●☆●ヴィジュ板バトルロワイヤル●☆●
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0001バトル開始
01/12/22 14:41ID:/69VSRENもちろん、そこは以前来た時と変わらない日本武道館であったのだけれど、
何かがおかしかった。何かが違っている。
すぐに、ガクトはその原因に気づいた。窓の外はすでに日が暮れ、闇に包まれていた。
武道館内のスタンド席にもアリーナにも観客らしき人間は誰一人座ってなかった。
さっきまでリハーサル中であったはずなのに・・・
0002バトル開始
01/12/22 14:42ID:/69VSREN先ほどまでのガクトと同じように床に伏して眠っている。
そのなかには、ガクトの親友でもあるシャムシェイドのヒデキの姿もあった。
俺、どうしたんだろう? ガクトがそう思ったとき、武道館内に大きな音がした。
皆、眠りから覚めたばかりらしく、ガクトと同様に周囲を見回している。
一体、何が起きたのだろう?何故俺達は、ここに居るのだろう?
誰もが困惑と不安を隠しきれずにいた。
0003バトル開始
01/12/22 14:43ID:/69VSRENヒデキは、目に涙を溜めて不安を訴えた。
ガクトは「大丈夫だよ」と言ってあげたかったが、出来なかった。
自分自身、現状が怖くてたまらなかった。
そう、嫌な予感がする。
何度もニュースで聞いた、『あれ』の状況によく似ている……
突然、施錠されていたアリーナの扉が、開いた。
そして、銃を携えた兵隊の様な連中が十数人、入って来る。
兵士達はステージの前に整列すると、銃を歌手達に向け、構えた。
いつでも発砲できる体勢だ。
まさか……
コツ、コツ、と、兵士達とは違う、軽い足音が聞こえた。
0004バトル開始
01/12/22 14:47ID:/69VSRENキリトは教壇に立つと、いつもと変わらぬ屈託のない笑顔で、話し始めた。
「元気ですかーーー!まさかお前らに集まってもらう事になるとは、この俺も想像できなかったぞー!」
のいつにも増した高慢な口調だ。
しかし、今日は普段にも増して、自信に満ちているようだ……ガクトにはそう映った。
そしてキリトは、アリーナ内をぐるりと見回すと、衝撃的な一言を言い放った。
「今日はこれより、諸君に殺し合いをしてもらう!」
会場内の全ての空気が止まった。
「お前らは、今回の『プログラム』に選ばれたのだよ!!」
ガクトの予感が、的中した。
ヒデキは、ギュッとスガクトの腕を掴んで、震えていた。
誰かが、うっ、とうめいた。
0005バトル開始
01/12/22 14:54ID:/69VSRENそれは、魔の法律。
正式名は『歌手助成特別法』という。
近年、ヴィジュバンドではパクリが激増の一途を辿っていた。
何故、こんなにも簡単にパクリをしてしまうのか?
何故、互いの理解を深めようとせず、安易なパクリに走ってしまうのか?
……そして制定されたのが、この法律だった。
真に「歌って表現する強さ」を持ち合わせた人間だけを選抜する法律。
ヴィジュアル系バンドのあらゆるミュージシャン、アーティストの中から無作為抽出され、最後の一人になるまで殺し合いが行われる。
しかし、このプログラムが実行に移されることはゼロに等しいと言われていただけに、ミュージシャンたちはすぐには信じられなかった。
「冗談なら、やめろ!糞ぶっ掛けるぞ!」
聞き取り辛い声が響いた。
インディーズ界一の権力者ともいえる、藤田幸也だ。
「俺は天下の藤田幸也だ!なんでこんなプログラムに参加しなくちゃいけないんだ!」
幸也は嘲笑を込めて異議を唱えた。
そもそも、このプログラムの指揮権がキリトにある事に、理解が出来なかった。
普通なら、政府や国家委員会の担当者が赴いて、ここで説明するだろう。
ここに居る兵士達も、おそらくキリト私設軍やSPの面々。
驚かせておいて、実はパーティーでも開くのだろう……そう思っていた。
しかし、現実は残酷だった。
「幸也!テメーはまだ信じられない様子だな。ならば、信じられる物を用意してやろう!」
キリトは表情を変えずにそう言うと、指をパチン、と鳴らした。
教室の扉が開き、『何か』を載せたベッドが運び込まれて来る。
ビニールシートの下の『何か』からは、少し生臭い匂いがした。
「見せてやれ」とキリトが言うと、側近のコータがそのシートを外した。
一瞬の静寂。
そして次の瞬間、幸也が絶叫した。
「……ヨシキさーーーーーん!!」
0006バトル開始
01/12/22 14:59ID:/69VSRENそこに有ったのは、あの偉大なヨシキの『なれの果て』だった。
まるで操り人形を投げ捨てたかの様に関節は捻じ曲がり、
頭蓋骨は陥没し、両目も潰されていた。
「ヨシキさん!ヨシキさああああんっ!!」
幸也は泣き叫びながら、ヨシキの亡骸に近付こうとする。
しかし次の瞬間、兵士達が一斉に幸也に向け、銃を構えた。
それに気付いたBLUEの2人が、慌てて幸也を引き止める。
「幸也さん、駄目だ!今行ったら、幸也さんも殺されちゃうよ!」
「でも!ヨシキさんが!」
幸也はその場にヘナヘナと座り込むと、声をあげて泣いた。
泣くことしか、出来なかった。
そしてその光景は、バンドマン達に現実を認識させるのに、充分だった。
キリトが説明を続ける。
「ヨシキは、このプログラムを反対しやがって!コノヤロウ!」
死臭が室内を満たしてゆく。
それはまさしく、絶望の臭いでもあった。
0007バトル開始
01/12/22 15:01ID:/69VSRENいわゆる『宣誓文書』だ。
「……本プログラムは、日本国政府の完全管理下のもと、ヴィジュアル系バンドの代表的存在である
キリトによって執り行われるものとする旨を、ここに通達する……」
宣誓文書など、誰も聞いてはいなかった。
ただ、殺戮の海に放り込まれた事実を受け止める事しか、出来なかった。
自分達を庇ってくれた(であろう)ヨシキが、あっけなく殺された。
こんな理不尽な殺人さえ、合法だという。
いや、理不尽な殺人劇は、これから始まるのだ。自分達の手によって……
どうする?どうすればいい?ここから逃げ出す方法は無いのか?
誰もが、戦うことなく生き延びる方法を自問自答していた。
と、その時、キリトが宣誓文書を読むのをピタリと止めた。
「……どうやら、俺の話を聞いてくれない人が、いるようだなーコノヤロウ!」
0008バトル開始
01/12/22 15:08ID:/69VSRENバンドマン達は、恐る恐るキリトの視線の先を辿った。
キリトが見ていた先……そこには、ラクリマのSHUSEとマシンガンズのノイジーの姿があった。
SHUSEはまだ睡眠薬が効いているらしく、眠ったままだった。
それをノイジーが必死になって起こそうとしている。
「……SHUSE、起きろよ。寝てる場合じゃないんだってば……」
ノイジーは、キリトを刺激しないように、小声で呼び掛けながらSHUSEの肩を揺すっていた。
その呼びかけに応じたのか、SHUSEがようやく目を覚ます。
「……あれ?ノイジー。おはよう!どうしたんだよ?」
まだ現状を把握していない彼の一言が、会場中に響き渡った。
誰かの呟く声がした。
「……だめっ!」
次の瞬間、キリトは小さなリモコンの様な物を取り出すと、SHUSEに向けてそれを「ピッ」と鳴らした。
0009バトル開始
01/12/22 15:12ID:/69VSREN何処からともなく、アラーム警告音が聴こえる。
「何だよ、目覚まし時計をセットしてるのか?
でもおかしいな。外はまだ、夜じゃねぇか!俺は眠いんだよ馬鹿やろう!」
まだ寝ぼけているのか、SHUSEは緊迫した現状に気付いていなかった。
「なに言ってんだよ、SHUSE!今はそれどころじゃ……SHUSE?」
ノイジーは、異変に気付いた。
警告音の発信元が、異常に近いのだ。
しかもそれは、SHUSEの体内――頭の中から聴こえている。
「まさか……キリト!SHUSEに何をしたんだよ!?」
ノイジーの追及に、キリトは落ち着いた調子で答える。
「SHUSEに限った事ではない。君達には、眠っている間に、『装置』を埋め込ませてもらった。
なあに、最新技術を駆使したマイクロサイズの物だ。違和感は感じないだろう?
それから、これには位置特定の為の発信機と、自爆装置がセットされている。
指定の制限時間をオーバーしたり、プログラムの進行を著しく妨害した場合には……」 「場合、には……」
ノイジーは、唾をゴクリと呑んだ。まさか……まさか、そんなことって……
そして、一番聴きたくない言葉が、キリトの口から発せられた。 「爆発する」
0010バトル開始
01/12/22 15:17ID:/69VSREN警告音の間隔が短くなってゆく。
悪魔のカウントダウンに、静かだった会場が再びざわつき始めた。
しかし、当のSHUSE本人は、まだこの危機的状況に気付いていなかった。
「みんな起きているのかよ!うるせえよ時計……誰かとめろよな!ラクリマが一番ロックなんだよ!」
ノイジーはパニック寸前だった。
親友の命が、あと数秒で消えてしまうかもしれない。
しかし、自分にはそれを止める術が無い。 「しゅ……SHUSE……」
ノイジーは、とっさにSHUSEの両手を強く握った。 涙がこぼれ落ちて、止まらない。
その涙が、SHUSEの頬へと落ちて行く。「ずっと……ずっと、友達だよ……」
まだ通常の判断力が戻っていないSHUSEには、何故ノイジーが泣いているのか、解らなかった。
しかし、「友達だよ」という言葉だけは、はっきりと聞こえた。
「おい、なに言ってんだ!俺とお前はずっと親友だぜ!」
SHUSEは、いつものように微笑んだ。 その直後――
ぱんっ、という音とともに、SHUSEの側頭部が弾けた。
ノイジーの顔が返り血を浴び、真っ赤に染まる。
瞬間、会場中が再び悲鳴に包まれた。
人の命が奪われた瞬間を目撃した以上、それはヨシキの時とは比較にならない状況だった。
「お前ら!静かにしないか!」
キリトの忠告も、もはや届かない。
ある者は泣き叫び、ある者は気を失い、ある者は何度も嘔吐を繰り返した。
そんな混沌とした中、ノイジーはSHUSEの手を握ったまま、動かなかった。
いや、動けなかった。
呆然としたまま握っているSHUSEの手には、まだ、温もりが残っていた。
「まだあったかいぜ、SHUSE……」
0011バトル開始
01/12/22 15:23ID:/69VSRENキリトの号令が飛んだ。
それに合わせて、兵士達が一斉に床へ向けてマシンガンを発射する。
ただならぬ轟音とともに、床面のコンクリートが削られ、破片が宙に舞う。
圧倒的な『実弾』の恐怖。
その威力の前に、泣き叫んでいたバンドマン達の動きが一瞬にして止まった。
そして、数秒間の掃射が終わる直前――
床に跳ね返された弾の一発が、ルナシー真矢の左膝をかすめた。
「痛ェ!」
真矢は傷口を押さえ、その場にうずくまった。
「――真矢さん!!」
その様子を見たプラトゥリ竜太朗が、慌てて真矢のもとへと駆け寄る。
0012(=゚ω゚)ノキーだよ。 ◆wCHtvyEU
01/12/22 15:24ID:XUr1HT+HTETSU69VSヌイグルミ(ノーブル)?
0013バトル開始
01/12/22 15:25ID:/69VSREN竜太朗はそう言うと、ポケットからハンカチを取り出し、それを真矢の膝へと巻き付けた。
手際の良い応急処置だ。
「大丈夫だ。かすり傷だから……ありがとう」
真矢は苦痛に顔を歪めながらも、竜太朗に礼を言った。
確かに、弾は膝をかすめただけだった。
あと数ミリずれていたら、確実に骨を砕き、歩く事さえ出来なかっただろう。
しかし、弾を受けた際の痺れと出血は、普段の『かすり傷』とは比較にならないものだった。
場内が『一応の』平静を取り戻した所で、再びキリトが話し始める。
「まったく、お前達は……これ以上、俺の手で参加者を減らしたくない。
しかしまぁ、驚くのも無理はねえか。 」
0014バトル開始
01/12/22 15:28ID:/69VSREN自分は『プログラム』に選ばれた。
間違いなく、『真のバンドマン』をめぐる戦いだ。
ここにいるバンドマン達と、命を賭けて。
テレビで見慣れた人や、親友……
今、隣で震えているヒデキとも、戦うかもしれない。
そんな、そんなこと……わからない、どうすればいいんだ……
冷静な判断をする為に、現状を整理するつもりだった。
しかし、考えれば考える程、気持ちは混乱してゆく。
頼む、誰か、助けて……
だが、そんなガクトの願いを無視するように、キリトの宣誓が響き渡った。
「ではこれより、プログラムを開始する!
制限時間は三日間。日本武道館半径10キロ、都心全域が戦闘エリアとなる。
勿論、市民の退避は完了している。
お前達の両親にも既に連絡済だ。後悔の無い様、思う存分やりたまえ!」
0015バトル開始
01/12/22 15:36ID:/69VSRENコータが用意した箱の中にキリトが手を入れ、1枚の紙を引く。
「それでは、最初に出発する者の名前を発表する……ジュラシックのユーキくん」
全員の視線が、彼に集中する。
「は、はいッ!」
ユーキは、上ずった声で返事をし、立ち上がった。
そして、顔を強張らせながら会場の出口へと進む。
「私物の持参は自由だが、くれぐれも『お荷物』にならないよう、注意しろ。
それから、出口で支給するデイパックには、武器がランダムで入っている。
有効に活用し、円滑にプログラムを進めて貰いたい。以上だ」
ユーキは出口でデイパックを受け取ると、会場内へ向き直り、深々と一礼をした。
そして、一目散に外へと駆けて行く。 次の参加者の出発は2分後だ。
皆一様に怖がっていたが、中には「やる気」になっているバンドマンがいるかもしれない
0016バトル開始
01/12/22 15:39ID:/69VSREN「それでは、次、……竜太朗くん!」
竜太朗は「はいっ」と返事をして立ち上がったものの、一歩が踏み出せない。
「大切な人達」のことが気になって、傍に居たくて、仕方なかった。
幸也は泣き止んでこそいたものの、ずっと俯いたままだ。
そして真矢は、傷を負った左足を、ずっと押さえている。
どうしよう……ふたりを放って行くなんて、出来ない……
迷う事が許されない状況の中、竜太朗は出発すべきか迷っていた。
その時、なかなか動こうとしない竜太朗に気付いた真矢が、微笑みながら声を掛けた。
「竜太朗……俺なら、大丈夫だから……」
0017バトル開始
01/12/22 15:43ID:/69VSREN真矢とは離れたくない。でも、離れなければならない。
そして真矢の言葉は、別離への選択を迫る言葉。
わかってる。わかってるけど、その一歩がどうしても踏み出せない。
「竜太朗、早くしろ!」 キリトは冷徹に、出発を促す。 「はい……」
竜太朗は力無く答えた。しかし、まだ歩き出す事は出来ない。
その時――
真矢がスッと立ち上がると、突然、竜太朗を力いっぱい抱きしめた。
「し、真矢さん……?」
竜太朗は動揺を隠せなかった。「真矢さん、どうしたんですか?急に……」
そして真矢は、いつもにも増して、優しく語り掛ける。
「竜太朗……諦めちゃ駄目だ。諦めたら、すべてがそこで終わってしまう……」
「真矢さん……」 竜太朗の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
真矢は抱きしめた両手をほどくと、じっと竜太朗の顔を見つめる。
竜太朗を見る真矢の表情は、普段と変わらない、優しい笑顔だ。
(どうして真矢さんは、そんな優しい笑顔を見せるんだ?
三日後にはもう、二人共この世にいないかもしれないのに……)
0018バトル開始
01/12/22 15:45ID:/69VSREN「よくわからないけど……必ず、何か方法があるはず。みんなが助かる方法が……
だから、そんなに悲しい顔をするな。 」
今の竜太朗に、笑顔を作る事は不可能だった。
だが、真矢の言わんとすることは、しっかりと伝わっていた。
「わかりました……幸也さんにも、一言、かけてあげてください」
竜太朗はそう言うと、出口へ向かって歩き始めた。
そしてデイパックを受け取り、それを確認すると、夜の闇へと走り去って行った。
0019バトル開始
01/12/22 15:49ID:/69VSRENしかし、ノイジーは何の反応も示さない。
あの時からずっと、SHUSEの手を握ったままだ。
「ノイジー、早くしろ!コノヤロウ!このままだと、プログラムの進行を阻害するものとして、
お前を排除するぞ!コノヤロウ!」
キリトから最後通告が発せられた。
それに反応するように、ようやくノイジーが動き出す。
ノイジーの手から、SHUSEの手が離れた。
「SHUSE……じゃあな、行って来る。待ってろよ……」
ノイジーは俯いたまま、返り血を拭う事もせず、ゆっくりと立ち上がる。
そして、会場の出口ではなく、キリトの居るステージへと向かった。
数秒後―― パシッ、
ノイジーの平手打ちが、キリトのあごを捉えた。
兵士達が一斉にノイジーに向け銃を構えるが、キリトがそれを制止する。
キリトは叩かれたあごを押さえつつ、じっとノイジーを見た。
ノイジーの瞳は、さっきまでの無気力さが消え、怒りに満ちていた。
「絶対に……絶対に、許さねえぞ!」
ノイジーはそう言い放つと、足早に出口へと向かう。
0020Nana
01/12/22 15:52ID:lqKKQkVH( ´・ω・) < 二度寝して気付いたら夜だったよ、ショボーン。
(つ旦と) \_______
と_)_)
0021バトル開始
01/12/22 15:52ID:/69VSREN出口へ向かう途中、再びシートが被せられたヨシキの死体の前で、ノイジーは足を止める。
ヨシキはノイジーにとって尊敬する先輩であった。
この短い時間の間に、自分の好きな人が相次いで去って行く。
しかも、明らかに『見せしめ』として殺された……
具体的な策がある訳ではなかった。
しかし、ノイジーの心の中には、キリトに対する復讐心が沸々と湧き上がっていた。
「ヨシキさん……幸也さんを、守ってあげてくれ」
ノイジーはそう呟くと、デイパック受け取って教室を去って行った。
0022バトル開始
01/12/22 15:59ID:/69VSREN順調といっても、”竜太朗やノイジーと比べたら”というレベルではあったが。
目眩を起こして倒れていたカリガリの青は、歩くことがやっとだった。
藤田幸也も、真矢に促され、力無く会場を後にする。
その真矢も、左足を微妙に気にしながら、出発して行った。
一人、また一人と、会場から参加者が消えて行く。
そして、ガクトの番がやって来た。
勿論、行きたくなんかない。
しかし、この場で抵抗しても無駄なのは判っている。
(行くしか、ないんだな……)
名前を呼ばれ、立ち上がろうとするガクト。
と、そのガクトの右腕を、ヒデキが掴んだ。
「ガクト……大丈夫だよな。みんな、人を殺したりなんか、しないよな……」
ヒデキの顔は蒼ざめ、恐怖と不安に震えている。
「ヒデキ……大丈夫だよ」
ガクトは優しく語り掛けた。
怖がりなヒデキの心を、少しでも落ち着かせなければ……
「みんな大丈夫。そんな簡単に、人を殺すことなんて――」
ガクトがそう言い始めた瞬間だった。
0023バトル開始
01/12/22 16:02ID:/69VSREN乾いた銃声が、外から聞こえてきた。
残っていた全員が、ビクッ、と肩を震わせる。
誰もが信じられなかった。
(まさか、本当に「やる気」になっている奴がいるの!?)
「嫌だー……こんなの、嫌だーーー!!」
ヒデキは耳を塞ぎ、激しく首を横に振る。
ガクトの言葉に、わずかでも希望を持とうとした矢先の銃声。
容赦ない現実が、ヒデキの希望を一瞬にして打ち砕いていった。
「ヒデキ……正面ゲートで待ってるから!」
ガクトはそう言い残すと、デイパックを受け取り、会場を出た。
恐怖に震えるヒデキを、このまま放っておくことなど出来ない。
だからといって、迂闊に外で待ち合わせるのは危険だ。
さっきの銃声は、入り口の辺りから聞こえてきた。
標的にされる可能性が高すぎる。
次に出発するのは、ヒデキ。
武道館入り口付近の控室辺りで待っていれば、安全かつ迅速にヒデキと合流出来る筈。
靴だけ取りに行って、裏口から出よう……
ガクトはそう考えた。
しかし、それが悲劇の始まりだとは、この時、ガクトは知る由も無かった。
0024nana
01/12/22 16:05ID:irxH9g/L0025バトル開始
01/12/22 16:05ID:/69VSREN武道館の入り口までの十数メートルの間にも、動くものは見当たらない。
ガクトは慎重に周囲を警戒しつつ、入り口に一番近い自分とヒデキの控室へ向かった。
今自分たちが履いていた靴は、普通のものではなくてステージ専用であった。
まずヒデキの靴を回収し、次いで自分の靴を回収すべく、下駄箱へ。
だが、自分の靴に手を伸ばした時、ヒデキはふと思った。
そうだ。
何故わざわざ、靴を取りにここへ来たのだろう。
今は非常時だ。
小学校の防災訓練の時だって、上履きのまま外へ出るのが当り前の筈。
悠長に靴を履き替えて逃げる人なんて、居やしない。
一刻を争うというのに、どうして、こんなことを……
0026バトル開始
01/12/22 16:07ID:/69VSRENあ・・・やめたほうがいいですかね?スミマセン・・・
0027Nana
01/12/22 16:07ID:cOZhDaDR0028nana
01/12/22 16:08ID:irxH9g/L違う違う。ごめんよ。私もネタできたら参加するよ。
読んでて楽しいから頑張って。
0029Nana
01/12/22 16:09ID:cOZhDaDR0030バトル開始 続き
01/12/22 16:10ID:/69VSRENそれは、参加者の誰もが同じだった。
火事や地震と違い、殺し合いという状況に備えている人間などいない。
しかも、今まで出発した参加者には、主催者であるキリト以外への殺意は、感じられなかった。
誰も人を殺すなんて、出来やしない。
とりあえず外へ出れば、何とかなるだろう。そう思っていた。
だが、そんな淡い期待は、さっきの銃声によって打ち消された。
信じたくは無いが、既に殺し合いは始まっている。
0031Nana
01/12/22 16:10ID:yKLligWG0032亀仙人(´ω`。) ◆pz2QKAME
01/12/22 16:10ID:UEP2rsyV進むうちに進行が楽しくなってきたので見守っています。
0033バトル開始
01/12/22 16:11ID:/69VSRENガクトは心の中でそう呟くと、控室内の下駄箱から自分の靴を取り出した。
その時だった。
カチッ、という金属音とともに、何かが引っ掛かる感触が伝わって来る。
靴や下駄箱の構造上、引っ掛かる物があるとは思えない。
嫌な予感がした。
暗がりの中、ガクトは下駄箱の中を覗き込む。
そこには、ガムテープで固定された丸い物体が、一つ。
そして靴には針金が巻かれ、その先にはピンを思わせる金属部品が結び付けられていた。
――手榴弾だ!
しかも、靴を取り出したことにより、ピンは外れている。
仕掛けた人物を詮索する時間など無い。
ガクトは全速力で、その場から立ち去るべく走り出した。
だが、運命は脱出を簡単に許してはくれない。
走り出したスガの眼前に、突然、人影が現れた。
0034(=゚ω゚)ノキーだよ。 ◆wCHtvyEU
01/12/22 16:13ID:XUr1HT+Hなんか微妙だ(爆
0035バトル開始
01/12/22 16:15ID:/69VSREN足がもつれ、ガクトは廊下へと倒れ込む。
バッグと靴が、勢い良く床を転がって行った。
……誰だ!?
ガクトは下駄箱の方向へと振り返る。
そこには、虚ろな目をした一人のバンドマンが、ぼんやりと立ち尽くしていた。
イルミナのナオだ。
今のナオには、普段の感じが微塵も感じられない。
当然だ。
今は殺人ゲームの真っ只中なのだから。
……だが、それ以上に、今のナオの様子がおかしい。
彼は腹部を手で押さえている。
そしてその手は、赤黒い血液に濡れていた。
「ガクト……俺、撃たれちゃったよ。どうしよう……」
ナオは、声を絞り出すようにして、語り掛ける。
その声は震え、息も荒い。
どんな素人が見ても、致命傷を負っている事は明白だった。
(どうしよう、って……)
ガクトは答えられなかった。答えられる筈もなかった。
手榴弾を発見し、そして傷付いたナオと遭遇するまで、ほんの数秒間。
突然すぎる恐怖と衝撃の連続に、ガクトの思考回路はパニックに陥っていた。
0036バトル開始
01/12/22 16:17ID:/69VSRENガクトは咄嗟に叫んだ。
そう、手榴弾のピンを引いてしまっている。
もう時間が無いのだ。
一刻も早く、ここから離れなければ――
そう思い、ガクトは体を起こそうとした。
その瞬間だった。
大音響とともに、ナオの背後の下駄箱が吹き飛んだ。
強力な爆風とともに、埃や破片が彼ら達に降り注ぐ。
そして、その中でもひときわ大きな金属片が、ナオの後頭部に突き刺さった。
「ぐっ」と、ナオは小さなうめき声をあげる。
それが、彼の最期の言葉だった。
倒れ込み、動かなくなったナオの体が、みるみる血だまりに沈んでゆく。
ガクトは震えながら、その血だまりが広がってゆくのをじっと見つめていた。
そうする事しか、出来なかった。
0037バトル開始
01/12/22 16:19ID:/69VSREN(俺が、不用意に靴を取りに来たから?)
(俺が、手榴弾のピンを抜いてしまったから?)
(だから……ナオは死んでしまったのか?)
ガクトの心の中に、自責の念が渦を巻く。
あの爆発以前に、既にナオは致命傷を受けていた。
自分が何もしなくても、彼は助からなかっただろう。
しかし、直接の死因は、あの爆発にある。
防ぐ事が可能だった筈の、あの爆発。
人を殺した
人を殺した
人を殺した
同じ言葉が、何度も何度もガクトの頭を駆け巡る。
「違う!あれは……あれは……」
ガクトは頭を抱えて、泣き叫んだ。
気が変になりそうだった。
「ガクト、しっかりしろ!」
その時、ヒデキの声がした。
0038nana
01/12/22 16:21ID:irxH9g/L0039バトル開始
01/12/22 16:21ID:/69VSRENいつしか、ガクトの傍らにはヒデキが寄り添っていた。
「ヒデキ……」
「ガクト……落ち着こうよ。事故だったんだろ?ナオくんには悪いけど……運が、悪かったとしか……」
と、ここでガクトは今の状況に気付いた。
自分は今、ヒデキに慰めてもらっている。
武道館内の時とは、全く逆の立場になっているのだ。
(そうか……俺、強がっていただけなんだ……)
必要以上に張りつめていたものが、段々と緩くなってゆくのを感じた。
緊迫した状況に変わりは無いが、ガクトは少しずつ、冷静さを取り戻してゆく。
「ヒデキ……ありがとう」
ガクトは靴を天山に渡すと、自分も靴を履き替え、バッグを拾い上げた。
あと30分弱で、ここは立入禁止エリアになってしまう。
早くここから立ち去らなければ……
しかし、ここでまた新たな訪問者がやって来た。
「おいおい?何の騒ぎだ、これは……」
0040バトル開始
01/12/22 16:28ID:/69VSREN大佑は何故か、バッグ以外の荷物を沢山抱えている。
「大佑さん……どうしたんです?その荷物」
ガクトは目を丸くした。
確かに、私物の持参は自由というルールだ。
しかし、会場を出た時の大佑は、バッグ以外の物は持っていなかった。
「ああ、これ?ちょっと自分の控え室へ寄って、取って来たんだよ」
倉庫から取って来た荷物――
その中には、マイクやブリキのチャンピオンベルトなど、持てる限りのガラクタが詰まっていた。
大佑は苦笑する。
「どうせなら、最後は自分の好きな事、やりたいしな……」
最後は――
とてつもなく、重い言葉だった。
大佑に戦う意思が無いのは明白だが、この言葉は、
彼が生き残る事を放棄するとも取れるものだった。
「大佑さん……あなた、生き残りたくないんですか?『真のミュージシャン』になりたいと、思わないんですか?」
ガクトが問いただす。
しかし、大佑の回答は実にあっさりしていた。
0041バトル開始
01/12/22 16:30ID:/69VSRENでも、人殺しをしてまで、強くなってもな。後味悪いだろ。そんなとこさ。 」
「でもな……」
大佑はそう言うと、ナオの亡骸に近付き、その体からバッグを引き剥がした。
「やっぱり無駄死にはいやだな。それに……」
そして大佑は、ポケットから拳銃を出し、構えた。
「むやみに人を信じたら、負けだぜ!」
0042バトル開始
01/12/22 16:33ID:/69VSREN数発の銃弾が、ヒデキの体を貫いてゆく。
ヒデキは、痛みを感じるより早く、着弾の衝撃によって床へと倒れこんだ。
「――ヒデキ!!」
ガクトは信じられなかった。
少なくとも、話していた時の大佑の雰囲気からは、この状況は予測出来なかった。
だが、これは現実だ。
現にヒデキは、大佑の放った銃弾を受け、血にまみれている。
次いで大佑は、ガクトにも銃口を向けた。
手を伸ばせば届く程の至近距離だ。
外すことは有り得ない。
ガクトは咄嗟に、自分のバッグを大佑の手めがけて振り回した。
大佑の手からグロックが弾かれ、床を転がってゆく。
その隙に、ガクトは倒れたヒデキの手を引いて、物陰へと隠れた。
「ヒデキ!しっかりしろ!」
ガクトは、苦痛に喘ぐ中居に呼び掛けながら、バッグの中の武器を探す。
大佑は銃を拾い、再び攻撃して来る筈だ。
時間稼ぎで構わない。大佑を足止め出来る武器を……ガクトは祈った。
大佑は廊下の端まで転がった銃を拾い上げると、ガクトたちが隠れた物陰へと歩を進ませる。
0043バトル開始
01/12/22 16:36ID:/69VSREN控室の中で身構えているガクトと、廊下の角から銃を打ち鳴らす大佑。
ガクトは銃撃の恐怖に震えながら、手にした武器を天井へと掲げた。
パンッ!パンッ!パンッ!
自分の物とは違う銃声に、大佑は素早く身を隠した。
5、6メートルほどの廊下の間を双方が対峙する。
大佑がガクトの出方を警戒している一方、ガクトの心は更に不安を増していた。
どうにか大佑を牽制する事は出来たが、それとて一時的なもの。
どうすれば……どうすればいい?
ガクトの手中にあるパーティー用のクラッカーは、ほんの少しだけ、熱かった。
0044バトル開始
01/12/22 16:38ID:/69VSRENガクトは大佑に呼び掛ける。
時間稼ぎをしたいという思惑もあった。
だが、大佑の行動に、どうしても納得がいかなかった。
理由を聞きたかった。
「死にたくないから、やっただけだ。……ナオを殺したんだろ!?
あいつを殺したお前達を、信用できるわけがないだろ!」
大佑は強い調子で言い返した。
誤解している。
「違う!ナオくんを撃ったのは俺達じゃない!それに、あの爆発も偶然……偶然だったんだよ。信じろ!」
だが、大佑はガクトの弁明に耳を貸す事はしなかった。
「言い訳なんか聞きたくない。理由はそれで充分だろ……」
大佑が動き出した。
一歩ずつ、足音が近付いて来る。
0045バトル開始
01/12/22 16:40ID:/69VSRENもうクラッカーでは誤魔化せない。
今度こそ、武器らしい物が入っていますように……ガクトは祈った。
だが、祈りは届かなかった。
ガクトが手にした武器――それは透明プラスチックで成型された水鉄砲だった。
勝負にならない。
段々と大佑の足音が近付くなか、ガクトは今度こそ死を覚悟した。
ここでヒデキと一緒に殺される。
嫌だ。嫌だけど……
ガクトは生き残る事を諦めかけてゆく。
しかしその時、意外な声が玄関に響き渡った。
「お前達!道場内での戦闘は止めろ!コノヤロウ!」
0046バトル開始
01/12/22 16:42ID:/69VSREN「まったく、困った野郎どもだ……ここには大会本部が設置されている。
これ以上戦闘を続けた場合、プログラムの進行を著しく妨害したものとして……」
そしてキリトは、『あの』リモコンをポケットから取り出し、掲げる。
思わぬ水入りだった。
大佑は悔しそうに唇を噛む。
そしてガクトは、ほっと胸を撫で下ろした。
とりあえず、差し迫っていた危機は回避出来た。
しかし、決してプログラムから解放されたわけではない。
撃たれたヒデキの状況も、予断を許さない。
――と、ここでガクトはヒデキの異変に気付いた。
さっきまでの苦しそうな息遣いが聴こえない。
何事も無く、静かに眠っている様に見える。
いや、ヒデキは寝息さえ立てていなかった。
「……ヒデキ?」
嫌な予感がした。
ガクトは慌ててヒデキの手を掴み、脈を測ろうとする。
……もう、ヒデキの鼓動を感じることは出来なかった。
(うそ……嘘だろ?ヒデキ……)
0047バトル開始
01/12/22 16:45ID:/69VSREN「こんな、こんなことって……法律だからって……こんなのおかしいぃ!理不尽だぁ!」
ガクトの嗚咽が玄関中に響き、やがて廊下や階段へと伝わって行く。
その声を聴きながら、大佑は荷物を抱え、出口へと歩き始めた。
そしてその途中、一人の男とすれ違う。
最後に出発した参加者、デュールクォーツの雅だ。
彼がちょうど階段を下りたその瞬間から、この銃撃戦は始まっていた。
そして雅はその一部始終を、身を隠しながら、じっと見ていた。
大佑がここでは攻撃しない(出来ない)事は判っていた。
だがそれでも、大佑が近付く度に、足が勝手に一歩、二歩と後ずさりを始めてしまう。
大佑は雅とすれ違うと、ふと立ち止まり、振り返ってじっと雅の顔を見た。
「フッまたな……」
大佑は寂しげな顔でそう呟くと、裏口へと駆け出して行く。
雅は、ただじっと大佑を見送る事しか出来なかった。
哀しい泣き声が、いつまでも響いていた。
0048バトル開始
01/12/22 16:48ID:/69VSREN公園のベンチで、幸也は震えていた。
その震える手には、拳銃が握られている。
幸也は出発した直後、武道館近くの茂みに身を隠していた。
立入禁止エリアになるギリギリの時間まで、ヨシキの近くに居たかったのだ。
一人、また一人と、参加者が 会場を出て行く。
この場に留まっていられる時間が、どんどん少なくなって行く。
幸也は怖かった。
武道館より先の世界に出ることが、たまらなく怖かった。
(殺される。誰かに会ったら、殺される。だから守らなくちゃな。この銃で、自分を守らないと……)
支給された銃を握って、幸也はこの言葉を何度も何度も繰り返す。
その時だった。
0049バトル開始
01/12/22 16:50ID:/69VSREN幸也は素早く反応する。
(見つかった!?)
幸也は声のした方向へと向き直り、銃を構えると、引き金に力を込めた。
そこで初めて、声の主がイルミナのナオである事を知る。
しかし、ナオは幸也に危害を加える素振りを見せなかった。
いつもの様に、むっつりしていた。
(――撃っちゃダメだ!)
幸也は瞬時にそう思った。だが、引き金を引く指の動きは止まらなかった。
そして……
0050バトル開始
01/12/22 16:51ID:/69VSRENだが、どんなに走り回って気持ちを紛らわせても、
ナオに発砲した時の映像が、頭の中で何度も何度もリフレインする。
「ヨシキさん……俺、人を殺しちゃったよ……どうしよう……」
もはや幸也は、俯くことしか出来なくなっていた。
と、その時――
誰かがやって来て、幸也に声を掛けた。
「大丈夫!幸也さん?」
0051バトル開始
01/12/22 16:56ID:/69VSREN「ヨシキさんの事は、気の毒だったけど……まあ、元気、出しましょう」
ヤスはそう言うと、幸也の隣に腰を降ろした。
「ヤス……」
幸也は銃を構えなかった。構えられなかった。
ナオの二の舞いは避けたかったし、
優しく接してくれる人に、銃は向けられなかった。
幸也はそっと、銃をバッグにしまい込んだ。
ヤスはボサボサになっている頭をなでながら、幸也に話し掛ける。
「ひとつ、聞いていいですか?幸也さんも『真のミュージシャン』になれたらいいなって思っています?」
幸也の答えは、一つしか無かった。
「そうだなぁ。。。やっぱり…出来ればそういうのになりたいな!」
幸也は頬を赤らめる。
ヤスは手を頭から外すと、今度は少し生え際が目立っている髭をいじりながら、つぶやいた。
「フッ!でも幸也さんじゃいくら頑張ってもデビューすらもできないからね…」
(――え?)
意外な返答に幸也は驚いた。
そしてヤスは、幸也と目を合わせる事無く、淡々と話し続ける。
「キリトが、コータと話しているのを、聞いたことがあります。
”幸也ってほんとにどうしようもないな”って、笑いながら話していましたよ」
あまりに痛烈なヤスの言葉に、幸也は言葉を失った。
(うそ……ヤス、何を言ってるんだ?嘘だろ!?)
0052バトル開始
01/12/22 16:58ID:/69VSRENそう言うと、ヤスは自分の膝をパンパン叩き出した。
「昔はいくらでも売れたんだ、インディーの頃は。
音楽のクオリティーは以前にも増してるはずなのに世間は『昔の方が…』だなんてほざきやがる。
でもやっぱり今でも俺の事”天才”って言ってくれるファンがいる……」
淡々と語るヤスの姿に、幸也は絶望した。
慰めてくれると思っていたのに、どうして……
しかし、ヤスの辛辣な言葉は止まらない。
「幸也さん、あんたに期待しているファンなんていないんですよ。年だし!
このプログラムに勝ち残る意味なんて、無いんですよ……」
決定的な一言だった。
0053バトル開始
01/12/22 17:00ID:/69VSREN「ヤス……どうして、そんなひどいこと言うんだ!?」
幸也は泣きながら訴えた。
だが、ヤスはそれを軽く受け流す。
「事実だからですよ。」
ヤスは幸也の目をじっと見て、静かに微笑んだ。
口元が、すぅっ、と上にあがる。
「俺、決めたんですよ。俺のファンの為に生き残るって……」
その瞬間、幸也は言い知れぬ恐怖感を覚えた。
体中の血の気が、一瞬にして引いて行くのを感じる。
「やめろぉおおおおおおおおーーーー!!」
幸也の絶叫が、夜の公園に響く。
ザシュッ!
0054バトル開始
01/12/22 17:01ID:/69VSREN血飛沫を上げながら、幸也の体が地面へと崩れ落ちて行く。
ヤスはナイフから滴り落ちる血を見つめながら、呟いた。
「幸也さん、ヨシキさんの所にいけたね…!」
0055バトル開始
01/12/22 17:03ID:/69VSREN東の空が明るくなり始めた頃、雅が呟いた。
俯きながら力無く歩いていたガクトが、顔を上げる。
ヒデキが息を引き取った後、ガクトはその場を動こうとしなかった。
ヒデキが死んだなんて、信じられなかった。
しかし、退去命令のタイムリミットは刻々と迫って来る。
雅は、ヒデキの傍を離れたがらないガクトを何とか説き伏せ、場外へと連れ出した。
無駄に死人が増えるのだけは、嫌だったから。
0056バトル開始
01/12/22 17:05ID:/69VSREN雅は目を伏せながら、話し始めた。
「ガクトさんのこと、放っておけなくて、連れ出したけど……
でも本当は、迷ってるんです。プログラムに乗るべきなのか、抵抗するべきなのか……」
雅の唇が、微かに震えはじめる。
「勿論、人殺しなんてしたくない。でも、誰かに殺されるのも嫌だ……
生き残る選択肢が一つしか無いのなら、それに乗るのも、仕方ないのかな、って……」
二人の周囲を、霧が覆いはじめた。
少し肌寒い空気の中、互いの目を見つめる二人。
沈黙の時間が、流れて行く。
「……ガクトさんみたいな素晴らしい人が近くにいたら、俺、冷静に今を判断出来ないんです。
答えを出せないまま、感情に流されるまま……あなたを殺してしまうかもしれない。だから……」
そして雅は、銃を構えた。
サイレンサーを装備したベレッタM1934コマーシャルが、ガクトの顔に向けられる。
「だから、ここで別れよう……俺の気が変わらないうちに、行ってください」
0057バトル開始
01/12/22 17:07ID:/69VSRENガクトは動揺しつつも、雅を諭そうと、言葉を続けようとした。
しかし次の瞬間、雅の放った銃弾が、ガクトの頬の数センチ先をかすめて行く。
ガクトの髪が数本、空中に散った。
「お願いです、行ってくれ!俺は……ヒデキくんの代わりには、なれないんだから……」
それを聞いて、ガクトは言葉を続けられなかった。
(そうだ。独りになるのが、怖かったんだ……)
ガクトの脳裏に、プログラム開始時からの記憶が蘇る。
プログラムが始まってから、ずっと傍にはヒデキがいた。
そしてヒデキの存在が消えた瞬間、独りになるのが不安で、何も出来ない自分がいた。
雅に付いて行ったのも、タイムリミットが怖かったからじゃない
0058バトル開始
01/12/22 17:09ID:/69VSREN「わかった……辛い思いをさせてしまって、ごめん……」
ガクトはそう言うと、スッ、と踵を返す。
「でも、出来るなら……」
雅に背を向けながら、ガクトは語り掛けた。
「人は殺さないでくれ。そして……決して希望は捨てないでくれ。お願いだから……」
それは雅に対してだけでなく、自分自身にも言い聞かせる為の言葉だった。
「……努力します」
雅は消え入りそうな声で返事をする。
頭では解っていたが、それを実行出来る自信は、今の彼には無かった。
「それじゃ……元気でな」
その言葉を残し、ガクトは霧の中へと駆け出して行く。
そしてガクトの姿が見えなくなると同時に、雅はその場に座り込んだ。
「何やってるんだろう、俺……自分から立ち去れば、それで済んだのに……」
銃を持った雅の指先は、ずっと震えたままだった。
霧は益々、その深さを増して行った。
0059バトル開始
01/12/22 17:15ID:/69VSRENどんな非常時といえど、毎朝のジョギングを欠かす事は出来なかった。
いや、そうしなければ、落ち着かなかった。
誰かを殺すか、誰かに殺されるか……
嫌な選択肢しか残されていない現状を、忘れたかった。
ユーキは出来る限り、プログラムの事を忘れようと懸命だった。
しかし公園に入った時、ユーキは現実に引き戻される。
濃い霧の先に、誰かが立っている……
ユーキは走るのを止め、警戒しつつ、霧中の人物に声を掛けた。
「誰だ?そこに居るのは……返事をしろ!」
そして数秒後、聞き慣れた声で返事が帰って来る。
「いい朝だな・・・ユーキ君!」
サッズの清春の声だ。
0060バトル開始
01/12/22 17:17ID:/69VSREN「無事だったんだ、清春さん……怪我はしてないか?大丈夫?」
「まあな。一応、生き延びてる」
普段通りの明るい声で、清春は答えた。
(良かった……元気そうだ)
ユーキは、心が許せる人と再会出来る喜びを噛み締めていた。
たった数時間しか離れていないのに、数週間振りに会うような感覚。
緊張していた心を、ようやく落ち着ける事が出来る……そう思っていた。
だが、清春にあと2〜3メートルまで近付いたその時、ユーキは自分の目を疑った。
霧の中から現れた清春は、ユーキに銃口を向けている。
「悪く思うなよ、ユーキ」
そうつぶやく清春の表情は、冷静だった。
「――どういうつもりだ!?清春さん……」
ユーキは動揺を隠し切れない。
しかし、清春はあくまで冷静に、言葉を続ける。
「動かないでくれ……弾が外れるから」
0061バトル開始
01/12/22 17:21ID:/69VSRENユーキは信じられなかった。
清春が自分に銃を向けるなんて、嘘だ。こんなの嘘だ……
しかし、清春は銃を下ろさない。
「ああ本気だ。友達だからこそ、俺はお前を撃つ……」
「どういう事だよ、それは――」
と、ユーキが言いかけた所で、何処からとも無く大音量で音楽が流れて来た。
ピエロの『ハルカ・・・』だ。
そしてそれに続いて、キリトの声が聴こえて来る。
「元気ですかーー!朝6時になった。それではこれより、
現在までに脱落した参加者の名前を発表しよう。よく聞いておくようにな」
それは、6時間毎に流される定例放送だった。
二人は動きを止めたまま、その放送に聞き入る。
「これまでに脱落したのは、ラクリマのSHUSE、イルミナのナオ。
シャムシェイドのヒデキ。そして、藤田幸也……以上4名だ。
お前ら、頑張れ。また6時間後に会おう!ダーーーーー!」
『ハルカ・・・』が、フェードアウトしてゆく。
そしてユーキは、その放送内容に愕然とした。
「もう……もう4人も死んだっていうのか!?」
0062バトル開始
01/12/22 17:23ID:/69VSRENお前もいつ、誰に殺されるかわからない…。
……お前が他の誰かに無惨に殺されるのは、嫌なんだよ。
だから、親友として、俺はお前を楽に死なせる義務がある……」
清春の言葉に同意出来る筈はなかった。
しかし、銃口は自分に向けられている。
このまま死ぬのは嫌だ……ユーキはそう思った。
ユーキはフッ、と溜め息をつくと、挑戦的な目つきで清春を見て、言った。
「……で、俺の都合はお構いなし、ってわけか?」
0063バトル開始
01/12/22 17:24ID:/69VSRENでもな……俺だって、死にたくないんだ。それに……」
ユーキはそう言うと、背中のバッグから日本刀を抜いた。
「どうせなら、正々堂々と勝負しようじゃないか。
いきなり銃を構えて現れるなんて、ずるいぜ……」
ユーキの目に、迷いは無かった。
(ただ黙って殺されるくらいなら、俺は闘う事を選ぶ。
たとえ相手が、清春さんであろうとも……後悔はしない!)
清春は、そんなユーキの姿を見て、微笑んだ。
「……ユーキらしい答えだな。オーケー、じゃ、始めようか!」
ユーキは汗ばむ両手を気にしながら、刀を構え直す。
「やるからには、全力でいくからな……」
「もちろんだ。ユーキ!行くぞ!・・・」
パンッ、パンッ、パンッ。
0064バトル開始
01/12/22 17:26ID:/69VSREN真矢が、驚いて空を見上げる。
銃声は、断続的に鳴り響いていた。
「また、誰かが戦ってる……どうすればいいんだ?なあ、幸也さん……」
真矢はそう呟きながら、幸也の遺体の血を拭っていた。
通りがかりに偶然見つけた幸也の体を、そのまま放置しておく事が出来なかった。
地面からベンチへとその体を移し、丁寧に両手を組ませる。
首の傷口さえ見なければ、それは本当に眠っているようにも見えた。
真矢は、離れ離れになった親友の事を思う。
「竜太朗……大丈夫かな?それに、ヤスくんも……
早くヤスくんと合流出来れば、良いんだけどな……」
幸也殺しの張本人がヤスである事を、真矢は知る由もなかった。
0065バトル開始
01/12/22 17:29ID:/69VSREN木陰で、ユーキがつぶやいた。
戦闘開始の合図とともに、ユーキは並木道の方向へとダッシュした。
銃が相手では、日本刀といえど勝ち目は無い。
しかし、この濃霧を味方に付ければ、まだ勝算はある。
清春の放つ銃弾を辛うじて避けながら、ユーキは街路樹の陰で機会を窺っていた。
霧の中から、清春の影が近付いて来る。
こちらから打って出るには、弾切れの瞬間を待つしかない。
危険な賭けだ。
だが、それしか手段は思い浮かばない。
ユーキは意を決して、木陰から飛び出した。
「さあ、当ててみな!」
清春が少しぼやけて見える位置で、ユーキは叫んだ。
多少距離があるとはいっても、充分射程距離内だ。
清春はユーキに向け、数発連射する。
しかし、霧で視界が悪いのに加え、ユーキはあっという間に別の木陰へと移動してしまう。
「ユーキ!正々堂々と闘うんだろ?コソコソ隠れて鬼ごっこだなんて、お前らしくないぞ!」
少し不機嫌そうな口調で、清春が呼び掛ける。
0066バトル開始
01/12/22 17:32ID:/69VSREN「正面で一騎打ちをする事が、全てじゃないぜ。
武器の性能差を考えた上で、ベストな戦法だと思うけどな……」
ユーキはそう言うと、清春との距離を確認しつつ、もう一度、木陰から飛び出した。
(そろそろ弾が切れてもいい頃だ。チャンスは逃すな!)
自分にそう言い聞かせ、ユーキは数本先の並木へとダッシュする。
しかし、回避出来ると思っていた弾の一発が、ユーキの左肩を捉えた。
「くっ!!」
どうにか木陰には辿り着いたものの、かつて経験した事の無い痛みが、全身を襲う。
左手が流血で染まり、握力がみるみる落ちて行く。
ユーキは肩口をスポーツタオルでギュッと縛り、一応の止血を施した。
しかし、血は止まりそうに無い。
「そろそろ……勝負時かな……」
0067バトル開始
01/12/22 17:34ID:/69VSRENもはや、弾切れを待っている余裕など無い。
ほんの一瞬でいい。清春の動きを封じる事さえ出来れば……ユーキは思考を巡らせる。
そして、ユーキは背中のバッグを下ろした。
陰からそっと顔を出し、つ清春との距離を見る。
(――届く!)
ユーキは心の中でそう叫ぶと、バッグを清春の真正面へ向けて投げつけた。
清春の目線に、突然、バッグが飛び込んで来る。
反射的に銃を構え、清春はそのバッグに銃弾を撃ち込んでゆく。
空中でバッグが二度、三度と踊った。
そして、踊り疲れたバッグが引力に引かれ始めたその瞬間――
バッグが作った死角から、ユーキが一気に飛び込んで来る。
バッグに気を取られていた清春は、予想外の進撃に反応出来ない。
ユーキは低位置から清春の懐に入り込むと、刃を180度返し、
渾身の力を込めてそれを拳銃に叩き込んだ。
「とぉりゃあああああっ!!!」
ガキィィィン!!
0068Nana
01/12/22 17:35ID:Ksogbjlq0069バトル開始
01/12/22 17:36ID:/69VSREN激痛に近い手の痺れに、清春は思わず顔を歪めた。
(……銃を弾かれた……)
そんな自戒の言葉が、清春の脳裏をかすめる。
だが、状況はそんな反省の時間も与えてはくれない。
ユーキは間髪を入れず、清春に斬りかかって来る。
清春は辛うじて、ユーキの斬撃を避け続けた。
しかし超速の刃は、清春の頬や服を、何度も薄く切り裂いてゆく。
そして、路上の小石が清春の足元をすくった。
(嘘だろ!?ここで、もう終わりなのか?……)
自分の体が宙を舞った瞬間、清春は自分の周囲がスローモーションになってゆくのを感じた。
そして、尻餅をついて倒れた清春の顔面に、鋭い切っ先が突き付けられる。
ユーキは、真剣な眼差しで呟いた。
「さあ、これで終わりだ」
0070Nana
01/12/22 17:36ID:cx1zfluQ昨日WOWOWで見たばっかりだから頭の中にシーンが浮かぶYO!
0071バトル開始
01/12/22 17:39ID:/69VSRENだが、ユーキはなかなかとどめを刺そうとしない。
「どうしたんだ……どうして殺さないんだ?」
清春が尋ねる。
「どうしてかな……覚悟を決めた筈なのに、まだ、怖いのかもな……」
さっきまで冷徹だったユーキの顔に、苦笑いが漏れる。
「……ユーキ、ひとつ聞いていいか?」
「何だ?」
「あの時、どうして逆刃で銃を叩いたんだ?右手ごと切り落とした方が、簡単なのに……」
清春は不満だった。
全力で闘うと言われながら、手を抜かれた……それが納得出来なかった。
「ああ、あれか……あくまでもサッズの清春の今後を考えたら、腕は切れないよ――」
清春は、ユーキの言葉が理解出来ない。
(どうしてだ?もうすぐ死ぬ人間に、どうして今後の心配なんてするんだ、ユーキ……)
「――だって、ギターが天国で出来なくなっちゃうだろ?だから……」
ユーキのその言葉が、清春の胸を締め付ける。
「ユーキ……お前は馬鹿だ。大馬鹿だよ……」
清春の頬が、涙でぬれる。
「そんな……余計な心配しなければ……死なずにすんだのに!」
0072バトル開始
01/12/22 17:40ID:/69VSREN途端、ユーキの全身に凄まじい衝撃が走る。
刀が手から離れ、立っていられない程の脱力感が、全身を襲う。
「そうか、電気、か……」
意識が朦朧とする中、ユーキは清春の右手に握られた武器を見た。
それはスタンガンだった。
清春はもう一度、ユーキに電撃を仕掛ける。
0073Nana
01/12/22 17:43ID:n/5ABU8Uバトロワ見てないんだけどね(ワラ
0074バトル開始
01/12/22 17:44ID:/69VSREN「形勢逆転だな、ユーキ……」
「ああ、そうみたいだな……」
ユーキは微笑んだ。そして次の瞬間、意外な言葉を口にした。
「なあ、清春さん……このまま、とどめを刺してくれないか?」
清春の手が、一瞬、震える。
「え?な、何言ってるんだよ。俺はそのつもりで、こうしているんじゃないか……今更、何を……」
「……そうだよな。殺し合い、だもんな」
「でも、どうしてだ……さっきは『俺だって、死にたくない』って言ってたくせに……」
清春の問いに、ユーkは淡々と答える。
「……もうこれ以上、このキャラを続けたくないんだ」
「キャラ?」
「そう。俺は今まで『音楽界のテロリスト』とか『Jポップの核弾頭』とか、色々と言われ続けてきた。
良い意味でも、悪い意味でも……露骨に嫌う人も、多かった。
メディア上のキャラって言えば、それまでだけど……偏見に満ちた目で俺を見る人は、
結構多かったんだ。 清春さんは知っているよな……俺の本当の性格……
もし万一、このプログラムで生き残ったとして……
やっぱり、俺を『人殺し』って言う人は、他のバンドマンより多いと思う。そういうキャラだからね。
……これ以上、親に迷惑を掛けたくないんだ。だから……頼むよ」
0075バトル開始
01/12/22 17:46ID:/69VSRENユーキを殺す事が、自分の役目だと信じていた。
そしてユーキ本人も、それを希望している。
躊躇する理由など無い筈なのに、踏み出せない自分がそこに居る。
さっきは銃を撃つ事は出来たのに、どうして今は殺せないのか?……
「清春さん……怖いんだね。きっとそれは、銃と刃物の違いだよ。
銃は所詮、弾の反動しか手元に返ってこない。でも刃物は違う。
相手の感触が直に伝わるから、命を奪う感覚が直に伝わるから……怖いんだ。それを解って欲しいんだ。
唯一、俺にやさしく接してくれた清春さんに生き残ってもらいたい、だから……」
ユーキはそう言うと、刀の切っ先を自分の喉元に当てた。
清春は俯き、大粒の涙をこぼす。
「……じゃあな、ユーキ……」
そして清春は、刀を握る手に力を込めた。
さっきには感じなかった嫌な感覚が、掌に伝わって来る。
路上に拡がる血溜まりを見ながら、清春は泣き崩れた。
0076バトル開始
01/12/22 17:48ID:/69VSREN駅の待合室でバッグの中身を確認しながら、ノイジーが呟く。
あの惨劇から数時間……ノイジーは当ても無く市内を彷徨っていた。
「絶対に許さないぞ!」と啖呵を切って出発したものの、何をしたら良いのかが全く分からない。
ただ、確実に言えるのは『途中で死んだらダメ』という事だけ。
既に此処へ来るまでに、何人もの死体を見てきた。
(あいつらの様には、なりたくない。途中で死んでしまったら、SHUSEの仇が討てない。
絶対に……絶対に生き残って、キリトをこの手で殺すんだ――)
例えようの無い強力な復讐心が、ノイジーを動かしていた。
ノイジーはパンやミネラルウォーターといった食料を確認すると、バッグから武器を取り出した。
『当たり』と言っても良いだろう。小型のマシンガン、マイクロウージー9ミリだ。
「ラッキーだ。これなら何とか生き残れそうだな」
ノイジーの顔に、安堵の笑みが漏れた。
添付されている簡単な説明書を見ながら、ノイジーは操作手順を確認する。
そして、弾倉を差し込もうとしたその時――
形状が違う。
何度差し込もうとしても、はめ込みが上手くいかない。
ノイジーは慌てて予備の弾倉を取り出し、同様に差し込んでみる。
しかし、どれもマイクロウージーには一致しない。
「そんな……まさか、配給ミス!俺じゃ駄目なのか!?」
0077バトル開始
01/12/22 17:50ID:/69VSREN――その時、ノイジーは弾倉の一つに挟み込まれた紙を見つけた。
何かが書かれている。
ノイジーはその紙を取り、開いて読み始める。
その文面は、ノイジーを絶望の淵に叩き込むものだった。
☆とっかえだまシステム☆
このマシンガンの弾は、他の誰かが持っています。
そして、その誰かが持っている銃には、この弾が使われます。
その人を探し出して、弾を交換しましょうね。
「……ふざけんなよっ!!」
ノイジーは弾倉を床に投げつけた。
無用の長物となった弾倉は、くるくると回りながら、床の上を転がって行った。
0078バトル開始
01/12/22 17:56ID:/69VSRENこの男はさっきまで隠れていた公園でユーキと清春のやりとりを息を潜めて見ていた。
それまでダイはまさかこんな馬鹿げたゲームに本当に乗っているバンドマンなんていない。いるはずがない。
そう思っていた。いや、・・・・そう思いたかった。
しかし、清春はユーキの身体を撃ち抜いたと同時にこの男のこんな思いを一瞬にして撃ち砕いた・・・。
その瞬間、ダイの身体に衝撃が走った。
0079バトル開始
01/12/22 17:57ID:/69VSRENそう思った瞬間、次に頭に浮かんできたのは「ここにいてはいけない!!」ということだった。
「さっきまでのユーキと清春の闘いで他の「やる気」になっている人間が集まってくるかもしれない。
そうでなくとも今、この清春という男に見つかってしまえばおそらく自分も……。」
ダイはそっと立ち上がり紅く染まったユーキの背中の方に向かって手を合わせた。
…たった今殺された人間を拝んだのは初めての瞬間だった…。
0080バトル開始
01/12/22 17:59ID:/69VSRENその姿を清春に見られたかどうかなどもう気にしていられない。
一刻も早く自分の隠れ家を見つけなければ、ダイはそう思っていた。
0081バトル開始
01/12/22 18:01ID:/69VSREN「…ここを拠点にしよう…。食料にも当分困らないだろう…。」
流石に自動ドアは既に動いていなかったが、無理矢理こじ開ければ入ることができた。
店内はシーンと静まっていた。「どうやらこのゲームは本当のようだ……。」静けさがダイに事実を教えた。
「少し落ち着くためにコーヒーでも飲むか…。」
そう思い、奥にあったインスタントのコーヒーを手にとろうとした瞬間、レジカウンターから一つの声が放たれた。
「いらっしゃいませ。」
驚いたダイが振り向いたその先には………「あの」清春が銃を構えて立っていた…。
0082バトル開始
01/12/22 18:03ID:/69VSRENしかし、清春は追いかけなかった。いや、追いかける必要はなかったのだ。
ダイが走っていく方向には1軒のコンビニしかないことも。そして、ダイが自分以上に追い詰められていることも。
ダイがあのコンビニに隠れることは容易に想像できた。
ダイは瞬時に自分の置かれている状況を整理した。
すると、あのユーキの姿が浮かんできた。ダイがこのプログラムが始まってから初めて感じた「死への恐怖」だった。
ユーキを殺した張本人である清春が目の前にいる。こっちに銃を構えている。…自分を殺そうとしている!!
「……!!!!!!」
ダイは手当たり次第の物を投げた。
昔から物を投げるような粗末なことはしなかったがこの時だけはそんなことは考えなかった。
缶コーヒーやコーラのボトルが清春に向かって次々と飛んでいく。
しかし、こんなことはただの時間を稼ぐ方法の一つにしかならない。
「何か…!!武器になりそうな物は!!」
……あるはずがない。ここはコンビ二なのだから。
その瞬間、「パン」という冷たい音が店内に響いたと同時にダイの足に表しようのない痛みが走った。
清春が痺れを切らし、とうとう銃を撃ってきたのである。
清春は、一呼吸置いて、ダイを見下すような目で、こう言った…。
「あんまり手ぇ、焼かせないでくださいよ…。」
0083バトル開始
01/12/22 18:05ID:/69VSRENダイには理解できなかった。ここで理解できるていることは、殺らなければ殺られるということだけだった。
しかし、このゲームの主催者であるキリトを殺す決意はあったが、
他の参加者を殺す決意はしていなかった。というより、できていなかった。
それに何といっても、この男は、「あの」清春である。説き伏せるなどということは不可能である。
方法は全て無くなった。
「ここまでか……。」
ダイが死を覚悟した、その瞬間、清春でも、ましてや自分の声でもない、第三者の声が店内に響いた。
「あ〜、アチいなあ。」
その声の持ち主であるヤスが入り口に立っていた。清春と同じように銃を構えて。
0084バトル開始
01/12/22 18:08ID:/69VSRENヤスが清春に向かってこう言った。
「まいったな。ヤスくんが来ちゃうとはなあ。」
一瞬にして、その場の雰囲気が変わった。変わったというより、ヤスが変えてしまった。
こんな状況の雰囲気さえも変えてしまうのもヤスのスター性が成せる技なのだろう。
清春とダイの置かれている立場が変わった。
自分が何も武器を持っていないとはいえ、清春もわざわざ無駄死をしたくはないだろう。
ヤスが言った。
「行けよ、清春。ここにいる誰一人死ぬのはイヤなんだよ。早く!!」
どうやらヤスも人は殺したくないようにダイには見えた。
「……、助かりましたね。ダイくん。」
清春はそう言い残して、こちらに銃を向けながらこの場所を後にした。
0085Nana(スズメバチ ◆wvKHaybI
01/12/22 18:08ID:fseovX9O頑張って続き書いてください。
0086バトル開始
01/12/22 18:11ID:/69VSRENダイが命の恩人であるヤスに話し掛けた。
「やっぱりやる気になってる人がいるんですね……。
こんな、こんな馬鹿げたゲーム開いたキリトさん…許せませんよ!!俺、あの人を殺し…」
ダイは今までに自分の中に溜め込んだキリトに対する怒りをヤスにぶつけるかのように話そうとした、その瞬間、
「!!!」
ダイは喉に火がついたような熱を感じた。
「わりいな。ダイ君。オレ、ファンの為に生きなきゃいけないから。」
ヤスは引き金を引いていた。ダイの喉に向かって、幸也から奪ったであろうと思われる銃で。
「何…で…。」
ダイが倒れこみながら、小さな声でヤスに問い掛けた。ダイが放った最期の言葉だった。
「あっちに行ったら幸也さんとデゥエットやってくれよな。」
事切れたダイにヤスがこう囁き、そこからゆっくりと立ち去った。
0087Nana
01/12/22 18:31ID:Rl0cKRd7「ファンの為に生きる」と言い放つヤスに萌え〜(藁
続き楽しみにしてるYO!
0088バトル開始
01/12/22 19:50ID:/69VSRENこの男はこれまでに途中立ち寄った公園でユーキ、食料を調達していた時に入ったコンビニでダイの遺体を見てしまっていた。
「まさか本当にやる気になってる人がいるなんて!!」
千聖は信じたくない事実と先程から聞こえる何発かの銃声に気持ちを押しつぶされまいと自己暗示にふけっていた。
「俺は死なない。大丈夫だ・・・・。やる気になっている人たち同士が潰しあって、このゲームは終わるんだ。きっとそうだ・・・。」
まるで既に壊れてしまっているかのように何度も何度もそう自分を励ましつづけていた、その瞬間、
「ガタッ」
明らかに不自然な物音がこの部屋の後方の出入り口から放たれた。
0089バトル開始
01/12/22 19:52ID:/69VSRENこのような状況においては、相手がこの場所から立ち去るまで隠れている方が良策なのだろうが、
千聖の本来の気の強さからつい声をあげてしまった。
我に返った千聖は、わざわざ敵に自分の存在を教えてしまったこと自分の情けなさに対する怒りと同時に、
目の前に立っている男を見て安堵感が込み上げた。
「清春さん・・・・・・。」
そう、千聖の前に現れたのは、「あの」清春だった。
0090バトル開始
01/12/22 19:54ID:/69VSREN千聖は清春に会えたことによりまだ固いながらもこのゲーム開始以来初めての笑顔で清春に問い掛けた。
「ああ、まあな。お前も元気そうだな。それよりメシ食わしてくれ。できればラーメン頼む。」
清春の日常と変わらない発言が今の柴田には何よりも嬉しいことだった。
「この男といればこのゲームも無事に切り抜けられる・・・。」
そんな期待が千聖の胸の中で膨らんでいた。
「みそラーメンと塩ラーメンどっちにします?」
「ん、スープの濃い方がいいな。」
こんな他愛の無い会話でも今の千聖には一番幸せなことだった。
0091バトル開始
01/12/22 19:57ID:/69VSRENこの男には背中を向けても安心だと千聖は思っていた。
それよりもこの幸せな時間が外部からの侵入者によって壊される事の方が怖かった。
「いやあ、参りましたよ。本当にやる気になってる人がいたなんて・・・。
俺、今日ユーキとダイの死んでるとこ見ちゃったんですよ・・・。」
「・・・そうか。気の毒だったな。」
そんなアッサリとした返事に千聖はなんの違和感も感じなかった。
むしろその変わらない清春のタフさに喜びさえ感じていた。
「清春さん・・・・俺と組んで、このゲームから脱出しましょうよ!!
清春さんもこんな馬鹿げたゲームで死ぬなんてイヤでしょう!?」
「ん?ああ・・・まあな。」
「じゃあ、組みましょうよ。こんな、こんなゲーム馬鹿げてる!!
俺たちはこんなことをやるためにバンドマンになったんじゃない!!畜生!!畜生!!・・・」
千聖は溜め込んでいた怒りを噴出すかのように話始めた。
0092バトル開始
01/12/22 19:59ID:/69VSREN千聖は清春に促されるようにラーメンを食べ始めた。
食べながらも千聖はこんな状況下に置いても冷静でいられる清春に尊敬の念を抱いていた。しかし、
「グッ!!!」
ちょうどスープを半分飲みほしたと同時に強い吐き気に襲われた。
「・・・・・!!」
汚物だけではなく、遂には血まで吐き出し始め、のた打ち回る千聖を見下すように清春はこう言った。
「状況が状況だから、あんま他人を信用し過ぎないほうがいいぞ。」
そう、千聖のカップラーメンの中にすり潰して混ぜたと思われるタバコを口に咥えて・・・。
0093バトル開始
01/12/22 20:11ID:/69VSRENwyseの拓磨が心配げな表情で、同じバンドのメンバーである月森の顔を覗き込んだ。
「・・・ああ。会場にいた時よりはな」
そう呟く月森の顔色は、ずっと前から青ざめたままだった。
無理もなかった。
ただでさえ仲間と殺し合うという理不尽な状況に放り出されているのに
スタート前に、ヨシキの無残な姿を見せられているのだ。
あの場内で、声をあげて泣く拓磨のその後ろで、月森もまた涙していた。
「俺の憧れのヨシキさんが・・・こんな酷い姿に・・・」
ただ泣く事しか出来ずに、立ち尽くしていた。
そんな月森を見て、拓磨は心配でたまらなかった。
「とにかく・・・月森と離れないようにしなくては」
大事なメンバーを見捨てる事なんて出来ない。
場内の出発順は、拓磨が先だった。
茫然自失の月森に、拓磨は素早く囁いた。
「月森、ホビーショップまで来いや。いいな!
俺、そこで待ってるから・・・」
ホビーショップは、月森がよくフィギュアを買いに行く店だ。
そこならば、月森も迷わず安全な道を通って来れるだろう。
「じゃ・・・後で!」
拓磨は出口でデイパックを受け取り、駆け出して行った。
0094バトル開始
01/12/22 20:17ID:/69VSREN拓磨は店内をぐるりと見まわして呟いた。
月森が来る前に、何か使えるものはないかと物色をしていたのだ。
この店がフィギュアの他にモデルガンも扱っていたのは好都合だった。
拓磨の手元には、サブマシンガンのモデルガンがあった。
『片手のみで操作可能。最大で1分間に最高750発発射出来ます』
ショーケースの説明書きには、そう書いてあった。
動き回る事を考えると、これがベストの選択であろう。
殺傷能力はないにせよ、はったりをかますのには十分だ。
「できる事なら、人殺しはしたくない・・・みんな生きていてほしい。
みんないい人ばかりなのに・・・何でこんな事に・・・」
拓磨が目に涙を浮かべる。
それを見た月森は涙があふれぬよう、天井を仰ぎ見た。
0095三葉虫 ◆Slhy.Xp2
01/12/22 20:21ID:qJX2KLZk応援age
0096バトル開始
01/12/22 20:21ID:/69VSREN天井を見つめながら、月森が呟いた。
「せっかくデビューできたってのに・・・」
「そうだよな・・・これからって時だし、頑張らなきゃ」
そう言って拓磨は涙をぬぐい、再び使えそうな物を物色し始めた。
「あ・・・月森!いい物があるで!ほら!」
拓磨は大声で叫びながら、ショーケースを指差した。
ショーケースの中には「非売品」と書かれた札が付いた防弾チョッキがあった。
「防弾チョッキ!?ああ、そういやここのオヤジが趣味で集めてたっけ」
「これ、本物やんな?使えるで!」
そう言うやいなや拓磨はショーケースの硝子を叩き割り、防弾チョッキを取り出した。
「うわ、結構重たいな」
だいたい2kgぐらいだろうか?ズッシリとした重みがあった。
「まあ、防弾っちゅうぐらいだしな。重い方が守りもしっかりしてるやろ。
とりあえず、とっとと着ちまおう」
――――その時だった。
パンッ、パンッ、パンッ!
店の外で、乾いた衝撃音が鳴り響いた。
「・・・銃声!?すぐそばで誰かが・・・」
「隠れるぞ、拓磨っ!見つかったら俺たちもやられる!」
二人は急いで防弾チョッキを抱え
デイパックとモデルガンを拾い上げて店の奥へと向かった。
0097バトル開始
01/12/22 20:26ID:/69VSREN撃ったのは、清春。青の太ももとヒザを撃ちぬいていた。
青はといえば、ホビーショップに向かおうとしていた所だった。
この店は、青の行きつけでもあった。
月森たちがいるなんて、知る余地もない。
ただ、拓磨と同じ様に「モデルガンがあれば、はったりになるかもしれん」
そう考えて、店を物色しようと考えていたのだ。
店まで後少しという所を、後ろから清春に狙われたのだった。
足に衝撃を感じ、よくわからぬまま地面に崩れ落ちた。
そして一瞬カァッと熱くなったかと思ったら、とんでもない激痛がヒザを襲ってきた。
「グアッ・・・クッ・・・だ、誰だっ」
「俺ですよ、青さん。ダメですよ、背中にも目ぇ付けとかなきゃ」
「清春、貴様ぁ・・・っ」
青は清春を睨みつけるが、立ちあがる事が出来ない。
(クソッ、ここで殺られるのかっ・・・)
清春がゆっくりと近づいてくる。でも青は、逃げる事が出来ない。
(死ぬにしても・・・無駄死にだけはするもんか!)
青は片手で自分のデイパックをまさぐり
支給された大ぶりのナイフの柄をグッと握り締めた。
0098バトル開始
01/12/22 20:29ID:/69VSREN「やだなぁ。インディの最高峰にいる青さんに
秒殺なんて失礼な事出来ませんよ」
目の前で仁王立ちした清春は、口元に笑みを浮かべながらイヤミっぽく話し続けた。
「ヴィジュアル系バンドは、相手を仕留めるまでの過程を演出しないとねえ。
強ければいいってもんじゃないでしょう?」
そういうと清春は銃を青の胸元に突き付けた。
「さあ、お喋りはこれくらいにして・・・青さん。
最後に何か言い残す事はありますか?」
「殺れるもんなら殺ってみろ・・・お前に人を殺すことが出来るのかっ!」
もう殺される以外道がない状況で、青は叫んだ。
「ああ。出来ますよ。今さら一人や二人増えたって変わらないですよ」
「一人や二人って、お前・・・」
アッサリと答える清春の言葉に、青は寒気を感じた。
0099Nana
01/12/22 20:30ID:+d5OURwq0100バトル開始
01/12/22 20:31ID:/69VSRENそう語る清春の脳裏に、ユーキを殺めた時の事が浮かんできた。
(ユーキ・・・この手でユーキを刺したんだ・・・)
あの瞬間の感触が手に蘇る――――忘れたくても忘れられない、あの感触。
その時、ピンと張りつめていた清春の殺気が緩んだ。
その一瞬を青は見逃さなかった。
デイパックからナイフを握り締めた手を引き抜き、
もう既に感覚の消えつつある両足を踏ん張り
ありったけの力を込めて清春の腹部めがけてナイフを振り上げた。
0101Nana
01/12/22 20:32ID:F9Ut+Np9ガンバッテ!
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