2007年2月16日 毎日新聞朝刊13版2面

発信箱 「法令順守」でいいのか? 中村 秀明

 海外から入ってきた事象や考え方を日本語にどう翻訳するかは、
意外に重要である。

 たとえば、バレンタインデーを、「バレンティーノ神父の日」
と訳していれば、起源への関心も深まり、商業主義と空疎な消費
行動とは違う文化が生まれていたかもしれない。おまけに以前は
「セント≒聖」が頭についていたが、最近は省略の傾向にあり、
やっていることも一段と本来の趣旨からずれている。

 企業経営でよく話題になる、「コンプライアンス」もそうだ。
本格的に入ったのは90年代後半。「法令順守」と訳したせいで、
常識からずれた主張がまかり通る結果になった。

 「法律さえ守っていれば悪くない」、「法に触れないのだから
責められる覚えはない」という風潮の広がりである。

 ライブドアや村上ファンドの事件は典型だが、ガス扁沸かし器
事故を起こしたリンナイにも、その一端がのぞく。