<ルミラのクリスマス> その2

「あーあ。そういえばクリスマスにはプレゼント交換がつきものだよなあ」
 イビルは街を散策しながら呟いていた。
 今回のクリスマスパーティはルミラにはまだ内緒にしてある。
 いきなり本番でルミラを驚かせようというサプライズド・パーティだ。
 幸い、知力の高いルミラは今日も家庭教師のバイトに出かけている。
 しかし露天商を営んでいるとはいえ、日頃の生活費でかつかつのイビル達にそうそうプレゼントが用意できるはずもなかった。
「いったいルミラ様は、何を喜ばれるのかな」
 それは、考えるまでもない。
 ルミラの一番の望みは、破産して抵当に取られた屋敷を取り戻すこと。かつての魔界の貴族としての地位と威厳を取り戻すことである。
 したがって、お金を一円でも多く溜めておくことが一番喜ばれるはずだ。
「そう考えるとクリスマス・パーティで無駄金使うのは、あまり好ましくはないはずなんだけどね」
 とはいえ、イビルの目から見ても、ルミラが日頃からストレスを溜めているのは分かっていた。
 家計簿を見て頭を抱える姿をだ。
 アレイは真面目だが、残念ながら数字には弱いタイプだ。
 メイフィアは理性的だが、真面目になって働くことには縁遠い。
 フランソワーズは自動人形(オートマター)なので、管理する側ではない。
 たまとイビルにいたっては口より先に手が出るタイプで問題外である。
 したがって一族の家計簿の管理という地道な作業は、エビルと本来主人であるはずのルミラが行なっているのだ。
 そしてその家計簿の内容はまっかっか。赤字である。
 主たる原因はイビルとたまのケンカのとばっちりにおける弁償代である。
 両者の間でケンカが始まると、押しの弱いアレイでは止められず、メイフィアは傍観者に身をおく。
 エビルはそういうことには無関心なので、ケンカが始まっても止めることはしない。
 しかし、一族再興を悲願とするルミラにとっては黙って見過ごせるものではない。
 必然的に、イビルとたまを最後に説教するのはルミラの役割になるのだ。
「やっぱり機嫌ぐらいはとっといた方がいいよなあ」