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このプログラムが始まる前夜、河村隆一はとあるビルの地下室にいた。

「はい、わかりました、では早速手配いたします」
甘いマスクをきりっと引き締め、受話器を置くと彼は数多のファンを魅了して止まない魅惑的な笑みを浮かべた。
但しそれは、幾分狂気を帯びていたけれど・・・
「なるほど・・・コマが足りないから仕方ないか・・・。もっとも、僕にしてみればそっちの方がありがたいのだけれどね」
その手には1枚のチラシがあった。
彼がかつてヴォーカルを務めていた伝説のバンド、LUNA SEAが所属していた事務所のイベントの告知用だ。
イベントの名は「SWEET TRANCE」という。
明日、代々木でこのイベントが行われる。
正直、正視に耐えないデブスどもが(それでも彼のファンサービスはいつも完璧だ)全国からそれぞれ思い思いに似合ってもいないロリータ服や自作の雑巾のようなボロボロのコス服を纏って集まってくるが、そんなことはどうでもいい。
河村にとって大切なのは、集まってくるデブスファンどもよりも寧ろ、イベントに名を借りて大勢の他事務所のアーティスト達を呼び寄せる大義名分が出来ることだ。
「くっくっくっくっ・・・何も知らないでキミたちは集まるんだよ、そう、殆どがもう2度と音楽をやれなくなることなんて知らないでね・・・」
河村の顔が狂気に歪む。
「天才は僕一人で充分なのさ」

ヴィジュアル系バンド界に産声を上げた深い闇・・・
この黒よりも暗い闇の中に、それぞれの人生が飲み込まれていく。

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