2009/09/24(木)の朝日新聞夕刊東京版7面 文化面より


「台湾認識――親日・反日を超えて 中国との距離 映し出す」
丸川 哲史 明治大学准教授(台湾文学・東アジア文化論)

過去の日本の台湾統治を取り上げたNHKスペシャル「JAPANデビュー アジアの”一等国”」
が各方面を巻き込んだ議論に発展している。

内容に不満を持つグループが、番組内容に「偏向」があったとして損害賠償を求める民事訴訟
も起こしている。それらの人々は、番組が台湾のイメージを「反日」へとねじ曲げて演出したとして
反発しているらしい。いずれにせよ、台湾をどのようにイメージするかという問題であれば、台湾
そのものよりも、日本の「台湾認識」が問題なのだ。

(中略)

しかし、2008年3月の総統選挙によって、経済重視の姿勢から、大陸中国との融和を唱える馬英九
総統が誕生するに至り、今日台湾は、大陸中国との間での敵対関係を低減する傾向にある。
私の杞憂であればよいのだが、今回の番組に反発する人々の言動をみると、近年のこの変化に
焦りを抱いているように観察される。

問題の番組は、日本の「台湾認識」にかかわる議論を引き起こしつつあるわけだが、その裏側にある
のは、日本にとっても台湾にとっても、「中国認識」の問題である。宿命的でもあると思うが、「台湾認識」
は、いかに中国を認識するかという「中国認識」とセットにならなければ意味を持たない。結局のところ、
親日/反日という分類は、台湾/中国という裏の構図として日本のアジア認識を作っているのだ。