ミスディレクションとしてのトークですが、
なんかの本に書いてましたが、相手に何かをビジュアル的に考え込ませる内容が良いとのことです。

「選んだカードがなんだったか覚えてますか?」
と聞くと、客は(クラブの4)のカードを「絵の情報」として頭の中に思い浮かべます。
「4」という数字だけでなく、クラブのマークを思い出すわけです。
人の脳は、そういうことを思い描きながらも、別の仕事ができるようになっています。

何かを考えながら車を運転していても、何の事故も起こさず目的地に行けるのは、人の脳が
仕事を並列して処理できるからです。
ただし、うっかり曲がる角を見落としたり、降りる駅を通り過ぎたりしてしまいます。

パスするのは、相手の頭の中に、一瞬クラブの4を描く瞬間です。
たとえ演者の手元が怪しくても、客はその不自然さには気付かない可能性が高いのです。

逆に、見破ろうとする客は演技の内容や流れもおろそかにして、手元の動きに神経を集中しています。
人の動体視力には、パケットの動きくらいなら簡単に追従する性能があります。
若い人ほど、この能力が高い。30歳くらいをピークに、衰えていきます。
だから、人に見られてパスするのに自信がないという人は、技量が足らないというのもあるけど、
ミスディレクションがヘタだということもあるわけです。

前田さんが技法を繰り出すのは、話しかけて、相手が考えている時に限られると言って間違いありません。
そういう意味で、前田さんは一流のマジシャンなんです。