産経新聞夕刊
お堀の内側で見る女性天皇論 伝統は「柔らかく」継承
社会部 豊川雄之

 敬宮愛子さまの誕生にあたって、“大大叔母”にあたる高松宮妃喜久子さまが、女性誌「婦人公論」(中央公論新社)で、男児誕生への期待を述べる一方で、「長い日本の歴史に鑑みて(女性天皇は)決して不自然なことではないと存じます」とつづられた。
 敬宮さま誕生に関して皇族方が女性天皇問題に言及したのは初めてのこと。宮内庁には直面する最も大きな懸案の一つである半面、「宮内庁が議論の先頭を切るわけにはいかない」(幹部)微妙な問題でもあった。

 大上段に歴史を振り返ってみれば、中世以降、天皇家は、幕藩体制、近代の明治憲法、戦後の現行憲法の下で、時代に沿いつつ歩んできた。

 「本音で言えば、男系の伝統を守りたい」という宮内庁幹部も、男系を守るための旧皇族の皇籍復帰や養子縁組には「世の中に受け入れられるのは難しい。仮にこのままならば(女系による継承の)他に選択肢はない」と打ち明ける。
 
 皇位継承は政治問題であると同時に、天皇家の私的な問題でもある。
 天皇陛下は、外国訪問や王室来日の際に、同じ悩みを抱えている各王室の話に耳を傾けられていると聞く。
 印象的だったのは敬宮さまが誕生した翌日の昨年十二月二日、記者団が病院前で天皇陛下に初対面の感想を尋ねたときのことだった。
 天皇陛下は、こちらが拍子抜けするほどてらいのない笑顔で「とってもよかったね」と皇后さまに笑いかけられた。継承問題について、誰よりも深く考えられているはずの天皇陛下が見せた笑顔からは、男児でなかったことについて一点のわだかまりも感じられなかった。
 残念ながら直接、気持ちを確かめる機会はないが、長く子供に恵まれなかった皇太子ご夫妻を純粋に祝う気持ちとともに、陛下は継承問題について、自身のなかで、何か“柔らかく”整理をつけられているのではないだろうか。
 皇室にとって難しい時代、仮に「男系継承」の伝統が失われ、社会の在り方が変わったとしても、こうした「柔らかさ」が、皇室に受け継がれてきた、ひいては私たちの社会の伝統なのかもしれない。お堀の内側で、そう考えている。