ヴィジュ板バトロワ【2】
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0001朝ねずみ…(;´゚ω゚) ◆GIREN64s
02/05/06 03:06ID:69P/IAGc前スレ
ヴィジュ板バトロワの感想や要望
http://music.2ch.net/test/read.cgi/visual/1009224887/
今の小説を初めから読みたい方は下のところからどうぞ。
ヴィジュ板バトロワの感想や要望 スレ600〜
http://music.2ch.net/test/read.cgi/visual/1009224887/600-
>>2-4に今までの登場人物表を貼っておきます。
( 2ゲッターにゲトされてもいいように保険 >>2-7 )
0002朝ねずみ…(;´゚ω゚) ◆GIREN64s
02/05/06 03:06ID:69P/IAGc○=生存者 ●=死亡者 △=参加してない生存者
>>〜>>=登場場面〜死亡(前スレの場合は 前〜>> と表記)
人目=死亡順 @=誰が殺したか 並び順は登場した順
△河村隆一 >>600〜
△YOSHIKI(元X・Dr) 前601〜
○KOHTA(PIERROT・Ba) 前602〜
○キリト(PIERROT・Vo) 前602〜
○TAKEO(PIERROT・Dr) 前602〜
○J(LUNA SEA・Ba) 前602〜
△東海林のり子 前603〜
○SUGIZO(LUNA SEA・上G)前604〜
△INORAN(LUNA SEA・下G)前604〜
●現王園崇(FAIRY FORE・Vo)前604〜前612 3人目@TAIZOが弓で
0003朝ねずみ…(;´゚ω゚) ◆GIREN64s
02/05/06 03:07ID:69P/IAGc●TAKA(La'cryma Christi・Vo) 前605〜前637 6人目@SUGIZOが射殺
○潤(PIERROT・下G) 前605〜
●アイジ(PIERROT・上G)前605〜前768 14人目@YURAが射殺
○Gackt(元malice mizer・Vo)前605〜
●Seek(Psycho le cemu・Ba)前608 2人目@現王園崇が弓で
●TAIZO(元FEEL・G) 前613〜前744 13人目@アイジがアイスピックで
●竜太朗(Plastic tree・Vo) 前626〜前627 4人目@キリトが射殺
●TAKASHI(Plastic tree・Dr) 前628〜前630 5人目@YURAが斬殺(鎌)
○YURA(Psycho le cemu・Dr) 前628〜
●AOI(SHAZNA・G) 前636 6人目@
●DAISHI(Psycho le cemu・Vo) 前640〜前641 8人目@キリト?射殺
●Lida(Psycho le cemu・下G) 前640〜前641 7人目@キリト?射殺
●HISASHI(GLAY・下G) 前648〜前891 18人目@キリトが射殺
●TAKURO(GLAY・上G) 前652〜前882 17人目@キリトが射殺
0004朝ねずみ…(;´゚ω゚) ◆GIREN64s
02/05/06 03:07ID:69P/IAGc●田澤孝介(Waive・Vo) 前655〜前656 9人目@YURAが斬殺(鎌)
●LEVIN(La'cryma Christi・Dr) 前666〜前706 12人目@AYAが射殺
●IZAM(SHAZNA・Vo) 前669 11人目@キリト追跡中禁止エリア進入により爆死
●AYA(Psycho le cemu・上G) 前706〜前839 15人目@JIROが絞殺
△星子誠一(Zy編集長) 前727〜
△PATA(元X/現在はDope HEADz・G) 前735〜
△Yoshitsugu(元EINS・VIER・G) 前740〜
●JIRO(GLAY・Ba) 前837〜前915 19人目@キリトが射殺
●TERU(GLAY・Vo) 前865〜前876 16人目@HISASHIが射殺
○AKIRA(Plastic tree・G) 前918〜
○TADASHI(Plastic tree・Ba) 前925〜
0005Nana
02/05/06 06:34ID:X6XH0K/2ありがとう!!
0006Nana
02/05/06 10:21ID:tQP4zKiw0007Nana
02/05/06 10:49ID:VOU0sPws0008Nana
02/05/06 11:59ID:VbEuH7t.話の続きが気になる…生姜さん、お待ちし
ております!
0009生姜
02/05/06 22:11ID:Wx9UsyD2例えば、気力が萎えた時に。
それは脳裏によみがえる。
繰り返し、繰り返し見る光景がある。
俺は走っている。あいつを追いかけている。
分かっている。いくら走っても追いつけない事はもう分かっている。
けれども、その中での俺は必死に走っている。叫びながら走っている。
しかし、現実は。返ってきた答えは――
「SUGIZO?」
不安そうなJの声に、SUGIZOの意識は一瞬にして現実へと立ち戻った。
視線を移すと、Jが不安そうにSUGIZOを見ていた。その表情から、SUGIZOは自分がどんな顔をしていたか何となく分かった。
「ああ、大丈夫だ。それよりお前こそ顔が青い。大丈夫か?」
「ああ、俺も大丈夫――というにはちょっとアレだけど。もう、痛覚も麻痺してるし。ただ……その、つまり」
怪我のせいで無ければ、Jの表情が硬い原因はただ一つしかなかった。それはつまり――
0010生姜
02/05/06 22:12ID:Wx9UsyD2あの時キリトの襲撃を受けて自分達はこうして生き延びているが、果たしてKOHTAはどうだろう?
まだ放送で名前が読み上げられないという事は生きているのだろうが、しかしそれは無事を保証するものではない。
ましてやあの状況だ、無事逃げ延びたとするのは楽観的に過ぎる――まさか、知らずに兄に殺されてしまう、なんて悲劇だけは避けて
欲しい物だが――SUGIZOはそう分析していたが、口にしたのは別の事だった。
「大丈夫、KOHTAは生きている。そして生きているなら必ず俺達の元に戻ってくる。あいつはそういう男だ。そうだろう?」
Jは、それを聞くとSUGIZOを見て頷いた。そして。
「ああ、信じてるよ」
と、呟いた。ただ――やはりその顔に不安の色は隠せなかった。
そうだよな。人を信じるということは難しい。
………本当に、難しい。
0011生姜
02/05/06 22:12ID:Wx9UsyD22時間弱程しか眠っていなかったがAKIRAは十分だ、といい手からハンカチをほどいて銃を握りなおした。
TADASHIはYURAに先に眠る様勧めたが、YURAはそれを断りTADASHIが横になった。
YURAの手首からスチール弦が外されているのを見てAKIRAは文句を言ったがTADASHIがなんとか宥めてその場を収めた。
もっとも外されていなくても外してもらうつもりだったが。AKIRAに。
――さて。あまり方法を選んでいる余裕はないようだ。
TAKEOがまた現われでもしたら全てが無駄になる。それに、例のマシンガンの奴の存在も頭にあった。
しかし、どうしたもんか。僕が女だったら色仕掛けでもして一発なんだけどなあ――
YURAはじっと自分に視線をむけているAKIRAをちらっと見た。
右手のリボルバーの銃口は今はYURAの方を向いていなかったが引き金にはしっかりと指がかかっていた。いつでも撃てるという
意思表示なのだろう。
YURAはなお30分ばかり待ち、こちらに背をむけているTADASHIが完全に眠っているのを確認してからAKIRAに向かって静かに言った。
「そんなに見てなくたって何もしませんよ♪」
「わかるもんかよ」
AKIRAの警戒心は相変わらずの様だった。
0012生姜
02/05/06 22:13ID:Wx9UsyD2仕方ない、完璧な作戦とは言えないがとにかくやってみない事には。
とにかく時間がないのだ。
「ねぇAKIRAさん♪」
「何だ?」
呼びかけると疲れた様子でAKIRAが返事をした。睡眠をとったばかりといっても疲労は相当なものだろう。今なら思考回路も少し鈍ってる
かもしれない。
「僕が何であなたに話し掛けようとしたか分かります?」
じっとAKIRAの目をまっすぐに見つめ、YURAが言った。それは普段よりもやや強めの態度で。
AKIRAはそれに少し圧された様子で「いや――」と一言だけいった。
「僕ですね、あなたは一人で行動してるもんだと思ったんですよね♪だから声を掛けようとしたのに……もう一人いたなんて、ね♪」
わざと意味ありげな口調で話す。
「どういう事だ?やっぱり俺を殺そうとしてたってことか?」
AKIRAの顔が歪む。
「やだな、僕誰かを殺すつもりなんてないですよ♪いくらなんでも人の命を奪うなんて事は――」
なんて知ってる奴が聞いたらお笑いだよな。ていうか、貴方のバンドのドラマーを殺したのは他でもないこの僕ですし♪
「僕パートナーを探してたんですよ、一人だけ♪」
「パートナー?」YURAの言わんとしてる事がよくわからなくAKIRAが焦れた様に訊く。
「はい。ここから逃げ出す為のパートナーです」
0013生姜
02/05/06 22:13ID:Wx9UsyD2「ありますよ、みんな気付いてないのかもしれないけどこの方法なら多分完璧だと思いますね♪」
「じゃあ――」AKIRAの顔が歓喜で緩んだ。
「でも言ったでしょう?僕が探してるのは一人だけだって♪」
AKIRAの顔が再び強張る。「一人、だけ?」
「人数が多いと危険なんですよ♪それだけ見つかる確率が高くなる♪だから最初は一人で逃げようとしたんですけどね♪それもやっぱり
難しくて、だから二人がベストだなって♪」
「じゃあ――」AKIRAがTADASHIの方をちら、と見た。
「ここじゃちょっと………聞くだけでもいいですから移動しません?」
YURAは言うとすぐに腰を上げた。TADASHIとAKIRAのデイパックを掴み歩き出す。
AKIRAが後を追ってくる気配がした。
YURAはそっと笑みを浮かべた。
こんな簡単にかかってくれるとは思いませんでしたよ、AKIRAさん♪
元の位置から20メートル程離れた所でYURAは立ち止まった。
振り返ると茂みをわってAKIRAが現れた。
ぼんやりした目。まだ銃はその手に握られていたがYURAに対する警戒心はもうないと言っていいようだった。
YURAはデイパックの中から地図を取り出すとそれを目の前の地面に広げた。
0014生姜
02/05/06 22:14ID:Wx9UsyD2AKIRAは何の疑いもなくYURAと向かい合う形で腰を下ろすと地図を覗き込んだ。
「あ、その前にそれどこかへ置いといて下さいよ♪怖くてたまんないです♪」
YURAが右手の銃を指すとAKIRAは悪いと言ってその銃を少し離れた所に置いた。
「じゃあ改めて――」
YURAは作戦を説明する振りで適当に言葉を並べながら、己の右ポケットにそっと手を差し込んだ。
指先に固く薄いものが触れる。武器をなくした時に何か代わりになる物をと思い入った民家で偶然手に入れたもの。
あの時はこんな物が使えるだなんて思いもしなかった。まさかこんな形で役立つ事になろうとは。
YURAはゆっくり右手をAKIRAの首元に近づけた。
ごめんなさいAKIRAさん♪でもあんたもTADASHIさんの事裏切ろうとしたんだし、お互い様ですよね♪
人差し指と中指の間に挟んだそれを振り下ろそうとしたその時――
けけけけっと鳥の鳴き声がした。しかもYURAの右手の方で。
それでAKIRAはびくっとそちらを見て目を見開いた。
声の主は本当にただの鳥でしかなかったのだから、その原因はやはり顔のすぐ眼前にYURAが手にしたカミソリを認めたからだろう。
――ち!なんだってこんな時に
0015生姜
02/05/06 22:14ID:Wx9UsyD2たいした反射神経ですね♪でもそんなもの音楽にはあまり生かせないかも、残念♪
AKIRAは立ち上がり呆然とYURAを見下ろしていた。
YURAはそれに構わずすぐさまAKIRAが置いたリボルバーめがけて走った。
しかし目の前をAKIRAの体が飛んできた。まるきりスライディングの要領で。
地面から銃をすくいあげ、一転して膝立ちに起き上がった。
YURAはAKIRAのほうが先に銃を拾うと判断すると方向を転じていた。
背後で銃声が聞こえたが、どこにも当たらないままYURAは茂みの中へ駆け込んだ。
AKIRAが追ってくる音がする。追いつかれる。もちろんだろう、それは。
茂みを抜けるとTADASHIの姿があった。銃声で目を覚まし、それからYURAとAKIRAがいない事に気付いて辺りを見回してた様だった。
「TADASHIさんっ!」YURAは声を上げてTADASHIに走りよった。もちろん泣き顔を作る事を忘れずに。
「YURA?どうし――」
AKIRAが戻ってくる頃にはYURAはTADASHIの背後に回っていた。それでも、完全に隠れると言う訳にはいかなかったが。
「TADASHI!そこをどけ!」AKIRAが足を止め、銃を構えて言った。
「ま、待てよ」
TADASHIは寝起きの頭でよく状況を飲み込めないのか慌てた調子で言った。
「いったい何だって言うんだ?」
「そいつが俺を殺そうとしたんだ!俺の言った通りだ!」
0016生姜
02/05/06 22:15ID:Wx9UsyD2「AKIRAさんが急に荷物を奪っていこうとしたんだ。だから俺慌てて追いかけていったんだ。そしたらいきなり銃で撃とうと――」
「な、こいつ――違う、違うぞTADASHI!そいつはカミソリで俺を殺そうとしたんだ!」
冷静に考えればAKIRAが逃げる必要などないのだから、YURAの言ってる事の方がおかしいのだが、状況はAKIRAにとって圧倒的に不利だった。確かに2つのバックはYURAが持っていった為、ここにはなかったしYURAはとっくにカミソリを茂みの中へ捨ててきたので証拠は
何もない。
AKIRAは怒りで顔を赤黒くしながら必死に叫んだ。「どけ、TADASHI!俺はそいつを撃つ!」
「待てったら」何とか落ち着いた声をだそうと務める様にTADASHIが言った。
「俺にはどっちが嘘を言ってるのか、分からない」
「何だと!」AKIRAがまた声を荒げたがTADASHIは動じず、AKIRAのほうへ右手を差し出した。
「とにかくその銃を渡せ。その後でどちらが嘘を言っているか確かめよう?」
AKIRAの顔がゆがんだ。もうほとんど泣きそうな、やるせなげな表情だった。
「そんなまだるっこしい事言ってられるか!お前も殺されるんだぞ、今こいつをやらないと!」
AKIRAの言葉にYURAがひどいと泣き声をあげた。
「僕、そんな事しません、信じて下さい、TADASHIさん――」ぎゅっとTADASHIの肩を握りしめる。
TADASHIが辛抱強く右手を伸ばした。
「渡してくれ、AKIRA。お前が嘘を言ってるのでないのなら」
0017生姜
02/05/06 22:16ID:Wx9UsyD2グリップを前にして諦めた様にTADASHIの方へ差し出す。
なお泣き顔を保ったままだったが、YURAの目の奥がきらっと光った。
TADASHIが銃を握った時が勝負だ。背後からなら銃を奪うのもそう難しくはないだろう。
TADASHIが頷き前へでた。しかし――それは実にTAKEOがYURAの目の前でやったのとほぼ同じ様にAKIRAの手の中で銃がくるっと回転した。
そしてその銃口はますっぐにYURAを狙っていた。
TADASHIの背中から離れたYURAの体はがら空きになっていた。TADASHIがぱっとYURAを振り返る。
やられる――YURAは目を見開いた。
0018生姜
02/05/06 22:18ID:Wx9UsyD2YURAの目の前スローモーションの様にTADASHIの体が崩れ落ちようとしていた。
その向こうAKIRAの狼狽した表情が見えた。YURAはその時にはもう、TADASHIが眠る時に横に置いていたカマを拾い上げていた。
AKIRAにむかってそれを投げる。カマは見事にAKIRAの右肩に食い込んだ。
ぐっとうめいてその手から銃が落ちる。
YURAは今度はバットを拾い上げて、右肩を押さえてよろめくAKIRAの頭めがけてフルスイングした。
がっ、とそのバットの先がAKIRAの後頭部のど真ん中をとらえた。
後頭部の皮膚が裂け、血飛沫が上がり頭蓋骨が陥没する感じがYURAの手に伝わった。
そしてそのまま倒れたAKIRAの頭に何度もバットを振り下ろす。
YURAがバットを放り出す頃には、AKIRAは頭部全体を血で真っ赤に染め絶命していた。
YURAは左手の方に転がっているリボルバーを拾うと、倒れているTADASHIに歩み寄った。
TADASHIの体の下、赤い染みが広がっている。
YURAは少し考え、AKIRAの死体がTADASHIに見えない様自分の体を動かすと、TADASHIの肩をぐっと掴んで仰向かせた。
それでTADASHIが「うう…」と声をあげ、目をぼんやり開いた。
少し埃にまみれたカットソーの左胸と脇腹に一つずつ穴が開いていた。血がそこから溢れ出し、その綺麗な布に吸い込まれている。
YURAはそのTADASHIの上半身を抱き起こした。はっ、はっと短い呼吸が続いている。
0019生姜
02/05/06 22:20ID:Wx9UsyD2YURAは顔を左右に振った。
「貴方を撃ってしまって怖くなったんでしょう、逃げていかれました」
「そ、そう――」
そう言ったTADASHIの目は左右でどこか焦点が違っていた。多分、YURAの姿ももうぼんやりとしか見えていないのかもしれない。
「け、怪我して、ないか?」
「はい――」
YURAは頷いた。それから言った。
「かばって、くれたんですね」
TADASHIはちょっと笑った様だった。
「こ、これからは、おおお前達の、時代が、く、くる。俺はもう、う、うごけな――」
言う唇の端から血の泡が吹き出した。肺に穴が開いているようだった。
YURAは「わかってます」と言い、TADASHIの体を抱きしめた。
「ご、ごめ――俺もう――」
YURAは笑んだ。もう一度「わかってます」と言い――
どん、どんと篭った銃声がし、TADASHIが大きく目を見開いた。
その時にはもう、YURAの顔を見つめたまま、多分何が起きたか分からないままTADASHIは死んでいた。
YURAはまだ銃口から煙を吐いているリボルバーをゆっくりTADASHIの腹から離し、その体を抱えなおした。
今はもう何も見ていないTADASHIの目を覗き込む。
「貴方ともっと早く会っていられたら………もっと早く話が出来ていれば、なぁ……――僕、ちょっと嬉しかったです。忘れませんから、
貴方のこと」
それだけ独り言を言うと、まだ暖かいTADASHIの体を、敬意をもってもう一度抱きしめた。
0020生姜
02/05/06 22:21ID:Wx9UsyD2それは、バサバサな髪を振り乱し、血液を口の周りから飛ばしながら喰らっていた。ちょうど、魚を食べる時のように、頭の部分は
残して、まず身から。
SUGIZOの口中にえぐ味が広がり、思わずうずくまった時、気配を察してそれが振り返った。そしてそれの気配に、SUGIZOも伏せた顔を
上げた。
視線がぶつかった。
第5回プログラムとかいうものが始まったとき、本当に「殺し合い」をするなんて、誰も思っていなかった。これからメジャーデビューを
目指して頑張ろう、というミュージシャン達や最近活動が薄いバンドのメンバーが一箇所に集められ、とまどっているうちに、当時は
ソロ活動絶好調で、女性誌での人気ランキング堂々1位に輝く河村が上機嫌で現れた。河村の出現でとまどいが更に深まったところで、
このクソゲームの説明をされた。
もっともこの時点でこれが真実殺し合いのゲームであると本気で受け取った者は皆無だったと言ってよい。自衛隊みたいな格好をした奴ら
から武器や食料の入った深緑色のバッグを受け取って本部を後にしても、そんな雰囲気から、最近よくテレビなんかで目にする、
モデルガンを構えてパーンパーン! と相手より先に口で言ったら得点とか、傍から見たら間抜けなこと間違いないゲームをやれと
いうことなんだと思った(あれ、なんていったっけ、あのゲームの名前。どうしても思い出せん)。
0021生姜
02/05/06 22:21ID:Wx9UsyD2あって、それで「死んだ」奴は「死んだ選手」としてカウントされたのだと思った。首輪がモニターするというのも大仰な話ではなく、
首輪を通じて「死んだー!」という声を聞いて、それを「死んだ」と判断するのだと思っていた。
午前10時53分。この時間を、SUGIZOは永遠に忘れない。忘れられない。
適当に腹ごなしをして、一応「禁止エリア」のチェックをしつつ、林の中をさまよっていると、たまたまLuna(元EINS・VIER・Ba)を
見つけた。
Lunaは自分に気がついていない。
にや、と笑って、SUGIZOはデイバッグから自分に支給されていたスミスアンドウエスンを取り出し、Lunaに照準を定めた。
「ばーん!」
間抜けな声と同時に、引き金を引いた。
Lunaは、側頭部に空いた穴から派手に血を噴き出して、そのまま前にどさっと倒れた。SUGIZOを振り返ることなく、前を見たまま。
そして恐らく、自分を撃ったのがSUGIZOだということを知らずに。
SUGIZOは、ただ立ち尽くしていた。銃口からは、SUGIZOが頭の中で思い描いていた、コメディ映画であるような、音とともに「BANG!」
と書かれた旗は出ず、そのかわり火薬くさい鼻をつく匂いが漂っていた。それでこれが、本当の殺し合いだとわかった。
どうしてそのとき、腕時計を見たのかわからない。ともかくそのときSUGIZOは時計を見、時間を確認した。
午前10時53分だった。
0022生姜
02/05/06 22:22ID:Wx9UsyD2売れなくちゃいけないんだ。だいたい、今メジャーシーンを騒がせている奴らはどうなんだ、あいつらも人殺しをして業界から引っ張り
だこな存在になったとでもいうのか?
が、またこうも思った。自分がいまLunaにしたように、自分の背後から息を殺して近づいて、頭や心臓を撃ち抜こうという奴がいるかも
しれない。朝の放送で名前が呼ばれた奴がいたということは、いるのだ。やはり。
そこでSUGIZOは、はっと我に返った。
自分も含め、首を傾げつつ本部を後にしたミュージシャンのうち、たった一人だけ血相を変えて脱兎の如く駆け出した奴がいた。あいつの
ここのところの精神状態からいって、そうなるのも無理はなかったし、だとしたら危険だ。あいつが一人でいるのは危険すぎる。
SUGIZOは、チームメイトを殺す以外の目的を持って動き始めた。
積極的に殺した、ということはなかったと信じたかった。狙われたから殺したのだと。が、殺すたびに相手が持っていた武器や食料、水を
奪い、なんの為に仲間(だった者)を殺しているのか、ゲーム開始前に提示された目的もおぼろになったころ、それがかつての仲間を
食っている場面に出くわしたのだ。
0023生姜
02/05/06 22:22ID:Wx9UsyD2視線があったそれの顔を、そいつだと認めたくはなかった。けれど紛れもなくそれは“あいつ”であり、“あいつ”がこうなってしまうの
も無理はないという思いと、そんな馬鹿な、こんなけだものみたいになってしまうなんてという憤りがないまぜになって、SUGIZOは
絶叫し、そして引き金を引いた。
かつて“あいつ”だったそれは、抵抗せず、腹に二発喰らって吹っ飛び、そして倒れた。
SUGIZOが慌てて駆け寄り、彼の身を起こした。
彼は、泣いていた。ぎり、とSUGIZOの肩にしがみつき、涎と血を吐き出しながら、涙をとめどなくあふれさせていた。
「もももう、い、いきてたくない、しし、しに、しにたい、しにたいよぉ……」
口の周りには、いま吐き出したのとは違う血がべっとりとついていた。喰っていたときについたのに間違いない、血が。
最初にこいつが、人としてのたがを外してしまったのはいつだったのだろう。本部から遠くへ駆けて行ったときか、このクソゲームでは
じめてチームメイトを手にかけたときだったのか、たまたまSUGIZOと出会う直前だったのか、それとも――
それとも。
いずれにせよ、楽にしてやらねばならなかった。こいつは自分がしでかしたことの、何倍も何十倍も苦しみ、苦しみぬいて、そして人では
なくなってしまったのだ。
SUGIZOも、泣いた。泣きながら、彼の胸に銃口を当てた。
次の瞬間、こもった音がして、彼は死んだ。楽になった。そう思わなければ、SUGIZOも生きていられなかった。映画やテレビドラマの
ように、いまさらのように体を揺さぶりはしなかった。こいつと、ひょっとしたら別の奴のも混ざっているかもしれない血に塗れた両手で
顔を覆った。
0024生姜
02/05/06 22:22ID:Wx9UsyD2こいつの名を呼んだとて、泣き叫んだとて、もう失われた命は戻りはしない。そして、失われた時も。
遠くにヘリの音を聞き、ヘリから軍人が降りてきて自分を両脇から支えてヘリに乗せる。どこかよそごとのようにその画像を目に
収めながら、ヘリの計器盤にも目を遣る。午前10時53分。
このクソゲームが、終わりに近づいているからか。あんなことを思い出したのは。
陽光が眩しい。
SUGIZOは、腕時計を見てみた。12時前だ。10時53分ではない。さすがに、ドラマや小説のようにドラマチックにはいかない。
間もなく、新たな犠牲者の名が放送される。
0025生姜
02/05/06 22:23ID:Wx9UsyD2TAKEOはいつものように放送で次の禁止エリアが告げられるのを聞き、地図にチェックを入れていた。そして探知機片手に禁止エリアに
なる時間がくる前に、一つずつ当たっていく。
キリトと潤を捜し出すのに、この方法しか思いつかなかった。でも恐らく、一番ベストな捜し方だろう。まぁそれも、この探知機があって
こそスムーズにできる方法なのだけれど。
そうやって行き着いた場所では、何体もの死体を発見した。死体を見ては、キリトでも潤でもない――と、安心した。まったく、
死んでいったミュージシャンには失礼な言い方だよな。死んだ者に対して安心しただなんて。
0026生姜
02/05/06 22:23ID:Wx9UsyD2南の山の中腹――雑木林の中ではTAIZOが。
集落から南の山にさしかかる辺りでWaiveの田澤と貳方が。
海岸では竜太朗が。
大きな爆発音が聞こえて向かった集落の西辺りの畑の間。倉庫のような建物がぼろぼろになっていて、その脇の駐車場のようなところ、
一台のワゴン車の前に、あのGLAYの3人。そういえば、あのJIROも死んでいた。
みんな――みんな変わり果てた姿になっていた。
そして、唯一最期だけだったけれど、見届けることができた――アイジ。
ごめんな、アイジ。埋葬もしてあげられず、ただ目を閉じさせ、胸の上で手を組み合わせただけのままで…側にいることさえできなくて。
でも俺らは、まだやることがあるから。今は――キリトと潤を見つけださないといけないんだ。お前ならわかってくれるよな?だから、
どうか許してくれ――。
0027生姜
02/05/06 22:27ID:Wx9UsyD2自分の身体感覚――体が地面に対して水平になっているというそれ――と視覚をつなぎ合わせてKOHTAはそれが天井だという事を認識した。
誰かがそっとKOHTAの胸元に手を触れた。
その黒のややくたびれた感のあるシャツの手から腕、腕から肩へと目で追って、見た。
SHUSE(La'cryma Christi・Ba) がニヤリと笑いかけているのを。
「良かった。気が付いたんやな」SHUSEが言った。
KOHTAはがばっと体を起こしかけたのだが途端、体のあちこちに激痛が走り慌てて体を元に戻した。
それで、自分が柔らかいベッドの上に寝ている事がわかった。
「あかん、無理したら。大怪我してんのやから。大丈夫か?」
SHUSEが毛布を掛け直しながら聞いたがKOHTAはそれに答える余裕などなかった。
首を回して辺りを見る。狭い部屋だった。自分が寝ているベッドの他にもう一つだけベッドが見えた。それ以外はほとんど何もない。
「――どこなんです……ここ?」
KOHTAは半ばまだぼんやりとした頭で言った。SHUSEは
「灯台や。俺達これが始まってからずっとここに隠れてる」
と穏やかな口調で言った。
0028生姜
02/05/06 22:27ID:Wx9UsyD2ひっぱり入れたって訳や。ごっつい怪我やったで。血だらけやったし。すぐにも死ぬんじゃないかって冷や冷やしたわ」
KOHTAはそう言われてようやく自分の体を見た。上半身、色んな所にぐるぐると包帯が巻きつけられていた。
左の肩口、首の右側、そして左の肘の上。さらに左脇腹。
包帯が巻かれている場所はどこも焼け付くように痛んだ。
「手当てしてくれたんですか?」
「ああ」SHUSEが頷いた。
「一通りの救急セットはここに揃ってたから。傷、ちょっと縫ったで。素人のやる事なんでめちゃくちゃやし、針も糸も裁縫セットの奴や
けど………」
「すみません、世話かけちゃって、ありがとうございます」KOHTAはSHUSEに向かって言った。
「ええって、気にすんな。それにしても良かった、意識戻って。一時はもうあかんと思ったよ。お前ずっと眠ってたし。そうやな
――もう13時間くらい」
左手首の時計を見ながらSHUSEが言った。
13時間?13時間って、そんなに?
KOHTAは目を見開いた。今度こそ意識が完全に覚醒した。
記憶と現在がやっとかみ合ったのだ。
聞くべき事があった。真っ先に。
0029生姜
02/05/06 22:27ID:Wx9UsyD2KOHTAはそこまで言ってごくっと唾を飲み込んだ。生きて、いるのか?
「JさんもSUGIZOさんも無事やと思う。さっき正午の放送があった所やけど2人共名前は呼ばれてへんから」
KOHTAは大きく息を吐き出した。良かった2人共無事逃げたのだ。
あの、マシンガン野郎から――
KOHTAは安心すると同時に、ため息をついた。「やる気になってる奴がいるんです。俺は、そいつと出くわして――」
「もしかして、サイコの2人を殺った奴か?」SHUSEは少し驚きながら言った。
「そいつなのか?その怪我………誰なんや?一体………」
「わかりません、俺そいつを引きつけながら逃げるのに必死で。そうだ、そいつとは別に、サイコのYURAもやる気になってる」
「そうなんや――」SHUSEは小さく頷き、それから続けた。
「でもここは大丈夫や。お前を別にして6人いてる。みんながちゃんと見張ってくれてるから。信用できる奴らやと思うで」
KOHTAは眉を持ち上げた。そういえばさっきも俺達とか見張りの奴とか言っていたが6人もいるのか。
「誰なんです?」
「うちのKOJIにHIROやろ、それからFAIRY FOREのAKIHIDEとYOKO、それとWaiveの杉本善徳」
KOHTAは唇をなめた。まあ、見事なまでの古株チームと新人チームの混成部隊だ。まるでV6みたいじゃないか。
「信用できへんか?俺ら」KOHTAの表情を見てSHUSEが不安そうに聞いた。
「いえ、とんでもない――こちらこそ助けてもらったんですから、凄く感謝してます。もちろん信用しますよ」
と、そこまで言って疑問が残った。この人たちこそなんで俺を助けてくれたんだろう。
0030生姜
02/05/06 22:28ID:Wx9UsyD2SHUSEは小さく笑った。
「目の前で人が死にかけてるんや、ほっとく訳にはあかんやろ?それに同じ事務所の仲間やないか。こんな時に信じんと、いつ信じるっ
ちゅーねん。それに、お前がそんな奴やないって事ぐらい、俺にはわかる」
「それは――……ありがとうございます」KOHTAは少し照れながら、先輩の寛大さに思わず礼を言った。
もしこの優しい先輩達があのまま自分をほっておいたら間違いなく死んでいただろう。例え見殺しにしても何の損もない自分をわざわざ
ここに運び入れて手当てまでしてくれた先輩たちにKOHTAは今更ながら本当に感謝していた。
SHUSEはほっと笑うと「そうや」とデイパックを差し出した。
「お前のや。地図、一応チェックしておいたで」
KOHTAはそういえば禁止エリアの問題もあったのだと地図を開いた。
『元の場所だ、KOHTA』SUGIZOがそう叫んだあの場所。
島の西岸、海際に近いエリアC=3は他のいくつかのエリア同様ななめに走らせた鉛筆でざっと塗りつぶされていた。つまり、そこには
もう入れなくなったという意味だ。
KOHTAは唇を噛んだ。JもSUGIZOももうそこにいない。
「すみません。俺行かなきゃならないんで」一刻も早く2人の後を追う必要があった。既にどこへ移動したかは分からなくなっていたが
それでも追いかけなければ。
痛む体を無理に動かすと「まあ待て」とSHUSEが制した。
「そんな体でどこ行こうっていうんや。体を休めた方がええって」
「そうはいきません。JさんとSUGIZOさんの所へ戻らないと――」
KOHTAはなおも起き上がろうとする。
0031生姜
02/05/06 22:28ID:Wx9UsyD2くる。だからとにかく待て」
SHUSEに宥められてようやくKOHTAはベッドに体を戻した。SHUSEが安心した様に付け加えた。
「飯食えるか?」言われてみれば確かに腹は減っていた。傷の為にも何か詰め込んどいた方がよさそうだった。
「あ、はい。………あの、何かあるんですか?」
「今ちょうど昼飯の用意してる所やから持ってくるわ。シチューでええか?」
「シチュー?」KOHTAは聞き返した。
「ここ食料がめっちゃ沢山あったんやで。貯蔵用のレトルトとか缶詰とか。水も固形燃料もあるから料理できんねん」
「それはすごいですね。ありがたいです」SHUSEはドアの所に向かうと「悪いけど鍵かけるな」と言った。
「え?」
「堪忍な。そうせえへんと安心せん奴がいてるから。ちょっと待ってろ」
それだけ言って外に出た。閉じたドアの向こうでがたがたっと音がした。かんぬきの様なものだろうか。
KOHTAは再び無理して上半身を起こすと頭上にある窓を見た。
窓には角材が打ち付けられていてその隙間から光が落ちていた。
もちろんこれは外からの侵入者を防ぐ為なのだろうが、今のKOHTAには格好の監獄と言うわけだ。
KOHTAは息をつきまたベッドに横たわった。そうした動きだけで脇腹の傷がぎりっと痛みを突き上げてきた。
0032Nana
02/05/06 22:39ID:CuPvQNks「サバイバルゲーム」でしたっけ?
>29
ラクリマが全員そろって、嬉しいです。SHUSEさんが生きてるのも。
これからはKOJIさんがポストHISASHIさんになるのでしょうか?
0033Nana
02/05/06 22:47ID:fmTLNzEg明&正も死んでしまったのね(ゴウナキ。
0034Nana
02/05/06 22:48ID:CuPvQNks0035Nana
02/05/06 23:01ID:iXCWVKZc正、最期の最期まで良い人だったナア…(泣
次はラクリー麺に期待!
0036Nana
02/05/06 23:09ID:mz3qT3mk泣いちまったぜチクショー
0037Nana
02/05/07 00:39ID:VXRYt0BUしかし、正…(ナキ
生姜さん、これからの展開にも期待してま
す!
0038Nana
02/05/07 22:59ID:Y7Huae96た、タダスィ(ホロリ
0039Nana
02/05/08 00:40ID:vkte8A9Y0040朝ねずみ…(;´゚ω゚) ◆GIREN64s
02/05/08 01:47ID:eIEa/lVcあと、上に貼った表間違ってました
死亡者の「〜人目」の数字がずれてっています…
次貼るときがあれば修正します。
0041(*゚∀゚) ◆Yusuke32
02/05/08 11:10ID:muYNISmUやっとでてきたよ、善徳さん・・・何気なく期待してたり(笑
0042生姜
02/05/08 21:48ID:6sbGH0TI河村隆一………その存在はヴィジュアル系バンド業界の、過去としての伝説となりかけている。
彼自身がスレイヴと呼び愛したファンからの願いを一身に浴び、それらの欲望を吸収して、もはや一つの肉体であることをやめてしまった
彼は、様々なJ-POP界、ファッション業界、芸能界的な勢力と連結しながら、得体のしれない怪物としての自分をもてあますかのようだ。
音楽とは人生そのものだ。それが彼の持論だった。ミュージシャンである彼がスーパースターになりえたという事実が、そのことを証明
している。そう、かつては確かにそうだったのだ。
だが今はその音楽も、そこにあるドラマも、書き割りのようにしらじらしいものになってしまっている。
河村にはそれが物足りない、はがゆい、こんな退屈には耐えられない。2001年秋、思いは爆発した。
そこにはまさに掛け値無しのドラマがあった。ある者はおびえ、ある者は知恵をしぼり、ある者は味わったことのない快楽に我を失う。
ドス黒い駆け引きがあったかと思えば、思いもよらぬ精神の輝きがきらめいて消える。河村は楽しみ、満足していたのだ。ただ一点を除いて。
0043生姜
02/05/08 21:49ID:6sbGH0TIあれだけの資質を持ちながら、いったい何を恐れているんだ。物足りない!物足りない!
もっと深く憎み合って、もっと深く傷つけ合って、心も体もズタズタに切り裂かれて、その中から、自分も知らない自分自身を見つけて
みろ!自分自身の未来をつかみ取ってみろ!それが人生だ、それが野球だ!
もう良く出来た失敗作のようなおまえは見たくない。自分の肉体を解き放て!その固い固いカラを破って、体液にまみれた裸の自分を
さらして、全身で世界の震えを感じ取るんだ。焼け付くような情熱に身を焦がしてみろ!燃え上がり、沸き立つような一瞬を通過して、
新しい自分になるんだ!おまえには兄以上にその力がある。
河村は窓から差し込む早朝の青白い光の中で、物陰に身を潜めた獣のように苛立つ。
「問題は、SUGIちゃんか………」
0044生姜
02/05/08 21:49ID:6sbGH0TIその中のゆうに学校の教室分くらいはありそうな広いリビングのテーブルに杉本善徳(Waive・上G) はぐったりと突っ伏していた。
他の5人とは違い、つい昨日までこの島を一人で逃げ回っていた疲労は一晩たってもさほど解消されなかった。
無理もない。ある事が原因で彼はほとんど眠れてもいないのだから。
SHUSE達はこの部屋を寝室を含めた居室として使用していた。
外に見張りを立てる事は必要だったが、その他は一緒にいた方がいいとSHUSEが判断したのだ。
善徳のすぐ後ろでは、HIRO(La'cryma Christi・上G) とYOKO(FAIRY FORE・Dr) が昼ご飯の準備をしていた。
一方その向こうのソファには、AKIHIDE(FAIRY FORE・G) が座っていた。
そして、このグループ最後の一人、KOJI(La'cryma Christi・下G) は灯の上で見張りを務めている。
善徳自身はまだ見張りに立った事はないのだが、この灯台の後ろはすぐ海、前面も港から続く一本道があるきりで、あとは山が迫ってる
からそれ程困難な作業ではないとSHUSEが言っていた。
そのSHUSEは今、KOHTAを収容した玄関からすぐの寝室にいる。
――KOHTAを。
また少しだけ善徳の中に恐怖がぶり返した。もはや一生忘れないであろうあの映像。
0045生姜
02/05/08 21:50ID:6sbGH0TIそのナタを手にした男の姿――そして――
その男、KOHTAは今、この同じ屋根の下にいるのだ。
誰も知らないことだが、KOHTAが弾みでAOIを殺してしまったあの時、善徳はKOHTAと丁度真正面向かいになる茂みの中に隠れていたの
だった。そして彼は、茂みより怯えながら微かに顔を上げたとき、AOIの頭からナタを抜くKOHTAの姿を見てしまっていた。
――地獄絵図、だった。
その、ほんのただ一瞬だけは、確実に。善徳にとって。
あれから必死で逃げ色んな場所を彷徨い疲れ果てていたが、どんなに睡魔が襲ってきてもあの恐怖のシーンと、信頼するメンバーである
田澤孝介と貳方孝司が死んだというショックから彼はすっかり不眠症に陥っていた。毒舌が売りである筈の、一見強い精神力を持って
いそうな善徳は、その実それを盾にして守らなくてはならない脆く繊細な面を持っていたのだ。
――いや、大丈夫。大丈夫やって。
善徳は自分を捕らえそうになる恐怖から何とか逃れようと考えた。大丈夫。だって彼は死にかけているのだから。
目を覚ます事はないであろう傷と出血量だった。もう一度意識を取り戻すなんてありえない。
その時、誰かがポン、と善徳の肩を叩いた。
0046生姜
02/05/08 21:51ID:6sbGH0TI「少しは眠れたか?」
「はい」善徳は無理に笑顔を作りながらその問いに答えた。
ここにいるのはよく知らない先輩達ばかりだった。みなメジャーアーティストだ。事務所に入ったばかりの新人である善徳にとって、ある
意味窮屈ではあるのだが、さすがに自分含め6人もいると思うとまだ、どこかで安心できた。それに、疲れ果て彷徨っていた善徳を招き入
れてくれたのは他ならぬHIROだった。当番の見張りをしていて、善徳に気付いたのは彼だったのだ。
安息がここにはある。例えそれが時間切れまでのものでも。ただ――
「なあ、昨日お前が言ってた事なんだけど」HIROが気まずそうに切り出した。
「ああ」善徳は笑んだ。「その事ならもうええです」
そう、もういいのだ。事実考えたくもなかった。あのシーンを思い出すだけで、脳裏にフラッシュバックするだけで震えがくるのだ。
それにもうKOHTAは二度と目を覚まさない。だから、もういい。
「そっか。ならいいんだけど」HIROが複雑な笑いをした。
昨日、瀕死のKOHTAが灯台の前で発見された時、唯一この善徳だけがその収容に反対した。
KOHTAさんは危険です。そのうち皆を殺そうとする――
それでもSHUSEが怪我人、それも後輩をほっとけないと、わめく善徳をとりなし血まみれのKOHTAをここへ運び入れた。
善徳は青ざめた顔でそれを遠くから見守っていた。所詮自分は新人の身。先輩達の決定には逆らえなかった。
最初は心底怯えていたものの、時間がたつにつれ何とか自分を納得させた。
確かにKOHTAは怪我人だ。それもかなり重傷の。目を覚ます事などない、と。
0047生姜
02/05/08 21:51ID:6sbGH0TI決して本心ではないが、わざわざチームの和を乱す必要もないし、何せ自分も助けられた身なのだ。善徳はHIROが安心しそうな言葉を
口にした。
それでHIROは少し安心した様に言った。「KOHTAはいい奴だよ。あんないい奴そんないないと思う」
確かに善徳も以前はそう思っていた。ちょっと一見無愛想そうに見える時はあるが、とても腰の低い、好感の持てる人だと。
あのPIERROTのベーシストにして、これだけの人気がありながら決して奢ることはない。そんな所が羨ましくさえあった。
しかし――そんな事は今の善徳の頭からは消えていた。
何?何言うてんねん?いい人って、誰がやねん?!
「な?だからKOHTAが目を覚ましても喧嘩とかしないでくれよ」
「大丈夫です。そんな事ありません」そう、目を覚ますなんてありえない。冗談じゃない。
「良かった、安心したよ」そう言うとHIROは再びキッチンへと戻っていった。
ちょうどその時、ドアが開きSHUSEが部屋へ入ってきた。そして、言った。
「KOHTAが目、覚ましたで!」
HIROがおう、と声を上げ、YOKOとAKIHIDEがお互いの顔を見合わせ、嬉しそうに笑った。
その中でただ一人、善徳は青ざめていた。
「本当?話はできるのか?」SHUSEの言葉にHIROがそう訊いた。
「ああ。ご飯も食べたいって」SHUSEは頷き、それから善徳の方を見やって言った。
「大丈夫やで。部屋の鍵はかけてきた。お前が心配するとあかんからな」
皮肉な言い方ではなかった。先輩として必要な事をやった、と言う口調だった。
0048生姜
02/05/08 21:52ID:6sbGH0TIKOHTAがもう目を覚ます事はない、と確信する一方で、もし覚ましたらどうするかという事を善徳は夜の間に何度も何度も考えていた。
ちょうど良かった。食事どきだ、今は。どうせ死にかけていた男だ。急に状態が悪くなったってなんの問題もない。
善徳は完璧に笑顔を作って、首を振った。
「心配なんてしてない。昨日は俺、ちょっとおかしかったんです。もうKOHTAさんの事疑ったりしてません」
それを聞いてSHUSEはほっとした表情で息をついた。
「なんや。なら鍵かけてくる事なんてあらへんかったな」
それからSHUSEはHIROに言った。「なあ、悪いけどKOJIを呼んで来てくれるか?食事しながらちょっとみんなに相談したい事があんねん」
「見張りいなくなって大丈夫か?」HIROが尋ねた。
「ああ。どうせ建物は閉鎖してあるし、大丈夫。ちょっとの間やし」
HIROはわかったと返事をすると、部屋を出た。かんかんかん、と鉄の階段を上る音が聞こえる。
そしてAKIHIDEとYOKOが「どんな具合なんですか?」「食事って俺らと一緒のでいいんでしょうか?」
と立て続けにSHUSEに聞いている内に、善徳はそっと席を立ちキッチンへ向かった。
湯気があがるシチューの鍋の横、白い陶皿が数枚積み重ねられていた。
善徳は右手をジャケットのポケットにいれ、中の物を握り締めた。
伸縮性の特殊警棒と一緒に、武器としてデイパックに入っていた「特別付録」というラベルのついたそれを。
このゲームでの使い道などないと思っていたそれを。
0049生姜
02/05/08 21:52ID:6sbGH0TI善徳は奇妙に冷静だった。ポケットの中、片手だけを使って小さな瓶のコルク栓をそっと外した。
「SHUSEさん」善徳の呼びかけに、AKIHIDE、YOKOと話をしていたSHUSEが顔を向けた。
「先にKOHTAさんに、ご飯持っていってあげた方がええんとちゃいますか?」
「せやな。そうしよか」善徳の提案にSHUSEが頷く。
「じゃあもうシチュー出来てるみたいやからよそいますね」
そう言って善徳は白い皿を持ち上げた。
「うん。あ、そうや」SHUSEは何か用事を思い出した様に言うと、少し離れた所にある棚を指差した。
「そこの引き出しに薬箱あるやろ?鎮痛剤、飯と一緒に持ってくから出してくれるか?」
「――あ、ハイ」返事をして、善徳は持っていた皿を流しの横に置くと、そちらへ向かって歩いた。
その時、またかんかんかんと鉄の階段を踏む音がしてHIROとKOJIが姿を見せた。
「KOHTA、目ぇ覚ましたって?」
KOJIは肩から吊っていたサブマシンガン(6人の持っていた武器の中で一番威力がありそうな物を見張りが持つ事にしていた)をテーブル
の上に置くと、SHUSEに嬉しそうに話し掛けた。
同じチームを組んでいると入っても、やはり古株と新人の混成チームではいまいち息が合わない。KOJIがごく自然に話しかけたのが同じ
メンバーであるSHUSEであることが、このチームがまだ全員の全面信頼の上に成り立っているものではないと言うことを物語る。
善徳は引き出しの中から薬箱を引っ張り出すと、その中を探った。
鎮痛剤――鎮痛剤ってどれやろ。そんなものを飲んだ所で意味なんかあらへんのに。
だって――
ああ、あった。これや。薬効は頭痛、生理痛、歯痛。俺もさっきから頭が痛かったんよね。
後で飲もう、色々終わった後で。
そう、いろいろ終わったあとで。
0050生姜
02/05/08 21:53ID:6sbGH0TI「ああそうだ、それを話してもらわないと」そう続いたHIROの声も
「あ、それはね、えーと何から話せばいいだろ」と言うSHUSEの声も善徳の耳を素通りしたのだが、次の瞬間善徳はびくっと顔をあげた。
「ああ、外ホンマ寒かった〜…どれどれちょっと味見ー」と、KOJIの声が聞こえたからだ。
善徳は顔を振り向けた。そして見た。流しの前、KOJIが皿を片手で持ってそれに口つけているのを。
味見ならおたまからすればいいのに、わざわざ『あの皿』によそって口つけているのを。
半透明の粉が入った『あの皿』に。
善徳の顔から血がひいた。声をあげようとし――しかしその前にそれはやってきた。
0051生姜
02/05/08 21:54ID:6sbGH0TI全員の目がKOJIに集中する。
KOJIが喉を押さえて、ごぼっと今飲み込んだばかりのシチューを吐き出していた。
更に激しく咳き込むと、白いテーブルクロスの掛かった机の上に真っ赤な血を吐き出した。
そしてそのままシチューのこぼれた床の上に崩れ落ちた。
「KOJI!」全員が――声を失った善徳以外の全員が――KOJIに駆け寄った。
体を折って、横ざまに倒れこんだKOJIはもう一度血を吐いた。
その整った顔がみるみる青くなっていく。
「KOJI!どうしたんだよ!?」SHUSEがその体を揺すったが、KOJIはもう口の端から真っ赤な血を流しているだけだった。
その目はほとんど限界まで見開かれ、飛び出しそうになっていた。
白目の部分も真紅に染まり、毛細血管が破れたせいなのか、青くなったその顔に赤黒い斑点がいくつも浮き出して、KOJIの面貌はもはや
すっかりグロテスクな怪物のお面の様に成り果てていた。
SHUSEが震える手でKOJIの喉を触った。そして、言った。
「死んでる――」
誰も、何も、言わなかった。
0052Nana
02/05/08 22:05ID:gD.0/4hc0053生姜
02/05/08 23:11ID:F.1vN34gああ、なんて――なんてことが――これは間違い、間違いなんだ――間違いなのに――殺してしまった――殺して――尊敬する先輩なのに
――守る為だったのに。だって、そんな、KOJIさんが飲むだなんて思わなかったんだ。だいたいほんの一口じゃないか。こんな――こんな
強力な物だったなんて――俺はこんなつもりじゃ――俺が狙ったのは――
「これって――食中毒、じゃ……ないよな………?」SHUSEが震える声で言った。それを受けてYOKOが返す。
「おれ――さっき味見、しました。何ともなかった――これって、こんなのって――」
呆然と黙り込んでいたHIROが、YOKOの言葉を引き取った。「何かの毒………?」
それが引き金だった。
全員(正確には善徳を除く全員だが、4人はそんな事に気付きもしなかった)が顔を見合わせた。
そして――
0054生姜
02/05/08 23:12ID:F.1vN34g反射的にKOJIの死体の横や後ろに動いた。AKIHIDEが叫んだ。その目が丸く強張っていた。
「誰だ!誰だよ!誰が毒を入れた?俺達を殺そうとしたのは誰だよ?!」
「やめろ!」SHUSEは叫び、その後ズボンの後ろに差した拳銃の方に手を動かしかけたが踏みとどまって元の位置に戻した。「銃を下ろす
んや。これは何かの間違いやで、AKIHIDE」
AKIHIDEは今にも銃をぶっ放しそうな勢いだった。どうにか落ち着かせようと、SHUSEは穏やかな声音を出した。
「間違いなんかじゃない」しかしAKIHIDEは首を振った。もうすっかり逆上していた。
「さっきの放送だともう残りは半分以下だって言ってたじゃないか。そろそろ味方のふりしてた奴が正体を現したっておかしくない頃だろ?」
そしてHIROを見やって言った。「料理してたの、あんただったよな」
HIROがぶるぶる首を振った。「お俺だけじゃない。YOKOだって――」
「俺そんな事しません!それならAKIHIDEだって善徳だって、毒を入れる時間はあったじゃないか!」
それを聞いたHIROが、AKIHIDEに向き直った。「――そうだよ」陰うつな口調だった。
「そんな風にムキになるなんて、お前こそおかしいんじゃねえか?」
「HIRO!」SHUSEが制したが、遅かった。AKIHIDEが血相を変えていた。「何だって?」
HIROも続けた。「大体、お前ずっと寝てなかったじゃないか。俺見たんだ。夜中に目を覚ました時、お前が起きてたの。俺らが信用できな
いって事だろ?それって。何よりの証拠じゃないか?」
「HIRO!やめろってば!」SHUSEがほとんど絶叫する感じでもう一度言った。「AKIHIDE!銃を下ろせ!」
SHUSEからも先程までの冷静さは消えていた。
0055生姜
02/05/08 23:12ID:F.1vN34g「AKIHIDE――」SHUSEは愕然と口を開けた。
善徳は2、3歩後退し、ただ呆然としていた。一瞬の内に起こった事の成り行きに体が麻痺していた。しかし――言わなければならない。真相を説明しなければ――このままでは何か――何かめちゃくちゃな、とてもめちゃくちゃな事になってしまう。
その時、YOKOが動いた。流しに向かって右手の壁際、サイドボードへ。そこにはもう一つ、銃器が置いてあった。
ぱぱぱ、と撃発音が部屋に響いた。同時に、YOKOの背中にまとめて3つ穴が開いていた。YOKOはそのままサイドボードにぶつかり、
ずずっと滑ってそのまま床に転がった。誰が確かめるまでもなく――絶命していた。
「AKIHIDE!何するんだ!…同じメンバーだろ!!」上ずった声でSHUSEが叫んだ。まだ煙を吐いているウージーを構えたままAKIHIDEは
SHUSEを睨んだ。
「そんなの関係ない!こいつ、わざわざ銃を取ろうとしたんだ。犯人だったからだ!」
「お前も銃を向けてるだろ!SHUSE!撃てよ、こいつを!」
AKIHIDEはそう叫んだHIROにちゃっ、と銃口を向けた。その顔はどす黒く変色し、今にも引き金を引きそうだった。
善徳の眼に映るSHUSEの顔は、何かの痛みに耐えている様だった。そして次の一瞬には、その手がズボンの後ろのブローニングにかかって
いた。きっとSHUSEは迷った挙句、AKIHIDEの手か何かを狙おうとしたのだろう。すっ、とAKIHIDEが銃口をSHUSEに向けた。再びぱぱぱ、
という撃発音がしてSHUSEの体が後ろに吹っ飛んだ。Tシャツの胸の辺りから血が吹き上げていた。HIROは一瞬だけ立ち尽くしたが、すぐに
SHUSEが落としたブローニングに走った。AKIHIDEがその体に向かって、再び引き金をひいた。ぱぱぱ、とHIROの脇腹辺りから、シャツの
繊維と一緒に血が飛んだ。
0056生姜
02/05/08 23:13ID:F.1vN34g「お前は――お前は違うよな?」
善徳はただぶるぶる震えていた。震えながら、AKIHIDEの異常な顔を見つめていた。
そのAKIHIDEの左のこめかみにぱんっ、という音と共に穴が開いた。
AKIHIDEは口を開き――左手を見た。穴から血がつ、と流れ落ちた。
善徳もぎこちなくなった首を動かして、AKIHIDEの視線を追った。
そこには、倒れた体勢から苦しそうに上半身をあげ、しかし右手にはしっかりとブローニングを構えているHIROの姿があった。
AKIHIDEのウージーがぱらららららと吠えた。意識して撃ったのか痙攣だったのかわからない。ただ、その弾痕の列は見事にHIROの体を
貫通した。血の霧が舞い、HIROの体が半回転しながら跳ねた。その首は、あの首輪の上でちぎれかけていた。
ゆっくりとAKIHIDEの体が前に倒れた。ちょうどKOJIの死体に折り重なる様にどさっと突っ伏し、それきりぴくりとも動かなかった。
今やただ一人、部屋に残された善徳は、ただぶるぶると震えていた。
石の様に硬直した体がぶるぶると震え、その目は変わり果てた姿になった5人の先輩達が倒れる床を眺め回していた。
0057生姜
02/05/08 23:13ID:F.1vN34gしかしそれに続いて、なにやら言い争う声が聞こえてきたので、がばっと身を起こした。
左脇腹と肩口にぎしっと痛みが落ちてきたが、無事な右手を使ってベッドから這い出した。痛む体を引き摺り、なんとかドアの前に立つと、
SHUSEの叫び声が聞こえた気がした。ドアノブに手をかけその扉を押してみたが、それは何かに阻まれて止まった。SHUSEは言った通り、
鍵をかけていったようだ。KOHTAは溜息をついて諦めてベッドに戻ろうとしたのだが、その耳にぱぱぱ、というもはや聞きなれてしまった
音が届いた。
KOHTAの顔から血の気がひいた。襲撃か?いや、それにしては――ともかく、何かとんでもない事が起こってるには違いない。
KOHTAは傷付いた体で何とかバランスをとり、かつて兄、キリトに教えてもらった前蹴りの要領でドアに足を叩きつけた。しかし、ドアは
頑強にその蹴りを撥ね付け、KOHTAはバランスを崩して床に尻餅をついた。脇腹の傷がまた痛みを跳ね上げた。だがそんな場合では
なかった。ぱぱぱ、という音が更に2度続いた。
KOHTAは自分の寝ていたベッドの端を右手で掴むと、それをひきずって一端をドアに当てた。そしてベッドの後ろに回りこんで、力一杯
ドアに向かって叩きつけた。
めきっと音がして、扉がかしいだ。もう一回――ぱん、という今度は単発の銃声が聞こえた。
ベッドが木製のドアにめり込み、半ばから折れ曲がったドアが廊下側へ開いた。
0058生姜
02/05/08 23:14ID:F.1vN34gぱらららららというあのタイプライターの様な銃声が、開け放されたドアからはっきりと聞こえた。
KOHTAが廊下へ出ると、その一番向こうの部屋の僅かに開いたドアから光が漏れ、それが薄暗い廊下に冷たい感じの光の水溜りを作って
いるのが見えた。ドアの前で折れた角材の一つを手にすると、KOHTAはその部屋に向かった。
もう、なんの音もしなかった。一体何が起こったのか?誰かが襲撃してきたのか、それとも――
KOHTAは慎重にそのドアに近づき、僅かな隙間から中を窺った。そして、見た。
その部屋の中央にあるテーブルを囲むように倒れ込んでいる、いくつかの背中。その中で、KOHTAに背を向けて立っている背中。倒れて
いるミュージシャン達の間に、何丁かの銃が転がっていた。床のそこここに飛び散った血の匂いが、つんと鼻をついた。
KOHTAは驚愕に全身を硬直させていた。その何もかもが麻痺する感じは、あの、サイコのSeekの死体を見た時と同じ様だった。
一体――何だ?何が起こったっていうんだ?SHUSEが――待ってろ――そう言ったSHUSEが、倒れている。他にも4人、倒れている。
死んで、いるのか?死んでしまったのか?
KOHTAの目の前にいる善徳は、銃を手にしていなかった。ただそこに、立ち尽くしていた。
0059生姜
02/05/08 23:14ID:F.1vN34gかと思うと、床に転がった拳銃に飛びつきかけた。同時にKOHTAの呪縛も解けた。手にした角材をライブ終了後スタッフにギターを
投げ渡すかの様に、思い切り善徳の目の前に向かって投げた。おかげで体がぎしっと痛み、KOHTAは顔を歪めた。角材は善徳の眼前でばん、
と床に当たって跳ね返った。善徳は両腕で顔を覆って、そのまま血がこびり付いた床に尻餅をついた。KOHTAはその銃の方へ走った。この
訳が分からない状況で、善徳が銃を手にしたら絶対ややこしい事になる。善徳はそれを見て「ひっ」と叫ぶと体を起こし、部屋の奥にある
もう一つの扉から逃げ出した。
かんかんかんと金属的な音が聞こえた。階段、か――?
KOHTAは善徳の消えた後をしばらく見つめていたが、はっと気付くとSHUSEに駆け寄り、傍らに膝をついた。
SHUSEのシャツの胸に、穴が開いているのがわかった。体の下に、血が、広がり始めていた。その目は眠る様に穏やかに閉じられていて、
僅かに開いた口からは――もう、息はなかった。
「あ――」
KOHTAはこのゲームが始まって以来、初めて自分の目に涙が溢れてくるのを感じた。
ほんの数分前に言葉を交わしたのに。
『待ってろ』そう言って、出て行ったのに。
何分後かには、できたてのシチューを持って、戻ってくるはずだったのに。
『良かった、気が付いたんやな』
『お前がそんな奴やないって事ぐらい、俺にはわかる』
目の前の不思議に穏やかな顔が、そう言って笑った顔とだぶった。
0060生姜
02/05/08 23:15ID:F.1vN34g下には血だまりができている。YOKOは背中に数個穴が開いており、HIROは首が――ちぎれかけていた。
全員が、既に息絶えていた。
なんて――なんてこった――
ここにいるのは、全員同じ事務所の仲間なんだ。ストイックな音楽の世界に共に生きる戦友なんだ。まだまだ――これからじゃないか。
これから知る事のできた、喜びや感動がたくさんたくさんあった筈だ。やり残した事だって、いっぱいあっただろうに――突然こんなクソ
ゲームに放りこまれて、こんな所で、なんで死ななきゃいけなかったんだ。
なんでこの人たちが、死ななきゃならないんだ。
KOHTAの目からぼろぼろと涙がこぼれ落ち、SHUSEのシャツの上で小さく弾けた。
「く――」KOHTAは唇を引き結ぶと、先程善徳が手を伸ばしたブローニングを拾い上げた。そして善徳が消えた部屋の突き当たりのドアへ
歩いた。実際に体が傷ついている、という事以上に体が重かった。
銃を握った右手で目元を拭うと、ドアの向こうへ出た。そこはコンクリートが剥き出しになった、円筒状の空間だった。
灯台だ。これが灯台なのだ。中央に太い鉄製の柱があって、それをらせん階段が取り巻いている。
「善徳!」松井は叫びながら階段を上り始めた。「何があったんだ、善徳!」
階段の上、善徳の姿は見えなかった。しかし――「うわあっ」という善徳の声が聞こえた。
KOHTAは眉を寄せ、その足を速めた。脇腹の傷がじくじくと痛み出していた。
再び出血が始まったのか、包帯が湿り始めた気が、する。
0061生姜
02/05/08 23:18ID:F.1vN34gベランダへと続くドアをこじ開け外へでると、高い場所のせいか思ったよりも風が強く吹いていた。目の前の海から潮の匂いが届く。ベラ
ンダを囲む手すりにそって右へと進む。
アホや、俺。いくら焦っていたからと言うて、何で上にきてしまったんやろ。梯子もなにも見当たらへん。これじゃあ追いつかれてしまう。
その時善徳の目に入ったのは、つい今の今まで自分が居た部屋がある建物の屋上だった。
仕方ない。あそこに飛び降りるしかない。
とにかく逃げなくてはならないのだ。捕まったら――殺される!
善徳は鉄製の柵を乗り越え、ベランダのふちに立った。しかし、足元に覗けた視界は、善徳の頭をクラクラさせる事になった。
高い――これは――飛び降りるなんてできる訳がない。
本当ならそんな事ができる高さではないのだ。正常な判断ができる状態の人間なら、まず飛び降りようだなんて思わないぐらいの高さは
あった。ただ、善徳はKOHTAへの恐怖のせいで柵を乗り越えるまでにいたったが。
あかん。それこそ死んでしまう。とにかく戻ろう。もうなんとかKOHTAと戦う方法を考えるしかあらへん。もうそれしか――手に力を込めて、
柵を乗り越えようとした瞬間。一段と風が強く吹いた。
「うわあっ」途端、ぐらっと視界が揺れた。
0062生姜
02/05/08 23:19ID:F.1vN34gふちに引っかかっているだけだった。心臓が物凄い速さで脈をうっている。もう、どう考えても手すりにすら手を伸ばすのは無理だった。
ましてや体を引き上げるなんて――全身が恐怖に震える。
だめや――だめや、こんな時に震えたりしたら・・・手が滑って――
「ひいいっ」
ずるっと右の小指がすべった。次いで薬指。もう後はずるずると全部の指がふちから離れた。そして左手も――
「ああああああああああああ」
絶叫と共に、体が落下するどこか夢の様な感覚が体を支配した。
死ぬっ――
しかし、がくっという衝撃が腕から肩へと突き上げ、その落下はほんの数十センチで止まった。上方へ伸びた左腕を支点に、自分の体が
ぶらぶらと振り子の様に揺れている。
善徳は顔をそっと上げた。そして、柵の向こうから体を投げ出し、右手を伸ばして自分の左手首を掴んでいる人物、KOHTAがそこにいるの
を見た。
「うわああああっ」
もちろん手を離されたら、死ぬ。だが、その手を掴んでいるのはあのKOHTAなのだ。
なんで?何で俺を助けようとするんだ?自分が助かる為に俺を利用するつもりなのか?それとも――ああ、そうか。俺を、自分の手で
殺したいんだ!
「離せ!離せ!」
善徳は叫んだ。もう、僅かにだが残っていた論理的な思考も吹き飛んでいた。
「あんたに殺されるくらいやったらここから落ちて死んだ方がましや!離せ!離せったら!」
0063生姜
02/05/08 23:19ID:F.1vN34gKOHTAの首の包帯が赤く染まっており、血が肩口から流れ出していることに。その血がKOHTAの腕を伝って、自分の左手まで届いている
ことに。
「くっ」KOHTAの顔には脂汗が浮かび、その表情は苦痛に歪んでいる。
そうだ。KOHTAは全身にあれだけの怪我をしているのだ。右腕一本で自分の体重を支え、それを引き上げようとするなら、その傷はKOHTA
にめちゃくちゃな痛みを伝えるに違わなかった。
どう、して?どうしてそんな痛いのに、俺を助けようなんて――善徳の頭から、さっと風が吹いた様に黒い霧が姿を消した。
血染めのナタを握っていたKOHTAの姿が消え、かつての代々木体育館楽屋、楽しげな表情のKOHTAが戻ってきた。
メンバーやマスコミの人間と冗談を言い合っている時の笑顔。リハ中の真剣な眼差し。ファン達に優しく接する場面。
ああ――。善徳はようやく目の前の事態を正確に把握した。
――KOHTAさんや。KOHTAさんが、俺を助けようとしてくれてる。俺、なんで?なんでこの人の事殺さなあかんなんて思ってた?どうして
そんな風に――KOHTAさんはKOHTAさんなのに。
思考が正常に戻ると同時に、自分のとった行動とそれが招いた結果が頭をよぎり、善徳は改めて青ざめた。
俺、本当にどこかおかしくなっていたんや。それで、そのせいで皆が――
善徳の目から涙が溢れ出していた。それを見て、KOHTAが怪訝な表情になるのがわかった。
「俺――俺なんです。あなたを、俺は殺そうとしたんです!」
KOHTAは自分の腕の先をちょっとびっくりした顔で見やった。
0064生姜
02/05/08 23:19ID:F.1vN34gそれをKOJIさんが食べちゃったんです。それでみんな――みんな――」
KOHTAはそれで全て了解した。あのAOI(SHAZNA・G)との格闘の末、その顔からナタを抜き出した場面を善徳は見ていたのだ。多分、
あの後TAKAやSUGIZOが現れた所は見ておらず、ただあの場面だけを。
もちろんあれは事故であったし、ナタを抜いたのだって武器が必要だと思ったからだ。(自分に支給された鍋のフタでは不安だったのだ)
けれど、善徳の怯えきった心はKOHTAを恐れない訳にいかなかった。それでKOHTAを殺そうと毒を盛り、間違えてKOJIがそれを口にし
――誰が毒を盛ったのかと全員が疑心暗鬼になってしまったのだ。
そして毒を入れた張本人、善徳だけが残った。
0065生姜
02/05/08 23:20ID:F.1vN34gKOHTAは左手が使えない為柵を掴む事が出来ないので、体を捻り、右膝を体の下に引き付けて背筋に力が入るような姿勢をとった。体は
悲鳴をあげていたが、それでも諦める訳にいかなかった。
このミュージシャンだけでも助けなければ。もう人が死ぬのはたくさんだった。
KOHTAは善徳の手首を握った右手に力を込めた。しかし――
「だめ、だめや、あかん。」善徳の顔が左右に振られた。「俺のせいで、みんな死んでしまった。みんな、死んで――」
善徳の右手がKOHTAの手をもぎ離すように動いた。せっかくしっかり掴んでいた手が緩み、KOHTAは焦って更に力を込めようとしたのだが
あろうことか首から伝いおりた血が、その手の中でずるっとすべった。
KOHTAの腕から、掛かっていた重さがふっと消失した。自分を見上げる杉本善徳の顔が遠ざかり――
ばたん、と音がして眼下の建物の上、仰向けに善徳が倒れこんだ。その大の字に伸びた体の首が、変な方向に曲がっている。頭の右上辺り
からは、赤いしぶきが葉の形の様に伸びていた。
「あ――――」
KOHTAは右腕をベランダに投げ出したまま、しばらくそれを見つめていた。
0066生姜
02/05/08 23:20ID:F.1vN34g助けられなかった。もう少しだったのに、助けられなかった。これで6人全滅だ。全員、死んだ。なんで?なんでなんだ?こいつらが死んで
、俺だけが生き残って――俺は、この人達のおかげで今こうして生きているのに。
もし、自分がここに運び込まれなければ、6人はこんな目には遭わずにすんだ。これじゃあまるきり死神じゃないか。俺は――
「っ…………」一度緩んでしまった涙腺は、またぼろぼろと涙を溢れさせた。
いくら室内だったとはいえ、あれだけの銃声が響いたのだ。それを聞きつけた誰かがやってくるかもしれないとは思ったが、もはやどうでも
良かった。自分はこのまま殺されても構わない、それよりもう、あの時マシンガン野郎に殺されておけば良かったのだ。そうすれば――
ごめん、SUGIZOさん。俺、約束守れそうにな………
そこで思い出した。どこかで自分を待っているSUGIZOとJ、そしてTAKEOが今頃必死で探しているであろう、兄と潤の事を。
待ってるだけなら良かった。SUGIZOは多分うまくやってくれる。彼がいる限りJも大丈夫だろう。しかし――今二人は何も武器を持って
ないじゃないか。『元の場所だ、KOHTA!待ってるからな!』
あの時、SUGIZOは全ての銃器を自分に預けていった――(そしてその武器を、KOHTAは逃げる途中にどこかへ放りだしてしまった)もし
銃を持った誰かに襲われでもしたら?――もしまたマシンガン野郎に出くわしたら?
0067生姜
02/05/08 23:20ID:F.1vN34gもんじゃない。
KOHTAは善徳に心の中で謝ると、あの血生臭い部屋へと戻った。
部屋には3丁の銃が転がっていた。
ごめんなさい――ごめん。俺は、ここで死ぬわけにいかない。本当にごめん。恨んでくれて構わない。でも俺は戻らなきゃ――
KOHTAは再び溢れ様とする涙を、唇をかみ締めて堪えた。
洗って干してあった自分の服を見つけ、それを着込む。そしてデイパックにありったけ予備の弾薬とブローニングを詰め込むとウージーを
肩から吊り、Cz75をズボンの前に差した。
地図で確認する限り、『元の場所』と隣接するエリアならまだ禁止エリアに入っていない。恐らく、二人はこの辺にいるはずだ。
KOHTAはウージーの引き金に指をかけると、力強く立ち上がった。
0068nana
02/05/09 00:12ID:DKR9r98UKOHTA、ガァンガレー!ヽ(`Д´)ノ
0069NANA
02/05/09 00:16ID:wuAMHno20070Nana
02/05/09 01:14ID:ygeKLNOsKOHTAさん、6人の分まで頑張ってくれ…(ナキ
0071朝ねずみ…(;´゚ω゚) ◆GIREN64s
02/05/09 03:58ID:MfOEqzP2前スレの後半で気付いたんですが生姜サソ、更新の最初のageる時に
メール欄にコメント入れてたんですね。
ちょっくら前スレたどってみるかー。
0072(*゚∀゚) ◆Yusuke32
02/05/09 10:05ID:oZN62Ajc0073Nana
02/05/09 12:33ID:v1.t8B7Iカッコよく書きすぎというか、実際こんなに性格良くないし、他バンド麺にも
嫌われまくってるのに、七原の役はないだろ・・・・と思う。
0074Nama
02/05/09 12:50ID:2F7mqt16せ、切ない…(ナキ コータには6人の分まで頑張
ってほしいです。
生姜さんもファイツ!!
0076Nana
02/05/09 17:54ID:KC.xYVB20077Nana
02/05/09 18:21ID:NXqhMaCc0078Nana
02/05/09 20:07ID:JtN8MrD2コータ頑張ってますねん。
今後の更新が楽しみだ(´∀`)
0079生姜
02/05/09 22:46ID:Zb7stcw6約十分前、島の東北端の方、地図では灯台と示されている場所から激しい銃声が聞こえた。こんな目立った所にキリトや潤が一人で居る
はずもないと、まだ捜してなかった場所だったので、確かめないわけにはいかなかった。
すっかり静まりかえったその場所では、良く見知ったアーティスト達が、まとめて死体になって転がっていた。
SHUSE、HIRO、KOJI、AKIHIDE、YOKO。少し離れた所に、杉本善徳。激しい銃撃戦が繰り広げられていたのだろうか、この惨状は。
彼ら6人は示し合わせて、もしくは偶然に集まって一緒に居たのだろう。そこで誰かに襲撃された――というのが妥当なシナリオか。それとも
彼ら6人の他にも誰かいて、本当は7人だったのかもしれない。そいつが突然裏切って、いや、正体を現したとでも、いうのだろうか?
周りを見渡すと、いくつか疑問に思う点があったのだが、その後の出来事のおかげで、もうすっかり忘れてしまった。死体を確認した後で
さっさとその場を去れば良かったのだが、長い間眠っていなかったせいもあって、おぼつかない足でふらふらと歩いていた。
長い廊下の奥、玄関に誰か立っているのが見えた。
0080生姜
02/05/09 22:47ID:Zb7stcw6容易なことだった。
このシルエット、そして立ち方。そこに居るだけで、何かこう、一種独特の雰囲気を醸し出す存在。
間違いない。キリトだ――。
TAKEOの顔が、こんな惨状の中ぱっと明るくなった。
「キリト!無事だったか!」
一方キリトの方も驚きつつ、それでも彼なりにはにかんだ、嬉しそうな表情を見せた。
「TAKEO――お前こそ、こんな所で会えるなんて」
ああよかった――後は潤を見つけて、KOHTAと合流すれば少なくともみんな助かる。TAKEOが喜んだのも無理はなかった。だが――
「TAKEO、それよりお前、どうしてここに――?」キリトの怪訝そうな声が、幾分探るようだった。TAKEOは純粋にキリトが自分とここで
遭遇できたことを訝しんでいるのだと思い、表情を相変わらず幾分緩めたまま言った。
「銃声が聞こえたからな、お前や潤が襲われてるんじゃないかと思って確かめに来たんだ」
「そうか」そうこたえたキリトの声はいくらか乾燥していて、TAKEOに奇妙な感じを抱かせた。
なんだ?この感じ――それに、わざわざ銃声を聞きつけて来たのなら、キリトも俺と同じように仲間を捜しているところなのだろうか。
それとも――
そこまで思って、ふとTAKEOはキリトの右肩から下げられている、カステラの箱のような黒い物体に気付いた。
その銃口は、真っ直ぐにTAKEOを向いていた。
0081生姜
02/05/09 22:48ID:Zb7stcw6TAKEOが口を開きかける前に、キリトがぽつんと言った。
「TAKEO、アイジが死んだって、本当かな?」
「アイジは――」
言いかけて、TAKEOは何故か一瞬口ごもった。仲間の死を語るのに気が重いというのもあるし、どういう訳かこちらを真っ直ぐに向いてい
るキリトの武器――もし見間違いがないのなら、これはマシンガンという奴ではないだろうか――の銃口に圧迫感を覚えたというのもある。
一体、何のつもりだ、キリト――いい加減、警戒したままでいるのは止せ。これからはもう、一人で周りを警戒する必要はないんだぞ?
そう思いつつも、自称ギャンブラーであるTAKEOの中の第六感は、必死で何かをTAKEO自身に訴えようとしていた。
なんだろう、一体、この何とも言えない嫌な感じ――
「アイジは死んだよ。俺が最期を看取った。あいつは確かに俺の目の前で――」
その刹那。
TAKEOは目を見開くより早く、横ざまに跳び、キッチンの中に飛び込んでいた。同時にシルエットの手の辺りが激しく火炎を噴き上げ、
まだ廊下に残っていたTAKEOの足のすぐ先を弾着の列が通過した。
TAKEOは一気に緊張と驚愕に歪んだ顔で起き上がると、そのドアをばたんと閉め、低い姿勢からノブをひっつかんで、カギをかけた。聞き
覚えのある銃声だった。あぁ――!!!なんてこった!!あの“マシンガン野郎”は、キリトだったんだ。あのものすごい爆発音と、前後
して聞こえた銃声は、間違いない、キリトだったんだ。つまり、GLAYの3人を殺したのはキリトだったと。
夜中にJIROとやりあって逃げた後、背後から聞こえた――つまりJIROを仕留めた銃声も、キリトだったんだ。あるいは、DAISHIとLidaが
死んだときに聞こえた銃声も、キリトだったんだ。
その他にも何度か聞こえたあの銃声の主は――全部、キリトのものだったんだ――。
0082生姜
02/05/09 22:49ID:Zb7stcw6あるいは――その襲撃者本人であるキリトが、舞い戻ってきたのか。
愕然、とした。
まさか、まさか、こんな事があって良いのか――!!!信じられなかった。まさか、キリトが、このゲームに乗ってしまったなんて――
いや、何かの間違いだ。そう思おうとした。だが、状況がそんな暇をTAKEOに与えてくれなかった。
床に膝をついた姿勢のまま、半無意識にTAKEOは右手を背後に回して、再び銃のグリップを握った。YURAが残していったデイパックから
弾は見つかったし、今もフル装弾してあったが、予備のクリップだけは、YURAがポケットにでも入れていたのか、無かった。
コルト・ガバメント、シングルアクションオートマチック。装弾数はたったの七プラス一発だ。弾を詰め替えている余裕はないだろう。
そんなことをしている間に、相手はマシンガンを――あるいはそれ以上にも銃器を持っているのだ、あっさりやられてしまう。
ドア脇にぴったり張りついて、TAKEOは先輩たちの死体が転がったキッチンを見渡した。まずいことに、窓には内側から角材が打ちつけて
あった。あれを引きはがして外に飛び出すのには時間がかかる。灯塔に通じるドアの方も見た。――いや、あれも無理だ。灯台の上は、
飛び降りるには高すぎる。そんなことをしたら、善徳と並んで屋上で日光浴をすることになるのが関の山だ。
いや――今、キリトはどうしようとしているのだろう?足音をひそめてこのドアの向こうに迫っているのか、それとも外でゆっくりTAKEO
を待ち伏せするのか?
いや、キリトにもそんな余裕はないはずだ、早くケリを付けなければ、自分もまた、今の銃声を聞きつけた誰かに背後から狙うチャンスを
与えることになるのだから――ケリ?ケリってなんだ。キリトが俺を殺すっていうのか?――まさか!!
メンバーを殺すなんて、そんな事あっていいのか!!俺は、お前を捜しに来たんだぞ!一緒に助かるために!!!
0083生姜
02/05/09 22:49ID:Zb7stcw6その時、ノブの周りを中心にドアの板が弾け飛んだ(ついでにドアを抜けたその弾の何発かが、ちょうど正面に当たっていたHIROの死体
から、肩と脇腹辺りの肉を引きちぎった)。
ばん、とドアが開いた。
次の瞬間には、白とどす黒い赤の、なんとも言えないコントラストをした固まりが、部屋の中へ飛び込んできた。
一転して起き上がったときには、それはシャツを血で染めたキリトの身体だとわかった。部屋の中のほかの死体などには目もくれず、死角
になっていたドア脇の方へ、まっすぐマシンガンを向け、向けたときにはもう撃っていた。
あぁ――やっぱりキリトはやる気になっているんだ。もう俺が知っているキリトではないんだ。皮肉にも、再びTAKEOに向かってきた弾着
が、TAKEOの冷静さを回復させた。頬を弾丸が掠めたのか、目の前にぱっと血しぶきが上がる。
「PIERROTは永遠に5人でやる」と、言ったのはつい3ヶ月前じゃないか。お前のその言葉は嘘だったのかキリト――。
ふと、引き金を引く指の力を緩めてキリトが言った。
「もう、何もかもどうでもいいんだ。俺の理想は崩れた。だからお前も――殉じて死ね」
「――!!」
TAKEOの目が、見開かれた。
0084Nana
02/05/09 23:29ID:JtN8MrD2タケオサーン!!
0085生姜
02/05/09 23:34ID:Zb7stcw6以上に、深く、暗く、重々しく、思い入れがある物なのか。そこまでなのか。自分の手をおびただしい血で汚してでも、お前は最後の一人
となってPIERROTを自分の手で終わらせたいのか。そんなエゴイズム、そんな物のために、お前は何人もの未来あるミュージシャン達を手に
かけてきたというのか?
勝てるのか? 俺はキリトに。必死で最後の一人になろうとしているキリトに、俺は勝てるのか――?
「うぐっ」
ぱらっという音がしたと同時に、TAKEOの右脇腹に物凄い衝撃が食い込んだ。熱く熱した鉄の棒を無理矢理押し込まれたような――
そう感じると同時に、TAKEOは思わず蹌踉めいて、床に膝をついてしまった。ちらと見れば、右脇腹の肉が三十グラムばかり抉り取られて
いる。コルト・ガバメントを持つ手に力が入らない。
なんてこった――絶望に身を浸食され、それでも未だに目の前の事実が信じられないでいるTAKEOは、半分観念して言った。
「俺を、殺すのか」
「――――」
「アイジが死んで、手間が省けたと喜んだか?」
咳き込むと、右脇腹から全身を駆けめぐって尚あまりある激痛が走った。痛覚神経が一斉に悲鳴を上げる。一瞬、目の前が真っ暗になった。
「俺を殺して潤を殺して――KOHTAも殺すのか?なあ、キリト」
「――黙れっ!」
0086生姜
02/05/09 23:35ID:Zb7stcw6キリトは肩で息をしながら、「くそっ」と銃口を改めてTAKEOに向け直そうとした。
だが、引き金にかける指に、力が入らない。
「キリト――」
「くそっ、なんでだ、くそっ!!」
下唇を噛んで、キリトは視線をうろうろさせた。混乱しているのが、傍目にもよくわかった。
その瞬間、TAKEOは銃口をキリトの腹に向け、コルト・ガバメントの引き金を思い切り引いていた。――全弾打ち尽くすまで、引き続けた。
不思議と、自分がキリトを殺すのだという自覚はなかった。寧ろ――アイジを看取った時と同様、どこかで彼を楽にしてやりたい、とさえ
思っていた。こいつは、狂って苦しんでいる――誰かが、止めてやらないと――
一発ごとにキリトの体が跳ねる。最後に銃の遊底がホールドオープンすると、八発目の薬莢が、からん、と床に落ちて転がった。
キリトの体が、一瞬ゆらめき――そのままゆっくりと前に傾いていく。まるで、スローモーションの映像を見ているようだった。
殺してしまった、俺は、キリトを。自分で助けに来たはずの、キリトを。
TAKEOはぜえぜえと肩で息をしながら、ぼう然としていた。
俺達、またライブやるんだ。アイジの分まで――そんなKOHTAの言葉がふいに脳裏に蘇った。KOHTAごめん――俺、お前の兄貴を殺して
しまった。いくら襲われたからって、俺は、メンバーをこの手で――
0087生姜
02/05/09 23:35ID:Zb7stcw6見れば、キリトがTAKEOの顔をじっと見上げていた。だが、その目には何も映っていないかのようだった。
なんで――なんでまだ――生きている?
TAKEOはその瞬間、何か得体の知れない物を見てしまったような恐ろしさに駆られて、身を竦ませた。
が、同時に、キリトは物凄い速さでがばっと起きあがると、物も言わずに廊下へ通じるドアの方へ走り出していた。
足音が、どんどん遠くなる――
「――」言葉が出なかった。
勿論、TAKEOはキリトがもともとJIROが着ていた防弾チョッキを着込んでいることなど知らない――それについて今考えても仕方のない
ことだが。
ただ、あまりに立て続いた衝撃のせいで、頭の中は真っ白になっていた。
0088生姜
02/05/09 23:35ID:Zb7stcw6やっと見つけて入り込んだ小さな倉庫の片隅で、寒さのためでなく潤は震えていた。
YURAに逃げられて、あれから恰好の隠れ場所を見つけ、それからずっとここに居座っている。
たまに、遠くで銃声が聞こえるだけで、ここは今のところ安全だ。だが途中参加と言うことで他の奴らよりは余分な期間保つ筈の水も食料
も、もう底をつきそうになっていた。
ここに隠れてから、潤の脳裏にはYURAの言った一言がずっとぐるぐると回り続けていた。
――TAKEOさんだったんですよ♪
アイジを殺したのは、TAKEOだと。
まさか、まさか、まさか、ありえない、そんなこと。だけど、俺だってみんなを裏切ったじゃないか。
TAKEOがそうしないと誰が言える?いや寧ろ、TAKEOは裏切った俺達を許せなくて、率先して殺したのかも知れない。YURAもそう言って
いたじゃないか。TAKEOはああ見えて筋道立てたがる奴だ。曲がったことをした俺達が、許せなかったに違いない――
だとしたら、次にTAKEOが狙うのは――俺?
潤の身体はだんだん恐怖で小刻みに震えだしていた。
殺される?殺されるのか?俺は――よりによって、同じバンドのメンバーに?
嘘だろ、ずっと一緒にやってきた、苦労を共にしてきた仲間なのに――
そこまで考えて、潤はまた、同じ思いに捕らわれる。
――TAKEOもキリトもKOHTAも、今の俺と同じ思いを味わったんだ、よな。
そしてその報いとして、アイジは既に死んでしまった。
TAKEOに殺されて!
0089生姜
02/05/09 23:36ID:Zb7stcw6自分に気付かない。
それに、潤の脳裏にはもう一人の人物――キリトのことがあった。
潤はDAISHIとLidaを殺したのがキリトであることを知っている。だが、あの時はまだ自分は監視役の立場だったし、おーおー、キリトやる気
になってるね〜とせせら笑うくらいしかできなかった。
だが。
今こうして立場が変わってみると、何と恐ろしい男なのだろう、キリトは。
躊躇無く殺してしまえる精神の強靱さ。その冷酷な手口。そして、初めに会場を出るときに自分に向けたあの憎悪の目。
彼が自分を見つけたら、どうするか。
ふとその仮定が頭に浮かんで、潤は言葉を失った。
ご丁寧に、自分の参戦は大々的に宣伝されてしまっている(しかも、「自ら進んで参戦の意を表明し」だって?ふざけるな!)
こちらにその気がなくても、向こう(たとえキリトやTAKEOでなくても)は俺がやる気になってると思っているわけだから、自己防衛の
ため、躊躇無く襲ってくるに違いない。
あああ、どうしよう、俺はどうしたらいいんだよ…教えてくれよアイジ。お前は死ぬ前に何を思った?
どうすれば俺はお前のようにならないで済む?
スミスアンドウエスンを握る手が、震えのため感覚を失ってしまっている。
潤は極限の恐怖の中、ただただ、なかなか過ぎてくれない時の中で佇むしか方法がなかった。
0090Nama魂
02/05/10 00:15ID:sxTg6iFo…これからどうなる??ドキドキですわ…。
0091朝ねずみ…(;´゚ω゚) ◆GIREN64s
02/05/10 06:34ID:TgJhXI4Uしっかり防弾チョッキ奪ってたんですか…
>>80の生姜サソ
もう風邪っぴきです。鼻ぐずぐずです。
って、別に訊いちゃいないですか。そうですか。
更新乙です。
0092(*゚∀゚) ◆Yusuke32
02/05/10 10:57ID:bNDdecBYって言うか潤!信じてやってくれ!(ナキ
0093Nana
02/05/10 23:23ID:Z87jj102もう撃たれているから……(ナキ
と個人的にはオモタ。
キリトさんでもやっぱメンバーは殺せないですか…。
生姜さん、お疲れさまです。
0094Nana
02/05/10 23:35ID:ksoJP2HUだから止めて。妄想ヲタウザイ
0095生麦
02/05/10 23:38ID:ksoJP2HU=========このスレッドは終了いたしました===========
0096Nana
02/05/10 23:45ID:UKiD5ry.ナシでしょう。本物の生姜さん、NEVER MIND!
0097Nana
02/05/10 23:45ID:Ui6EQsQw0098Nana
02/05/10 23:49ID:9NZ3wWv.0099山田 ◆RKt/t94s
02/05/10 23:52ID:4TqExscUトリップ付けないんでしょうか・・・?
ヒサシとかグレイのくだり結構すきだなー。
あと無駄にタダシさんの好感度あがった(W
94-95のIDがクソって読めるのよ・・・どーでもいいんだけど。
0100nana
02/05/11 00:07ID:C/6Ndj620101生姜 ◆V0eZdXH.
02/05/11 00:54ID:nrVqS8toいつか、兄がそう言ってため息をついていたことがある。
あれは、いつだっただろう?
デビューして1年位経った頃だっただろうか?毎日が摩擦の連続で、兄は業界関係者を相手に毎日いらいらしていた。
その時、KOHTAは特別何かを思ったわけではない。ただ、そういうこともあるんだろうな、と兄の言うことを上辺だけで聞いているだけに
過ぎなかった。
だが、今になると、白昼夢を見るといった兄の気持ちが少し分かるような気がした。
人間は、あまりに疲弊すると、無意識の内に自己を庇おうとする。
そうしなければ、壊れてしまうから――
あれから失血のためくらくらする意識を必死で保ち、立つのさえおぼつかない足取りで必死で枯れ草の中を用心深く移動するKOHTAは、
大分距離を稼いでからふと突然、草むらの中に転がる死体を見つけた。
倒れていたのはPlastic treeのAKIRAらしかった。らしかった、と言うのは着ていた洋服と髪の色でかろうじて判断が付けるだろうか、という
くらい遺体の損傷(特に頭部)が激しかったからだ。KOHTAはそのあまりの凄惨な死に様に、言葉を失った。もういくつもの凄惨な死に様
の死体を見てきて慣れてきてはいるが、それでも突然遭遇したこの死体を見て、さすがに平静心ではいられなかった。この辺りで、何か
凄まじい戦闘があったのは間違いない。SUGIZOもJも、無事だろうか。果たして、二人に無事に再会できるんだろうか――既に、C=3に
隣接するエリアに入っている。二人が無事なら、そのうち遭遇できそうな物なのだが――
その時、張りつめた状態のKOHTAの靴の爪先がこつん、と何かに触れた。
目を凝らして見ればそれは、AKIRAとは対照的に、綺麗で安らかな表情で死んでいるTADASHIだった。
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