いまから10年ほど前、当時の職場にハタチ過ぎの事務の派遣の子がいた。
容姿は当時の流行りのギャルだった。
その子は夜の仕事も掛け持ちで、ガールズバーでバーテンダーをやっていた。
毎日ガールズバーから帰るのは午前様で、朝は職場に8時に出社。
さすがに身体がつらいらしくて、勤務中によく愚痴をこぼしていた。
しばらくして仲良くなってから、「どうしてそんなに働いているの?」と聞くと、
「着物のローンがあるから」という答え。
「着物ってなに?」聞くと、「京都の有名な呉服屋さんの支店で、販売員をしていた」と言う。
よくよく聞いてみると、展示会でお客のふりをして場を盛り上げるサクラをしていたらしい。
そして自分も高額のローンを組んで、高価な振袖を何枚も買ったらしい。
詳しいローンの残高は聞かなかったが、3桁はくだらない雰囲気だった。
ついでにガールズバーの店長が既婚者で、その子にちょいちょい誘いをかけるらしく
それも悩みの種で、あと離婚した両親が二人とも経済的に苦しいとも言っていた。
はじめは明るい子だったのが、だんだん無口になっていた。
それからしばらくして、その子が徐々に遅刻欠勤するようになり、ついに上司が怒り、
派遣会社に苦情を出した。そうしてその子の契約更新はなくなった。
最後に私物を取りに現れた時、痩せて具合が悪そうに見えた。
私が貸したお笑いのビデオテープ(VHS)をばらばらに分解したので返せないと言って謝った。
そして「店長に恨まれている」と言って怯えていた。
目がひたむきで据わっていて、誰も何も言えなかった。

その後、派遣会社から新人が入社、派遣の営業から聞いたとその子の話題が出た。
結局メンタルを病んで田舎に帰ったという。

今朝、新聞のチラシにどこかの呉服会社の展示即売会の広告が入っていた。
それがきっかけで、ふとその子のことを思い出して数年ぶりにどうしているのかなと思った。
ひとなつっこくっていい子だった。
今、幸せでいてくれたらいいのだけれど。