「ゆうぐれ」

 セリオさんは僕んちの近所に住んでいるお姉さんで、ロボットだ。
 僕はいつもセリオさんのところに遊びに行って、色んな話をする。
 セリオさんは何でも知っていて、僕に色々なことを教えてくれる。
 コーヒーのいれ方を教えてくれたのも、セリオさんだ。

 今日はセリオさんのスクーターの後ろに乗っけてもらって、ちょっと遠出をした。
 セリオさんの背中に、しがみつくようにして連れてきてもらったのは、
崖がいきなり海に落っこちている、「大崩れ」と言う場所。
 セリオさんはそこで夕日を見るのが好きだった。
 「よし行こう」と言うことになったのが、昼をだいぶ回ってからだったから、
着いたときにはもう夕闇が迫っているような時間だった。

 僕はセリオさんと並んで座って、海の向こうに沈んでいく夕日を眺めた。
 風が海からびゅーっと吹いてきて、僕とセリオさんの髪をなびかせていく。
 セリオさんはひざを抱え、何も言わずに夕日を見ていた。
 僕も同じようにひざを抱えて、何も言わずに夕日を見ていた。
 夕日が水面(みなも)に近づくにつれて、赤かった空がどんどん紫色に染まっていく。
 ふと隣にいるセリオさんの方を見た。
 セリオさんの横顔は、夕日に照らされて茜色に染まっていた。
 その横顔はとてもきれいで、でもなんとなく悲しげだった。
「ねえ、セリオさん」
 そう言いかけて、やめた。
 なぜだか胸がドキドキしていた。
 セリオさんは、夕日が沈んであたりが暗くなるまで水面を見ていた。
 僕は、そんなセリオさんの横顔をずっと見ていた。
 何も言えず、とにかくその横顔を見ていた。

(つづく)