>>944
化学変化が終わる。マーブル模様が、ひとつの色になる。
雨は…何時の間にか、あがっていた。

「神岸さん…泣かへんかったね」
「そうだな…」
ずぶ濡れだった二人は、それを気にもかけず、肩を並べ歩いていた。
雲の切れ間から、かすかに光がのぞいている。
「私やったら、きっと泣いてたと思う…」
「…そうか…そういうモンか…」
「なぁ…どうしてやと思う?」
「どうしてって…そりゃ、委員長が俺の事好きだから、だろ?」
これまで複雑だった浩之の表情が、少しゆるむ。
「そ、それはまぁ…そうなんやけど…」
「そーだろそーだろ。俺だって委員長の事好きだぜ?うぷぷ…」
「…でも、それだけとちゃうんよ?」
「え〜、なんだよそりゃ。他には…なんでだよ?」
「私が…」
「ふむふむ」
「…私が、藤田君に女にされたからや」
「…」
「私な…、あの時、藤田君の家で泣いてもうた時。
 自分でもちょっとびっくりしてたんや。
 腹も立ったし、悲しかった。そして、自分が女なのを実感した。
 本当は、こんな事じゃ二人は別れへんって判ってたかもしれへん。
 それなのに、あんなに泣いたんは…私が女になったからや。
 藤田君の女に、な…」