ふと、思い出した。今日はあの娘の命日だ。
 今の今まで忘れていたけれど、確かにあの娘の命日だ。
 あの娘の事を思い出すとなんだか苦い記憶が蘇ってくる。
 あの娘が原因で疎遠になった仲間がいるし、結局の所俺はフラれてしまったのだから良い思い出ではない。
 だけど、思い出の善し悪しじゃなくて思い出してしまったのだから何かをしなければならないとは思う。
 花を捧げる? 俺は彼女の好きな花を知らないから却下。
 あの娘の眠る慰霊碑にでも行ってみる? 今からだと帰りが遅くなるから却下。
 アルバムから彼女の写真を取り出して見てみる?
 一番簡単で手っ取り早いからそれに決定だ。
 探せば色々出て来た。隠し撮りした写真や書きかけのラブレターがとか色々ある。
 若気のいたりと言える物残しているとは片腹痛い。
 必要無いものを後生大事に残しておいてあるとは、我ながら女々しい野郎だな、思ってしまう。
 無用の長物を見ていると、思い出が鮮明になってくる。嫌な思い出ばかりだけれど。
 そう言えば、あの娘を巡ってケンカ別れしたアイツは元気だろうか。
 風の噂だと外国にに渡ったとか渡らないとか。多分、行動に筋が通って無いのは変わっていないだろう。
 三つ子の魂百まで、なんていう諺もある。
 さて、この無用の長物をどうしようか。残しておいても良いけどなんだか癪に触るし困ったものだ。
 そうだ。いっその事、火にくべて燃やしてしまおう。
 線香代わりに燃やしてしまえば思い出す事もないだろう。
 思い出したのが命日だったから、思い立ったが吉日だ。
 善は急げと新聞紙とライターを持ち出して庭で火を着けた。
 一枚一枚火にくべて灰にする。風が無いから煙は真直ぐに天に登っていく。
 なんだか涙が出て来た。煙が目に染みた訳じゃない。多分、俺は彼女に心底惚れていたのだろう。
 心の傷が鈍く痛み出す。  まあ、なんだ。罰が当たる訳でもないから彼女の冥福ぐらいは祝ってやろう。
 さよなら、俺はお前の事が嫌いだけど好きだったよ。

――幕。


これも某所に投下したのをいじくった奴