>>46 つづき

イデアルが与えられたとき,その剰余環というものを以下のように考えることができる.二項関係および同値関係とそれによる商集合については集合位相の教科書を参照されたい.
定義16(剰余環) R を環,a ⊂ R をイデアルとする.a, b ∈ R が同値a ? b であることを,a ? b ∈ a であることとして定める.
この二項関係? はR 上の同値関係になる.この同値関係による商集合をR/a で表す.
a ∈ R がR/a において属する同値類を[a] で表す.R/a の中に和と積を[a] + [b] := [a + b],[a][b] := [ab] で自然に定めることができる.
これは各類の代表元の取り方によらない.剰余環にはもとの環から標準的な全射環準同型R R/a が存在する.この準同型の核はもちろんa である.
例17 n を正の整数とする.有理整数環Z のイデアルnZ による剰余環Z/nZ を考える.このとき,Z/nZの各代表元を0, . . . , n ? 1 で取ることができ,
このようにZ/nZ の元を表しておけば,標準的な全射は各整数に対しn で割ったときの剰余をとる写像と考えることができる.
これがイデアルによる商を考えたものが剰余環と呼ばれる所以である.
演習18 環R のイデアルp が素イデアルであるための必要十分条件は,剰余環R/p が整域であることである.
また,イデアルm ⊂ R が極大イデアルであるための必要十分条件は,剰余環R/m が体であることである.特に,極大イデアルは素イデアルである.