「う……く…っ…」
一日の修練を終え、地下通路で晴香、由依と打ち合わせも終えて、部屋に帰ろ
うとしていた郁未。その郁未が、熱い吐息を吐きながら、頼りない足取りで歩
いている。
「く……ぁ…っ…」
ドスンと壁によりかかる郁未。
兆候は以前からあった。FARGOに来てから徐々に徐々に、この兆候が出始
めていたのだ。MINMESやELPODの影響か、それとも食事の影響か、
それとも……
いずれにしても。よく考えてみれば自分達は、敵の懐に飛び込んだようなもの。
どんな目にあわされても、何をされても、何の不思議もない過酷の中に、郁未
はその身を置いているのだから。
「く……っ!」
ビクン。
我知らず身体が震える。
両腕で両肩を抱き、表情を歪めて波が収まるのを待ち続ける。
「――……はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁ…っ!」
荒く熱い吐息を、唇から吐き出す郁未。
とにかくこのままではヤバい。なんとかしなくては。

「おかえり。……どうしたの、体調でも悪いのかい?」
「……ま、まぁ、ね……でも、だ、大丈夫……」
太股を擦りあわせ脚をガクガク震わせて、両肩を抱きしめて、額に脂汗を浮か
べて瞳を潤ませている、そんな郁未の姿はどうみても、大丈夫なものであると
は思えない。
(……なるほど、そういうことか。まったく残酷なことをする)
震える唇から熱い吐息を漏らす郁未。
少年はそんな郁未を可哀相だと思いながらも、面白そうだと唇を歪めた。