「藤井さん……なぜ? 泣いているのですか?
 ……申し訳ありません、私はまた……」
「…違う。違うんです。
 弥生さん……俺……」

なぜ、あの時――

「俺……なんでこんないつも……
 由綺をキズつけることしかできないんだ!」

あんなに涙が出たのか、今でもわからない。

「彼氏のくせに、なんで由綺を泣かすんだ……
 彼氏になるって……恋してくって、ふたりで決めたのに……
 なんで、由綺をなにひとつ守ってやれないんだ……
 由綺が悪いわけじゃないのに………でも……でも、俺だって悪くない。
 俺だって………わっ…わからないんだ。どうしていいかわからないんだ……!
 俺…由綺が好きだ…!
 由綺が好きだ!」

声に出したそのコトバは、部屋の暗闇にいとも簡単に吸い込まれて消えた。

俺は、ザンコクだろうか?

由綺は今も、どこかで歌っているんだろうか?

(聞こえる……冬弥くんの心臓の音……)