「とまぁ、これが始まりだったかな」
 昔を振り返り、懐かしそうに語る祐一。
「それって、ママっていうか、おじいちゃん達全員にはめられたってこと?」
 聞き手は彼の一人娘だ。
「さあな、未だに誰も教えてくれないんだ」
「それでいいの」
「ああ、今が幸せだからな」
「わ、パパよく真顔でそんな恥ずかしいこと言えるね」
「ふっ、俺の得意技だからな。こんな台詞を言うと、ママは結構喜んでくれたんだぞ」
「ママはドラマ好きだからね。結局、そのままなし崩し的に結婚しちゃったの?」
「そうでもないな。その後いろいろあったんだ。いろいろな」
「聞きたーい」
「また今度な」
 尚も食い下がる娘を受け流しつつ、部屋の片隅に置かれているヌイグルミに目をやる。
 あれから年月が経ち、色あせ、何度も補強を繰り返し、いつしか『主』と呼ばれるようになったヌイグルミ。
 そう、いろいろあったけど、今が幸せなら問題ないな、相棒。
 祐一の無言の問いかけに、『主』はあの日と変わらない笑いを浮かべた。