>>1の続き

今回の研究では、まず未分化な肝がん細胞がmiR-520dにより、12時間程度でP53、Nanog、Oct4陽性の細胞へ変化し、
miR-520d導入細胞がマウスでそのがんとはまったく異なる組織(奇形腫や正常肝臓組織)を形成したり、
腫瘍をまったく形成しなかったりすることが確認されたのである。高分化型がんでも1カ月程度で同様の細胞へ変化することも判明した。

このことは、悪性度の高い低分化なものほど容易に良性形質になりやすいことを意味するという。
この結果からメカニズムの解析が進められると同時に、治療的効果の検討も行われており、脱メチル化による脱分化誘導がその原因の1つであることが証明された。

ほかのがんでも派生元の細胞の性質をより強く持つまったく異なる細胞へ形質転換できることから、多くの未分化ながん細胞で有用な分子であることがわかったとする。
たった1つの生体分子が、このように劇的にがん細胞の状態を変えてしまうことは、がん根絶の夢が目前に来ており、
この領域の研究および製剤開発が推し進められることで早期に実現する可能性が高まったとした。

高分化な正常細胞から、高分化ながん細胞、中分化ながん細胞、低分化ながん細胞、未分化ながん細胞が発生し、分化度の異質ながん細胞が混在することが多い。
しかも、この中にはがん幹細胞が含まれている。今回の技術は、「特にがん幹細胞比率の高い未分化型がん細胞から、正常幹細胞を誘導でき、
その後、生体環境に適応して分化も進む」、ということを示しているという。

医療の現場では、がん細胞は集学的に研究や治療が試みられており、がん幹細胞の根絶が困難なために、再発が担がん患者の心身を蝕んでいる。
20mer(1merはDNAの塩基1個のこと)という今回の小さなRNA分子のメリットは、がん幹細胞への感受性が高いことで、ほかに治療法のない末期的な担がん状態に奏効すること、
また抗がん薬で有効でなかったがん細胞にがん治療の「アジュバント療法」(メインの療法を補完するもう1つの療法のこと)として奏効する可能性が極めて高いことだ。

このRNAからなるがん細胞へ送達できる製剤との併用により、従来にない作用機序の医薬品としての応用が期待できるという。
またがんに対する核酸医薬の中心的な役割を果たすことが期待できるとする。さらにP53の発現を誘導することから、
再生医療でもiPS細胞の品質管理などに応用できる可能性があるとした。