するとAは、
「違う違う、自分の子供を育てるだけのことだよ、大変だなんて思う親がどこにいるんだ」
「できて当たり前の子育てをがんばれと言うのなら、もちろんがんばるよ」
「そういう意味ではオレは普通の親が普通に子供を育てるよりも、もっともっとたくさんの愛情をこの子に注げるんだよ」
「だから憐れまれるなんてありえない、うらやましがられて当然なんだよ」

僕たちはただただ、「そうだよなぁ」「そうだよなぁ」を繰り返すしかありませんでした。
子供のいない僕はそう言い切れる彼がとてもうらやましくもありました。

お子さんは産まれてからずっと病院だそうで、来月やっと彼と奥さんの待つ家に帰るそうです。
Aの父親としてのカッコ良さにあてられた形で、飲み会は朝まで続きました。
酔っ払って、みんなの話題がループしだした頃からAは
「来月なんだよ、来月。我が家の姫がね、帰ってくるんだよ」と本当にうれしそうに話します。
3度目ぐらいのAのその発言に耐え切れずCが泣き出しました。
「おまえ、ホントかっこいいよ」と言ったまま居酒屋のテーブルに突っ伏しました。
釣られてみんな泣き出して...40前の野郎が数人明け方の居酒屋でなんともはや。
最後まで泣かなかったAもついに涙をみせました。
「お前らが泣くのも無理はない、なんせ俺様の最愛の姫がやっとウチに帰ってくるんだからなぁ」
そう言いながらAは泣きました。
「ありがとうな、俺の世界で一番愛してる娘だからなぁ」
「おれ本当に世界で一番愛してるんだよ、誰が何と言おうとさぁ」

姫の退院の日が終わってAが落ち着いたらまたみんなで集まって飲もうと思います。
何か彼の役に立てるとしたら一緒に飲むしかない野郎どもですから。