http://mainichi.jp/articles/20151219/ddl/k27/100/479000c
スクールクライシス学校危機・心と命を救おう HIV、遠くの話ではない /大阪
若者の感染増/放置すれば免疫不全に 検査は匿名、無料/発症遅らせる薬も
11月、米国の著名な男優が、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染していることを告白しました。
HIV感染は海外のことで、日本人には関係がないと思ってはいませんか? 実は、世界全体では減っているにもかかわらず、日本では若い人たちを中心に感染者が増え続けています。
厚生労働省の統計で、2014年の1年間における新規HIV感染者報告数は1091件で、20歳代は349件で過去最多となりました。感染に気づかずエイズを発症した新規エイズ患者の報告数は455件。
新規合計1546件で、累計報告数は2万4000件を超えています。しかも、これらは医療機関を受診し、感染が報告された件数で、氷山の一角です。
HIVは感染してから2〜3週間ぐらいすると初期症状として、喉の痛みや発熱、だるさなど風邪やインフルエンザのような症状が出る人もいますが、ほとんどは自然に症状が消えます。
その後、自覚症状がない状態が平均10年続きますが、その間も体内でHIVはひそかに広がっています。何も治療をしないでいると体の免疫力がなくなり、
普段なら何でもない弱い細菌、ウイルス、カビなどに感染して各種の病気を引き起こします。このような状態を「エイズを発症した」と言います。
同じように無症状で長期間経過する性感染症に性器クラミジア感染症があります。
2006年に日本化学療法学会に発表された今井博久氏らの調査では、性交経験のある女子高校生の13・1%、男子高校生の6・7%が無症候性クラミジアに感染していました。
とくに16歳女子では17・3%の高確率でした。女子では初性交時の年齢が低いほど感染率が高くなる傾向があり、14歳以下すなわち中学生の時に初性交を経験した
女子高校生では17・9%という突出した感染率でした。また、男女ともに性的パートナーが増えれば増えるほど感染率が高くなっていました。
クラミジアに限らず、性感染症にかかるということは、HIVにも感染する可能性があるということです。しかも、クラミジアや淋病(りんびょう)
などの感染症で粘膜が炎症を起こすとウイルスの侵入口になるため、健康な人の何倍もHIVに感染しやすいと言われています。
HIVの感染経路は主に(1)性行為(2)血液感染(3)母子感染の三つです。このうち、血液感染は輸血のほか、タトゥー用の針や注射針の使い回しなどによります。
日本での感染のほとんどは性行為によるもので、コンドームを正しく使用することで感染の危険性を大幅に減らすことができます。
そして、もし、感染が疑われる場合には、検査を受けましょう。HIV抗体検査や相談は全国の保健所で、匿名で、原則無料で受けられます。保健所によっては、他の性感染症の検査も実施しています。
検査は1〜2週間に1度、平日の限られた時間帯のところが多いので、ネットや電話などで確認しましょう。当日結果がわかる場合もありますが、通常は検査の1〜2週間後に本人に対面して結果が知らされます。
HIVに感染してから血液中に抗体が検出されるようになるまで数週間かかるので、感染の可能性があった日から3カ月後以降に検査を受けるとよいでしょう。
なお、現在はネットなどに郵送検査キットの宣伝もみられますが、現段階で日本では、家庭で使用できる自己検査キットとして承認されたものはありません。信頼のおけない検査では、かえって早期治療の機会を逸してしまう危険性さえあります。
なお、検査目的の献血は絶対にやめましょう。まれに感染直後の献血でウイルスを検出できずに、輸血によって他人に感染させてしまうことがあります。
エイズを完治させる治療法は確立していませんが、早期に治療を開始すれば、薬を飲み続けることで発症を遅らせることができるようになりました。HIVは空気中での生命力が非常に弱く、日常的な接触では感染しません。
周囲の人たちが必要以上に怖がり、偏見を持てば、感染した人はますます隠すようになり、結果的に感染を広げることにつながります。正しい知識を持ちましょう。