「どっかに一本くらいおっこってねえかなぁ…傘」
 下駄箱に向かう道すがらきょろきょろとあたりを見回すが見当たらない。
 結局下駄箱についてしまった。
「ふぅ、しかたねぇか…」
こんな時のための鞄だ。俺はドアを開き、校庭に踏み出そうと…

「…あっ」
「ん?」
 柱の影にいた人物がこちらに気付いたようだった。
 俺も声が聞こえるまで気付かなかった。
「委員長!」
「藤田…くん…」
 露骨に嫌そうな顔をしている。
「なんだ、委員長も傘忘れたのか?ははは」
 勤めて明るく話しかける。
「関係ないやろ?」
 冷たいお言葉…
「な、なぁ、久しぶりに一緒に帰らねえか?」
「家、反対方向や」
 徹底的に嫌われてるな。
「いいだろ?俺が委員長と帰りたいんだよ」
「っ! 知らんわ!!」
 委員長は走り出した。雨の中へ。
 俺は、また雨の中を帰るのは嫌だった。一人で帰るのはもう嫌だった。
「待てよ!」

 俺は追いつかなきゃいけない。今度は絶対追いつかなきゃいけない。
 一人で帰るのは嫌だから。