最新の日記は、
 「オブジェクト指向など、実業務では使いものにならない!」
 間違いない。あの人だ。

 日記の内容はというと、「私は20年以上、企業システムのプログラミングを続けているが、
その中でオブジェクト指向などというものが役に立ったことは一度もない」と始まっていて、
 「staticを使えば、わざわざインスタンスを作る必要などない」
 「独自にクラスを作る必要などない。クラスは使うものだ。作るものではない」
 「20年にわたる経験から明白である」
と、どこかで聞いた言葉が並んでいる。

 吹き出したのは、
 「……私はカプセル化もポリモリズムも意味がよく理解できなかった。従って私はこれは不必要なものだと結論づけた……」
のくだりだった。案の定、コメント欄は炎上状態だった。
最初の方では、懇切丁寧にオブジェクト指向の利点を解説してくれている人たちもいたのだが、
 「あなたの経験は何年だ? 私は20年だ」
 「あなたの出身校はどこだ? 私はT大学大学院卒だ」
 「あなたはSIerだろう。私は客側の人間だ。客の言うことは絶対だ」

などのように、火に油どころか爆弾を投下するような発言が続いたため、親切なコメントはなくなっていた。
 その後も、たまに覗いてみると、
 「ベテランが提案する非オブジェクト指向開発」
 「使えるパターンと使えないパターン」
 「デザパタなどは時間の無駄である」

といったタイトルの日記が定期的に更新されていた。中身はというと、自分が理解できないことを経験だけで批判しているか、
オブジェクト指向を解説しているWebサイトのささいな誤字脱字を針小棒大に批判するか、どちらかでしかなかった。

 たまに別のWebサイトのコメント欄に、オブジェクト指向批判を書くこともあった。当然、技術的な裏付けも何もない、
思い込みによる批判だから、正論で完膚なきまでに叩きのめされてしまう。正面から議論を展開できるだけの知識がないから、
スリービーチさんにできることは、「その日本語はおかしい」とか「若い人はすぐに感情的になるから議論にならない」などと、負け惜しみを書くことだけだった。