喜び湧く香里陣営に、僅かな緊張が走る。
対戦相手・風見鈴香が一歩一歩、香里に向かって歩いてくる。
頷き合う祐一と北川。万が一のため、遠巻きに香里をガードする。
しかしそんな緊張をよそに、鈴香が香里の目の前にまできた。
「美坂さん」
そういって香里に笑いかけると、一着のストールを手持ち袋から取り出した。
「あ……」
「栞?」
「あははっ。栞さんは、私のことわからなかったみたいですからね」
「ごめんなさい……」
「いえいえ。それよりも」
そして鈴香は、手に持っていたストールを、何故か栞に手渡したのだ。
「こういうのは自分の手で渡すのが、一番真心が伝わりやすいんですよね」
悪戯っぽく笑う鈴香に、栞は顔を赤くする。
そして。
照れくさがりながらも栞は、香里の元まで歩いてゆく。
そして香里に、手織りの――まだ雑な部分はあるが――ストールを手渡した。
フワリとした質感のストールを、嬉しそうに香里は羽織る。
そんな香里を栞は、涙を潤ませながら見つめていた。

(これで私の仕事も終わりました、っと)

音もなく立ち去ろうとする鈴香を、香里が呼び止める。
「まだサインしてませんよね。……これでよかったら」
そう言って右手を差し出す香里。
「――ありがとうございます。今度ともペンギン便を御贔屓に!」

最後まで調子は変わらぬまま。
香里の差し出した掌を、鈴香は固く、暖かく握り締めた。