平成17年、日本の大学における学問は腐敗の極に達していた。
本来の学問が忘れ去られ、享受たちは、あるいは学内政治に、
あるいは霞ヶ関でのロビー活動に、あるいはセクハラやアカハラに励む毎日だった。
ちょうど同じ頃、特殊法人NHKでも組織の腐敗が進み、
「紅白歌合戦」の元チーフプロデューサーら2人が番組制作費の流用による詐欺容疑でタイーフォされた。
さらに追い討ちをかけるように、ETV特集「問われる戦時性暴力」に
政治的圧力の介入を許したのではないかという疑惑が持ち上がり、
海老ジョンイル独裁体制は大きく揺らいだ。
その結果、受信料不払いが燎原の火のように広がり、受信料を収入の柱とするNHKは財政危機に陥った。
その対策として、日曜昼の定番だった「のど自慢」は経費節減のため
オンラインで行われることになった。
平成17年1月23日の日曜の午後、いつもとは違って人気番組「のど自慢」が
オンラインで流れていた。「のど自慢」は昭和21年1月19日から放送され、
聴取者直接参加の公開番組である事が大いに受け老若男女がこれに挑戦しのどを競った。
カーンと鐘が一つだけで舌を出して照れ笑いする者や、鐘の連打でネラーの拍手を受け得意満面な者、
「のど自慢」の雰囲気はオンラインであっても容易に窺い知ることができた。
そうやって何人かが歌い終わった頃、崩れ院生らしき男の番になった。
男は「10番岩井洋!“明日も今日も”」と曲目を紹介した後、
「この歌は自分が駒場抑留中、同級生とよく歌った曲です。我々はこの歌によって励まされてきました。」
と口上を述べたのち、この作者不詳の歌を唄った。
劣悪な駒場の研究教育環境に耐え抜いた精神力がこの歌に良く表れていた。
ざわめいたオンラインがどよめきに変わりそして静寂となった。
科哲からはブーイングする者も多くいた。(続く)