゃん、やるねえ。」
妻に声掛けると
「この子、中学の頃から『クラブ』で鍛えてるもん。」
踊りながら聞いてたまどかはちょっとベロを出した。
2時間近く散々踊ったから、体中が汗でぐっしょり。
姉妹は帰ろうと言うのだが
「これからが本番さ。先帰ってて。」
義兄達は帰らない。おばちゃんたちもやめない。
「じゃあ、お先に〜。」
0300見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/29(木) 16:31:01ID:m3q5a5A+「暑かったね〜!」
「ふぅ〜、暑い暑い!」
姉妹は仲良く扇ぎ合いながら帰路につく。
メインストリートは、どこもかしこも踊る人たちであふれている。
観光客はそれなりだが、土地の人はすぐに分かる。
やはり一際目立って上手いし、何より『様』になっている。
二人は足を止めて眺めながら『型』を真似し出した。
「こうかな?」
「こうじゃない?」
「こうか…」
「お姉ちゃん、違うよ。こうよ。」
(・・・!!)
「あれ?あ、あはははは…」
自分たちのやりとりをみんなが見ているのに気づいて
姉は歩くスピードを上げる。
(お姉ちゃん、ずる〜い。)
まどかも気付いてかけ出した。
明らかに土地の者じゃない、都会の香りをかもし出す超美人姉妹に
みんなが目を奪われるのは当然な訳で・・・。
0301見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/29(木) 21:19:00ID:thTGYUQn元祖!なんかコメ書けよ!
0302見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/29(木) 22:37:45ID:m3q5a5A+でも、さすがに今夜は目立ち過ぎた。
「うわ〜!焦ったね〜。」
「ほ〜んと!恥かし〜い!」
笑いながら、二人は下駄を鳴らして坂を上がった。
「ただいま〜。」
帰ると、すぐに子供たちの所に行く。
孫たちをやさしくお守りしてくれていた義母にお礼を言った。
「楽しかった?」
「はい。」
チビたちを起こさないよう、二人は小声で応えた。
盆地の夜は涼しくて、長旅の疲れもあって二人ともスヤスヤと寝ている。
「汗かいたでしょ?お風呂入ってお休みなさい。」
「はい。」
じゃあねと告げて、義母は自分の部屋に戻って行った。
姉はスヤスヤ眠る子供たちにタオルケットを掛けてやり、
起きそうにないと見ると
「まどか、一緒に入ろうか?」
「お姉ちゃん、久しぶりね。」
0303見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/29(木) 23:13:49ID:m3q5a5A+二人はびっしょり濡れた浴衣を脱ぐと、頭からお湯を浴びた。
涼しい風が吹いてきて、とても気持ちがいい。
遠くに祭囃子が聴こえている。
湯船につかっても、首から上は涼しい空気が流れている。
「気持ちいいね〜。お姉ちゃん、有難う。誘ってくれて。」
「そお?」
「うん!来て大正解だよ。」
「『お悩み』は、少しは解消したかな?」
ちょっとおどけて顔を覗き込む姉に、まどかは他所を見てとぼける。
「何?!あたし別に悩んでなんか…」
「ママから聞いたよ、相談に乗ってあげてって。」
「だから、悩んでないって!」
ムキになるまどかに
「かすが…きょうすけクンだったっけ?」
「んもう!」
パシャッ!
まどかは姉の顔にお湯を掛けた。
「やったな〜」
姉も負けじと応戦した。
0304見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/29(木) 23:38:34ID:m3q5a5A+姉は頭に巻いたタオルを取って、そのまま子供たちの傍に横になった。
「オヤスミ〜。」
まどかは別室の小部屋に入った。
遅く帰った彼女のために、あらかじめ蚊取り線香が焚いてあり、
布団も敷いてある。
(うわ〜、懐かしい匂い。)
そのまま窓際に腰掛け、網戸を開け外を眺めると、
川のせせらぎと祭囃子が聞こえてくる。
涼しい風が吹いてくると
「あ〜気持ちいい!」
まどかはぼんやりと月に照らされた深い山のシルエットを眺めながら、
物想いに耽った。
(3人で来たら、楽しかっただろうな…)
恭介への愛を独り占めした、その代償はあまりにも大きい。
『3人で』や『ひかると』というシチュエーションは…
(もう、二度とないの?)
0305見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/29(木) 23:50:56ID:m3q5a5A+今まで大切にしてきた何かを失ったような気がする。
(想像以上に辛いなあ……)
網戸を閉めると、まどかは布団の上で膝を抱え込んだ。
(時間が必要だけど…虫が良いかもしれないけど…
時が経てば、きっとひかるだって……)
「はあ〜…」
天井を見上げ深いため息をつくと布団に倒れ、大の字になった。
(やっぱり…無理かな…?)
取り留めもなく考えているうちに、考えがまとまらなくなり
またため息をついた。
(もうよそう、これ以上考えても…)
そのまま眠りに落ちて行った。
その頃恭介は・・・ぼんやりと月を眺めながら
(俺達って、どこから来たのかなあ…?
小さい頃から人と違うってのは解ってたんだけど
深いところでは、全然考えてなかったなあ。
いや、考えないようにしてたよな…。)
0306見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/30(金) 01:04:23ID:uq0j2Xm4身近な他人とよくよく比較して、初めて『違う』と分かる。
(鮎川に本当のことを言ったら…)
強がっても、はっきりとした自信がある訳じゃない。
トントン。
「何?」
「私、まなみ。入ってもいい?」
「うん。」
まなみが夜食を持って入ろうとして、部屋が暗いのに驚く。
「お兄ちゃん、寝てたの?」
「いや・・・ちょっと考え事を。」
まなみは月明かりを頼りに兄の傍に行く。
「お父さんと話してたこと…」
「ああ、まなみは判ってるんだろ?俺と鮎川のこと。
…ひかるちゃんとのことも。」
「…うん。でも、それは3人のことで、私が口を挟むことじゃないし。」
「じゃあ?」
「お兄ちゃんが言ったこと…もし『受け入れられなかったら』…」
0307見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/30(金) 01:05:09ID:uq0j2Xm4「お兄ちゃん、分ってるの?おじいちゃんが言ってたこと。」
「ああ。正体を明かしたら、もちろん『添い遂げる』し、
受け入れられなかったら全てを消して・・・『消して』?!」
「気付いた?」
「『消して』って・・・俺も消えちゃうんだったっけ?!」
「春日家が、私達みんなが、この『時間』から転居しなきゃならないのよ。」
「そ、そんな・・・あ、あははは…」
まなみはため息混じりに
「きっと…きっと、まどかさんなら……きっと…」
まなみは満月を見やって
「おやすみなさい。」
部屋を出て行った。
(鮎川なら…)
でも、本当の恭介を『知っている』訳じゃないし、断言は出来ない。
もし受け入れられなかったら…
(鮎川の心の中から俺は消えてしまうって言うのか・・・?!)
もし…
0308見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/30(金) 17:27:35ID:mygBJ7Z50309見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/04/30(金) 21:13:00ID:RHxIrh6W0310元祖
2010/05/01(土) 10:01:32ID:Vq7L2T2F作者様に影響されて今宮崎なのです。
サーフィンスクール3日間だ〜!
0311見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/01(土) 20:09:24ID:C51Bj9ZJな、懐かし過ぎる・・・。
君、やるねぇ
0312見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 11:48:27ID:zh7FigXl恭介はマンションに一人残って勉強に励んでいた。
ルルルル…
(鮎川?)
恭介は急いで子機を取る。
「はい、春日です。」
「ヤッホ〜!恭介。お前留守番してんの?」
「た、ただいま留守にして…」
留守録を装うも
「バレてるって!あはははは!」
「ちぇっ。何だよ?」
「叔父様、奥さんに逢いに行ったんでしょ?」
(『逢う』…?)
恭介はあかねの言っている意味が分からず
「じいちゃん家に行ったよ、妹達も一緒に。」
(いけね。こいつ知らないんだ…)
あかねは隆の秘密を知っている。慌てて話を戻した。
「あのさあ、まどかちゃん誘って図書館にさあ、」
「鮎川は居ないよ。旅行に行ってるから。」
「ええ〜!あたし何も聞いてないよー!」
「何でお前にいちいち言わなきゃなんないの?
それよりお前も受験すんだろ?一緒に図書館行こうよ。」
「恭介と一緒かあ…まあ、仕方ない。」
「今度はあかねが奢れよ。」
「…まあ、仕方ない。」
0313見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 13:02:26ID:zh7FigXl隆は墓前で、息子が母親にそっくりな女性と恋に落ちていることを、
そして、全て事が上手く進むよう見守って欲しいと頼むつもりであった。
お盆の14日深夜…年に一度だけ、義父母の力を借りて隆は妻に逢える。
これは義父母と隆だけの秘密だったのだが、実はあかねも気付いていた。
一緒に泊まりに行った時、偶然隆と祖父母の話を聞いてしまった。
しかし、みんなのことを考えて、以来自分の胸にそっとしまっている。
(悲しいけど…素敵だなあ。)
隆と義父母は他人はもちろん、子供たちにもこのことは告げていない。
子供たちに知られると、母は『天国』という次元に戻れなくなる。
小さい時だったからあんまり記憶に残ってないけれど、
まだまだ、まなみやくるみにとって母親は必要。
もし母の姿を見たら、絶対離さないだろうし、母も情に絡みとられ、
結果、彼女は現生とあの世の『挟間』を漂うことになるだろう。
だから子供たちには内緒にしている。
再婚を勧めても、頑として亡妻への愛を誓う隆。
男手一人で頑張って家庭を支えている。
そんな無骨な姿に、さすがに義父母も可哀そうになった。
0314見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 13:17:56ID:zh7FigXl「そうじゃな、年に一回くらいなら逢わせてあげられるかも知れん!」
それからこの十年近く、毎年この日、この時間に二人は逢っていた。
隆は夜遅くにこっそり湖の孤島に渡り、
そして、妻の墓前に行くと、墓の掃除をし出した。
苔をこすり、雑草を抜いてきれいにする。
そして、懐中電灯で腕時計を照らして時間を確認した。
「そろそろ11時か…。」
隆は墓前に清水と温かいお茶を用意し、妻の好きな『勿忘草』を飾る。
そして、そのまま地面に胡坐を組むと呪文を唱え出した。
妻の実家でも、時間に合わせ老いた父と母が呪文を唱え出した。
そして…23時ちょうど
隆の背中から両腕に一斉に鳥肌が立つと
迎え火に誘われて、目の前に妻の魂が…『姿』となって現れた。
「あなた…」
「お前!…逢いたかったよ。」
「ええ、分ってる。私も。」
思わず二人は抱きしめあった。
今だけは妻に実体がある。
二人は年に一度の再会に心を震わせ、涙を流した。
0315見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 13:38:02ID:zh7FigXl「いつもきれいなお花を有難う。」
「私にはこれしか出来ないから。」
二人は一晩中いろんなことを語り合った。
仕事のこと、子供たちのこと、まなみの成長、くるみの幼さ、
そして…恭介の初恋。
妻はやさしい笑顔で隆の苦労話を聞いてあげる。
でも、実は全部知っている。全部温かく見守ってきた。
手が届きそうなのに、届かないもどかしさも感じている。
しかし、あっちの世界のことは他言を禁じられている。
言うと二度と逢えなくなるから…
だから、ひたすら隆の話をやさしく聞いてあげるだけ。
ふたりは手を取り合って、ずっと見つめている。
「あなた・・・あなたの強い想いが私をここに呼んでくれる。
すごく嬉しいんだけど、あなたはいずれ老いるでしょう?
その時、傍に居てくれる方が必要なんじゃないかしら?
ねえ、そろそろ…」
「嫌だよ…私は君しか、こっちでも、…『そっち』でも、君しか!」
妻は『フッ』とやさしく微笑んで
「私、当分…本当に成仏出来そうにないわね。…でも、有難う。」
二人は語り明かした。
0316見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 13:48:11ID:zh7FigXl薄く白けてきた周りを見渡し、あらためて腕時計を目にする。
「あっという間だったなぁ…また来年も逢えるかい?」
「はい。」
山の稜線がはっきりと分かるように空が白んでくる。
頭の上はまだ真っ暗な星空なんだけど…。
「あなた、行かなくちゃ…」
「そうだな。…これからも僕たちのことを見守ってくれるかい?」
「はい。」
やさしく微笑むと
「あなた…子供たちを…」
言いながら実体は消え出した。
「あ…」
隆は彼女の手を取ろうとするのだが…
その頃、まなみとくるみはスヤスヤと眠っていた。
二人は「むにゃむにゃ」とほほ笑んでいるが、瞼には涙が溜っている。
母はそっと二人の涙を拭うと、名残惜しそうな表情を見せ
『スッ』と
消えてしまった。
0317見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 14:12:30ID:zh7FigXl恭介は一人マンションで眠っている。
(ううっ!寒〜…)
寝返りを打った。
その瞬間、白い人影が。
(え・・・鮎川?)
慌てて眼を醒ますが誰も居ない。
(夢か…うん?まだ5時じゃない…)
タオルケットに潜り、また眠りに落ちて行った。
午前8時過ぎ、G市の義兄実家前にて…
義兄達が玄関で話している。
「もうちょっとゆっくりして行きゃいいのに…」
「いや、仕事があるからね。」
義父母が嫁に孫だけ置いて行くように言う。
「で、出来る訳ないでしょう!…ぷっ!」
姉夫婦が笑い出した。
みんなも笑っている。
0318見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 14:27:10ID:zh7FigXl「お世話になりました〜!」
嫁と孫がサヨナラのあいさつを済ませると、車のウインドウが上がった。
じいじとばあばはいつまでも手を振っている。
「楽しかった〜!」
「楽しかったね〜!」
甥っ子は、籠の中のカブトムシを夢中で眺めている。
「やっぱり受験生を誘ったのは間違いだったかなあ?」
義兄が運転しながら言う。
「全然!大正解です!少しは脳を楽しませてあげないと。」
「あんた、あっちでそんなに勉強してんの?」
「当たり前でしょう!」
「ふ〜ん・・・」
姉は白々とした視線でまどかを眺める。
「な、なによ!…ひっど〜い。ねえ、君は信じてくれるよね〜?」
甥っ子に同意を求めるも、彼はカブトムシに夢中。
「あれ?」
「あ、あはははは!」
姉妹のやり取りに車中は賑やか。
0319見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 14:57:02ID:zh7FigXl「見送るよ。」
でも、まどかは首を横に振る。そして小声で
「ばいば〜い。」
眠りこけているチビたちに手を振って、そっと降りた。
「じゃあ!」
車は急かす車列の流れを止めないように、スムーズに発進する。
まどかは車が見えなくなるまで手を振った。
姉夫婦には本当に感謝している。
義兄一家にも、そして…ママにも。
まどかは義兄が予約してくれていた切符を取り出した。
「え?んもう…自由席でいいって言ったのに。」
切符はグリーン車であった。
帰省ラッシュで席が空いてないだろうことと、グリーン車なら
かえってキャンセルが出る可能性が高かったから。
「東京までだから別に立っててもいいんだけどなあ。」
パパといい、義兄といい、大切にしてくれるのは有難いのだが、
(ちょっとだけ、やり過ぎなのよねえ。)
0320見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 15:17:06ID:zh7FigXl(え〜っと、17のAと・・・)
車内は少し混んでいるけれど、隣に乗客は居なかった。
「よいしょっと。」
荷物を棚に上げると、ファッション雑誌を広げてパラパラとめくり出す。
駅で買ったスタバのコーヒーに口をつけ、ほっと一息。
トゥルルルルル…
発車の合図と共に、車内アナウンスが流れる。
いくつ駅を過ぎるんだろうとドアの上の電光掲示を見た瞬間ドアが開いた。
スーツ姿の男性とラフな格好の若者が車両に乗ってきた。
彼はサングラスを掛けている。
(早川みつる!)
まどかはすぐに雑誌で顔を隠した。
通り過ぎる彼の少し後ろをファンの子が数人着いていく。
(危ない危ない…)
まどかは気付かれないよう、素知らぬ顔で雑誌を読むふりをした。
0321見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 15:34:22ID:zh7FigXl車両を移るとヤツは急に立ち止まった。
彼のアンテナが瞬時に反応する。やはり気付いていた。
「ねえ、君たち。公共の場だからさあ、サインで勘弁してくれないかな?」
「ええ〜?いいんですか〜?!」
「握手してもらってもいいですか〜?」
早川は手短に済ませ、ニッコリ笑いながら握手もサービスした。
マネージャーが
「さ、もういいだろう?自分たちの席に戻ってくれるかな?」
「このことは内緒にね。」
早川に促され、うっとりして帰る彼女たち。
(あれ?…向こうに行ったはず…)
さっき通った女の子たちが戻って来た。
まどかは早川も通るのではないかと慌ててサングラスをかけ、
気付かれないように窓の外の景色を眺めた。すると
ドカッ!
隣の席にいきなり人が座った。
振り向くと、奴はサングラスを少しずらしてニッコリほほ笑み
「よお!鮎川まどか。」
まどかはため息混じりにまた窓の方を向いた。
(何でこんなとこで…)
0322見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/05(水) 15:50:57ID:zh7FigXlまどかはがっくりうなだれ、頭を振りながら片手で目を覆う。
「ねえ、そこあなたの席じゃないでしょ?」
「おい、久しぶり会ったのに、そう邪険にするなよ。」
「その節はどうも、『命の恩人』さん!」
「別に恩は着せてないだろ。相変わらずだなあ。」
「そうね、ごめんなさい。で、何か用?」
「いや、お前の親父さんにかなり気を使ってもらってな。
反ってこっちが恐縮するくらいでさ。」
(んもう…パパったら、余計なことを…)
「これで鮎川家とも懇意に…」
「誰が!」
音を立てて雑誌を畳んだ。
「そういきり立つなって。ところでお前、卒業したらどうすんだよ?」
「さあ。」
どんなに邪険にされても早川は怯まない。
「思い出すなあ、お前の歌。すごかったぜ!鳥肌が立ったよ。」
まどかは言い返すことをやめて、また雑誌を開いて眺め出した。
それでも早川は語りをやめない。
「お前さぁ、自分の歌声がどんなに人を感動させるか気付いてないの?」
(え?)
0323見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/06(木) 10:51:22ID:lOh7j0Qh一気にアップされてるけど、まさかここに来て
隆の秘話が来るとは思わんかった。
相変わらず迷走中だな。
0324見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/08(土) 12:04:19ID:acazSJmwスクールに入門しましたけど 最初から立てて最高でした。
作者様は 冬またハワイに行かれるのですか?
元祖さんは?
お二人が行かれるのなら、僕も同行させて下さい!!
ところで、妄想編のパート1はどうやったら見られるのですか?
0325見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/10(月) 00:41:42ID:hVt+rEAZアップされるのを楽しみにしています
まどかと恭介のラブラブネタよろしくお願いします
0326見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/10(月) 10:07:19ID:AIO8HvzJに妄想編Part1があるよ。
0327見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/15(土) 11:42:04ID:nWC93a2Rttp://logsoku.com/thread/changi.2ch.net/ranime/1224547174/
0328327
2010/05/15(土) 11:52:19ID:nWC93a2R予習しておくように。
前2者は漫喫、「あの日」はヨウツべで仕込め。
ところで作者、もう限界だろ?
これ以上佳作を駄作にするなよ、勿体ないから。
最後は綺麗に落としてくれ。
0329元祖
2010/05/15(土) 14:22:35ID:mOXB1iQDお天気にも恵まれ、楽しかったですよ〜!
>324さん
あたしは行くために家庭教のバイトを始めました。
>325さん
ようこそ!!
>327さん
駄作ですか〜?
0330325
2010/05/22(土) 23:52:25ID:rsyYEmIT作者様続き楽しみにしてます
>>327
そこは自力で発見してこのスレにたどり着きました
>>328
原作もアニメもあの日も全部予習済みです
>>329
どうも
よろしくです
0331見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/05/24(月) 16:06:50ID:O9WE4ej/0332見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/03(木) 03:15:46ID:pcIRlRFu0333元祖
2010/06/06(日) 22:03:54ID:JRyWuZK+0334見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/07(月) 11:38:39ID:vrTxX0eU0335見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/09(水) 08:37:55ID:lQyrq0tx0336元祖
2010/06/11(金) 10:13:06ID:r7ZqGHNR作者様はいかがお過ごしでしょうか?
気になるなあ〜・・。
0337見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/11(金) 11:15:08ID:G35ImePdそう慌てずにネ。
ハワイもいいけど、あそこの自然と清流とおどりのコラボいいですよ〜!
respectもんですから、元祖さんも一度行かれては?
G市だから、ここがモデルですよね。
0338見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/11(金) 17:08:53ID:BBiEzona0339元祖
2010/06/11(金) 20:28:37ID:r7ZqGHNRそれにしても、まどかちゃん元気にしてるかなあ・・は〜・・。
0340見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/11(金) 21:53:15ID:2FNsPHaM0341見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/11(金) 22:34:55ID:tgUzWqGFググんなくても東日本の人ならすぐ分かる。
つーか、金曜レス大杉!
0342見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/12(土) 12:26:30ID:WqN11gXX0343元祖
2010/06/12(土) 14:36:29ID:m9kNHx2m0344見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/12(土) 20:20:05ID:Hddv+TQ8一ヶ月過ぎてもアップしないのって初めてじゃね?
まさか、また引越したとか?
元祖、捜してくれ!
0345元祖
2010/06/12(土) 21:26:32ID:m9kNHx2m0346見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/13(日) 13:48:25ID:uHrBw9ex0347見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/13(日) 23:36:27ID:6kdp3Qbt「プロデューサーに悪いが、俺、自分の歌を好きになれねえ。
確かに売れてはいるけど…やっぱ、俺の歌は『本物』じゃねえよ。
でもな、お前の歌は『本物』だよ。人を感動させる力を持ってる。」
まどかは視線を止めたまま聞いていた。
「そんな才能持ってんのに、そのままにしておくのは勿体ないぜ。
この世界に何人っていないんだから。
お前は百年に一人の逸材だよ!だから俺と組んで…」
(『百年に一人』と来たかあ…フッ)
まどかはちょっと笑ってつれなくする。
「随分大袈裟ね。悪いけど興味無いんだ。」
「お前は分かってないよ。歌は人を感動させ、病んだ心を救うんだぜ。」
(うるさいなあ…)
まどかはサングラスを外して早川を睨んだ。
「何、こんなとこで口説いてんのよ?
興味無いって言ってるじゃない。いい加減にしてくれる?」
まどかの全身から危険なオーラが立ち上る。
早川はそんな雰囲気を察して
「おいおい、わ、わかったよ。でも、俺は諦めないぜ。
じゃあな。『あいつ』にヨロシク!」
そう言うとヤツは席を立って奥の車両へと移動した。
(感動させるかあ…)
実は少し心が動かされた。
音楽の力が如何に人の心を動かし、どんなに癒しと感動をもたらすか、
それは幼少時から音楽に親しんできたまどか自身が一番分かっている。
早川という人間は別にしても、言ってることは間違いない。
(でも、だからと言って、アイツと組むつもりないし。)
0348見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 00:11:07ID:zaZ2ZCja「ふう〜…」
思いっきり溜息をついた。
(つくづく『いい女』だぜ!本気で惚れちまいそうだ。)
席に戻ると、いかんいかんと頭を振り出した。
「みっちゃん、どうしたの?」
「マネージャー…ほら、ハワイの…『鮎川』、あっちの車両に乗ってるよ。」
「ええ!?どこ?これは、ある意味、チャンスじゃない!」
隣の車両に向かおうとするマネージャーの腕をつかんで
「もういいって。みっともねえからやめなよ。」
そう言いながら、同時に自分の気持ちも抑えようとした。
確かに、彼女のお陰でさらに有名にはなったけれど、
でも、彼にも意地はある。
(あいつは俺にとって幸運の女神かもな。きっといつかは…)
彼の興味は、自分が目立つことから、スターを発掘し育てる方へ変わっていた。
「もう一度…(あいつの歌声が聴きたい。)」
まどかはまどかでハワイの夜、恭介の前で歌ったことを思い出していた。
あの夜、自分の想いを歌にして、恭介にぶつけた。
(今考えるとちょっと恥ずかしいや。でも…
春日クン、感動してくれたかなあ…)
ぼんやりと思いに耽っていると
車内に到着を知らせるメロディーが流れる。
(そうだ、着いたら予備校寄らなくっちゃ。)
0349見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 00:43:41ID:zaZ2ZCja新幹線の駅のホームから在来線のホームへ移動する。
そして、そのまま予備校へと向かった。
後期講習は明日から。テキストを貰いに生徒が数人来ている。
(取り敢えず、自分のクラス確認しておかなくっちゃ。)
掲示板を見に行くと、自分の名前はSSクラスに入っていた。
(あれ…?春日クンは?…え〜っと…)
Sクラスにもない。
そして、彼の名前を…Aクラスに見つけた。
(え〜!?春日クン…やっぱり、こたえたよね…ひかるのこと。)
それもあるが、やっぱり付け焼刃の学力であったに過ぎない。
まどかは窓口に行って、身分証を見せてテキストを受け取る。
その時、事務の女性が気安く話しかけてきた。
「あなた、すごい人気ね。」
「え?」
「男の子だけじゃなくて、女の子からも随分訊かれたわよ、あなたのこと。」
「はい?」
「大丈夫よ。教えられないって言っといたから。でも注意しておいた方が
いいかも…お勉強の妨げになるものね。じゃあ、ガンバってね。」
「はあ。」
(…何が言いたいのよ?)
まどかは気にせずその場から去ろうとした、ちょうどその時
向こうからガヤガヤと3人組が。
0350見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 00:51:53ID:zaZ2ZCja「八田、お前が言うなよ!…くっそ〜、やっぱりこれが…」
「実力だぜ、春日!」
「うるせー。」
「お?あれ、鮎川じゃん。」
八田が気付く。
恭介はコソコソと二人の後ろに隠れた。
小松が声をかける。
「よお!鮎川。お前すげえな。SSかよ。」
横から八田が
「当たり前だろ。元々俺たちとはココが違うんだから。」
と頭を指さすのに、
「努力ですけど。」
彼女はそっけない。
2人の後ろで恭介がバツ悪そうにしている。
そんな姿を見て
(しょうがないよね、あんなことの後じゃ…それに、一睡もしてないし。)
まどかは少し恭介を思い遣るが、敢えて突き放す。
「まあ、頑張りたまえ、君たち。」
言うや、恭介の傍に来て思いっきり顔を近づけた。
「た、だ、い、ま。」
「か、帰って来たの?」
まどかはそれには答えず、いきなり恭介のお尻をつねってきた。
(イテテッ!)
「頑張んなよ!『期待して』んだから。」
小声で囁くとその場を去って行った。
ちょっと離れて、そんな二人を小松と八田が呆れたように見ている。
「ありゃあ尻に敷かれるな、絶対。」
「あんなやつ放っといて行くべ。」
「んだんだ。」
小松と八田は恭介を置いてさっさと歩いて行った。
0351見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 01:00:13ID:zaZ2ZCja「まどか〜!!」
(…?!あかね!)
「うわ〜!久しぶりだね〜!」
あかねが飛びついて来た。
「この間の電話でさあ、な〜んか元気なかったから心配してたんだよ〜!」
「そう?」
まどかは、あかねが『知っている』とは知らずにちょっととぼけた。
あかねも触れないようにして笑顔で
「どこ行ってたの?」
「うん、ちょっと親戚の家に。帰ったら電話しようって思ってたんだあ。
あかね…何してたの?」
「図書館帰り。」
「え?あかねが?」
「文句あっか?」
「あはははは!ナイナイ!でも、どうして?」
「えっへん!お受験だよ、K大の。」
「ええ?あかねも受けるの?そのまま短大に上がるって思ってた。」
「迷ったんだけどさあ…、まどかちゃんも受けるんでしょ?」
「そうだけど…」
「あたしも一緒に行きたいなあって。困る?」
「まさか!あかねが一緒なら嬉しいよ。頑張って一緒に行こ。」
とびっきりの笑顔で応えた。
0352見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 01:06:25ID:zaZ2ZCjaこんなに気がおけない間柄はマリー以来初めて。
ひかるとはタイプが違う。
彼女には姉のように接していたけれど、あかねは友人として話が出来る。
ひかるには無かった何かを彼女は持っていた。
「ねえ、家に来ない?」
「いいの?」
「うん。あかね初めてでしょ?」
「やった〜!」
二人は笑いながら帰路に就いた。
もう両親はハワイに戻ってるはず。
一人で家に帰っても面白くない。
「到着〜。」
「うわ〜!ここまどかの家?大きいね〜。初めてだ。」
「さあ、どうぞ。」
スリッパを出されてあかねはキョロキョロしながら入った。
リビングに案内されるとすぐにクーラーが入れられる。
「アイスティーでいい?」
「うん。」
ソファに座りキョロキョロと落ち着かない。
「はいよ。レモン?ミルク?」
「あ、レモンがいいや。…ここすごいね〜、お屋敷って感じ。」
0353見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 01:38:18ID:zaZ2ZCjaまどかはソファに深く座ると足を組んでリラックス。
ふんふんと何かつぶやきながらピンとゴム紐で髪を括ってポニーテールにする。
そしてアイスティーに手を伸ばすとストローを差して一口飲んで…呟く。
(こういうのを『借りてきた猫ちゃん』っていうのよねえ)
相変わらずオドオドしているあかねをたしなめるように
「ら、し、く、ないよ、あかね。」
「え?あはは。そうだね。」
あかねは赤くなって笑いだした。
つっかえが取れた途端、二人はいろんな話で盛り上がっては笑っている。
長年の友人のように気が合う。
まどかは親戚の家で盆踊りを踊ったことを話した。
情緒豊かな町の風情や踊りの楽しさなど。
「あたしも行きたかったなあ…『ひ』…あ!…ら、来年連れてってよ。」
「ん?うん!絶対誘うよ。」
まどかはあかねが言い止まった『ひ』の一文字で全てが解ったけれど
しかし…お互いにそれ以上は自重した。そして、誤魔化す。
「ねえ、夕飯食べていきなよ。」
「ええ?いいの?」
「ちょっと考え中なんだけど…『野菜のゼリー寄せパスタ』作ってみない?」
「うわ〜、何それ?手伝うからさあ、教えてー!」
ふたりは互いにエプロンを着せっこして戦闘開始。
まどかは小鍋でヤングコーンとグリーンアスパラを茹で、灰汁をすくうと
そこにコンソメとゼリーを入れて鋳型に流し込む。
氷水で冷やして粗熱を取ると冷蔵室へ。
それが固まるまで二人はクッキングの本を見ては、あれやこれやと思案する。
「ねえ、トマトベースにしない?」
まどかが言うや、あかねはニンマリ笑顔で
ジュルジュルッ!
と口を拭う真似をする。
「いいねえ、それ!あたしやる!」
0354見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 01:49:05ID:zaZ2ZCjaトマトをさっと湯せんして皮をむく。その後お鍋にオリーブオイルと
にんにくを入れ炒め、玉ねぎのみじん切りを加えてよく炒めた後、
つぶしたトマトを入れ、塩こしょうで味を調える。
「味見てよ。」
「OK。」
あかねはスプーンですくって、あ〜んと開けたまどかの口元に運ぶ…
と見せかけて自分の口に入れた。
「う〜ん。中々!」
「なによ〜!んもう。」
まどかはあかねからスプーンを奪うと、今度は自らすくって味見する。
(うわっ!間接キッスだ…)
「うん!!あかね〜、やる〜!」
「でしょ〜?」
「ではでは、仕上げっと。」
まどかは茹でたパスタを氷水でしめた後、よく水切りをした。
ルーの入ったお鍋に移すとさっと混ぜ、薄くお皿に盛りつける。
そして固まった野菜入りゼリーを真中に落とすと、周りにオイルサーディンと
生ハムやクレソンを飾るように盛り付けて出来上がり!
ふたりはテーブルクロスを敷くと、お皿やフォーク、スプーンを並べ、
バケットにカットしたフランスパンを盛ってセッティング完了。
0355見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 02:05:10ID:zaZ2ZCja「じゃじゃ〜ん!試作第一号で〜す。」
「ねえ、写真撮っておこうよ。」
「OK!」
まどかは恭介に貰ったお古のカメラを持ってきた。
一緒にセルフで撮ったり、ポーズを取って互いを撮ったりしながら楽しそう。
そして試作品の写真も交えてやけにいっぱい写した。
「イメージ通りだ。さあ、お毒見お毒見。」
「いっただきま〜す!…うん!!美味しい〜!これ、最高〜!!」
「ゼリー崩して食べてね。」
そして、自分も食べてみる。
驚いた表情であかねと目を合わせる。
「う〜ん、『白』が合うかな?」
「いいの?」
「(親父たち)居ないし。ねっ!」
ウインクをするとキッチンの冷蔵庫からオーストラリア産のいいやつを
グラスと一緒に持ってきた。
キュッ、キュッ・・・ポン!! トクトクトクトク・・・
グラスの3分の2くらいに注ぎ分けると
「ちょっと辛口だけど。」
「OK!カンパーイ。」
チン!グラスが鳴るとゆっくり口をつけた。
冷えた白ワインがすごく合う。
新鮮な冷性スパゲッティにコンソメゼリーや生ハム、オイルサーディン
などの複雑な味が絡み合う。そこに冷え冷えを流し込むから堪らない!
未成年のささやかな『違反』の証拠写真を互いに撮りながらディナーは進む。
食べる度にOKサインをしてみせる二人。
そして、二人は感想を述べ合いながら完食した。
0356見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 02:15:23ID:zaZ2ZCja「ううん、いいよ、すぐだし。」
「悪いね〜。…ねえ、まどかの部屋、2階?」
「うん。」
「見せてもらってもいい?」
洗う手を休めずにこっちを向いて
「散らかってますけど。」
ちょっとベロを出す。
トントントントン。
無性に部屋が見たくなってあかねは2階に駆け上がった。
恐る恐る半開きのドアから顔だけ覗き込む。
部屋はすごく大人の女性の雰囲気になっている。素敵な匂いもする。
床に投げ出されたバッグの口からテキストがこぼれていたくらい。
「全然散らかってないし!」
笑いながら入ると、興味深く周りを見回す。
(ん…?あれは…)
あかねは、机の上にある写真立てに気付いた。
子供を見て微笑んでいるように見える…『彼』の写真。
そこだけいい具合に照明が当たっている。
(まあ、ちょっとだけ…)
あかねは目を閉じると、写真を通してまどかの想いを読む。
(やっぱりそうなんだ…。)
そして、脇にあったひかるとまどかの写真を手に取った瞬間、
…目頭が熱くなって来た。
(まどか…そんなにひかるちゃんのこと…)
台所で鼻歌交じりに洗いごとをしていた手が止まる。
(ハッ…!!)
まどかは慌てて二階に上がってきた。
0357見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 02:25:03ID:zaZ2ZCja気配を察知して、写真を元あった場所に戻すとその場を離れるあかね。
慌てて涙を拭って
「ど、どうしたの?」
「え?い、今片付け終わったから…」
「ごめんね、手伝わなくって。でも、まどかの部屋って、大人の部屋みたい。
持ち主がもう女子高生って感じじゃないもんね。」
「なに言ってんのよ。これでも悩める女子高生よ。」
「『悩める』?」
あかねはその何気ない言葉に少し引っ掛かった。
「そうよ。あたしだって悩むんだから。」
深刻に受け止めているあかねを不思議そうに眺めるまどか。
「何考えてんのよ。」
「あ、あははは…メンゴ。まどか、恭介と一緒の塾に通ってるんだってね。」
「うん、ハワイ行く前から約束してたから。」
「そういや、ちょっと前だったのにねえ、ハワイ。いろんなことがあったなあ。」
「写真見てみようか。ちょこちょこ撮ってたやつ。」
サーフィンレッスンのサプライズや、ワイキキやまどかのコンドで一緒に撮った
思い出の写真を出した。
床に広げると二人で肩をくっつけるように眺めた。
どれもみんな楽しそうに映っている。
二人は暗黙の了解のように『ひかる』の話題をスルーした。
0358見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 02:35:31ID:zaZ2ZCjaふっと会話が途切れ、二人は同じ写真を眺めていた。それは…
ひかるを真ん中にして3人で撮った写真。
朝食後ラナイに出て、遠くの海と空をバックに撮ったけれど
背景が逆光のように眩しすぎて、ラナイがちょっと暗く写ってしまった。
ワイワイ賑やかな瞬間だった。
「何でだろう…懐かしいね、まだ一ヶ月も経ってないのに。」
感慨深げに言うあかねに、まどかはつい気持ちを吐露してしまう。
「うん。…でも、またきっと、いつか『一緒に』行けるよ。」
しみじみと言う彼女に堪りかねて…
「まどか…恭介のこと好きなんでしょ?」
「え?」
まどかは一瞬あかねを見ると下を向いた。
「…うん。」
あっさりと認めた。そして、横を向いたまま
「あかね知ってるんだ……春日クンから聞いたの?」
ちらっと彼の写真を眺めた。
「それもあるけど、やっぱ分るよ、まどかと恭介見てたら。」
「そうなんだ…。」
0359見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 02:47:35ID:zaZ2ZCja「なに?」
「ひかるちゃんのこと。
恭介はもう会わないように距離を取るって言ってたけど…
まどかはどうすんの?」
「あたしは…今は『あれ』だけど、でも時間が経てばって思ってる。
あたしの想いは今までと…今からも変えるつもりはないよ。でも…」
「でも?」
「あの子の傷が癒えるまで、そっとしておいてあげなくっちゃ…勝手かな?」
人前では無理してるけれど、彼女の切ない心は理解している。
(まどかだっていろいろあったんだよね。)
あかねはちょっと励ますように
「ううん、それでいいんじゃない?…でも安心した。
あたしさあ、まどかが落ち込んでたらどうしようって。
でも、今はふっきテル
てるみたいだから安心した。」
「そうね、そう思わないと…」
無理して笑顔を作るまどかにニッコリ頷くあかね。
「ひかるちゃんには、あたしからもアプローチしてみる。」
「うん。アリガト。」
あかねは腕時計を見やると
「あ、いけね!遅くなっちゃった。じゃあ帰るね。」
「うん。」
玄関の外まで見送るまどか。
「ごちそうさま〜!!じゃ〜ね〜!!」
元気よく手を振ると、あかねは街の明かりの方へと帰って行った。
0360見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 02:58:56ID:zaZ2ZCja部屋に戻るとため息をついて灯りを落とした。
(まだスッキリしてる訳じゃないよ。)
ベッドに身を投げ出し天井を眺める。
(春日クン、今頃何してるのかなあ?)
翌朝
身支度を済ませ、リビングで紅茶にトースト。
先日義兄の実家で貰った、おばあちゃま手作りのマーマレードを塗る。
(あぁ…トーストもう一枚焼こうかなあ…止まらないよ、これ。)
恨めしげにマーマレードを眺める。
ぐっと我慢して、片付けると家を出る。
一方恭介のマンションでは
「お兄ちゃん!起きてよ!今日から学校でしょ?!」
「う〜ん…今何時?…いけね!!遅刻だ!」
慌てて着替え、テーブルの上のトーストにバターを塗るや、
それを咥えて玄関を飛び出して行く。
(絶対鮎川に追いついて見せるぞお!)
マンションでは…
テーブルの上の恭介の財布を眺め溜息をつく姉妹。
「相変わらずだ…。」
すると財布がスッと消えた。
「あ〜!!人には絶対使うなって言ってるくせに〜!」
0361見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 03:08:26ID:zaZ2ZCja恭介は財布を握ると駅へと向かった。
予備校へ抜ける公園で八田に声をかけられた。
「よお!遅刻魔。」
「お前が言うな、八田!小松は?」
「ほれ、あっち。」
一生懸命女の子に声掛けている。
「あいつ、朝から凄いなあ。今日から最後の講習だってのに。」
「だから必死なんだよ。俺も行ってこよ〜っと。」
(こ、こいつら…)
1時限目はクラス別の講習。
恭介たちのAクラスは大講義室。まどかたちSSクラスは少数精鋭。
(へ〜、みんなT大とか受けるんだよな…すげえや、鮎川…)
ぶつぶつ言ってる後ろから膝カックンをやられて腰砕けになる恭介。
「うわっ!」
振り返ると、悪戯なまどかが澄ましていた。
「朝から何ぶつぶつ言ってんのよ?」
「え?あ、あはははは…」
あらためて彼女は恭介の耳元に思いっきり顔を近づけ
「お、は、よ、う、恭介クン。」
「え?あ、おはよう、鮎川…」
「3限目は合同授業でしょ?席取っといてくれる?」
要件を伝えると恭介を残しさっさと自分の講義室へと入って行くまどか。
「あ…」
別に用事は無いのだが…それにしても取りつく島が無い。
(やれやれ…しっかり頑張れってことだよな、多分。)
恭介も自分の講義室へと向かった。
0362見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 03:18:21ID:zaZ2ZCja恭介も廊下に出てみるのだが、彼女は出てこない。
それとなく講義室を覗いてみると、イヤホンを耳にウォークマンを聴いている。
話しかけたそうにする男子たちを完全シャットアウトしている。
恭介が居る場所から、鮎川を遠巻きに見ている男子たちが見て取れる。
今にも話しかけそうな雰囲気が伝わってくる。
(う〜ん…行くべきか行かざるべきか…)
変にちょっかいを出されるのも癪に障る。
自分の存在を知らしめたい。
思い切ってスタスタとまどかの元に歩み寄る。
「ね、ねえ。コーヒー飲まない?」
まどかはイヤホンを外さず、ちらっと見上げて
「飲まない。」
また下を向いて次の講義の予習をし出した。
(え?ええ?)
何とも愛想がないまどかに戸惑った。
「そ、そう…。ごめん。」
すごすごと退散する恭介。
(おかしいなあ…?機嫌悪いのかなあ?)
周りの男子たちは、ざま〜みろとばかりにニヤニヤしている。
(くっそ〜、恥かいたじゃないか…。)
そして合同講義の3時限目。
「春日クン、そこ座っていい?」
まどかがやって来た。
「う、うん。」
0363見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 03:29:51ID:zaZ2ZCja授業前の黒板を見つめたまま考え込んでしまった。
まどかはバッグからテキストを取り出し、次の準備をしながら
チラチラと恭介の方を見ているのだが、彼は全くノーリアクション。
「ねえ。」
「……う?」
ふと我に帰る恭介をまどかは睨むように
「やい!恭介!何考えてんのよ?」
「へ?」
「さっきから何で黙ってんのよ?」
「いや…さっきさあ、勉強中に話しかけて…迷惑だったかなあって…」
「へ〜、さっきのこと気にしてんだ。
…あのさあ、あたしのことは心配しなくていいから
今は自分のことだけ考えてて欲しいな。」
「でも、やっぱり気になるよ。」
「ふ〜ん…気になるか?」
「だって…他の連中みんな鮎川のことが気になってるみたいだし…」
聞いてちょっと呆れるまどか。
「な〜んだ。あたしのことじゃなくて、まわりのことが気になるの?」
「そういう訳じゃ…」
(こいつ、あたしのこと信じてないな。…よしっ。)
まどかはゴソゴソとカバンの中から何か取り出した。
「じゃあ、これ見てくれる?」
何と、それは所々血糊がついた紅色の紐。真中にガラスのかけらが…。
それは透明のネックレスケースに収められていた。
「それ…!?」
「春日クン、失くしたでしょ?あたしはちゃんと持ってるよ。
春日クンが『迷った時』に見せようと思ってたんだあ。」
0364見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 03:39:38ID:zaZ2ZCja実は、恭介の机の引出しにも同じく血糊が付いた濃紺の紐とガラスのかけらが
ビニール袋に入って大切に仕舞われている。
記憶を手がかりに、ビーチで偶然見つけた欠片も一緒。
それはまどかにビーチで頬を張られ際、手からこぼれた欠片だった。
「持ってたんだね。俺も家に…大切に仕舞ってるよ。」
「へ〜、そうなの。」
嬉しそうに微笑む。
「じゃあ…あたしのこと信じててくれる?」
小首を傾げにっこり笑顔のまどかに
「うん。」
恭介は頬を赤くして頭をかいた。
3限目の講義が始まると二人は真剣に講義に耳を傾ける。
お互いが慣れ合いにならないよう線引きは出来ている。
しかし、それを許すまじと後ろから丸めた紙クズが飛んできて恭介に命中した。
(何だよ?)
丸めた紙を開くと
『うらやましいぞ!コノヤロー!!』
と書かれていた。
数列後ろには小松たちが居る。
恭介は後ろを振り向かずに講義に集中するけど、まどかはひょいと紙を取り上げ
中を見てクスリと笑い、そして小松たちの方を振り向いた。
彼女の思わぬ反応に彼らは首をすくめた。
0365見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 03:50:36ID:zaZ2ZCja二人はヒソヒソ話し出した。
「おい、鮎川笑ってたぜ。俺たちに笑顔見せるの初めてじゃね?」
「ああ。これで(二人の仲は)オープンってことか。」
「あいつも愛想良けりゃ、うち(高陵)でナンバーワンだもんな、間違いなく。」
「それが何で春日なんだよ?」
「知るか!」
「こら〜〜!!そこの二人!おしゃべりなら外に出てろ!!」
マイク越しに怒鳴られた。
(うへ〜〜!!)
またもや首をすくめた。
3限目の講義が終わり休み時間。
「コーヒー飲まない?」
まどかから提案されて二つ返事でOKする。
窓際に移動して
「これ…」
コーヒーを置いてポケットから取り出した。
「何?…あ!これ、ひかるの…」
「うん。この間アバカブで偶然会って…一緒に観に来て欲しいって…」
「どうするの?」
「俺…やっぱり行けないよ。」
「そう…。そうだよね…」
まどかはコーヒーに口を付け遠くを見やった。
(ひかるなりにこれが『精一杯』だったんだろうなあ…)
0366見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 04:00:35ID:zaZ2ZCjaまどかは一生懸命講義に集中している。所々要点もノートに写している。
恭介はそんな彼女を見て、いつもと違う何かを感じていた。
講義が終了すると二人に遠慮して小松たちは先に講義室を出て行く。
「ねえ、一緒にランチしよ?」
まどかは近くの喫茶店に彼を誘った。
「テラス席にしない?講義室ちょっとクーラー利き過ぎて寒かったんだぁ。」
「うん、いいよ。俺もちょっと寒かったし。」
テラス席は人が少ない。
お盆は過ぎたとは言え、まだまだ外は夏の日差し。
二人はパスタセットで軽くランチを済ませ、アフターコーヒーを頼む。
まどかはぼんやりと通りを眺めている。
そして口を開いた。
「ねえ、さっきのチケット、くれない?
あたし、行ってみようかなあって思うんだけど。」
「え?行くの?…でも、俺は…」
「いいよ、春日クン来なくって。あたしが行ってみたいだけなんだから。」
恭介はカバンの中に仕舞っておいたチケットを取り出す。
「いいの?」
まどかは手を伸ばして一枚引き抜くと
「いいって。」
0367見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 04:10:44ID:zaZ2ZCja「さあ、今日は千秋楽だぞ!気合を入れて行け!」
みんなは演出を手がける舞台監督の掛け声に送り出される。
「アタイなんか…アタイなんか死んじまったほうがいいんだよ…」
主人公に想いを寄せながら、身代りになるサブヒロインを演じる。
劇の終盤、かばった後ろから背中を撃たれた。
想いを知らない主人公に彼女は抱きかかえられながら
「触んないでよ…アタイさあ…あんたのこと…ずっと…嫌いだった…」
精一杯の決めセリフを残し、みんなに看取られ息絶える。
劇は主人公の二人がひかる演じるサブヒロインの願いを叶えることなく
別れていくところでファインとなった。
ひかるは舞台をみごとに演じ切った。
舞台は大成功のもとにフィナーレを迎える。
始終、嫌われ、観客の反感を買っていたひかるの役は、とうとう最後には
観客の気持ちを一手に集め、皆の涙を誘う大役へと変わっていった。
完全にヒロインを食ってしまった。
0368見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 04:20:21ID:zaZ2ZCja見事に大役を演じることが出来た幸せを体一杯に浴びるかのように大きく胸を張り、
ダンサーらしくしなやかに深々とお辞儀を繰り返した。
そして、最後に舞台の奥に戻ろうと跳ねるように体を翻した時
人の出入りで暗幕が引っ張られ、ほんの一瞬であったが
一気にまぶしい光が 差し込んだホール奥の入場口、
緑の非常口のライトの下に視線がよぎった。
「まどかさん…!」
暗幕は元に戻されすぐに暗くなったが、満席のために壁側の通路で観ていた
観客の中に、まぎれもないその姿があるのを確認できた。
長い髪の美しい女性が腕組みをして壁に寄りかかるように立っていた。
(先輩は?)
舞台の袖からそっと覗いてみるけれど、もうそこには彼女の姿はなかった。
会場を出ると、外は土砂降り。
まどかは予め持ってきておいた傘を差して会場を後にした。
(ひかる、カッコ良かったよ。)
足元が雨で濡れるのを感じながら、ちょっとすぐれない気分で歩いた。
楽屋はみんなの歓声で包まれてる。
「良かったぞ!聞いたか?あの歓声!お前ら、やったぞ!」
監督、プロデューサーの言葉で皆は感極まり泣き出す。
そんな中、ひかるはぼんやりと考えていた。
(まどかさん…一人で観に来てくれたのかなあ…?)
0369見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 04:30:35ID:zaZ2ZCja自覚が促される、そんな雰囲気の中、熱心にノートをとる恭介の姿があった。
しかし、隣にはいつもの彼女の姿はない。
(やっぱり行けないよなあ…今頃…)
講義が終わり玄関先に立つ恭介。
外は土砂降のため、ロビーは生徒で大渋滞している。
(傘持ってきてないからなあ…)
小松たちは雨の気配を感じると講義をサボって帰ってしまった。
(ゲーセンかなあ?俺もヒトの事言えないけど、大丈夫かよ、あいつら。)
恭介は雨にくすむ街をぼんやりと眺めていた。
いろんなことが思い出される。
気持ちを見破られた花火大会の日も雨だった。
そして、ひかるに別れを告げた辛い夜も土砂降りだった。
夏休みの初めの頃までとは、全く違う状況になってしまった。
(でも…避けられなかったし…今更…)
恭介は雨に煙る街の中へとかけ出した。
一方まどかは予備校に寄らず、そのまま家に帰ってしまった。
シャワーを浴びて着替えを済ますと部屋に上がる。
(今日はなんにもする気しないなあ…)
椅子に座って劇のパンフを広げて眺めている。
0370見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 04:41:33ID:zaZ2ZCja(あれじゃ、ひかる報われないままじゃん。)
現実とオーバーラップ気味の内容が少し腹立たしい。
(春日クンに電話しようか…)
時計を見るとちょうど18時。
(夕ご飯食べてるよね…。)
まどかは電話を遠慮して自分も夕飯をとることにした。
さすがに気分がすぐれず、簡単に済ます。
紅茶を入れて買い置きのクロワッサンに、例のマーマレードを
たっぷり塗って頬張る。
口に入れ噛んでみるのだが、そのうち口の動きが緩慢になる。
片手にパンを持ったままぼんやりとしてしまう。
(ひかる、あの内容をあたしに見せたかったのかしら…?)
ちょっと穿って考えてみるものの
(そんな子じゃないよね。)
クロワッサン1個で夕飯を済ますと、部屋に戻りテキストを開き
勉強しようと構えるが…すぐにぼんやりとしてしまう。
ひかるの演技がじわじわと効いてきた。
マンションでは、
恭介はシャワーから上がり、時計を見上げると10時を過ぎていた。
(電話してみようか…)
そう思って、受話器に手を伸ばしたところ
ルルルル…!
慌てて受話器を取った。
「はい、春日…」
「あ、春日クン?あたし。ごめんね、夜分に」
「鮎川?どうしたの?」
「ちょっと会えないかな?今、下に来てるんだけど…。」
0371見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 04:51:23ID:zaZ2ZCjaドタバタと恭介は玄関を出て行った。
エレベーターを降りるとマンションのロビーから飛び出す。
すると、すぐ前で彼女が待っていた。
「春日クン。」
「鮎川。」
「ごめん。電話で済ますつもりだったんだけど…やっぱり電話じゃ…」
まどかは濡れた路面に視線を落として歩き出した。
恭介も黙ってついて行く。
何か言いたそうな彼女を気にしながら歩いている。
それとなく『きっかけ』を作ってみた。
「ちょっと冷えるね。雨降ったからかなあ?」
ちらりとまどかを見る。
「うん。お盆過ぎてから夜は少し寒くなったかしら?」
彼女は空を見上げながら応えた。
恭介もあらためて空を見上げてみると、厚い雲が切れて、そこから
目映いばかりの星空が見えている。
雨上がりで空気が澄んでいるせいか、星たちがキラキラ輝いている。
歩きながらまどかは口を開いた。
「あたしさあ、学校辞めてアメリカに行こうかなあって思ってるんだ。」
「ええ??!!!!!」
いきなりまどかの方を振り向いて声を出した。
「…じゅ、受験どうするの?一緒の…」
「ごめん。気が変わったの。やっぱり、音楽勉強しに行こうかなって。」
(そ、そんなぁ…)
0372見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 05:00:29ID:zaZ2ZCja「やっぱり、ひかるちゃんのこと?」
まどかはちょっと横を向くが、恭介の顔は見ずに
「うん、それも無い訳じゃないけど…
ほら、あたしず〜っと告ってこなかったじゃない、素直じゃないから。」
「……」
「でさ、いざ自分の気持ちに素直になったら、どんどん感情に流されて…
もちろん、ずっと願ってたことだし、それはそれで心地良かったんだけど…
彼女は歩みを止めて振り向くと
…そんな生活の中でね、ひかるのハツラツとした演技を観てたら
『自分は今のままでいいのかな?』って思えてさ…」
「よ、よく分かんないよ、俺には…。なんでアメリカなの?」
「みんなから距離を置いて…春日クンとも。
で、やりたいことが解ったら戻ってくるつもり。」
「俺は流されるようにしか生きていけないし、大学も何となくだし…」
まどかは彼に背を向けまた歩き出すと、恭介も合わせて歩き出す。
「それでいいじゃん。あたし、ひかるの劇観てすごいなあって思ったの。
あたしはこのまま『恋に溺れる女』でいいのかな?ってね。」
まどかはクスッと笑った。
でも、恭介は笑える気分にない。
0373見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 05:12:30ID:zaZ2ZCja顔を上げると勇気を出してもう一度訊いてみた。
「ね、ねえ、本気なの?」
「…うん。2学期が始まる前に学校に退学願を出すよ。」
「……」
(何でだよ…)
恭介は、ただ鮎川の背中を見つめるしか出来なかった。
行くなと言いたいのに、言うとカッコ悪いようで…
(言っても…どうせ…)
なぜか意地を張ってしまう。
やがて二人は公園に着いた。
恭介は落胆し、ブランコに座る。
まどかはそんな背中を見つめながら
「いつかまたここに戻ってくるよ。」
「俺、それまで待つしかないのかな?」
うつむいたまま呟く。今にも涙がこぼれそう。
すると
「待っててくれる?」
まどかはいきなり恭介の後ろから抱きついて
ギュッと頬を寄せた。
でも…恭介の手はブランコの鎖を握り絞めたまま動かない。
0374見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 10:40:29ID:/JKWlAFp埋め合わせのつもりか?
結局自分勝手な恭介が振られるのか・・w
0375見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/14(月) 15:05:46ID:qUhAZ+hjまたアカネやクッキングの話しかよ!って。
それが今頃何で別れ話しなん?
或る意味意表を突かれたが、こういう落ちはいかんやろ?
0376見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/16(水) 16:50:10ID:hBI6IvdZお前さんは今回の大量アップと話の流れをどう思うかね?
俺は原作に準じたいかにも「まどからしい」決断と思うが。
0377元祖
2010/06/16(水) 23:08:45ID:PsaaVivaただそれだけです。
0378見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/21(月) 14:57:12ID:8nJQHicy0379元祖
2010/06/21(月) 20:21:16ID:2efSzIcyまた悩んでるの?
確かに原作のまどかちゃんっぽいけど…
0380見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/21(月) 22:23:12ID:s01JlWFM何たって、恭介を手に入れた途端ポイ捨てだから♪
0381元祖
2010/06/21(月) 23:10:32ID:2efSzIcyそんな言い方しないで下さいな。
0382見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/24(木) 10:48:49ID:boWNx/dbいや〜長かった。
0383見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/24(木) 22:39:26ID:8tOH+N/q0384見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/25(金) 13:02:22ID:ccC+YjGZ0385見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/25(金) 21:49:58ID:Oohlg4oM0386見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/28(月) 11:06:26ID:lcmeGmkmここらで終わるが賢明かと。
2年間よく頑張った!楽しませてくれて有難う!
んじゃ!
0387見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/28(月) 21:27:22ID:Qe6riknt0388見ろ!名無しがゴミのようだ!
2010/06/28(月) 22:36:24ID:F0W7HRGOあかね=エビちゃん
で、どや?
ひかるは…よっしー
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