世界は雑音に満ち溢れている。騒々しくて喧しくて嫌になるくらい不愉快だ。
 耳障りな音だけじゃない。見る風景にも全て忌々しいノイズが掛かっている。
 朝から晩までのべつくまなく雑音とノイズに辟易とさせられる。
 だから音楽を聞く。
 生温いポップスなんてクソ食らえ。そんな物は紛い物だ。もっと激しい奴じゃないと全てがクリアーにならない。
 腹に響く様な爆音を叩き出すドラム、銃声の様なリズムで頭を貫くベース、嵐の様に全てを吹き飛ばすギター、絶叫ともいえるダイナミックなボーカル。
 精神と肉体は、不協和音に近い不透明な音色を求める。
 全てをズタズタに切り裂く様な鋭さを持つ音こそが本当の音楽。
 イヤフォンでボリュームを全開にして聞くと、この世に満ち溢れている雑音とノイズを吹き飛ばしてくれる。
 音楽がもたらす快感は絶頂に達してしまいそうになる程のエクスタシー。
 脳髄が揺さぶられて、身体の細胞が一つ一つ活性化していくのが分かる。
 陶酔と恍惚が精神と身体を支配していく。
 何がなんだか解らない衝動に駆られる。
 衝動は天国へと続く階段。一歩一歩踏み出す度にハイになっていくのがわかる。
 その衝動は破壊衝動に容易く変わる。戦闘に出ればそれがハッキリと解る。
 目の前の敵をズタズタにしたくなる。敵だけじゃなくてウザいアイツらも潰したくなる。
 僕以外の奴等をこの世から消してやりたくなる。
 誰にも止められない衝動が加速する。衝動がビートを刻んで魂を揺さぶる。
 揺さぶられた魂が僕を解き放つ。
 全てのものが関係ない、凶暴なビートとリズムの世界が見える。
 でも、そこまで。至高の世界に到達する事は出来ない。クスリという手枷足枷に繋ぎ止められるからだ。
 天国から地獄。禁断症状は嫌いだ。世界に満ち溢れる雑音とノイズを加速させる。
 不快感が虫みたいに肌の裏を這い回って苦痛にまみれる。視界が閉じて真っ暗になって疎外感に頭をぶん殴られる。
 こんな身体じゃなかったら。クスリ漬けの身体じゃなかったら。
 至高の世界に行ける筈なのに。凄く悔しい。

 雑音とノイズ、クスリ、そしてクスリ漬けの俺の身体。世界の全てが―――ウザい。
 
――幕。