とかなんとか言っている内に、はるかが舌を挿し入れてきた。
 ゴムだかグミだかがぬらりと光って、俺の口内に纏わりつくような独特の感触だ。
「んっ、んっ、んっ……」
 ふと気付くと、俺の方も積極的に舌を絡ませていた。
 ここが電車の中だとか、
 衆人環視の中だとか、
 俺とはるかは恋人同士でも何でもないこととか、
 そんな余計な要素を置き去りにして、二人で必死にくちづけを
交わした。
 ――やがて、呼吸が困難なくらいのキスをし終わって、
ちょうど電車が駅に着いた。
 ――ところが。
 蛍ヶ崎学園の制服を着た女の子がつかつかと、
俺たちに歩み寄り、突然俺の頬を張った。
「――不潔! 変態!」
 そう言うなり、泣きながらはるかの方を睨んだ。
 はるかは黙ってラブレターを差し出した。
「こういう訳だから、ごめんね」
 彼女はそれを受け取ると、泣きながらその場を去って行った――。
「ん、解決した」
「はるかなあ、女の子なら最初にそう言えよ!」
「んー……別に必要ないと思ったし」
「あるわ!」
 俺のツッコミにふふ、とはるかは軽く笑って、
「いいから、いこ。……手、握る?」
「……ああもう分かったよ」
 最初からはるかに余計な心配をした俺がバカだってことだ。
 ……まあ、とりあえず手は繋いでおこう。
 俺とはるかは、いつもより少しだけお互いの距離を狭めて
歩くことにした。                       <了>