初等整数論においては素数が重要な役割をもつ。
よって Z[ζ] において素数にあたるものが何かを考えよう。

まず考えられるのは既約元、つまり可逆元でない元の積に分解されない
元である。しかし、一意分解整域、例えば有理整数環では既約元は
素元でもある。一般に整域 A の元 p ≠ 0 に対して pA が素イデアルと
なるとき p を A の素元という。つまり可逆元でない元 p ≠ 0 が
次の性質(*)を満たすとき p を素元という。

(*) p|ab なら p|a または p|b である。

整域において素元は既約元である(確かめられたい)。
既約元が素元になるとは限らないが、一意分解整域ではそれが成立つ。
つまり、次の命題が成立つ。

命題
整域 A において、可逆元でない任意の非零元が既約元の積に
分解されるとする。
このとき、A の既約元が常に素元なら、A は一意分解整域である。

証明
a ≠ 0 を A の可逆元でない元とし、
a = (p_1)...(p_r) = (q_1)...(q_s) となるとする。
ここで、各p_i, q_j は既約元である。
仮定より p_1 は素元だから p_1|q_j となる j がある。
必要なら q_1, ..., q_s の順序を入れ替えて j = 1 と仮定してよい。
q_j は既約だから p_1 と q_1 は可逆元の積による違いを除いて一致する。
よって、可逆元の積による違いを除いて (p_2)...(p_r) = (q_2)...(q_s)
となる。以上を繰り返して(正確には数学的帰納法を使って)
本命題の主張が得られる。
証明終