<瑞希の初体験・同人紙編> その8

 1ヶ月後。
 こみパ会場のジャンル「その他」に、瑞希のサークル『おいしい紅茶屋さん』のスペースがあった。
 サークル主催者、高瀬瑞希の初の同人誌『美味しい紅茶の入れ方』は、紅茶にまつわるショートストーリーと紅茶のさまざまなうんちくが綴られたコピー本だった。
 それは30部という小部数だったにもかかわらず、購入したお客さんたちには好評だったという。

「なんだ、同人誌を作るっていうからどんなやつかと思ったけど、やっぱり瑞希らしいものだな」
「わるかったわね、オタクっぽくなくて」
 帰り道、瑞希の同人誌を読みながら俺達は帰途についた。
「で、どうだ。はじめてのサークル参加は」
「そうね。やはり自分で作った本が売れたときは嬉しかったな。こういう喜びがあるから、同人誌って止められなくなるのかな」
「そうか」
「ねえねえそれでね、紅茶がらみでお客さんたちと話し込んじゃってさあ、今度紅茶の美味しいお店を教えてくれるんだって……」
 瑞希のはじめての即売会は、どうやら成功だったようだ。
 俺は、瑞希の楽しそうな話ぶりを飽きずに眺めていた。