<第一章>
ゼルは生きていた。アシャンティで陽子に倒されたのは
影武者のロボット、"先行シャア" であった。
あれから十数年、ゼルは未だノアの世界への侵略を諦めず、
浮遊城の瓦礫の下に作った隠れ家で次元の壁を
破る方法を探し続けていた。
一向に進まない研究の手を休める時、いつもの独り言が、

ゼル「あの少年・・、彼に会いたい・・・」

浮遊城内で陽子の心を探ったとき、突然ゼルの中に飛び込んできた
あの"思い"。"片思いの彼"に対する陽子の切な過ぎる"思い"。
その強烈なイメージは、精神力でアシャンティを支配してきたゼルをも
一瞬たじろがせる程であった。

ゼル「あの時、陽子をコントロール出来なかったのは"彼"のせいだ。」
  「いや、陽子の"彼への思い"だけではない・・」
  「私自身も、陽子と同じように"彼"のことを・・・・」
  「しかし、何故、陽子は戻れた? 何故、私は行けなかった?」
  「何故・・・何故?・・・ 何故だっ!!」

月日の流れにも衰える事を知らない、その美しい頬に一筋の光が
ゆっくりと走った。この世に生を受けてから初めて流す涙であった。
 
ゼル「"彼"にふさわしいのは、あんな小娘ではない!!」
  「この・・私だっ!!!!・・・」

嗚咽が廃墟の壁に木霊し、やがて暗闇に吸い込まれ消えていった・・・
その瞬間、ゼルの足元の地面がいっせいに泡立ち、彼の体を包むように
立ち上っていった。泡が消えたとき、ゼルの姿はそこにはなかった。