あるところに一人の少年がいた。
 こいつときたらそれはそれはガムが好きで、暇さえあればいつもガムを噛んでいた。それこそ味気がなくなってもずっと噛んでいるのだ。
 ある日ガムを買おうと駄菓子屋へ行くのだが、この日に限っていくら店主を呼んでみても一向に出て来る気配がない。
 少年は駄菓子屋の店主に怒りを覚えた。
 そしてあろうことか右手に持った十円ガムを持ったまま店を出てしまったのだ。
 しかし店を出るとその怒りはすぐに立ち消え少年は焦った。

誰かに見られていて警察に付き出されたらどうしようか……。

 そう思うと焦りは頂点に達し、すぐ先にある踏切のところで転んでしまい、したたかに片膝を打ち付け血が吹き出した。同時に左手に持っていた十円玉はいつの間にか踏切と線路の隙間に入り込んでいった。
 するとそこに待ってましたと言わんばかりに、遮断機のけたたましい警報が鳴りだしたので大変だ。少年は足の痛みも忘れて、家まで数キロの道のりを脱兎の如く走って走って走りまくった。
そして家に付くと

 もう二度とこのような真似はいたしません……。

 とガムを噛みながら誓いを立てたのであった。