>>489
つづき

斎藤 幾つか具体的な例を挙げていただけませんか?

コンセビッチ 私の研究でいつも現れる非常に幅広い理論の一つは、非可換幾何、非可換代数、および弦理論の間の関係についてです。
私はこの、例えば行列の積(結合則は成り立つが非可換)と表面の幾何学の間の関係について、数多くの研究課題を抱えています。
幾何学的直感と代数的直感の間には実に驚くほど多くの関係があります。
過去の例で思い出すのは、1992年と1993年から私が形式代数的類推によりホモロジカル・ミラー対称性を提案したことです。
物理学者がDブレーンを言いだす数年前でした。ですから、ストリングの理論家たちは同じものを数年後に物理の言葉で再発見したのです。
しかし、この発見により、三角圏という非常に抽象的な代数理論の言葉で記述されるホモロジカル・ミラー対称性が、今や物理学者によって実際に使われているのです。
これは全く予想外でした。何しろ、それは最も抽象的な数学理論の一つですから。

斎藤 ではあなたはそれが物理の方で使えるだろうとは期待しなかったのですか。

コンセビッチ しませんでした。私がこの理論に到達したのは、ミラー対称性という現象の究極的な定式化に見えたからです。
しかし、物理学者たちは実際にはそれを違う枠組に持ち込みました。
弦理論の模型において物理量を計算できるような可能性をもつものです。
つづく