「…お、重っ!?おい詠美、なんだこりゃ!?」
「そりゃそうよ、今回の新刊はボリュームちょお満点の84ページだもんね!」
「マジかよ…」
 ところが、今回詠美の描き上げた同人誌はページ数が半端ではありませんでした。
人並みに体力はあるつもりだった和樹ですが、箱を持ち上げるだけでも一苦労です。
売り子のみんなも大変なのは同じらしく、寒空の下一様に汗をかいていたりします。
「ったく…これだけ描くのはすごいけど、運ぶ身にもなれよな…ぐあっ!!」
どすんっ!
 どうにか箱を抱え上げ、移動させようとした瞬間…和樹は指を滑らせ、その並外れた
重量物を足の上に落としてしまいました。冬の乾燥肌に、ダンボールの表面が馴染み
にくくなっていたためです。しかも右足のつま先に直撃したものですからたまりません。
 和樹は思わず涙目になり、つま先を押さえながらその場に座り込んでしまいました。
もちろん立ってなどいられません。気を抜けば激痛に悶え転げかねないくらいです。
「…ふ、ふんっ。みんな二人で運んでるのに、あんただけカッコつけてひとりで運ぼうと
するからよ。きっとあたしに歯向かったバチが当たったんだわ。いい気味〜!」
「く、くそぉ…まぁ確かにオレに落ち度はあったが…」
 そんな和樹を気遣わしげに見つめながらも、詠美はどこか強がる風に言い放ちました。
そしてわざとらしく視線をそらすと、肩をすくめながら憎まれ口まで叩いたりします。
 和樹は痛みと悔しさに耐えるため、きつく唇を噛み締めるのみでした。